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覚書、アップしました。

 このエントリーでお約束したように、覚書をアップしました。先にお話しさせて頂いたように、「ロン・ウィルソン プロフェショナルマジック」をお買い上げいただいた方にお読みいただこうと思います(だって本をお読みでない方には、意味がないですよね?)。

 右欄カテゴリーの「Can you keep a Secret ?」の項目をクリックしてください。すると、その中に「ロン・ウィルソン プロフェッショナルマジックについての覚書」というエントリーがあります。
 そこで「ブロとも申請するか、パスワードを入力してください」と注意が出ています。そこでパスワードを選択してください(ブロともは申請されても、許可しません)。その指示に従ってパスワードを入力してください。

 もしお試しになってうまくいかないようでしたら、右欄メールフォームからお知らせください。その際は、指示に出たパスワードを件名に書いてくださいね。折り返しメールさせて頂きます。
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ライジング・カードとわたくし(Part 2)

(→Part1からの続きです)

greater.jpg

 かなり以前、ニューヨークに在住されているアマチュア・マジシャンのご自宅へ招待していただいたときのこと。場所はマンハッタンでも超高級なマンションの1室です。

 その方はマジックに非常に詳しい方であり、マジックもされるのですが、どちらかと言うと見るほうが好きであまりマジックを演じない、でも、1つだけ凄く不思議なマジックを演じられるという話を事前に聞いていました。



 大変広い素敵なリビングに通していただきますと、その一角にはちょっとしたステージまであって、マジシャンが集まるとそこでマジックショウをするんだ、とのこと。

 お茶を飲みながらいろいろお話しを伺っている内に、私が「凄く不思議なマジックを演じられると伺ったのですが、できれば見せていただけませんか?」と恐る恐る聞いてみました。すると、その方は快諾して、私が持っていたデックを取り上げました。

 まず、私を含めた3名の観客に1枚ずつカードを選ばせ、覚えるように言いました。それをデックに戻して、彼はステージに向います。
 ステージの上に立ったその方は、これはyukiから借りたデックであり、3名の観客に自由にカードを選んでもらったことを確認しました。それを1枚ずつ魔法を使って見つけてみようと言うのです。

 素敵なピアノコンチェルトが薄く室内に流れはじめました。まず、その方は空の右手を空中へ差しだしました。すると、その指先に1枚のカードが突然出現しました。それは、1人の観客が選んだカードでした。
 そのカードを左手に持っていたデックの中に戻します。デックの表が観客に向くように立てて持ちます。すると、1枚のカードが何もしていないのにデックの中程からするするとひとりでにせり上がってくるではありませんか! これが2人目の観客のカードでした。
 このカードをデックに戻します。そして、同じようにデックを立てて持っていますと、3枚目のカードがデックから同じようにひとりでにせり上がってきます。が、次の瞬間このカードがデックから外れ、宙に浮いたのです! そして、デックの上で待ち受けていた右手の中に飛んでいきました。

 この現象を見て引っ繰り返りました。凄く不思議なのです! 勿論、その直後にデックを返してもらいましたが、デックには何の仕掛けもありません。すると、不思議がっている私を見ながらニヤニヤしているその方は私をリビングの一角にあるステージに誘いましたが、そこに何の仕掛けも見当たりません。まったく仕掛けが分からなかったのです! 一つ加えると、カードをせり上げるとき、それぞれ彼は立っている場所が違っていました。つまり、ステージ上のある地点に立っていないと出来ないマジックではありません。
 目の前、ほんの数メートル先で起こった奇跡に茫然としている私に、その方は「凄くクラシックな方法なんだけど、好きでね。もうかなり長い間演じているよ」とおっしゃいました。

 …ということは、発表されている古典的な作品なんだな! よし、ヒントをゲットだぜ!



 そして、その時逗留させて頂いていた、私の先生、ジェイミーの家の書架にあった古典的な著作を読みあさりました。すると名著『Greater Magic』(1938年)の中に1つヒントとなる作品がありました。伝説のステージマジシャン、ハワード・サーストン氏の方法です。1つしか挿絵がない、たった1頁半の解説なのですが、その現象を読むと、どうやらその方が演じていた現象とまったく同じなのです。挿絵は1つしかありませんし、方法を読んでも今の時代では荒唐無稽な印象を受けますので、普通ならその作品が読み飛ばされてもまったくおかしくありません。



 後日、その方にお逢いしたとき、その件について質問してみました。すると、その方は「良く分かったね!」と驚いて、もう一度ご自宅にお招きいただきました。

 その方は、この不思議なライジング・カードだけを演じるために、リビングルームに大掛かりな仕掛けを作ってしまったのです! 勿論、仕掛けがあってもそれは大変シンプルですし、このマジックを演じるための技量がなければなりません。その方はマジックを演じないとおっしゃるものの、素晴らしい技量の持ち主であり、しかも、ご自分で考えた方法は、原案よりも考え抜かれた方法になっていました(原案では秘密の助手を使いますが、その方の方法では1人で演技が可能なのでした)。 



 どうしてこんなことを考えられたか?と伺うと、昔ニューヨークに住まわれていた天才マジシャン、アル・ベーカー氏の話を教えて下さいました。氏が考案した名作に「ホーンテッド・デック」という作品があります。

 これは、観客に1組のデックからカードを選んでもらい、覚えてサインをしてからデックに返してもらいます。このデックをテーブルや手の平、床の上に置き、オマジナイをかけると、デックの上半分がひとりでにスルスルと動き出します。そして、観客の覚えたカードだけがデックから突き出た状態になり、そうなったらデックの上半分は再びひとりでにもとの位置に戻ってしまうのです。大変不思議なマジックです。このマジック、氏のマンションを訪れたマジシャンには必ず見せるお気に入りの1つだったそうです。
 勿論、これは原案を普通に解説通りに演じても、大変不思議なマジックです。しかし、ベーカー氏の演技では氏が何かをしたような形跡が一切なく、それにより氏の名声は一層高まりました。

 その方法が素晴らしい。ベーカー氏が住んでいたマンションのリビングの隣はキッチンになっていました。ベーカー氏はリビングとキッチンの間にある壁に細工をして、キッチンからそのデックを操作できるようにしたのです!
 ベーカー氏のお宅を訪れたマジシャンとリビングでセッションをしていて、このマジックを見せる段取りが出来たとき、ベーカー氏は奥さまに「お茶を煎れてきてくれ」とお願いし、奥さまはキッチンへと向います。
 そして、キッチンでお茶を煎れながら、リビングにいるベーカー氏の合図に従って奥さまがそのデックを操作します。リビングでは、テーブルの上に置いたデックが独りでに動き出し、選ばれたカードが出現してマジシャンたちがビックリしている間に、奥さまはキッチンでその後処理も行ない、頃合いを見てお茶をもってリビングへ登場し、何食わぬ顔でお茶を提供したのでした。

※注:ホーンテッド・デックの考案者については、同じニューヨーク在住の天才クリエイターであり、アメリカの生保大手Blue Cross社の副社長だったポール・カリー氏との確執の話があるのですが、ここでは割愛することにします。



 その話がずっと頭を離れずに、いつか自宅を購入したら、1つだけで良いから、本当に不思議なマジックを演じるための仕掛けを部屋に施したいと思っていらっしゃって、サーストンのショウで演じられていたこの作品を演じるための仕掛けを作り上げたのだそうです。しかし、その仕掛けを作るためにかかった費用は、聞いてビックリしてしまいました。ちょっとした部屋のリフォームをする位の値段だったのです!



 マジシャンを騙すための情熱とうまく騙せた時の快感というものは、どうやらお金には替えられないもののようです。自分もマイホームを建てる時には、絶対何か1つ、こうした仕掛けを仕込んでやろうと密かに企んでいます。

ライジング・カードとわたくし(Part 1)

 暑い日々が続いていますが、皆さまはいかがお過ごしでしょうか? お盆も終わり、それでも厳しい残暑が続いていますね。水分補給を忘れずに、暑さを乗り越えていきましょう!
 
 さて、先日ある方から「なんかクラシックなプロットの話でエントリー書いてみたら?」とお話しを頂きまして、それならばとお話ししてみましょう。カードマジックでも本当にクラシックなプロット、ライジング・カードを取り上げてみることにしましょう。



 このマジックの実演を一番最初に見たのは、中学生の頃だったと思います。それはテレビ番組で、思い返すとその番組は、今はなき伝説の深夜番組「11PM」でした(当時の中学生たちは親が寝静まるのを待って、イヤホンを装着して血眼になりながらHなコーナーを観ていたものです。品行方正な私は例外でしたけどねっ!)。 

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 何となく眠れずにテレビをつけたら、マジックを演じていました。そこの登場していたのは、名古屋のマジック・バーエルムの山内利夫さんだったことも覚えています(確か、名古屋の歓楽街特集みたいなコーナーでした)。
 観客が自由に選んだカードをざっと改めた1組のデックの中に戻し、そのデックをグラスに立て掛けてオマジナイをかけると、選ばれたカードが魔法のようにひとりでにデックの中からせり上がってきました。凄く不思議なマジックで、一発で眠気が醒めてしまいました。

 それまでテレビでジャンボカードを使ったライジング・カードの手順を何度も観たことがあるのですが、この演技の方が怪しげなホルダーとかを使わないし、デックに手を触れていない分、非常に不思議に感じたのでした。
(ただし、ジャンボカードを使っても不思議なライジング・カードはいろいろ存在します。例えば、今も私が好きで使っているNemo Jumbo Rising Cardsは、本当に素晴らしいと思います。添付されているコメディの演出は人を選びますが、現象そのものはパーフェクトで、方法もローテクなため失敗が少ない。なんと、演技後にはデックとホルダーはすべて改め可能なのですから!)



 アメリカのジョン・ヒリヤード氏も名著『Greater Magic』(1938年)の中で「ライジング・カード…過去の名人達から現在に伝えられたすべての現象の中でも、本物の魔法のようなマジック」と語っています。
 本当に古いマジックで、フランスが産んだ近代奇術の父、ロベール・ウーダン氏によれば18世紀後半には誕生しており、現在まで星の数ほど様々な方法が考案されてきました。
 カードを動かす方法も、人力から物凄いハイテクを使った精巧なメカニックまで様々です。ユニークな方法ならセロハンテープとかもありますね!(実際にこのセロハンテープを使った方法を考えた方に演技を見せていただく機会があったのですが、凄く不思議でした。解説を読んだだけでは、絶対に試す気にならないのですが!!) 
 この『Greater Magic』には、ライジング・カードの解説だけで58頁も使われています。それだけではなく、ライジング・カードだけが解説された解説書も数冊出版されているくらいです。



 近代カードマジックの祖である、オーストリアのJ.N.ホフジンサー氏だって独自のライジング・カードを考案しています。

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 氏の作品は、普通のピケデック(当時のデックは32枚一組でした)を綺麗に塗装された木製の箱(大きさはだいたいティッシュペーパーの箱を一回り大きくしたくらい)の中に入れます。そして、観客が自由に指定したカードがその箱からせり上がってくるのです! 仕掛けはこんな感じ

 こんなにごっつく、精巧な機械仕掛けが箱の中に仕込まれていたのです。言われたカードの名前に対応したレバーを押すことで、そのカードが自動的にせり上がる仕掛けです。
 今となってはデックに対してその箱の大きさに違和感を覚えますが、こうしたメカニックは当時としては高度な技術ですから、19世紀の観客はきっと度肝を抜かれたことと思います。

 今ではこの道具、ワシントンDCにあるアメリカ議会図書館のホフジンサー・コレクションに所蔵されています(実はここには、マジックの古典的名著が多く収蔵されています…なんと、機会があれば観るチャンスもあります!)



 精巧な機械仕掛けを究極まで突き詰めたのが、幻のマジックと言われてきたドクター・サミュエル・フーカー氏考案の『Impossibilities』でしょう。

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 医学博士のサミュエル・フーカー氏が考案し、ニューヨークにある自分の邸宅で招待客だけを集めてショウを上演していました。本当に不可能な状況で行われるライジング・カードで幻のマジックと言われていました(写真の挿絵を見て下さい。本当にこういう現象が起こるのです)。
 ジム・ステインメイヤー氏がその方法を発見し、数年前にこのショウの再現を行いました。残念ながらチケットが取れずに悔しい思いをしたのですが、観に行った友人たちは皆「凄かった!」を連発していました。少し前に奇術専門誌『Genii』でも特集がされましたね。でもこのショウ、1回演技を終えたら調整と準備に数時間かかるなど、確かに不思議ですが、いろいろ苦労が絶えないマジックだそうです。



 私も今までに様々なライジング・カードを購入したり、使ってきました。その中から私が好きな製品あれこれを。



 まずは「デバノのライジングデック」。

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 イギリスのハリー・デバノ(本名:ハリー・ウェルディ・ミッチェル)氏が1948年に考案した作品です。今では、株式会社テンヨーからも販売されているベストセラーです。
 私も一番最初に買いました。購入したとき、デックそのものに仕込まれた仕掛けを見て、「え?こんな風になってたの??」と非常に驚いたものです。様々な名手も演じており、イギリスの名人であり、メンタリストとしても有名なデヴィッド・バグラス氏もお気に入りの作品だと語ったことがありました。

 1番感銘を受けた手順は、亡き名人、シカゴのドン・アラン氏の手順です。3段に渡る、全部で3分ほどの手順ですが、手順構成の妙により段々強烈な現象になっていきます。もしご覧になったことがなければ、氏の演技は必見です。このDVDに演技が収録されています。
 詳細な解説は、マジック博士として名高いジョン・ラッカーバウマー氏の著書『In a Class By Himself - The Legacy of Don Alan』(L&L Publishing刊、1996ー2000年)に発表されています(この本の出版には大変な紆余曲折があったのですが、これもまた別の話)。

 この道具を使った演技で忘れられないのが、大阪の名手、ジョニー廣瀬さんの演技。20年程前に島田紳助さんが司会をされていたトーク番組「CLUB紳助」に登場された時のこと。
 ジョニーさんは、この「デバノのライジング・カード」を演じられました。カードがデックの中からせり上がってきたのですが、選ばれたカードの前にあったカードも偶然一緒にくっついて上がってきてしまったのです。紳助さんは「ちゃいますよ~、失敗ですやん」と言うのですが、カードが一番上までせり上がった瞬間、そのショックで一緒にくっついていたカードがストン!とデックの中に落ちて戻り、選ばれたカードが急に現れたように見えたのです! その時の紳助さんの「気持ち悪っ!」という叫びと表情は、今でも忘れられません。そこから完全にジョニーさんのペースで番組は進んでいきました。こういうこともあるんだなぁ。
(そう言えば、ジョニーさん、体調もかなり戻られてきたと伺いました。また、あの華麗な演技を是非拝見したいです)



 次に「クンダリーニ・ライジング」

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 アメリカの素晴らしいステージ・マジシャン、ジェフ・マックブライド氏の名作です。アメリカのマイケル・ウェーバー氏が奇術専門誌『Genii』誌1986年5月号に初めて発表した原理と素材を使い、それを大変不思議なマジックに昇華させたのでした。
 幸運にも氏から直々に教えていただいて、それ以来好きで事あるごとに演じています。借りたデックを使って、観客にデックを持たせても選ばれたカードがデックからせり上がってきます。それだけではなく、ホーンテッド・デック(このマジックに関しては、Part2をお読みください)まで演じることが出来るのがイイ!
 この写真に写っている封筒にも氏との想い出があるのですが、それはまた別の話。



 仕掛けを見て驚いたのは、イギリスのクリエイター、アンジェロ・カルボーン氏が考案した“Notion of Motion”。

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 カルボーン氏は世界有数のテンヨーマニアとしても知られており、株式会社テンヨーからも氏の作品がいくつか発売されています。氏は『Genii』誌2010年3月号の巻頭特集にも登場されました。

 写真では普通のライジング・カードのようにしか見えませんが、観客が言ったカードを何でもせり上げることが出来ます。お見せできないのが非常に残念なのですが、その仕掛けを見たら「何じゃこりゃー!?」と突っ込みたくなること請け合いです。それ程凄い仕掛けを使っています。
 これ程精巧に出来たギミックデックは類がなく(しかも、物凄いローテクです)、1デック300ドルすると言われても何の驚きもありません(しかも、カルボーン氏によるすべて手作り!)。以前、この作品をかなり劣化させた商品がありましたが、出来は月とスッポンです。
 また、昔、アメリカの高級マジックショップ、コレクターズ・ワークショップ社から“マラケッシュ・ミラクル”という名前の「観客が指名したカードがせり上がる」作品が販売されていましたが、この方法のさらに斜め上をいきます(これも仕掛けを知った方がビックリする作品でした。製作に手間がかかりすぎるようで、今では廃盤になっています。アメリカのヴァイキング社と合併するかなり前の話です。ここの商品は、製作コストが高いのか、すぐに絶版になる商品が多すぎるのが難点!)。

 先日までこの作品を販売するウェブサイトがあったのですが、今は閉じられていて、ご本人に確認中です。多分、今でも購入可能なはずです(但し、受注してから製作を開始されるので、完成までに数ヶ月待たなければなりませんよ!)。



 そして、イギリスのアイデアマン、スティーブン・タッカー氏が1991年に発表した“HALLUCINATION”。

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 観客が心に思ったカードがデックの中からスルスルとせり上がってきます。もともとは、ピアトニック社製のデックが付いていたのですが、扱いづらいし、すぐに傷んでしまったため、私の愛するTally-Hoのファンバックで自分のために作り直したものです。
 古いライジング・カードのギミックデックに、これまた古いある原理を加えて、大変不思議なライジング・カードに仕上がっています。でも良く考えたら、このライジングカードのギミックデックを使わなくても良いんじゃね?と思って、それからはこのギミックデックを使わずに同じ現象を演じるようになりました。
 今は発売されていないようなのですが、一時期、日本で海賊版がかなり大量に出回っていたようですので、入手出来ないことはないと思います。



 で、1番のお気に入りはこれ。「Upton/Smith Rising Cards」です。

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 実はこの作品を知ったのは本当に昔、確実に20年は経っています。海外の友人の1人から「凄いライジングカードがある。原案は1920年代に作られた“Upton Rising Card”というものだ。金属製のホルダーとガラス製のパネル、金属製のギミックが付いているのだが、このハリー・スミス氏の作品は、それをさらに越える改案だ」と聞きました。当時、確かレート換算すると30,000円くらいして、学生の身分としては、とても手の届く作品ではありませんでした(それに1つの作品にそれだけお金を払うなら、洋書を何十冊も買ったほうが良い!と思っていました)。長年探し求めて、数年前に入手しました(ビバ、円高!…あまり、大きく喜べないですが…)。

 現象はこんな感じです。

 観客にデックを自由に切り混ぜてもらいます。なんなら、デックを観客から借りても良いでしょう。そうしたら、デックを入れるための木製のホルダーも調べてもらいます。マホガニーの木片が接着剤で組まれており、何の仕掛けも見当たりません(実際にホルダーには一切仕掛けがありません)。そして、小さなガラス板2枚も調べてもらいます(このガラス板にも仕掛けはありません)。
 3人の観客に1枚ずつカードを選んでもらい、デックに戻してもらいます。このデックをホルダーの中に入れます。そして、デックのトップとボトムにそれぞれ小さなガラス板を差し込み、演者が物理的にデックに触れることが出来ないようにします。
 このホルダーを開いた右手の掌の上に乗せ、デックの上で左手を使いオマジナイをかけます。すると、1枚ずつカードがデックの中からせり上がってきます。演者はカードの動きを一旦止めて、それからさらにカードをせり上がらせることも出来ます。このとき、ホルダーの前後を観客にしっかり示すことができます。
 2枚目のカードがせり上がってきたとき、ガラス板ごとデックをホルダーから外し(デックは2枚のガラス板の間に挟まれた状態になっています)、そのカードが本当にデックの中央付近からせり上がっていることを観客に示すことも出来ます。
 3枚目のカードもせり上がらせたら、そのまますべての道具を観客に手渡して演技を終えます。



 …結構、不思議ではないでしょうか? モーターなどの機械仕掛け、糸、ゴム、バネ、磁石、ワイヤー、余分なカード、重りなどは一切使っていません。よく見かけるインチキ臭い宣伝のようですが、本当です。仕掛けそのものは大変ローテクで、しかも物凄く簡単に演じられます。私は3枚目のカードに関して、観客に1枚のカードを自由に心の中に思ってもらい、そのカードをせり上がらせるようにしています。

 少し前に15台だけ限定で販売されたようなのですが、一瞬にして販売終了してしまいました。


 
 何故このマジックが凄く不思議に思えるのかと考えると、実際に起こるかもしれないと信じられる現象だからではないかな?と思うのです。例えば、物体が宙へ浮いたり、物体が消えると言っても、現実では起こりえません。
 でも、命のない物体が何もしていないのに動くという現象は、現実に起こりえる現象なのです。例えば、熱いおみそ汁が入ったお椀が勝手に動いたり、命のないかつお節が熱いうどんの上で踊っていたり、という身近な現象から、砂漠の中央にある巨大な岩が勝手に移動を続ける自然現象や、学生ならば一度は試したことがある、お馴染「コックリさん」、はたまたホラー映画の傑作、ジョージ・A・ロメロ監督の『ゾンビ』(1978年)のように死体が動くといった映像作品まで、無機質な物体が動く現象をフィクション、ノンフィクション関係なく目にする機会が結構多く存在します。この辺りが、人間の心理に大きく作用しているのではないか?と私は考えてます。

 そう言えば、昔、大変不思議なライジングカードを見せられたことがありました。
(→Part 2に続く) 

This is the story about you.

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 「英語を覚えながらマジックを学べる」という、英語とマジックの初心者を対象にした真面目な本の最終校正を終え、赤ペンで真っ赤に修正した校正原稿を出版社へと送りだし、ホッと一息ついていたある日のこと。突然、自宅の電話が鳴りました。それは私の担当をしていただいた編集者、Wさんからでした。

Wさん「yukiくーん、や、やっと本ができたね! よ、良かったね!」
私『すべては御社随一の切れ者、Wさんのおかげです<(_ _)>』
Wさん「ξ*〃〃)ξ<そ、そんな持ち上げても、な、何もおごらないからねっ!…ツ、ツンデレじゃないからねっ!」(注:ちなみに、Wさんは高校生の娘さんをお持ちの良きマイホームパパです)
私『なーんだ残念(´・ω・`)…そういえば、本のタイトルどうしましょうね? 腰巻き(注:本に巻かれている広告の帯のこと)のキャッチコピーはあれで良いとして…』
Wさん「あ、あのね、も、もうタイトルは決まったよ!(≧∇≦)b 」
私『へ?(°口°;) なんにも聞いてないですよ?』
Wさん「売れるように願いを込めてうちの営業の人が決めてくれたよ! 良いタイトルだよ! その名も…」
私『(ゴクリ…)その名も…』

Wさん「『英語でペラペラマジック』! どうどう??(^-^)V」

私『Σ(゚Д゚;|||) …マジっ…すか?』
Wさん「うん、も、もうこれで入稿しちゃったから。ぜ、絶対売れるよ~!ヾ(>▽<)ゞ」

 あまりに突然の告白に意識が薄れていくなか、この何とも軽く、胡散臭さとツッコミどころ満載のタイトルにどこから突っ込もうかと考えていました…。
 そして私の著作 『英語でペラペラマジック』(東京堂出版刊、2006年)が上梓されました。はい、このやりとりは本のタイトルが決まった時の実話です。あぁ、もっと格好良いタイトルが良かったです。でも、今では話のネタとして重宝しておりますので、逆に美味しく思っております。

 この本が企画されたきっかけは、偶然の出来事でした。この本の出版がされる数年前、素敵な女流マジシャンのYさんと同じ出版社の編集Nさんと私の3人で呑みに行くことになりました。
 すると、Yさんの大ファンである編集者Wさんがこの呑み会の話を聞きつけて、急に合流することになりました。

 呑みながら話している間に、マジック絡みで一般書作ったら面白いんじゃね?なんて話になりました。
 「マジックでダイエット(シルクの振り出し100本で、あなたの二の腕がほっそり!)」とか「マジックで腰痛が治った!(イリュージョンのインタールードを使用)」、「マジックで視力アップ!(カードマジックの技法グリンプスを1日1回15分)」や「マジックで宝くじをゲットだぜ!(君はデレン・ブラウンか!)」などなど、次々とみんなで怪しい企画を立てている間に、Yさんが「マジックで英語をマスターなんてどう?…なんてね!」という発言をされました。
 それに急に反応したのがWさん。Wさんは英語学習関連の本の編集のプロで、一般の読者が英語に馴染むための本を企画したいと常々思っていらっしゃったそうです。「そ、それ良いね!yukiさんは翻訳とマジックの両方得意でしょ? き、企画書を書いてもらえないかな?」これで決まりました。あまりに突然の出来事でした。
 でも、実はこんな本を書いてみたいなぁと思っていたのです。

 この本を執筆した理由の1つは、この本の冒頭に書いたように、私のように英語が苦手な方にちょっとでも英語と付き合える(決して無理に好きにならなくても良いと思います。無理なものは無理ですから)、そのきっかけになる英語の入門書を書いてみたかったということがありました。
 もし、英語が苦手で、あれだけもがき苦しんだ自分の学生時代に「英語が辛い? 気にすんなよ。大丈夫、僕を見てごらんよ。これでも何とかなるんだぜ!」と肩を叩いてくれるような本と出会っていたら、どれだけ精神的に楽になったことか。
 もし今、仕事や学校などで義務として英語とどうしても向きあわなければならず困っていらっしゃる、そしてマジックにも興味を持たれている皆さんの肩をポン!と微力ながらも叩けたら良いな、と思ったからです。

 それに加えて、ある決定的なきっかけがありました。この話が出るほんの数週間前の出来事でした。

 私の友人にJさんという方がいます。彼は生粋のニューヨーカー。自身のプライベート・ブランドを立ち上げ、新進気鋭のデザイナーそしてアーティストとして、現在は東京を中心に大活躍されています。
 彼とは共通の友人を通じて、ニューヨークで知り合いました。洋服のセンスが素敵(デザイナーだから当然ですね)、いわゆるイケメン(なんとモデルとしても活躍中)、なおかつ性格が良くって話も面白く、おまけに賢く勉強家という完璧超人。
 日本のサブカルチャーに興味があり、小津安二郎監督などの古きよき時代の日本映画(実は小津映画は大変モダンだ、という話題で盛り上がりました)や日本のCMデザインの話などを二人でよくしていました。
 彼はマジックが大好きで、私の先生Jamyの下でマジックを習っていたこともあり、たちまち親しくなりました。
 さらに凄いのは、彼はマジックの腕前がバツグンなのです。マジックの歴史や知識にも明るく、技術もさることながら、彼が考える演出は大変賢いものでした。デザインや近代美術の研究を長年されていたこともあり、マジシャンが思いもつかないような切り口でマジックの演出や演じ方を考えていらっしゃいました。
 また、ギャンブラーが行うイカサマのテクニックに精通していて、彼の行う「バハマ・ディール」という超絶技巧の応用は、まさに眼福でした。

 Jさんが、日本人の奥様とニューヨークから東京へ引っ越してくることになりました。東京のマジックショップを教えて欲しいということで、彼が引っ越してきた後にいろいろな有名店を巡り、楽しい一日を過ごしました。
 マジックショップを案内した後日、彼から電話があり、一緒にお茶を飲みに行きました。そこで、彼からこんな話を聞いたのです。

 Jさんは仕事の途中で茅場町の近くに行ったので、その地にある有名なマジックショップへ立ち寄りました。
 店の中でマジックの商品や専門書を品定めしている時、まったく身も知らずの日本人の奇術愛好家の方から「君もマジックをするのかい?」と英語で突然声を掛けられ、喫茶店に行かないか?と誘われました。突然の話にちょっと戸惑いながらも、その提案を無下に断るのも悪いし、英語を話せる人のようだし、ちょうどお茶を飲みたかったというのもあり、連れ立って喫茶店へ行きました。

 席につくと、その愛好家の方は自己紹介代わりに名刺を1枚Jさんに手渡すやいなや、1組のカードを取りだし「ちょっと見てくれないか?」と言ってマジックを始めたそうです。   
 それは、ただギャンブルのテクニックを延々と行うだけのものでした。そう、Jさんはテーブルの上にカードを配っていくだけの作業をただ見ているだけ。しかも、明るい昼下がりの、周囲には多くのお客さんがいる喫茶店のテーブルで。
 周囲からの痛い視線を感じたJさんは、大変居心地が悪かったそうです。でも「もう二度とこの喫茶店には来ないだろうから」と苦笑しながらも、その様子を見ていました。
 先にお話しした通り、Jさんはギャンブルテクニックの素晴らしい研究者です。話をここまで聞いたとき「うわ、これ、なんて釈迦に説法!」と思いました。

 愛好家の方がひとしきりカードをテーブルの上に配り終えた所で、満足げな表情で「次は君の番だよ」と今使ったばかりの1組のカードをJさんに手渡してきました。彼は困惑しました。
 こうしたマジックの見せあいを、海外では"Session"と言いますが、これは親しいマジシャン同士が研究成果を見せあって技を磨くため、またはお互いの噂を知っていてお互いの仲を深める目的で行うものであって、いきなりこんな具合に、しかも初対面で衆人環視の下で行うことは聞いたことがありません。

 そこで彼は考え、彼がお気に入りにしているマジック、プロフェッサーと言う名称で世界中のマジシャンから尊敬されていたDai Vernon氏のあるカード・マジックを、彼独自の演出と共に演じました。そのマジックを私も見せてもらったことがありますが、方法を知らない方なら絶対にビックリする不思議なマジックです。

 件の愛好家の方は、Jさんのマジックを見て文字通り「開いた口がふさがらない」ほど驚いたようでした。多分、この愛好家の方は、Jさんがそこまで不思議なマジックを演じるとは思ってもいなかったのでしょう。しばらく沈黙が続きました。
 そしておもむろに、その愛好家の方が口を開きました。「それ、どうやってるの? 教えてよ!」
 Jさんはビックリしました。初対面の、しかも身も知らない人に、どうして自分が大切にしているマジックの秘密を教えないといけないのでしょう?
 流石のJさんもこれには参って「どうして教えないといけないの?」と愛好家の方に聞きました。すると、この愛好家はこう答えたのです「だって、僕たちはこうして友達になったじゃないか!」
 困り果てたJさんは仕方なく「ごめんなさい、僕とあなたは友達でも何でもありません」と言い、お茶代をそっとテーブルの上に置いてその場を去りました。

 この話を聞いて、私は愕然としてしまいました。

 Jさんは真面目な表情で話を続けました。
 「彼のテクニックは、まあ良かったと思うよ。でも、それはマジックじゃない。退屈な、ただのテクニックの披露、腕自慢さ。別に無理に英語を話さなくても良いし、難しいことを見せてもらおうなんて、僕は思っていないよ。ただ楽しませて欲しいと思うんだ。彼が何を感じ、何を思ってマジックを演じているのか。僕はそれを知りたいんだよ。
 世の中に簡単なマジックなんてないけれど、方法が単純なマジックでも演出一つで本当に面白いマジックになるし、その演出だけでその人の賢さは分かるじゃないか。yuki、分かるだろ? 英語が話せることが本当に凄いかい? テクニックが出来ることが本当に凄いかい? でも、相手と意志疎通出来なかったら最低だと思わないかい? 意志疎通できない人とは、僕は友達になんかなれないよ」

 普通、英語を話しながらマジックを演じる機会はあまりないかもしれません。しかも、英語を話すこととマジックを演じることは、演者にとって確実に大きなストレスを与えるでしょう。でも、それは日本語でマジックを演じても同じなんだと思うのです。
 折角、時間をとって自分のマジックを観ていただくのですから、相手に分かるような言葉を選んで、伝えるべきことや伝えたいことを確実に伝えなければならないのです。その上で、観客への配慮がなされないといけません。
 英語でマジックを試演していただくと分かるのですが、演者のストレスを少しでも軽減するために、伝える物事の優先順位が自ずと決まってきます。すると、演技の構成がハッキリと見やすくなるのです。ここで、初めて意志疎通ができるきっかけが生まれるわけです。
 それを無視して口と手が勝手に動いているだけでは、その演技は観客にとって、単なる視覚的、聴覚的な雑音にしかなりません。

 そのことに、この本をお読みになられた方には気づいていただきたい、と思ったのです。英語が話せることなんて実は二の次で、あなたと対峙している相手とマジックを通して意志疎通をすることが一番なんですよ、と。英語はあくまでそのためのツールに過ぎないのですよ、と。あなたが何かを演じたり、観客を楽しませること以前に、観客と意志疎通するこそがマジシャンがすべき最初の仕事なんですよ、と。そうするためには、観客に何を伝えたいのか、自分が分かっていないと意志疎通はできないんですよ、と。

 私は奇術愛好家の方向けというよりは、英語が苦手でマジックに興味のある一般の方のためにこの本を書きましたので、愛好家の方にはゆるい内容に思えるかもしれません。その通りだと思います。基本的なマジックを中心に解説しましたから。
 でも、こうした基本的なマジックも、何を伝えたいのか観客に伝わらなかったら、まったく意味のないものになってしまいます。それに、英語を話しながらマジックをするならば、手に意識が向けられなくても演じられるようなマジックを選んだほうが得策だからです。

(ちなみに、万一間違って買ってしまった愛好家の方のために、その方にも楽しめるようにこの本にはある仕掛けをしてあります。実際、何度か書店に立ち寄って、この本を使って友人、知人にその仕掛けを使ったマジックを演じたこともありました。その仕掛け、マジックショップでも入手可能なんですが、本に組み込んだ方が絶対に面白いはずです。もちろん、このアイデアの使用許可も頂いています。この仕掛けは、親友Richardにも褒められました)

 実際に、奇術愛好家ではない読者の方に「英語が苦手という著者の、その文章に励まされ、そして実際にマジックを演じてみたら、海外の方と話すきっかけ作りにもなりました。苦手な英語にちょっと慣れたかもしれません」と言っていただいたことがありました。
 読者の方からの意見で、これ以上に嬉しいことはありませんでした。筆者冥利に尽きるというものです。それこそが、私の狙いだったのですから。
 
 この本は「一体誰のための本なのか分からない」という奇術愛好家の方からの意見もあったようです。私はこう答えるだけです。

This is the story about you./これは君のことを言っているんだ
ー佐野元春「Visitors」

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yuki_the_bookworm  (a.k.a "べたねば")

Author:yuki_the_bookworm (a.k.a "べたねば")
何げない日常の中の、本と料理とマジック。

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