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リアル「夢のクロースアップ劇場」再び (Part 1)

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 とっくの昔に新年を迎え、しかもこのバレンタイン・デーも過ぎちゃった時期に今年初のブログをアップするという暴挙に出てしまいました。大変ご無沙汰しております、Yuki_the_bookworm(a.k.a.べたねば)です。今年もよろしくお願い申し上げます。

 アメリカ旅行記、Day3以降もお待たせして申し訳ありません。もうちょっと続きますのでお待ちくださいね!



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Amazonで購入可能です!

 個人的には何もしていなかった訳では無くてですね。アメリカの歴史家(特に、カードマジックの祖J.N.ホフジンサーと伝説のギャンブラー、S.W.アードネスの研究で知られています)であり、プロマジシャンであるリチャード・ハッチさんの依頼を受けて、絵本の製作をお手伝いしたりしていました。

 スペインの名人Juan Tamarizさんの名著『Sonata』の翻訳も佳境に入り、そして、奇術専門誌『Genii』の編集長リチャード・カウフマン氏が始めた新プロジェクト、皆様お馴染みの株式会社テンヨーの歴史と今まで販売された商品を網羅した著作の制作協力と一部執筆をすることに。300頁越えの大判、全カラー頁という豪華版になる予定です。英語と日本語両併記となるので、日本中のテンヨーファンの皆さんには大変嬉しいニュースなのではないかな?と思っています。



 さて、話を戻しまして。

 事の初めは昨年の暮れ。大阪の名クリエイター、赤松洋一先生から「2013年2月10日に以前開催したクロースアップショウの第二弾“Our Last Again”を開催します」とメールを戴きました。

 以前このエントリーを書きましたが、本当に素晴らしかったマジックの会でした。これは見逃せるわけがありません。脊髄反射的に「はい、是非参加させて下さい! 万象繰り合わせて大阪へ馳せ参じます」と返信を打ち返しました。

 すると、懇意にさせていただいている奇術愛好家で治療家の畏友、鍛治中政男さんから「Yukiさん、大阪の会に行かれますよね?? よろしければ一緒に遊びませんか??」とメールを戴き、これまた脊髄反射的に「是非遊んでやって下さい! なんなら同じホテルを予約して遅くまで語り合いませんか??」と返信を打ち返しました。

 で、メールを打ち終わってから、妻のCathyに「後生だから大阪に行かせてください」と土下座をして、なんとか大阪へ出向くことが許可されました!

 大阪のことは良く分からないので、鍛治中さんに行った方が良い場所とかを伺って、さぁ出発!



 …の前に、やっぱり粉モンは食べておきたいよね、そうだよね! ということで、まずは難波へ!! 
 わぉ、買いたかったおはぎの玉製家さんは14時からかーっ!!うー、あのシンプルなおはぎを食べたかったのにー!!

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まずはこれやね。551蓬莱本店

 551の蓬莱の豚まん、無性に食べたくなります。新幹線で新大阪から乗ってきた人が豚まん食べ始めるとその車両いっぱいに豚まん臭が充満するのは何とかならないんですかね?

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じゃーん!

 ちょっと並んだらすぐにゲット。蒸したてのホヤホヤです。辛子がないとダメですねぇ。

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 この日は大変寒い日で、ホカホカの豚まんは大変おいしゅうございました!



 次行ってみよう!!

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せーの、どん!

 たこ焼き道楽わなかのたこせん(ねぎチーズ)。たこ焼きが3つ挟まって、ねぎとチーズが合うのよね。このCPの高さは異常。美味しゅうございました!



 次行ってみよう!

 …えー!写真撮り忘れてる…orz 福太郎さんのネギ焼き、美味しゅうございました!



 この後大盛りごはんで有名な「ちょいめしあさチャン」へ行ったのですが、もう満員だったため仕方なく退散。

 そして、鍛治中さんからお話を伺っていたこちらへ。マジックショップのひげめがねさんです。
 場所は、NGK(なんばグランド花月)から道具屋筋に入って、1本目の十字路を右に曲がって最初のT字路の手前の左側。オープン中は入口に看板が立っているのですぐ分かるはず。

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オーナーの潮見さん!

 以前からお店の話はいろいろ伺っていて、一度お邪魔させて頂きたかったのです。ちょっと早く到着したのですが、すぐにお店を開けて頂いて大変恐縮してしまいました。(それもこれも、鍛治中さんが事前にすべて準備をされていたのが分かったのが名古屋へ帰る間際のことでした)

 部屋を囲むように置いてある棚には細かな商品やレクチャーDVD、ちょっとしたアクセサリーなどがセンス良くごちゃっ!と並べられています。丁度、奈良のオフィス西川さんみたいな感じですね。おもちゃ箱をひっくり返したようなお店です。
 西川さんもそうですし、潮見さんもそうですが、センスの良さはアパレル系の会社をされていたからなんでしょうね。(西川さんは物凄くオシャレな方で洋服やアクセサリーに大変精通されています!)。
 もともとは潮見さんのコレクションを処分するためにこのお店を始められたそうで、確かに珍しい道具もいろいろ散見されます。

 コーヒーを頂きながら世間話をいろいろさせて頂きました。お話が上手いなぁと思っていたら、潮見さんは大阪産業大の落語研究会の出身で、先輩には桂文珍師匠、一つ下の友人に関西が誇るレポーターのタージンさん(私はお笑いスター誕生でお馴染みなんですが)がいらっしゃる環境にいらっしゃったそうで、なるほどなぁ、と納得。
 お店自体が凄くアットホームなのは、オーナーの潮見さんのお人柄からきてるんだなぁ。



 こちらのお店が一番有名になったのは、この作品でしょう。

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ウルトラキネス・インセクト!



 この長いボルトにはめたナットが独りでに回転して動き始め、最後は外れてしまうという現象です。
 まぁ、最初にこの現象を見た時の驚きと、仕掛けを知った時の驚きが尋常じゃなかったです。仕掛けを見た時、笑うしかなかったですから!

 原理的には古い科学おもちゃですし、商品としても20年程前に3つの色つきボルトとナットをカメラのフィルムケースに入れて、指定された色のボルトからナットを外す作品がありましたが、これは完全に潮見さんの作品と言って良いのではないでしょうか? これらの原案や商品、方法論からは、完全に離れていますから。
 ほんの1年半であれだけ売れたなら、完全なヒット商品でしょう。

 この作品の裏話をじっくり伺い、やっぱり何にしても歴史があるんだなぁ、と感心しました。

 そして「あぁ、Yukiさん。この商品がちょうど届いてますよ!」と言われて、つい買ってしまいました。

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コンパクト自販機!

 ちょっと前にこの方の動画チャンネルが非常に面白いと伺って、その中でも最新の作品がこれでした。



 どうです、面白くないですか?? サロンものとしても非常に優良な作品で、これで2500円ならばまったく文句はありません。
 潮見さんが「彼は本当にナイスガイなんで、彼の作品は本当におススメです!」と熱く力強く仰る理由が良く分かります。

 いろいろお話を伺っていたら、あっという間に次の待ち合わせの時間に。次回は呑みましょう!と潮見さんと熱い約束を交わし、急いで梅田へと移動しました。

・マジックショップひげめがね
大阪府大阪市中央区難波千日前14−25 阪南ビル2階
日曜日・祝日休み 12時頃オープン





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「まだ、ここにない、出会い」

 急いで待ち合わせのホテルグランヴィア大阪へ。
 畏友のTさんと久々の出会いです。全国各地を飛び回る、某社の敏腕コンサルタントさんです。この日に大阪に行きますよ!とお話したら、お茶に行きましょう!ということになり、ラウンジでゆったりいろんな話をしました。

 実際にお逢いするのは1年近くぶりになるので、積もる話がありすぎます。トピックスも政治経済から芸術の話まで、気がつけばあっという間に4時間ちかい時間が経っていました。

 一番面白かったのは、Tさんの大先輩にあたられるSPI(就職などの適性診断)のシステムを作った方の逸話。「0から1を作る」とはこういう事なんだなぁ、と深く納得。そして、メンターの大切さを痛感しました。



 Tさんと話をしていると、鍛治中さんから「仕事終わりました」との連絡。梅田の駅で鍛治中さんと待ち合わせ、この日泊るホテルへ。

 丁度鍛治中さんは大阪へ前日から入られ、鍛治中さんの先生の治療院で勉強されていたのでした。そこでまたいろんな事を学ばれたそうで、本当に嬉しそう。自分もそうですが、大好きな先生と一緒の時間を過ごすっていうのは本当に嬉しいですから! 自分が迷った時の指針を与えてくれる(実際は自分の内面と語り合う時間を作ってくれる)先生の存在は本当に稀有なんだなぁ、と痛感します。

 ほんの少し前にメンターの大切さを話していたので、同じ話をまた鍛治中さんとじっくり。「ほんのちょっとの差に、何十年と言う時間と経験の重みが乗っている」という話がなるほどなぁ、と心に響きました。




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お蕎麦、大変美味しゅうございました!

 ホテルのチェックインを終え、鍛治中さんおススメのお蕎麦屋さんで晩ごはんを頂き(細打ちの茹でたて、最高でした!)、急いで北新地へ!

 で、どこへ行ったかと言うとここ!

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ピエピエ!

 大阪のプロマジシャン、ムッシュピエールさんが去年の10月にオープンされたマジックバー「Bar Magic Time」です。22時の回に行ったのですが、その前の回のお客様がお店からゾロゾロ出ていらっしゃいます。
 この日の北新地、連休初日ということもあったかもしれませんが、非常に閑散として「これが北新地なのっ!?」と驚いていました。景気の問題もあるのかもしれません。
 そんな中でもこんなに大勢のお客様を集客されているのは凄いなぁ。



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カウンターの棚にはいろんなマジックの道具がぎっしり!

 カウンターが7席、その後ろにスツールが5席、大変シンプルなお店です。もしかすると、こう言うシンプルな感じがマジックを見るときに一番かもしれません。セットが賑やか過ぎると、どうしても演者が目立たなくなってしまいますから。

 この回のお客様は全部で10名。ショウが始まるまで、ピエールさんと奥様のコピーヌさんが皆さんの飲み物を作られます。その感じがね、凄く良いんですよ。ラブラブな感じがビンビン伝わるんですよね。
 それ以上にピエールさんとコピーヌさんのホスピタリティが素晴らしく、私も鍛治中さんもそれだけで満足。

 22時になってショウが開始。45分間のノンストップ。笑いもたっぷりありながら、不思議なマジックが次々に繰り出されます。ピエールさんはコメディアンのように思われがちなのですが、さにあらず。テクニックも抜群で、マジックの現象1つ1つを大変大切に扱っていらっしゃいます。
 あの素敵なコインボックスの手順を見ることが出来ただけで大満足。見事にムッシュピエールさんのシグネチャピースになっていました。

 客席みんなで「とれびあ~ん!」と言っていたら、あっという間に45分が経っていました。気がつけばスパークリングワインをハーフボトルで3本空けていました!



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3人でとれびあ~ん!!

 この回が終わって、少しピエールさんとコピーヌさんとお話しさせて頂きました。オープン以来お客様が0だった日がないとのこと。お客様はみんな「ムッシュピエール」という人に逢いに来ているんだなぁと思います。
 確かにこの45分を体験したら、次は誰かを連れてきたいと思うでしょう。しかも、飲み放題でも5000円ならバーゲンプライスだと思います。

 演じられるマジックも定期的に入れ替えをされているそうなので、いつお邪魔してもマジックを新鮮な気持ちで見ることが出来るでしょうね。

 ピエールさんのマジックに対するお話しなども伺えて、非常に楽しい時間を過ごすことができました。正直私はマジックバーが非常に苦手で、名古屋のエルム以外でマジックバーに出向くのは良く考えたら6年ぶりでした。

 次は妻のCathyを連れて参上します!とお話しして、鍛治中さんとお店を後にしました。大阪へ出向かれた際は、大変おススメします!

Bar Magic Time
大阪市北区堂島1-2-7 パーマリィイン堂島ビル4階
電話:06-6343-2767(事前予約が吉です)
18:30~(ショウは一日4回)  日曜・祝日休み
予約はこちらのフォームからどうぞ!




 ご機嫌な時間を過ごしてからは、ホテルに戻って鍛治中さんとみっちりマジックとマジック以外の話を深い時間までしておりました。なんでしょうね、いつもメールやSkypeで連絡を取り合っていても、直に話す時間には敵いませんね。

 いよいよ、翌日はIBM大阪リングのクロースアップショウです!

(→リアル「夢のクロースアップ劇場」再び その2へ続く) 
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Genii 75th Birthday Bash Day 2 - 特別編:ある秘密の断片 (その2)

(→Day 2 - 特別編:ある秘密の断片(その1)からの続きです)

 歴史ある奇術専門誌『Genii』の創刊75周年を記念して開催されたGenii 75th Birthday Bashというマジックの大会に参加するためにフロリダはオーランドに滞在しておりました。

 ドキドキしながら、今回この大会のゲストだったクロースアップ・マジシャンの前田知洋さんのショウとレクチャーのお手伝いをさせていただきました。

 ちょっとしたハプニングがありながらも見事に対処され、前田さんのショウは大成功!会場からは大きな拍手が巻き起こりました。



 ショウがはねて、すぐに前田さんの元へ走りました。

「前田さん、お世辞じゃなくて本当に凄かったです。同じ日本人としてこれ程嬉しいことはありません」
「今回のショウが上手く行ったのも、Yukiさんのおかげです。ありがとうございます」
「何も手伝っていないですよ! 一つ質問があるんですが、どうして打ち合わせを最小限にされたんですか?」
「あぁ、カメラワークのことですね。こういうことってライブではよくあるんです」
「へ!?」
「多分、Yukiさんはどうしてあんなに打ち合わせが簡単だったか不思議だったんですよね?」
「…当たりです」
「どこのスタッフさんも頑張ってくださるのですが、人間って完璧じゃないじゃないですか」
「確かに」
「なので、申し訳ないですが、最初からすべてを期待していないんです」
「なるほど…」
「いろいろな現場がありますから、すべてが完璧な状態ではないですよ。まず、自分たちが完璧な状態にしておく。その上で、現場で期待以上の仕事をしていただいたら本当に感謝ですし、ダメでもともとですから何にも気になりません。あとは自分には経験がありますから、なんとかなるものですよ」

 前田さんは常に先を見越した行動をされます。どういうことが自分に求められて、それ以上の成果を出すにはどうすれば良いか、そこを目指して一歩先の行動をされます。しかし、それだけですべての問題を解決できるわけではありません。 
 経験。スタイルはマネできるかもしれませんが、経験と知識だけは誰にも盗むことは出来ないのです。自分にとっては凄く深く、そして重い言葉でした。

「自分の演技を最高な状態にするには、普段通りにしているのが一番ですよね? 私は自分でどこででもその環境を作るようにしているだけです。自宅でリラックスしているような、ね。もしかすると、これは大切な秘密の1つかもしれないですけどね!」

 やっと、前田さんの顔から笑みがこぼれました。

「Yukiさん、ちょっとこの道具を持っていてもらえますか?」
「もちろん!」

 私に道具を渡すと、すぐにステージ裏へ。そこに居たすべてのステージクルーに感謝とねぎらいの言葉をかけていらっしゃっいました。打ち合わせ通りに仕事が出来なかったあのカメラマンさんにも、です。

「打ち合わせ通りでは無かったかもしれませんが、彼も頑張って仕事をしようとしてくれたんですから!」

 そこからは、様々な出演者や大会の参加者が前田さんの元に集まり、口々に前田さんに声をかけ、サインや写真撮影をお願いしていました。しばらくの間、その人の輪は消えませんでした。



 ショウの評判が瞬く間に広がり、前田さんが登場されるレクチャーへの期待も徐々に高まっていきました。それはそのはず。こんなに凄いショウを観たならば、どんなマジックを紹介してくれるのか?誰もが興味を持つはずです。

 この日、ショウの片づけをしながらレクチャーの話を前田さんとしていました。



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これがレクチャーノート!

「前田さん、ショウはお疲れ様でした! レクチャーの手伝いは任せてください! 販売するノートとかはありますか?」
「ありがとうございます。えぇ、Richardに言われて一応持って来たんですが、Yukiさんにお見せするのは恥ずかしいなぁ」

と言いながら、大きな紙包みをスーツケースから取り出されました。

「あ、これ凄い! もう売り切れになった前田さん特集号のGenii誌じゃないですか!」
「はい、そうなんですけどね。この号に掲載されているマジックの中からお気に入りを抜き出しました」
「これ、編集とか大変だったんじゃないですか!?」
「すべて、私のマネージャーがやってくれましたから」
「で、これ、いくらで販売予定ですか?」
「そうなんですよ、そこが問題なんです。Yukiさんならいくらで買います?」
「15ドルですかね? だって、これもう売り切れの号ですし」
「え!? そんなに戴いて良いんですか?? マネージャーと話した時は『この号はiGenii(注:Genii誌を購読すると、75年分のバックナンバーをインターネット上で読むことが出来ます。そのシステムのこと)のアーカイヴスでも見ることが出来る訳だし、こんな急ごしらえでカラーコピーのノート、ノートなんて言えないから1ドルで充分!』ということになりました。5ドル以上で頒布してしまったなんてことになったら、日本に帰った瞬間にマネージャーから怒られてしまいます」
「え!? それはいくらなんでも安すぎます! お釣りの問題もありますからお釣りが出ないように5ドルにしましょう、絶対です!!」

 こうして前田さんが日本から持ってこられた48部のレクチャーノートは、1冊5ドルで販売することになりました。



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さあ、Day 3のレクチャーの前になりました。こうやって、会場の大きなスクリーンには“Coming up Next...”と次のイベントの案内が流されます。これ、凄くカッコ良かったです。

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 こうして、Richardと打ち合わせたり、カメラのアングルや位置を自ら調整されたり。あと、マイクの音声を注意深く調整されていました。

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 かといって、凄い緊張感が張り詰めるといった風でもなく、途中で共通の友人、芸術家で美術館の司書でもあるナイスガイBrad J. Aldridgeさんと笑いあったり!

 私はレクチャーブースでレクチャーノート販売をする準備。早く店開きしてしまうと、レクチャーが終わった後までノートが残らないので、準備はこっそり。



 会場には750名に近い参加者が集まっていました。もう、参加者の期待は最高潮です。今か、今か!という期待が舞台の横にも伝わってきます。気の早い参加者が何人もブースに立ち寄り、「ねぇ、もちろんTomoはレクチャーノートを持ってきているんだよね?」と私に質問をしてきました。

 レクチャーの内容は、紙に書いたスプーンを曲げる「The 2D Spoon」、仕掛けのない折りたたまれた紙袋の中から、これまた仕掛けのない大きな2リットルのコーラのボトルを取り出す「Large from little」、靴下を使った大変面白い予言のマジック「Ten Socks in the bag」(このマジック、海外のマジシャンの多くがレパートリーにされているようで、前田さんが何足もの靴下が入った透明のバッグを取り出した瞬間、客席から大きな拍手が起こりました。この反応には前田さんもビックリ!)、そしてショウで演じられた「Pieces of Future」と「Pack in the box」を詳細に流暢な英語で解説されていきました。

 その風変わりな現象に観客は驚き、そして、その賢い解決法に客席からはため息が漏れ、惜しみない拍手が沸き起こりました。
 参加者の一人は後で私にこう話しました。「Tomoのマジック、長い間大好きで自分なりに演じていたけれど、やはり本人の演技を見ないとその考え方の本質が分からないね。今日は本当にいい勉強になったよ」

 一番最初に演技と解説を行った「Large from Little」では、解説の途中で「皆さん、私の聞きとりづらい英語で申し訳ありません。私が言っていること、ご理解いただいていますか?」と確認をされました。客席からは「まったく問題ないよ!」という掛け声と共に大きな拍手が。あぁ、皆さんちゃんと集中してレクチャーを受けているんだなぁと嬉しくなりました。
 そして、広げた空っぽの紙袋の中からアメリカ製のコーラのボトルを取り出し、袋の中にバスン!と落として、そのまま目の前に居た観客に手渡したとき、私の耳に聞こえるくらいの「オゥ…」という驚きの声が客席から漏れました。
 やはり見慣れたボトルが空っぽの紙袋の中から突然現れて、紙袋とボトルに仕掛けがないことが観客に大きなインパクトを与えていたのでした。

 前田さんのレクチャーで興味深かった点は、これほど大勢の参加者を前にすると普通は「押せ押せ」の一方的な講義になってしまいがちなのですが、観客とコミュニケーションを取りながら、インタラクティブにレクチャーが進んでいくのです。途中「日本人は『つまらないもの(Useless things)』を差し上げる文化があります!」というフレーズを繰り返しジョークとして使われ、参加者の皆さんはこの『ランニング・ギャグ』を凄く楽しまれていました。



 私もレクチャーを横から楽しんでいたら、レクチャーに参加されていたスタッフのお1人、歴史家のDustin Stinettさんがレクチャーブースへとこっそり近づいていらっしゃいました。

「Dustinさん、レクチャー面白い??」
「もう、最高だね!…Yuki、ちょっと良いかい?」
「もちろん!どうしました??」
「…レクチャーノートを見せてくれないか?」
「おやすいご用。どうぞどうぞ!」

 Dustinさんにノートを1冊渡すと、彼はこのノートを見ながらこう言いました。

「Yuki、いまノートを1冊買わせてもらっても良いかい?」
「ナイショだけど、もちろん良いですよ!」
「ありがとう!…ちなみに、これ1冊いくらだい?」
「いくらだと思う?」
「うーん…やっぱり15ドルじゃないの?」
「なんと5ドル」
「えっ、何だって!? 正気の沙汰じゃないぞ、それ! この号、もう売り切れで手に入らないんだぞ!」
「だって、5ドル以上で販売したら、前田さんのマネージャーさんに前田さんが怒られちゃうからね。最初は1ドルで充分って言ってらっしゃったもん」
「Yuki、分かった……3冊くれ!」

 この時、ちょっと頭の中に閃いたことがあって、わざと1冊取り置きをしました。これが後で功を奏することになります。


 
 レクチャーは大喝采のなか終了しました。その瞬間、参加者の波が私のいるブースへ向かって押し寄せました。次々5ドル札を私に差し出してきます。

「押さないで! まずはお釣りのない方から販売させて頂きます!!」

 お釣りが出来た所から、高額紙幣しか持っていないお客さまにもノートを販売します。次から次へひっきりなしに参加者がやってきて収拾がつきません。販売開始から5分も経たないうちにノートは完売してしまいました。

 販売終了してからも人がひっきりなしにやってきます。
「もう販売終了なんて、一体どういうことなのっ!!」参加者の女性に怒られながらも、
「日本から持ってこれるだけの分量でしたし、Genii誌の読者の皆さんならiGeniiのアーカイヴスに行けば、今日Tomoさんがレクチャーした内容のほとんどを知ることができますよ! あとRichardが出版した『Five Times Time : JAPAN』(Kaufman and Greenberg刊、1992年)という本の中に風船を使ったカード当ては掲載されていますから! ただ、風船の復活現象だけはここで初めて解説されましたから、これだけ覚えて帰ってください!」
「え、何よそれ!? iGeniiなんて聞いたことがないわっ!!」
「Geniiのウェブサイトに飛んで下さい。そこに詳しく解説されていますからねー!」

と叫びながら、押し寄せてくる参加者の皆さんからの質問を捌いていきました。どの作品がGenii誌のどの号に載っているかメモに書いてあげたり、口頭で教えたり、レクチャーノートが早く無くなってしまったことへのお詫びをしたり。
 結局は30分ほどかかって閉店ガラガラ~。正に戦場でした。



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ずっとサイン会

 ブースを片付け、会場を出ると、会場の外で前田さんはずっとレクチャーの参加者のみなさんにサインをされていました。その皆さんに感謝の言葉と「いかがでしたか?」と気さくに声をかけられ、会話を楽しんでいるようでした。
 解説を聴き逃した方には、ちゃんと目の前で実演したり、レクチャーで教えなかった細かい要点を教えてあげたり、アフターケアもバッチリ。参加された皆さんは大満足のご様子でした。



 前田さんがサインをされているテーブルに、関西から参加されたご婦人がいらっしゃいました。

 このご婦人は前田さんの熱心なファンで「いやぁ、もうね、どうしても前田さんにお逢いしたかったんですわぁ~」とバリバリの大阪弁で熱く語られていたのを覚えていました。
 その様子が凄くチャーミングで、前田さんも印象に残ったよう。大会期間中にこのご婦人を見かけるたびに「楽しんでいらっしゃいますか?」と声をかけ、ご婦人は熱心に前田さんに自分は如何に楽しんでいるか?を語っていらっしゃいました。

 このご婦人はもちろん前田さんのレクチャーに参加され、サインをお願いしながら、如何に前田さんのレクチャーが楽しかったかを語られました。すると、参加者の何人かが前田さんのレクチャーノートを持っていることに気づかれました。

「あ、これは何ですか?」
「これはレクチャーノートですよ。さっきYukiさんが販売されていたんです。レクチャーの最後にご説明しましたよ」
「えっ!? わちゃー、それは知りませんでしたわぁ。私、英語がまったく分からないので、そんなことがあったなんて…」と、凄くガッカリされていました。

「前田さん、前田さん」こっそり前田さんに耳打ちをしました。
「どうしました、Yukiさん」
「万が一のことを思って、ノートを1部取り置きしておいたんです」
「Yukiさん、ナイス!」
…良かった、判断は間違っていなかったようです。

 そのご婦人に「5ドルなのですが、1部取り置いてあったので、よろしければお分けしますよ!」と伝えると、ご婦人は満面の笑みで「ほんまですか??うわぁ、凄く嬉しいわぁ!!」と仰いました。

 実は先ほどレクチャーブースで1部取り置いたのは、このご婦人のことを思い出したからだったのです。確か英語がまったく分からないと仰っていたよな、もしかするとノートの販売とかアナウンスが伝わらないかも…と思ったからでした。



 この大会に参加して一つ非常に不思議だったのは、日本人の参加者でショウやレクチャーの後でその感想を前田さんに声をかけに来られたのは、このご婦人お1人だったことです。

 日本人以外の参加者の皆さんは前田さんに気さくに、しかし、ちゃんと礼を尽くして、いろいろな話をされていました。それに対して前田さんも礼を尽くして大変気さくに答えていらっしゃいました。

 なんだろう、この差は。同じ国からの出演者なのに、凄くよそよそしいなぁ…と思っていました。
 
 私が帰国して前田さんとSkypeをさせて戴いたとき、こんなお話しが出ました。

「Yukiさん、大会が終わったらね、Facebookに突然友達申請があったり、『大会ではお世話になりました』ってメールが届いたりしてるんですよ……それならば、どうして現地で私に声をかけないんでしょうね? そこから新しい関係が生まれるかもしれなかったのに」

 実は、私にも似たようなメールやメッセージが届いていました。
 非常に奇妙な気持ちになりました。

 何故、私が先ほどの関西からのご婦人にレクチャーノートを取り置いたかと言えば、ご婦人が私や前田さんにコミュニケートをされて印象に深く残っていたからです。それならば、と一肌脱ぐ気持ちにもなるってものです。それが日本では「面倒くさいから」と見過ごされ、蔑まれ、本当に見かけなくなってしまった義理人情なんだと思います。

 今回のこの大会では、ありがたいことに海外の新しい友人ができました。古い畏友たちとも再び繋がりができたりもしました。
 もちろん先生Jamyのおかげでもありますが、勇気を出して“Hello!”と私から声をかけ、「礼を尽くしながら」自分の事を相手に伝えた所から新しい友情が生まれました。これこそがコミュニケーションなのではないか?と私は思います。義理人情の大切さは、世界共通だと思います。

 Day 4でこの思いが確信に変わりました。



 単に仕事を完了させるだけでなく、その仕事を完璧にこなし、さらに、国内外のクライアントや参加者の期待以上の大きな成果を出すための、本物のプロの秘密を知ってしまいました。社会的に広く認知され、本当に凄い実績を積み重ねた、第一線で活躍するプロの、です。しかも、今回チラリと見せて戴いた秘密はほんの氷山の一角に過ぎないことも。

 ピン!と背筋が伸びる思いでした。

 前田さんと一緒の時間を過ごして、名画「バベットの晩餐会」(ガブリエル・アクセル監督、1987年)に登場する女性バベットを思い出しました。
 料理という芸術で人をもてなし、尽くし、幸せをもたらす。その技術を一切村人に語らず、ただ、与えられた環境の中でベストを尽くし、淡々と最高の料理を提供する。
 そのバベットに関心を向けないふりをし続ける固定概念に縛られた村人たちも、最高の料理を楽しむうちに笑顔に溢れ、幸せに包まれていく。
 バベットの凛とした佇まい、その立ち姿の美しいことと言ったら。是非、この映画をご覧いただきたいです。

 前田さんは日本においては西洋的なセンスを取り上げられがちなのですが、実は非常に日本的な侍なのです。その志は、まさに侍のそれとまったく変わらない。こうしたすべての事象に対する“Attitude”が、前田さんを唯一無二の存在にしているんだと。  



 私がどれだけ言葉を尽くしても、説得力がないかもしれません。では、海外の参加者と大会サイドの皆さんがどう感じられたか? 何故、数多い日本のマジシャンの中から前田さんが選ばれ、そしてここまで愛されたのか? これがすべてだと思います。 最後にお読みください。

"Speaking of Tomo, it was a thrill to see him. I met him about twelve years ago when I lived in Japan and he was so kind and gracious then. It was fantastic to find a renewed friendship with him. We talked at length about his show and lecture and, as always with my Japanese friends, I felt warmly welcomed by his friends, including the lovely Yumi. Tomo Maeda, to me, is one of the coolest guys on the planet. He is smart, gentle in his demeanor but strong in his opinions and he has a slyly disarming sense of humor. Check out Tomo via the Genii archives."
-Doug Thornton

"-One of my highlights:Tomo Maedo's restored balloon"
-Nathan Coe Marsh

"The Asian new breed (Yumi, Tomo Maedo, Lukas)."
-Jonathan Pendragon
(注:あのペンドラゴンズのジョナサンさんです)

"Tomo Maeda was mystifying with a lighter side. Performs a traditional piece, makes a ring disappear...and he exclaims that "A good Japanese story always ends with a tear" He was so forthcoming to all convention goers, a wonderful man."
-Magick Baley

"Tomo MAEDA is the one of most talked-about magician."
-Richard Kaufman/ chief editor of "the GENII MAGAZINE

"He was a real highlight of the GENII Bash."
-Matthew Field/ the former chief editor of the Magic Circular"/Author

(Day 3に続く)

Genii 75th Birthday Bash Day 2 - 特別編:ある秘密の断片(その1) 

(→Day 2 Part3からの続きです)

 歴史ある奇術専門誌『Genii』の創刊75周年を記念して開催されたGenii 75th Birthday Bashというマジックの大会に参加するためにフロリダはオーランドに滞在しておりました。

 ドキドキしながら、今回この大会のゲストだったクロースアップ・マジシャンの前田知洋さんのショウとレクチャーのお手伝いをさせていただきました。

 今回と次回は特別編。普段はあまり見ることが出来ないショウとレクチャーの裏側について、こっそりお伝えしたいと思います。



 話しは大会Day 2の朝に戻ります。

 今朝までの3日間をオーランドで前田さんと過ごしていて感じたのは、すごくのんびり、ゆったり過ごされているなぁ、ということでした。

 朝はゆっくり歯磨きをして、ゆったりと朝食をとって、コーヒーを持って外に出てお日さまにあたりながら私相手にいろいろなトピックスの会話をしてお互い笑いあったり、ちょっとだけお散歩をしたり。本当に悠々自適、といった感じ。

 そしてこの日の朝、ついにずっと気になっていたことを前田さんに伺いました。

「前田さん、いつも緊張されないんですか??」
「しない訳ないじゃないですか。それに日本からわざわざ高い航空運賃を払って僕を呼んでもらったので、他の出演者の皆さんよりも良い仕事をしないといけないと思っているんです…」
「…確かに」
「ということは、自分自身の準備を万全にしないといけない。でも、人前に立つというこ とは自然にアドレナリンが分泌されて、興奮と緊張状態になるのは自然なことなんですよね」
「ということは、人前に立つときに平常心ではいられないってことなんですか??」
「その通り! つまり、ストレスや緊張から抜け出すには、興奮と緊張を呼ぶアドレナリンの分泌をなくせば良いんです」
「でも、そんな事って可能なんですか??」
「出来ますよ。普段よりゆっくり行動するんです。Yukiさん、結構今緊張してるでしょう? 大丈夫、気にしないでくださいね。今日は特に、私と一緒にいつもよりゆっくり過ごしてみて下さい。それと、緊張は伝わりますからね!」

 …あ、見抜かれてる! そうだ、私の緊張を前田さんに伝えてしまう訳にはいきません。でも、このとき気づいたのでした。
 確かに前田さんとご一緒していると自然にゆっくり過ごすことになって、凄くリラックス出来るんですね。この後、私も極力ゆっくり過ごすことで、段々不安と緊張から「ショウが楽しみ!」という風に気持ちが自然に変わっていきました。
 


 前田さんは凄く余裕を持って準備をされます。いつから準備をされていたか?というと、日本を出発した瞬間からすべての準備を開始されていたのです!

 まず、時差を調整するためにわざと機内食を食べなかったり、周囲が明るい状況を作らないようにしたり。私のように到着時間を調べて、そこから逆算して一晩中起きていて飛行機の中で寝る(!)なんていう乱暴な調整法ではありません。
 そして、毎朝のお散歩は日の光を浴びるため。身体にきちんと「朝だよ!」と教え込むためだったのです。

 Day -2でフードコートの食事をされたのも、現地の食べ物を食べてオーランドの空気に馴染むため。

 そして、Day -1。

 大会の雰囲気と英語に慣れるために、わざわざ私と一緒におみやげ鞄におみやげを詰めていたのです。そうしたら、大会のスタッフの皆さんの顔と名前を自然と覚えることができて、なおかつ自然に皆さんとコミュニケーションをとることができます。そして、徐々に大会内部の皆さんと「仲間」になっていらっしゃいました。

 さらに、大会期間中は前田さんに声をかけてくる参加者の皆さんと大変フレンドリーに会話をして、サインや写真撮影などに応じて、大会の参加者の皆さんとコミュニケーションをとっていました。以前のエントリーでも書かせて頂いたのですが、前田さんと直に逢った方は確実に前田さんの虜になってしまいます。それは、海外でもまったく同じでした。

 こうして大会スタッフの皆さんの様子や大会参加者の皆さんの様子を身体で感じとりながら、ご自分から率先して大会の場に馴染むようにされていたのが非常に印象的だったのです。多分、この大会でのご自分の立ち位置を確認されていらっしゃったのかもしれません。
 しかも、こういう事を「自然に」行っていたのです。計算して出来るものではありませんし、そうだったとしたら、逢った人たちはすぐにそう気づくでしょう。

 場の空気に馴染むといえば、ショウやレクチャーで使う小道具の一部を現地調達されたことも見逃せません。道具を現地調達することで観ている参加者の皆さんがその道具は普通で仕掛けがないことも分かりますし、親近感も湧きます。



 そして、Day 1の夕方。

「Yukiさん、今日リハーサルをしたいので付き合って頂けませんか?」
「もちろんですとも!」
「Yukiさんはいつも褒めすぎるので、普通に反応してくださいね。そして、率直な意見を聞かせて下さい」
「了解です!」

 なんと、前田さんの演技を私1人で拝見しました。何と言う贅沢な時間なんでしょう!

 私の反応を見ながら、前田さんは演技のタイミングと演技のセリフを絶妙に微調整します。その感覚の繊細さときたら…。リハーサルの秘密をすべて見せて戴きました。これらの秘密は、私がお墓まで持っていきます。

 言いにくい単語や調整したセリフは、この時から折に触れて前田さんは鼻歌を歌うみたいに呟くようになります。あぁ、こうして言葉に慣れていかれるんだなぁ…。

 前田さんは私にいくつかの質問をされ、私もそれらの質問に真剣に向き合いました。すべては大会の参加者の皆さんが楽しんで頂けるように、という一点に集中されていました。

 そして、すべての道具はある程度準備してあり、この日に確認して完璧にセット完了。これも、すべて心に余裕を持つためだそう。



 Day 2のランチが終わった後に時間を進めましょう。

 クロースアップ・ショウのリハーサルが始まる13時が近づきました。前田さんの着替えも終わり、道具を持って会場へ。打ち合わせが始まります。

 その前にされていたGuy Hollingworthさん(イギリスの法律家でプロマジシャン。大変洗練されたカードマジックを演じることで有名です)のレクチャーの終演時間が延びてしまい、リハーサル開始が実際には30分近く押してスタート。

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 ステージ監督さんがやってきて、説明を始めます。「やあ、皆さん。俺はSteven。時間が無いから手短に。皆さんの素晴らしい演技を観客にベストの状態で伝えるように俺たちもベストを尽くすよ。皆さんの要望を聞いていくので、何でも言ってくれ。出来る限り要望に沿えるようにするぜ。では、最初にカメラ位置、および照明と音響の説明を…」

 出演者の皆さんが、1つ1つ要望を伝えます。しかし、前田さんの要望は本当に最小限。

「え!? 前田さん、それだけで良いんですか?」
「えぇ、大丈夫。これだけ伝えれば何の問題もないはずです」

 もっと要望があるのかなぁ?と思っていたので非常に不思議だったのですが、その理由は後で分かります。

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リハーサルのピン!と張った空気

 前田さんは舞台のスタッフさんたちに要望を伝えると言うよりも、舞台中を歩かれて、舞台の感じやカメラ位置、会場に映される大きなスクリーンにどのようにテーブルや小道具が映されるか?ということに注目されていたように思いました。

 そして、出演者の皆さんがそれぞれ準備と打ち合わせを完了させて、時間通りクロースアップ・ショウが開幕しました。



 さあ、Paul Wilsonさんのショウが終わって、いよいよ前田さんの登場です。

 会場を見渡していたら、あることに気づきました。そっと、大会のスタッフである皆さんが場内に入ってこられたのです。本来ならいろいろな仕事があるはずなのに、その手を止めて前田さんのショウを見に来られたのです。もうマジックのことを本当に良く知っている皆さんが、わざわざ来られた訳です。
 
 司会のJon Armstrongさんの紹介が始まりました。これが大変洒落たものでした。

皆さん、次の出演者をご紹介しましょう。もちろん、大変素晴らしいマジックの考案者であることを皆さんはご存知でしょう。しかし、彼は母国においてTVスターであるだけではなく、9本のスペシャル番組に主演し、プレイヴェートなパーティーでは多くの著名人を楽しませ、先週は皇后陛下(Her majesty the Empress)にもマジックをお見せしています。そう、つまり今日は私たちも同じマジックを観ることになります! ご紹介しましょう、Tomo Maeda!


 この一瞬だけロイヤル・ファミリーの仲間入りをした参加者たちからは、笑いと万雷の拍手!!

 これを聞いた瞬間に「あぁ、これだ。このためだったんだ」と分かりました。会場全体の空気が、自然に前田さんを温かく迎える空気になっていたのです。そこからは怒涛の展開でした。



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 「皆さんこんにちは、クロースアップ・マジシャンのTomo Maedaです。今日はお招き戴き、大変光栄に思っております…」非常に流暢な英語による挨拶でショウはスタートしました。

 演目は、愛好家の方にはお馴染の風船を使った不思議なカード当て“Pieces of Future(レクチャーノートでは“...and now”という作品名になっています)”、面白いお話しに載せて進行する指輪を使ったマジック"Origami Duck"、そして、3名の観客が自由に選んだカードが空っぽのカードケースに見えない飛行をし、最後にあり得ないようなクライマックスが待ち受ける"Pack in the Box"の3作品。
 すべて、前田さんのシグネチャ・ピース(代表作)です。

 マジックを英語と日本語で演じられた経験がある方には分かって頂けると思うのですが、英語と日本語ではマジックを演じる時のタイミングがどうしても微妙にずれてしまいます。これが演者にとっても、観客にとっても、違和感に繋がります。これはお互いにとって良い事ではありません。しかし、前田さんは完璧にそれを調整されているので、違和感がまったくありませんでした。
 そしてギャグのタイミングも完璧で、「ここで笑いが来て欲しい!」という部分で客席からはドッ!と笑いが巻き起こります。

 最初に演じられた風船を使ったカード当て“Pieces of Future”では、演技中に膨らませた風船を割ってしまいます。未発表になっていますが、最近の演技ではこの割れた風船を元通り復活させる現象が入っています。これが凄かった。

 前日に私が拝見したリハーサルではこの部分「あぁ、これだと私がリラックスできません。なので…」と言いながら割れた風船を元通りに復活させ、風船を膨らませて、吹き口を自分に向けて風船の中の風を浴びてリラックスされておしまい、という流れでした。
 
 そうしたら、前田さんは突然このように変更されました。

 「昨日の夜、Peter Samelsonさんの素晴らしい演技を皆さんご覧になられましたか? あの“ジプシー・スレッド”(千切った糸が元通り復活するマジック)を拝見したら、私も演じてみたくなりました! 良くご覧ください!」と、まるでいたずらっ子がちょっと悪さをするかのようにおどけた感じで割れた風船の破片を集めて、見事に復活されたのです!

 これには会場の皆さんも、Peterさんもビックリ!! 原案を知っている方でもこの風船の復活はご覧になった事がないために非常に不思議ですし、復活を知っている方でもその演出の巧みさに感心したのです。
 「あぁ、会場が何を求めているか、もうとっくにご存知だったんだ…」演技がさらに一段階上に上がった瞬間を見てしまいました。

 ショウが終わった後、Peterさんは一目散に前田さんの元に訪れました。

「Tomo、本当にありがとう! 凄く光栄だよ!!」
「私はPeterさんの大ファンですし、あなたが考えられた本当に素晴らしいセリフ『では、このカードは全宇宙でたったのこれ1枚しかない、という事になります』からボクのセリフが生まれたので、大変感謝しています。私の方こそお礼を言いたかったのです」

 Peterさんは感極まった様子でした……こんなこと、なかなか言えません。

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アヒルが折り上がった時、会場からは驚きの声が…

 続いて"Origami Duck"。大会スタッフのお1人、Beckyさんという女性をお手伝いとして、優雅に舞台へといざなって演技が始まりました。その楽しいストーリーに会場の皆さんはニヤニヤ。
 話の途中で、Beckyさんから借りた指輪が突然消えてしまいます。「…えぇ、日本の良い昔話の最後には、涙がつきものなんです」と前田さんが仰った瞬間、客席からは爆笑と拍手が! Beckyさんもこれには苦笑するしかありません。

 このセリフのインパクトは相当強かったみたいで、演技の後で何人かの参加者の方から「Yuki、日本のおとぎ話には本当に涙がつきものなの!?」と質問を受けました。

 もちろん、指輪は不可能な場所から出現するのですが、その終わり方も大変洒落ていて、Beckyさんがこの演技で一番大切な方だとすべての観客に分かるようになっているため、最後にすべての観客はBeckyさんに惜しみない拍手をされました。

 演技の後、Beckyさんはこう語っていらっしゃいました。
「私、本当はマジックって見慣れ過ぎちゃってあんまり好きじゃないんだけど、Tomoのマジックならお手伝いしても良いわって思ったの! 本当に凄かったわ!!」

 そして、最後の3人の観客のカードがカードケースへと飛行するマジック“Pack in the box”。実はここでアクシデントが起こります。

 2人目の観客のカードがカードケースから出てきた時、ある秘密の動作が必要になります。しかし、カメラマンは打ち合わせ通りの撮影をせず、見られては拙い部分をアップにして撮影しています。それは、会場の大きなスクリーンにもその部分がしっかり映っています。客席で「あ、これは拙い!」と私は心の中で叫びました。

 演者のための確認用モニターをちらりと見た前田さんも、それに気づいたようです。拙いと気づいた瞬間、前田さんは手に持った2人目のカードを前にスッと差しだし、指先でこのカードを弾いて「普通のカードですよ」というジェスチャーをしたのです。
 それは大変自然な動作で、カメラマンもそのカードに注目して、カメラを一瞬そのカードに向けました。そして、客席はみな、見られては拙い場所から視線を外したのです。その刹那、前田さんはその秘密の動作を完了させました。もちろん、誰もその事実に気づいていません。

 これが本物のミスディレクションであり、プロフェッショナルの対処法なんだ…これだ、これなんだ。
 私は1人、客席で大切なレッスンを受けました。

 そして、このマジックのクライマックス。手に持っていた1組のカードが一瞬にして3人目の観客のカードへと変化し、手に持っていたはずの1組のカードが空だったはずのカードケースから出てきた瞬間、「…わぉ」という息を呑む声と共に客席からは割れんばかりの拍手が起こりました。



 実は、この前田さんの様子に気が付いた人物がもう一人いました。先生Jamyでした。

 この大会が終わってからワシントン、NYCを訪れた後、先生Jamyが住むサンディエゴへ行ったときのこと。

「Jpa(注:先生Jamyは2人の男の子のパパさんなので、親しい友人は彼をそう呼びます)、今回の大会で心残りってあった?」
「あぁ、一つあったよ」
「なになに??」
「今回、Yukiが折角紹介してくれたのにTomo Maedaと話があまり出来なかったことだね。日本に帰ったら今回は時間がなくて申し訳なかったと、よろしく伝えてくれ。イギリスで開催されたThe Magic Circleの100周年大会に行った時、3名のマジシャンによる、各々45分のワンマンショウがあったんだ。確かTamarizと、あれ、後1人誰だっけ? もちろんこの2人も素晴らしかったんだけども、Tomoのショウは信じられない位素晴らしかった。凄くチャーミングなパーソナリティにオリジナリティ溢れる演目、演技のマナー、すべてが完璧だったんだよ」
「それは凄い! Tomoさんからそんな話聞いたことが無かったよ」
「で、今回のクロースアップ・ショウも凄かったね。Yukiは気づいたか? 最後のカードマジックでカメラが拙い場所を捉えていて、彼は凄くナチュラルにこの状況から脱出しただろう?」
「うん、僕も気づいてた」
「あれな、実は私も似た解決をした人を知ってるんだ。誰だと思う?」
「誰だろう…」
Tony Slydiniだよ(注:1901年~1991年。イタリア出身の天才マジシャン。ミスディレクションの達人として知られ、素晴らしいクロースアップ・マジックを多く考案したことでも知られます)。」

 ある夜、名人Slydiniはニューヨークのナイトクラブに出演していました。彼と親しかったJamyは舞台の最前列に招待され、演技を見ていました。

 Slydiniさんの演技で有名な「紙玉のコメディ」という演目があります。これは舞台上に上げた観客の目の前で丸めた紙ナプキンを見事に消し去るのですが、その舞台にいる観客にとっては大変不思議なのですが、客席にいる観客にはどう消しているかすべて分かるというコミカルな演技です。

 その夜舞台に上げた観客は非常に態度の悪い観客だったようで、彼がどうこの観客を誘導しようが言うことを聞かず、紙玉が消える様子をすべて見破ってしまっていました。目の前に居るJamyに「うん。観客を間違えたようだよ」とボソリと呟いたくらいだったそう。

 そして、最後の瞬間がやってきました。このマジックのクライマックスは、紙ナプキンをたっぷり重ねて作った、子供の頭くらいある大きさの紙玉を消すのです。

 この大きな紙玉を両手の間に持って観客に尋ねました。

「この紙玉が消えると思うかね?」
「今まで見てきたけど、そんな事はあり得ないね」
「そうかい…おや?」

と言うと、右手の人差指で本当にさり気なく、舞台に居る観客の胸ポケットをスッと一なでしました。その瞬間、
この観客は胸ポケットに目を向けたのです!
 この刹那、名人は大きな紙玉を処分して、この観客の目の前でその間にさも何かを持っているかのように両手を合わせました。

「さあ、私の手に息を吹きかけてくれないか?…ほら、紙玉は消えたよ」

 舞台にいた観客は椅子から転げ落ちそうになるほど驚きました。そりゃそうです、今まで目を皿のようにして名人を見ていたのに、目の前でこんなにも大きな紙玉が煙のように消え去ったのですから。場内は凄まじい拍手に包まれました。

 そして、名人はJamyをチラリと見たそうです。「ちゃんと観たかね?」と言わんばかりに。

 Jamyはこんな思い出話を教えてくれ、そして、こう〆ました。
「…正に、あのときのTomoの動作はSlydiniと同じだった。本当に感心した」



 司会のJonさんが再び舞台に登場し「Tomo Maedaでした、皆さま大きな拍手を!」と紹介すると、さらに拍手は大きくなりました。

 こうして怒涛の10分間が終了しました。



 会場中の空気をすべて自分の味方につけ、世界中から集まったマジックを見る目が肥えた800名の観客を前に、第2言語である英語をネイティヴ並みに駆使して「メイド・イン・ジャパン」である前田さん一流のオリジナリティ溢れるマジックを演じ、万雷の拍手喝さいを受ける……

 同じ日本人としてこれほど嬉しいことはありませんでした。

 ここ数年、前田さんが出演するTV番組を見てマジックを始めたという若い世代に多く出会いました。しかし、非常に残念なことに、前田さんの演じるマジックやセリフ、テクニックといったミクロの部分から、前田さんの生活様式や仕事のされ方といったマクロの部分まで、その表層をマネしているだけで、前田さんが何故この現象を選び、特定の技法を使用することを選択したのか?、何故その生活様式を好まれているのか?にまで思いを馳せることが出来ない方が多い印象を受けています。
 前田さんが演じられるマジックの多くはクラシックですから、確かに学べば似た現象を演じることは出来るでしょう。しかし、決して前田さんと同じようにその演目を演じることは出来ませんし、観客から同じくらいのセンセーショナルな反応を引き出すことは出来ませんし、それは不可能です。

 今回の前田さんのショウを見て、この事実を再確認できました。

Day 2 特別編:ある秘密の断片(その2)に続く)

Genii 75th Birthday Bash Day 2 (Part 3)

(→Day 2 Part 2からの続きです)

 歴史と権威ある奇術専門誌『Genii』の創刊75周年を記念して開催されたマジックの大会に参加するためにフロリダはオーランドにおります。Day2の夕方までのスケジュールが無事に終了しました。



 凄かったクロースアップ・ショウとパーラーショウが無事に終了。先生Jamyに誘われていたディナーへ出掛けることに。

 今宵出向いたのは、会場と直結したショッピングモールの中にあるイタリアンレストラン“Buca di Beppo”。先生Jamy曰く「ホテルのレストランはちょっとイマイチだし、19時からのTamarizのレクチャーに遅れる訳にはいかないから、近場のここにしてみたよ」とのこと。

 アメリカでは有名な(日本のファミリー・レストランのような)イタリアンのチェーン店で、店の内装は丁度日本にもある“The Old Spaghetti Factory”に似ています。(え!?今知りましたが、OSFってこんなに店舗が減ってしまったの!?)
 ここはコスト・パフォーマンスがかなり高いレストラン。味も悪くありません。そして量が半端無いことでも有名です。そのため、お店は大変繁盛しておりました。

 この日のディナーは、このような皆さまとご一緒でした。

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左手前から奥へ:John Carney、Roberto Giobbi、先生Jamy
右手前から奥へ:私、有名なマジッククラブの会長さん、Eugene Burger
(敬称略)

 Carneyさんは今日の演技が外的要因による不完全燃焼だったために「あまりにも客席から反応がないからタネが見えてたのかと思ったよ…演技が見えてなきゃ、そりゃ反応しようがないよね…」と、ちょっとガックリ。それを皆さんが慰めておりました。
 
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カラマリ(イカ)のフライが美味しいけど、量が多過ぎ!

 ここで面白かったのは、クリエイティビティー(創造性・独創性)に関するお話でした。丁度、私が主催している読書会の次回テーマがクリエイティビティーに関する話になるので、その時に詳しい内容をお話しすることにしましょう。
 
 イタリアンを食べながらモリモリ会話をしていたら、アッという間にTamarizさんのレクチャー直前に。皆で慌てて会場へと向かいました。



 スペインのマジックの神様、Juan Tamarizさんのショウとレクチャーは爆笑と不思議のオンパレードでした。奇術愛好家の多くは、ある意味マジックのタネをすでに知り過ぎてしまっているために自家中毒を起こしている状態になりがちで、マジックを見て驚くと言う事がほぼありません。
 しかし、Tamarizさんは満員の会場にいたすべてのマジシャンを、たった一組のカードを使うだけでノックアウトしました。あっと言う間の90分強で、マジックを始めた頃の、あの新鮮な驚きと衝撃を思い返させて頂きました。

 どれだけ言葉を尽くしてもTamarizさんのショウを言葉で伝えることは不可能ですのでこれくらいにしますが、舞台に上がった男性客が自分の上着の内ポケットに手を突っ込んで、そこにあるはずのないカードがあることが分かった瞬間の唖然とした表情がすべてを物語っていたと思います。驚きのあまり、この男性客の身体が一瞬硬直してしまったのです!

 この大会でドキュメンタリー監督として有名なカナダのDaniel ZuckerbrotさんがTamarizさんのドキュメンタリーを制作するために取材にいらしていて、いろんな方々にインタビューをしていました。

 私もそのインタビューに参加して「昨日のレクチャーはどうだった?」「Tamarizってどんな人?」と質問をされてこう答えました。

 「レクチャーは本当に信じられなかった(Un-fu*kin'-believable)」「彼はモンスターで、魔法の世界に棲む不思議な生命体で(Magical Creature)、確実に言えるのは今の時代において世界一のマジシャンだと言うこと」

 その後、個人で撮影されたときは「滅多にお目にかかれない、驚きの瞬間(Moment of Astonishment)を誰に対しても―マジックのスノッブから、一般の観客にまで―喰らわすことができる唯一無二のマジシャンだと思います」と答えておきました。

 あとでDanielさんに「Yuki、ありがとう!」と言われたので、どうやら的外れな意見ではなかったようです。



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 その次はMax名人のレクチャー。

 マジシャンの秘密兵器とも言えるあるテクニックについて、1時間じっくり解説をしました。このDVDに詳しく解説されているのですが、しかし、ライブで名人がこのテクニックを使いこなす様子を実際に見るというのはまったく違います。一言、眼福でした。

 この大会で思ったの事の一つが「本物を実際に、そのホームグラウンドで見る」大切さでした。今はすべて疑似体験ができる世の中になりましたが、本物を実際に知る経験には敵いません。表層は理解できるかもしれませんが、その奥深さまでは理解できないでしょう。

 実は、帰国後この事についてビックリした話を知りました。それはDay 3にて。

 一つ感じたのは、この秘密兵器は魚釣りやダンスの心得と同じだな、ということ。パブリックな場ですので、ここまでとしておきます。いくつか心にひっかかっていたことが解決したので、本当に勉強になりました。



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これ、本当に凄かった。

 今日最後のレクチャーはスウェーデンの若き天才、Christian Engblomさん。まぁ、本当に賢いアイデアを沢山もった方で、今回のこの大会で「あぁ、新しいことを学んだなぁ」と思ったのはEngblomさんだけだったと言って良いでしょう(何故私がこう思ったか?は、また後でじっくりと)。

 たった45分の短いレクチャーでしたが、凄く不思議なトライアンフや3人が自由に選んだカードを不可能設定の下で当てる作品など、感心することしきりでした。

 これで、Day 2の日程はすべて終了しました。



 そしてこの夜は、クロースアップ・マジシャンの前田知洋さんとずっと語り合っておりました。そして、いろいろな事を考えていました。それについては、次回からの特別編で語り尽くすことにしましょう。

 次回の更新で、ついに前田さんが満を持して登場します。お楽しみに!!

Day 2 特別編:ある秘密の断片(その1)へ続く) 

Genii 75th Birthday Bash : Day 2 (Part 2)

(→Day 2 Part 1からの続きです)

 歴史と権威ある奇術専門誌『Genii』の創刊75周年を記念して開催されたマジックの大会Genii 75th Birthday Bashに参加するためにフロリダはオーランドにおります。
 大会も2日目、午前中はユリ・ゲラーさんのレクチャーを受けたりしておりましたが、今日の午後開かれるクロースアップ・ショウに出演されるクロースアップ・マジシャンの前田知洋さんのお手伝いをすることになり、朝からドキドキが止まりませんでした…。

 さあ、打ち合わせも終わってクロースアップ・ショウが始まりました。これがまた、本当に凄かった…。



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Jonさんと共に酔ってますので!

 司会は、私が大好きなマジシャンのお1人Jon Armstrongさん。もともとDisney Worldで専属マジシャンとしてプロとしてのキャリアを始められ、コミカルなクロースアップ・マジックで評価が非常に高い方です。

 司会者としての役割も完璧で、程よく会場の空気を暖められ、なおかつ出演者の紹介も大変的確でした。幕間に演じられた4枚のエースを使ったカードマジックも非常に鮮やかでしたし、首を貫通する輪ゴムのマジックも凄く面白く、参加者からも出演者からも評判が非常に高かったです。



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この写真、このショウの直後に撮ったものでした

 トップバッターはRoberto Giobbiさん。邦訳版も出ているカードマジックの教本の名著『ロベルト・ジォビーのカードカレッジ』の著者であり、歴史家であり、凄腕のマジシャンであり、大変な美食家でもあります!
 写真をご覧になればお分かりかと思いますが、そのノーブルなオーラの出方が尋常ではありません。大きな体をくゆらして、非常に上品で楽しいマジックを演じられます。どんな高等技法を駆使するマジックでも飄々と演じられます。

 今回も非常に面白い10個のフルーツと観客から借りたお札を使った大変不思議で素敵なマジックを演じられました。



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同い年とはとても思えない!(笑)

 続いては旧友Paul Wilsonさん。多くのレクチャーDVDを出されていますので多くの愛好家の方はご存知ですが、イギリスでは「THE REAL HUSTLE」という番組で一躍TVスターとなり、映画「SHADE」(2003年)や「Smokin' Aces」(2006年)のテクニカルアドバイザーとして活躍するだけでなく、役者として出演もされています。

 今回非常に残念だったのは、Day -1でおみやげ鞄の詰め込み作業が無ければPaulさんご一家とUniversal Studio Orlandoへ行く予定だった事。丁度、Halloweenの特別イベントをやっていたのです…。

 大変不思議なカードマジックと、素敵な“シリンダー&コインズ”を演じられました。イギリスの名人John Ramsayによる非常に難易度の高い作品なのですが、4枚の銀貨が1枚ずつ指先から消えてゆき、改めた革の筒の中に見えない飛行をしていく様子はため息がでました。

 今月、日本でレクチャーツアーをされますね。一言…必見です。内容を伺いましたが、以前名古屋だけでレクチャーをされた内容に加えて、最新の面白い作品がてんこもりですよ! 「ポール・ウィルソン レクチャー」で検索されると、お近くのレクチャー情報が出てくるはずです。



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凄く素敵なご夫婦でした!

 続いてはシカゴ在住の女流マジシャンAlbaさん。もともとアルゼンチン出身で、現地で有名なFu Manchu School of Magicでマジックを習得されている本格派のマジシャンです。
 実は今回初めて知ったマジシャンの方で、どんなマジックを演じられるのか?非常に期待していました。

 「マジシャンしかいない会だから、皆さんがご覧になったことが無いものをお見せするわ!」と言いながら、3本の長さが違うロープを取り出します。これはマジシャンならほぼご存知の「3本ロープ」という有名なマジックなのです。そのため、会場からは笑いが起きます。しかし、そこからは本当に不思議に見える「3本ロープ」の手順が始まり、最後は会場から拍手が起こりました。その後のカードマジックも非常に素敵で、彼女の行う「トップ・チェンジ」は必見だと思います! たぶん世界で最高の「トップ・チェンジ」でしょう。 
 え?それは何かって??…Albaさんの演技を見てのお楽しみ!



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まぶしいのは、きっと彼の笑顔のせい!

 スペインのWoody Aragonさん。Juan Tamarizさんの薫陶を受けた新進気鋭のマジシャンです。数理的な原理を使うカードマジックに抜群の冴えを見せ、普通退屈な作品が多いこの手の作品を一級品の演技にする名人です。昨年の終わりに発売されたWoodyさんの著作は世界的にヒットして、私も大好きな本となりました。 

 先日Genii誌の付録として“Genii Poker”という大変素晴らしい作品が解説されたのですが、その予言の方法が素晴らしく「どうしてああいう終わらせ方にしたんですか?」と伺ったら、まぁその答えが本当に意外で、しかも賢くてビックリ! 他にも彼の著作やDVDに関する質問をすると、凄く親切にお答え頂きました。なんてナイスガイ!!

 Woodyさんとお話ししている最中、柔らか物腰の中に一本ピン!と筋が通っている感じ、誰かに似てるなぁ、誰かなぁ??と思っていたら、広島の畏友、治療家の鍛治中政男さんでありました。多分、鍛治中さんにお逢いした事がある方ならば、皆さん納得されると思います。特にあのツルンとしたお顔なんか、本当にそっくり! 

 クロースアップ・ショウも非常に楽しく不思議なショウでありました。あんなに不思議で馬鹿馬鹿しい“Spelling Bee”(実際はリンク先の意味なんですが、マジックですとカードの名前を綴りながらそのカードを出現させるマジックとなります)は観た事がありません!また、これが大変な戦略だったと気が付いたのは演技が終わった後でした。思わず「…これはズルイ!」とつぶやいてしまいました。



 一昨日ご一緒に作業を行ったTom Stoneさん。

 お手伝いのお客さんとして参加者のDarylさん(FISMというマジックの世界大会のカードマジック部門で優勝したことがある名人のお1人)を舞台に上げて、非常に素敵なカードマジック、“シリンダー&コインズ”、そして“カップと玉”の手順を演じられました。すべて古典的な作品なのですが、非常に独創的なアイデアを入れて一ひねりしてあり、そのクオリティの高さには本当に驚きました。



 クラシックなマジックを非常に上手く演じられたのは、昨日のレクチャーでも客席を沸かせたJohn Carneyさん。
 大きなグラスを使っての3つのボールを手から手へ見えない飛行をさせていきます。グラスの中にボールが落ちるたびに「ポーン…」と綺麗な音がたつのが非常に効果的。そして、古いイカサマの話をしながら行う“カップと玉”の手順も素晴らしかったです。最後にテーブルの上に置いてあった空っぽだった帽子の中から大きなココナッツがゴトン!とテーブルの上に落ちる様子に客席は沸いていました。

 ただ非常に残念だったのは、リハーサルであれ程ステージのクルーと打ち合わせをしていたのに、カメラがちゃんとCarneyさんを捉えていなかったため、現象が分からなかった参加者がかなりいらっしゃったのです!

 (実際、この後ステージクルーへの文句が参加者、出演者双方から多く聞かれることになります。彼らも凄く頑張っていらっしゃったのは分かるのですが、カメラマンがカメラにつきっきりでないために大事な部分を映さなかったり、客席に見えなかったり。Day 1での先生Jamyのレクチャーでも、助手として上がった観客とのやり取りは分かったのですが、テーブルの上が見えなかったために現象が分からなかった作品がありました。照明は最新式のLEDライトでしたし、モニターも最新式の液晶テレビでしたし、機材は言う事がなかったのですが…)



 このエントリーで書かせて頂いた通り、中島ゆみさんの「お椀と玉」の手順には客席からため息が漏れていましたよ!



 そして、前田知洋さん。一言で言えば、本当に素晴らしかったです。日本人としての誇りを感じたほど。どうして私がそう思ったか?――これは特別編でじっくりと!



前田さんのショウの片づけを少しお手伝いしていました。

「そうだ、Yukiさん、次のパーラーショウはご覧になりますよね?」
「えぇ、もちろんです!」
「僕の友人が出演するんです。ぜひ彼は観て欲しいなぁ」
「そうなんですね!! 期待します!!」

 そしてパーラーショウへ出向きました。これまた、本当に凄かった…。といいますか、これほどショウの内容がすべて凄いマジックの大会に参加した事はほとんどありません。



 司会はMax名人。最近では人気番組「アンビリーバボー」に登場するなど、日本でもおなじみのマジシャンです。非常に不思議なメンタリズム(超常現象や超能力のように見えるマジック)を演じる、この分野の権威のお1人でもあります。

 本当に手慣れたもので、会場を温めながら的確に進行されていきます。出演者はみなMaxさんの友人なので、その紹介の仕方も気心が知れた感じを受けて非常に気持ちのよいものでした。



 まずは、初日のレクチャーでも客席をガンガン沸かせたChad Longさん。本当にコミカルな演技で有名です。
 今日のパーラーショウは破壊的なコメディで、これはどれだけ言葉を尽くしてもその不思議さと面白さは書ききれないです。度々来日されているので、その際はぜひ!としか言いようがありません。



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本当にお久しぶりにお逢いしました!

 続いてカナダのDavid Benさん。名人Ross Bertramさん(1912年~1992年:カナダ出身の名人。テクニックを駆使して行うコインマジックやカードマジックで有名でした)の薫陶を受けた本格派のマジシャンであり、歴史家です(特に伝説のギャンブラーErdnaseとマジックの世界の神様Dai Vernon氏の研究で知られます)。最近ではNPO法人"MAGICANA"を主宰し、若手マジシャンの育成などにも力を入れられています。
  技巧派でもあるのですが、クラシカルなマジックを大変優雅に演じられることでも知られています。

 ちょこちょこメールでやりとりをさせて頂いていましたが、直接お会いするのは本当に久しぶり。今回のショウも本当に素敵で、特にバラの花束を使った“ライジング・カード”(観客が選んだカードがバラの花束の中からせり上がってきます。もちろん終わった後はバラの花束を開いて、その花をすべて観客たちにプレゼント!)が非常に印象的でした。

 Day 3に開催されたレクチャーについては、また後ほど。



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本当にナイスガイでした!

 続いてはEric Meadさん。先生Jamyの親友の1人で、本当に賢いアイデアを沢山持ったマジシャンで、ちょっと違う角度からマジックを見ていらっしゃるので一風変わった演技をされます。
 Meadさんがどれくらい賢いか?は、彼が登場したときのTEDでのプレゼンテーションをご覧になれば一目瞭然だと思います。

 この日の演技もまさにそう。3つのボールを取り出し、本当に見事なジャグリングをされたのです! 途中でマジック的な現象も入れ、たった3つのボールしか使わないのですが抱腹絶倒の10分間でした。よくある単に道具を増やしていくだけだったり、単に技巧に走るような「押せ押せ」の演技ではなく、その緩急のつけ方は惚れ惚れするくらい。
 そうだよな、ジャグラーの方がマジックを演じるなら、マジシャンがマジック的な思考を入れたジャグリングをして悪いことなんてないよな、と思いました。マジックの演技に新たな光を見た気がしました。

 そして、次に行ったゴム管と医療用のテープを使った不思議なマジックでも、会場にいらっしゃったEugene Burgerさんをいじりたおして、何の事を言っているか知ってる人たちは苦笑するしかありませんでした。



 そして、前田さんの友人、Rob Zabreckyさん。俳優として有名なだけではなく、今年マジックキャッスルから"Stage magician of the year"として表彰された実力派。前田さんがマジックキャッスルに出演された時に友達になられたそうで、普段は本当に普通のナイスガイ。後で分かったのですが、いろいろな雑誌で彼に関する記事をすでに読んでいました。まったく知らなかった!!

 しかし、一度ステージに上がるとヒッチコックの名作映画「サイコ」(1960年)に登場するバイツ青年のようなキャラクターで、とんでもないシュールなスラップスティックのコメディマジックを演じられます。これも文章では伝えられない演技。あの「何かの汁が滴るかもしれない箱」を手渡されたかった!(訳が分からないですよね?…えぇ、この演技を見ていた皆さんも訳が分かりませんでした!)
 一つだけ取り上げると、あんな素敵な「小さくなるカード」の演技はほとんど観た事がありません。

 そのセンスの良さは、確かに前田さんが「大好き!」と仰るはずでした。今回、初めて観た演技の中で印象に残った2つの演技のうちの1つでした。



 この後前田さんと落ち合って、印象に残ったマジシャンの共通点についてお話しをしていました。
 一言で言えば、そういう皆さんは「唯一無二」の存在であって、代替不可能なんですよね。もちろん、前田さんも含めて。この辺り、非常に大切なことのように思えてなりません。そして、それはこの後の特別編の中で明らかにされます。

Day 2 Part 3へ続く) 
プロフィール

yuki_the_bookworm  (a.k.a "べたねば")

Author:yuki_the_bookworm (a.k.a "べたねば")
何げない日常の中の、本と料理とマジック。

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