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リアル「夢のクロースアップ劇場」再び(Part1) からの続きです)
ホテルから朝の梅田方面を。
大阪の街を堪能してからの朝です。頭の中が興奮状態でまったく眠くならず、仕方なく明け方近くまで読書をしておりました。遅く寝ても、だいたいいつもの時間に起きてしまう哀しさよ…。どれくらい眠かったか?、というとこれくらい眠かったです。
眠くても朝からがっつり!
ホテルの朝食が面白くてですね。朝食の会場がベトナム料理のレストランなので、ベトナム料理がメニューの一部に入っているんですね。思わず
フォー と
チェー を注文。
早朝からレストラン中に
パクチー (コリアンダー)の香りが充満してて、パクチーが苦手な方にはある種の拷問だったかもしれません。
あまりの眠たさにチェックアウト間際までゆっくりホテルで過ごし、同行して頂いた広島の畏友、
鍛治中政男 さんと今日の目的地、その1へ。
阪急百貨店うめだ本店11階、テンヨーマジックコーナーです。鍛治中さんがどうしてもこちらのディーラー、冨吉宏さんに逢わせたいということで、ワクワクしながらお邪魔しました。
元々関西にいらっしゃって、今は羽田空港にある博品館でディーラーをされている清水一正さんのもとでアルバイトから正式なディーラーになられたとのこと。ならば、なるほどです。
一般のお客様にはちゃんと解説書通りの実演で楽しませ、奇術愛好家の方にはちょっとひねりを加えた実演で楽しませる。接客はもちろん素敵で、サービス精神に溢れた方でした。まさに、清水さんのスピリットを継承されていると思います。
これは同じく清水さんのもとでアルバイトからそのキャリアを始められた名古屋のディーラー、西川仁大さんにも通じる事ですね。
今回凄かったのが新製品「
ゴッドハンド 」の冨さんの方法。これはやってみたいと思いました。
ここ阪急百貨店の売り場にはこの売り場限定の商品があって、それがかなり良い出来で早いうちに買っておかないと。
デモも商品も気になる方は、すぐに売り場へGo!
さあ、ランチタイム。鍛治中さんおススメの
野の宴 阪急ターミナルビル店 へ。
流石に日曜日のお昼と言う事もあって、梅田にあるレストランの多くは人でごった返していたのですが、ちょっと外れにあるお店なので、少し混んでいるとはいえ、非常に快適。穴場のお店だ、と鍛治中さんが言われるのも納得。
ランチビュッフェで、2000円以下で、和食とお野菜中心でヘルシー、料理の種類も豊富ときたら、これはお値打ちと言う以外ありません。時間も90分あるのでゆっくり過ごすことができます。
また風景が素敵!
で、ここまできたら食べとくしかないでしょう!
どーん!
お料理、すべて美味しかったです。鶏の醤油焼きというのが野趣豊かで特に良かった。カレーは美味しいけど、ちょっと甘口。
そうなると、こちらもっ!
スイーツは別腹っ!!
私はかぼちゃプリンが一番お気に入りでした。あと、白玉の下に隠れた小倉あんも良かったなぁ。
鍛治中さんといろんなお話をじっくりしながら美味しい食事をして、ゆったり素敵な時間を幸せ気分で過ごしたら、あぁ、お昼寝したいなぁ、もう名古屋に帰っても良いかな?なんて思ったら…
「Yukiさん、今から本番のクロースアップショウですよっ!」 と鍛治中さんから鋭いツッコミが! そうでした、そうです、このために大阪へ来たのです!!
では、いざIBM大阪リングと大阪奇術愛好会のクロースアップショウ『Our Last Again』へ!!
このレストランのすぐ隣が会場。
会場へ到着したら、もう多くのお客様が。全員で50~60名くらいでしょうか? 会場はホテルのパーティールームなので、大変広くて豪華。
出演者も観客も誰もが知っている研究家、演技者の皆さまばかりで本当に豪華です。客席にはクリエイターの
谷英樹 さん、根尾昌志さん、三田皓司さん、フラリッシュの名手
Ars さん、
益田克也 さんの顔が! 久しぶりに皆様にご挨拶。
さらに会場には、皆様ご存知の著述家で奇術研究家の
松田道弘 先生ご夫妻もいらっしゃいました。
受付を済ますと、入口の真横に、京都のプロマジシャンで畏友の
Yuji村上 さんと、これまた畏友の
Fields Magic Entertainment社の川島友希 さんがディーラーブースを出店されていました。
久しぶりに二人に出会い、世間話をちらほら。そして「どう、売れてる??」と聞くと、見事なユニゾンで
「いいえ、まったく!」
…なんて、潔いんだ!!
久しぶりに石田隆信さんにお逢いしました。メールでちょこちょこお話しさせて頂いているのですが、やはり実際にお話しさせて頂けるとあれもこれもといろんなトピックスが出てきます。
先日フレンチドロップさんで発表された石田さんの最新論文は要チェックかと思われます!!
本当に久しぶりに
佐藤総 さんにもお逢いしました。ご多忙そうなご様子で、大阪にお邪魔することは伝えなかったのですが、ちょうど繁忙期がちょっとずつ去ったあたりだそうで、ダメもとでお声を掛けさせて頂いておけばよかった!と後悔。でもお元気そうでなによりでした。前回のショウでは出演者でいらっしゃったので、今回はかなりリラックスされていらっしゃいました。
短い時間でしたがいろいろお話をさせて頂き、近日中に美味しいお酒を呑みましょうね!ということに。楽しみがまた増えました!!
さあ、ショウが始まります。が、一つこれだけは声を大にして言いたい。
シ ョ ウ の 前 に 携 帯 の 電 源 を 切 る か 、 マ ナ ー モ ー ド に し な い 人 は 滅 び て し ま う と 良 い よ 。 しかも、前で演技していらっしゃる方がいるのに堂々と携帯をチェックしてるしねぇ…。 司会進行は、いつも通り福岡康年先生。軽妙なお喋りで凄く楽しいのです。安心してショウを楽しむことが出来ました。
トップバッターは、岡山の
林王子 さん。
22歳になられ、以前演技を拝見させて頂いた時よりもさらにこなれた演技でした。身体も演技もバツグンの安定感です。素敵なスポンジボールと、本当に不思議な「ガマ口の中へ飛行するカード」の演技でした。
続きまして、川島友希さん。川島さんと知り合って、もうかれこれ15年近くになります。本当に腰の低いナイスガイなのです。石田降信さんから薫陶を受けている通り、文献を読み込む本格的な研究家でもあり、マジックも非常に上手いのですが、一般に演技することは非常に稀です。この会に行こうと決めた理由の一つでした。
「今日は何を演じるの?」と聞いたらば、いつものように
「いやぁ、Yukiさん。そんなね、僕ね、何にもできないんですよぅ~。だからね、本当にね、ちょっとだけ、本当にちょっとだけさせてもらうだけなんですよぅ~!」 と、恐縮しながら仰るではありませんか!
演技が始まりました。堂々としながらも非常に物腰の柔らかい雰囲気でフラリッシュ的な4枚のエースの取り出しから、それを使ったカード当て、ホフジンサープロブレム、カードの交換現象、そして最後は「想像上の見えない糸」を使った見応え十分なカード当て。すべて見事でした!!
特に、フラリッシュの使い方が絶妙なんですね。マジックとのバランスが物凄く良くて、これだ、これなんだよ!と嬉しくなってしまいました。そして、見えない糸を使ったカード当ては、彼のシグネチャピースになると思います。難易度の高い仕事を顔色一つ変えずに楽々と演じる川島さんは本当に凄かった!
見事な演技が終わった後、それでも
「Yukiさん、どうでしたか?失敗してしまったんでねぇ…いやぁ…」 とイジイジ仰るので、つい
「お父さんは友希を人をだます様な人に育てた覚えはありません!」 と答えてしまいました!
ちゃんと拝見していて、何が失敗なのか、まったく分かりませんでした!
続きまして、ご存知赤松洋一先生。空の瓶の中に観客に指定させた色のサイコロをあり得ない状態で見事に貫通させるマジックや、サイコロが1つ通るだけの紙製の筒から次々にサイコロを取り出すマジック(サイコロを取り出す前には筒にペンを通して、中には何もない事を示すのです!)、あり得ないサイコロの飛行と、まぁ、とんでもなくヴィジュアルで不思議なマジックを立て続けに。客席から溜息が洩れました。
続きまして、前田隆夫さん。ちょっと緊張の面持ちでしたが、ブランクデックが印刷される現象から、手渡し可能の不可能な味のライジング・カード、そしてJustin Flomさんの
Card Artistry という素敵なカード当ての改案を。あぁ、確かにこう見せるのが正解だなぁと思いました。前野さんの方法でモナリザが鮮やかに描かれる様子はまさに眼福でした。
続きまして、金沢の山崎“CULL”真孝さん。凄く鮮やかな繰り返し行う復活する写真の手順と封筒を使ったカード・アクロス(飛行するカード)を。所々に山崎先生好みの捻りが入って、大変面白い演技でした。
前半最後は、ご存知福岡康年先生。ドゴン族の魔法と予言のマジックを。このマジックのタイトルを見ただけでもうお分かりかと思いますが、福岡節炸裂の福岡先生ワールドです。現象もこうとしか書きようがありません。誰にもあの味は出すことが出来ないでしょう。抱腹絶倒の10分間でした!
ここで前半戦終了。すると、福岡先生からいろいろなアナウンスがありました。これがすべて衝撃的。
一つ目は、34年ぶりにIBM大阪リング/大阪奇術研究会の機関誌『The Svengali 18号』が出版されるというお話し。二つ目は、今日参加した皆さんに、松田道弘先生がご自分の喜寿のお祝いを兼ねて、作品を収録したDVDをプレゼントされる、というお話し。
これを聞いた皆さんはビックリ!! しばらく場内が騒然としました。
休憩中はコーヒーとオレンジジュースが出されて、大変素敵でした。鍛治中さんと前半戦の感想をあれこれと話しあったり。
後半のトップバッターは神戸の
Mr.Yuki さん。宝塚でマジックバー「
Shade 」を経営されています。
以前のエントリー の通り、Mr.Yukiさんのギャンブル・デモンストレーションは本当に凄いのですが、この日はちょっとお休み。そのかわり、松田道弘先生が考案されたカードマジックの中でもYukiさんがお気に入りの5作品を本当に鮮やかに演じられました。クラシックの芳醇な香りとそこに入る絶妙な松田先生の「好み」が、得も言われぬ素敵な効果を生み出します。まさに眼福でした。
続きまして塩澤善一郎さん。前回のショウでも思いましたが、大変奇妙な味のマジックを飄々と演じられます。今回は、平面の紙を切って行う不可能なメビウスリング。これが本当に不思議なんです。そして、サロンマジックとして大変奇妙な「バランスマシーン」を。
司会の福岡先生が「本当に奇妙ですなぁ。丁度ね、東京の
厚川昌男 さんの作品を彷彿とさせます」と仰って、なるほど言い得て妙だ!と納得。
続きまして、Yuji村上さん。今子供に人気の変形ロボット「
爆丸 」を使った非常に面白いカード当てと、彼のシグネチャピース「Gionデック」と「えにしのデック」を。
特に「えにしのデック」は演出がこなれて、非常に良い作品になっていました。これはカップルに演じると本当に受けが良いんですよね…。
続きまして、瀬島順一郎さん。鮮やかな3コイン、2枚のコインの交換現象、ヴァーノンの名作「Fool Houdini」、タマリッツの「印刷されるシルク」、そして水晶に浮かび上がるカードを鮮やかに演じられました。
続きまして、畑文明さん。クラシックなボール&ベース、コインが貫通するカードなどを鮮やかに演じられました。ボール&ベースが非常に鮮やかで、やっぱりクラシックは良いなぁと思いました。
続きまして、ご存知宮中桂煥さん。最近は『
澤浩の奇術 』を発表された素晴らしい研究家であり、バリバリのカードマンです。
今回も非常に鮮やかな4枚のエースの取り出しから、テクニカルなカードマジックを華麗に演じられました。ベテランの奇術研究家である田中貞光先生に助手をお願いし、「いやぁ、マジシャンはよくカードを隠したがるんですよ」と言いながら、田中先生のポケットから繰り返しカードを取り出すのが非常に面白かったです。
最後はおなじみ、クリエイターの
岸本道明 さん。オモチャのミニカーを使った作品、白紙が2回変化する「サンダービル」、岸本さんのシグネチャピース「静物のあるライジングカード(絵に描いたデックで行うライジングカード)」をいつもながら見事に演じられました。
VIDEO 実際の演技はこの動画よりももっと鮮やかに見えました。
ああ、もうお腹いっぱい。予定時間よりも1時間近く延長してのお開きでした。
帰りがけ、佐藤総さんに声をかけていただいて、松田道弘先生と少しだけお話しさせて頂きました。
「こんな素敵なDVDをありがとうございました!」とお話しすると、「わし、もうマジックでけへんから!」と冗談を!!
「いえいえ、先生! 何をおっしゃられますか!! 前の会で先生が演じられた“カニバルカード”は凄かったではないですか!」と。
松田先生もこの会は凄く楽しまれていたご様子で、終始ニコニコされていたのが大変印象的でした。
あとで知らされたのですが、この時は佐藤さんが気を使って頂いて松田先生とお話しさせて頂いたと思っていたら、松田先生が「あの翻訳家の方、どなただったかな?」と言って頂いたそうで、もう腰が砕けそうになってしまいました。感謝しかありません。
帰宅後、まずは『The Svengali18号』をじっくり拝読しました。
この松田先生の2パーソンテレパシーは凄い!
まず驚くのは、この日のショウで演じられた作品が惜しげもなく発表されているのです!! 1つ1つの作品だけで十分に値段以上の価値があります。
読み物も、赤松洋一先生、塩澤善一郎さん、三田皓司さん、モハメッド福岡先生、松田道弘先生(松田先生の2パーソンテレパシーは素敵です!!)と内容が盛りだくさん。
特に、冒頭の赤松先生のエッセイが本当に素晴らしいのです。「大人の本気、なめんなよ!」と、びしっ!と言われた気がしました。
102頁で2000円だったら、もうバーゲンプライスです。
興味のある方は早めに
IBM大阪リングのウェブサイト から申し込むと吉かもしれません。
そして、松田先生のベストな26作品を集めた非売品のDVD「My version of ...」。
松田先生のごあいさつが素敵なのです。
松田先生の作品には、すべてきめ細かく計算された本当に絶妙なサトルティが含まれていて、それは簡単に解説の中から読み飛ばしてしまえるんですね。つまり、究極の引き算から出来たサトルティだから非常に淡く、脆い。これこそが松田先生一流の粋であり、不思議さなんだと思います。ただ、その淡く脆い素敵さをプリザーブすることは大変難しいのでは?と思っていました。
今回はMr.Yukiさんという才能によって、26種の素敵な作品が見事にプリザーブされました。これ以上の眼福はありません。中には私も好きな作品がいくつも含まれていて嬉しかったです。
その作品セレクションの絶妙さ、Yukiさんの演技の見事さ、すべてが素晴らしかったです。このDVDを制作された福岡先生とMr.Yukiさんには頭が上がりません。
本当は、松田先生の演技をもっと拝見して、お話しを伺いたいですよね。前の会で拝見した「カニバルカード」の素敵さは、先生の演技をご覧になった事のない方には絶対に(ここは大事なので繰り返します。絶対に)理解できないでしょう。
この会でまず感じたことは、古典の大切さでした。ベテランの皆さまは古典の本気を、ベテランの皆様の祝福を受けた若い世代はベテランの皆さまから受けたエッセンスを存分に披露された会だったように思えます。とにかく、皆さんが本気で遊んでいらっしゃるのですね。子供の想像力に大人の本気を合わせたものは絶対に面白い、私は強く信じています。
IBM大阪リングや大阪奇術愛好会、神戸奇術研究会では松田先生を中心に「大人の本気の遊び」を何十年前からされている、という事実を突き付けられると、その年月の長さと経験の深さにめまいがしてしまいます。
そして、次に感じたことは、機関誌『The Svengali』で赤松先生が引用されている相田みつをさんの「生きていて楽しいと思うことのひとつ それは人間が人間と逢って 人間についての話をする時です」という詩です。
ベテランの皆さまの演技は、本当に自分が好きなものを愛でながら「どうです?これ、面白いでしょ!!」と嬉しそうに見せてくださっていた感じでした。
これは、前の夜に楽しんだムッシュピエールさんの演技しかり、激論を戦わせたTさんしかり、ひげめがねの潮見さんしかり、そして、今回の旅をコーディネートしていただいた鍛治中さんしかり(今回の旅は鍛治中さんがいらっしゃらなかったら、成立していなかったと思います!)。
ただ「タネ仕掛け」などの情報をやりとりする関係ではなく、私はやっぱり社会にコミットしている方とお逢いしてお話ししたいです。
前回の「メンター」の話にも関わるのですが、丁度、ジャーナリストの
乙武洋匡 さんが「最近、さまざまな分野の勉強をしていて思うのは、「誰に教わるのか」「どの本を読むのか」で、学びの半分以上は決まってしまうのだということ。自分に適した教師や教材を選ぶためにも、ある程度、独学での学びも必要になってくる。いわゆる、学びの“下ごしらえ”」と仰っていて、なるほど納得でした。
こうした人と人が出逢うことが出来る素晴らしい学びと遊びの場がある、というのは、素直に羨ましいなぁと思いました。
本当に今回の旅も色々な事を学ぶことが出来ました。お逢いした皆様、本当にありがとうございました! 今年はもう少しアクティブに出かけたいな、と思いました。