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Seriously Silly Live! (日本語字幕版)

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 日本ではあまり一般的ではないマジックのジャンルに「キッズ・ショウ」があります。文字通り、子供向けのショウのことで、欧米のマジシャンが生まれて初めて行うショウの多くは「子供の誕生日パーティー」ですし、マジシャンとしてのキャリアの初期には必ず通る登竜門です。アメリカの電話帳を見ますと“Magician for Birthday”ですとか“Birthday Party Magician”としてカテゴリーがあって驚いたことがありました。

 この「キッズ・ショウ」、実は結構需要が多いのにも関わらず、ちゃんとしたノウハウをまとめた教材と言うのが国内外見ても大変少ないのが現状でしょう。

 幼稚園教諭免許を持っていて、以前幼稚園の先生をしていた妻のCathy曰く、幼稚園の先生がイベントなどでマジックなどを演じる機会がたまにあって、そういう先生向けのマジックの解説書や道具なども沢山あるそうなのですよね。(昔からあって有名なのはこの本でしょうか?Tonおのさかさんのイラスト入りでかなり豪華な内容ですね)

 ただ、幼稚園の先生は仕事として子ども達をどうコントロールするかの術をご存知ですが、私たちにはその術があまりありません。逆に、幼稚園の先生は子ども達のコントロールはできるけれども、私たちのように楽しませるマジックの演技をどう見せるか?という術がありません。なので、幼稚園の先生たちもいろいろ考えられているようなんです(予算の兼ね合いもあるので、ボランティアのマジシャンをイベントに依頼したりすることも多いそう)。ただ、ボランティアマジシャンの演技を観た時の子どもたちの反応がマチマチだったりで、自分たちが思っていた以上に盛り上がらないこともあるとか、ないとか。



 上記のように、アメリカには有名なキッズ・ショウ専門のプロという方々が何人かいらっしゃいます。その中で一番の稼ぎ頭が、今日ご紹介するDVDの主人公、“Silly Billy”というステージネームで知られるデヴィッド・ケイさんなのです。

 日本ではあまり知られていないマジシャンです。どれくらい有名か?というのは、ケイさんの仕事ぶりで分かります。
 ニューヨーク中のセレブが彼を子どもの誕生日パーティーにと指名します。ホワイトハウスでも演技をしました。実際ニューヨークにいた時、この“Silly Billy”という名前をマジシャン以外の方から聞いています。そして、彼はニューヨークの高級住宅街にご自宅を構えていらっしゃいます。
 この事実から、普段のケイさんがどれくらい凄い仕事をしているか?がお分かりになって頂けると思います。




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 去年、インターネット上で開かれたマジックの大会“Essential Magic Conference”にスピーカーとして登壇し、本当に素晴らしいプレゼンテーションをされました。今、このサイトにはインタヴューとプレゼンテーションの動画が3本アップされています。今見なおしても素晴らしいのです。

 2005年にこのDVDの基となった著作『Seriously Silly』が、友人RichardのKaufman and Company社から発売されました。ほとんど日本では話題にならなかったと思います。しかし、私の先生Jamyはすぐに「何も言わずに買っておけ。以上。」という非常に短いメールを送ってきました。
 それまで何冊かのキッズショウに特化した専門書があったのですが、内容が今の時代に合わなかったり、普遍的な内容ではなかったりと、正直参考になった本はほとんどなかったと言っても過言ではないでしょう。

 でも、この本は違いました。キッズショウに必要な生きた知恵が満載されていました。それだけでなく、キッズショウの歴史や深い心理的考察などが含まれた、キッズショウという分野を網羅する初めての専門書となったのです。「子どもを楽しませるって、そんなに簡単じゃないよ」という著者の心意気がビシビシ伝わってきました。

 先生Jamyは奇術専門誌『GENII』の書評に「今まで子どものためにマジックを演じることについて書かれた本の中でも、もっとも賢い本が出版されました。マジックと言う芸術を学ぶ誰もが必携の本です」と書いているほどです。出版当時、欧米のキッズショウ専門のマジシャンたちの間で衝撃が走ったと言います。

 そして、2007年にこのDVDが発売されました。ケイさんの演技はなかなか見る機会がありません(実際は彼を雇わないと難しいでしょう)。このDVDが登場したことで、本で伝えられないショウの興奮が読者に広く理解できるようになったのです。

 こんな素晴らしいDVDが日本語字幕付きで発売されたならば、買っておくしかないでしょう!!



 まず、このDVDがよくあるレクチャーDVDと一線を画している点は、ただ演目を教えている訳ではない点です。多くのキッズショウ向けの作品や文献は、ただ演目を教えているだけ、ということが多かったように思います。
 ケイさんはDVDの最初に、中国の思想家管子の有名なフレーズ

もし男に魚を与えてあげたら、一食は食べることができるだろう。
もし彼に魚釣りを教えてあげたら、一生食べていくことができるだろう。


を引用して、これは「理論(つまり、ノウハウ)を教えるDVDである」と宣言しています。つまり、押し入れに眠っているような道具を使っても、この理論さえ覚えて当てはめていけばキッズショウが出来るようにすることが目的だ、という訳です。

 理論と言っても、本当にシンプルな6つの理論にまとめられているのですぐに理解できます。重要なポイントはテロップでキチンと出ますので、見逃すことはありません。

 CathyにもこのDVDを見せて内容をどう思うか?と聞いてみましたら、先生の視点から見ても大変良い事を言っているとの事でした。



 そして法則を説明した後、それを如何に作品に練り込んでいるか、300名の子どもを前にした実演で見ることができます。その実演の凄いことと言ったら! 子どもたちが目をキラキラさせて、大興奮で楽しんでいるんですね。演目の素敵さもあるんですが、それ以上に“Silly Billy”というキャラクターが大変素敵なんです。
 子どもたちの興奮を観ていたら、私の好きなイギリスのロックバンドColdplayの歌詞が頭に浮かびました。

And all the kids they dance, all the kids all night
Until Monday morning feels another life
I turn the music up
I'm on a roll this time
And heaven is in sight
- “Every Teardrop Is A Waterfall”


 なんて幸せな光景なんでしょう!

 演技の部分を見たCathy曰く「あと、何故子ども達が騒がずにこの人に注目しているか?ということを考えてみると良いかもしれません」とのことでした(本当はツカミの部分をどうするか?という部分が収録されていたら完璧だったと思います。最初に子どもたちの心をがっちりつかめるかどうか?がショウの成功を左右しますから)。



 実演を見た後、本人による分析が入ります。何故このギャグを使ったのか、何故ここはこういう風にしたのか、すべての動作に無駄が無く、考え抜かれている事が分かるでしょう。また、実戦的なアドバイスも適宜入るので、一瞬たりとも気が抜けません(特に、ココで言われている一緒にショウを観ている親に対する対応は、非常に大切だと思います)。
 この分析の部分を見ていると「あぁ、伝説の番組『8時だョ!全員集合』は本当に良く考え抜かれた番組だったんだなぁ」と思われることでしょう。例えば、今でも有名な「志村、うしろ!うしろ!」現象などを的確に分析されているのです!!

 もちろん、ケイさんの演目にも注目して頂きたいのです。例えば、よくあるカラーリングブックというマジック(東京ディズニーランドでは定番の商品ですね)1冊だけで、なんと5分も子どもたちを熱狂させ続けます。これは本当に凄いことです。
 このDVDでは、Kayeさんの定番ネタを4種類解説しています。すべての手順が考え抜かれた作品です。中でも、定番商品のミルクピッチャーを使った「Milk Pitcher Plus」という作品を私も良く演じていますが、驚くほど受けますよ!

 ただ、解説はすでにその道具にある程度慣れている方に向けたものですので、道具の使い方の解説自体はあまり詳しくはありません。なので、必要な道具を用意して予め練習しておく必要があるでしょう。

 あと解説で1つ分かる事は、ケイさんは昔の良いメーカーの製品を使っていらっしゃるんですね(昔のメーカーの製品は大きさもあって丈夫、しかも遠くからでも見栄えが良いのです)。それを見ただけで「あぁ、この人は分かってる!」と思いました。しかし、使っている商品は今でも普通に流通している商品ばかりですので、演じる分には何の問題はありません。



 内容の素晴らしさもさることながら、中にふんだんに盛り込まれているジョークが最高に面白いんです。ストリート・マジックの雄、デビッド・ブレインさんのパロディには、アメリカの東海岸に住む有名マジシャン、例えば友人Richardにスティーヴ・コーエンさん、ギャンブリングのテクニシャンとしても有名なサイモン・ロヴェルさんまで登場して、本当に馬鹿なことを本気でやっています!(褒め言葉ですよ)
 そして、日本でも有名になったマスクド・マジシャンの番組(種明かし番組ですね)の衝撃的なパロディは必見です。



 肝心の日本語字幕は素晴らしいです。いつものスクリプト・マヌーヴァ社のクオリティですね。このDVDのすべてを完全に理解できるようになっています。

 ただし、このDVDはあくまでもダイジェスト版です。出来ればケイさんの名著『Seriously Silly』を読んで頂けると、さらに深い知識を得ることが出来るでしょう。作品ももっと紹介されています。

 版元のRichardに連絡をしたら、今は品切れで再版している所だそう。ケイさんのウェブサイトでは、この本とDVDの中で使われている道具も購入できるようになっています。



 海外の友人に、ちょっと変わった人がいます。彼はキッズショウと大人向けのショウを両方とも演じていたのですが、驚いたことにショウの演目は両方とも同じで、演出がちょっと違うだけだったのです。しかし、子どもからも大人からも素晴らしい反応を引き出していました。
 両者ともに同じ演目を演じる理由を彼に聞いたら、こんな答えが返ってきました。

 「だって、子どもに受けるマジックは、大人にも受けるんだよ。現象がシンプルで分かりやすいからね! もっと言えば、子どもにマジックを演じて受けるなら、誰にだってマジックを演じられると言っても良いだろう。みんなキッズショウというと馬鹿にするけど、キッズショウを舐めてたら痛い目にあうんだぜ!」

 このDVDは確実にキッズショウ向けではありますが、実は大人に向けて演じるショウを考える上でも大変参考になる内容なのです。大人の場合はこのDVDにある“1分間に起こる”「笑い」の部分を「驚き」や「感情の起伏」に変えてやればいいのです。

 子どもは素直に反応を返してきます。ツマラナイとすぐに騒ぎ始めて収集がつかなくなります。一方、大人はあくまでも大人な対応をします。そして、あなたの演技に興味を持たなくなるでしょう。これではお互いにとって不幸な出来事になってしまいます。

 マジシャンとして、または先生としてキッズショウを演じる機会がある方だけでなく、自分が演じて受けがイマイチ良くない演目がある方には、是非にとおススメします。きっと何かが大きく変わるきっかけになることでしょう。

もし、出来ないことが出来るようになる力への欲求を満たす術を私たちがショウの中に組み込んだなら、子どもたちの中で長い間記憶に残るような経験を生み出すことができます。この力への欲求と言うものは、子どもたちの中ではそれほど強力な動機づけとなるのです- デヴィッド・ケイ


このケイさんの言葉は、子どもについてだけ言っているとはとても思えません。



『シリアスリー・シリー・ライブ(日本語字幕版)』 デヴィッド・ケイ主演、スクリプト・マヌーヴァ社刊、2012年。
定価 5400円 全国有名マジックショップ、またはこちらのウェブサイトで購入可能。


 

 
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えにしのデック

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 先日、演出家でプロマジシャンの花田圭介さん、京都のプロマジシャンで奇術専門誌『掌PALM』誌の編集長Yuji村上さん、スクリプト・マヌーヴァ社の滝沢敦さん、私の恩人の一人クニさんが我が家に集まって、呑みながら与太話をしている様子をUstreamダダ洩れ配信するという試み(ある意味、暴挙!)をしてしまいました。
 突然始まり、しかも深夜にも関わらず、最高で24名の方にご覧いただきまして誠にありがとうございました。



atpastel.jpgアラフォー男子二人がPastelのなめらかプリンを食べるの図。対面がYuji村上さん。


 この翌日、Yuji村上さんが「あ、出来たよ~」と新作の『えにしのデック』を見せて頂けました。これが、本当に素敵な作品なのです!!

 現象はこんな感じです。

 カップル、またはご夫婦の観客にお手伝い頂きます。最初にそれぞれの観客に1枚ずつ予言の封筒を手渡します。一組のデックを取り出し、それを配っていく最中に、二人の観客に自由にストップをかけた頂いた所のカードが予言の封筒の中に入ってたカードと一致しています。しかし、本当に一致しているのはそれだけではありません…あっと驚くクライマックスが待ち構えています!




 このマジック、「Gemini Twins」という名前で有名になったマジックの改案です。ハーブ・ランジーさんの原案「Hidden Mystery」をセオドア・アネマンが奇術専門誌『JINX』の83号(1940年)に初めて発表しましたが、この時はあまり有名になりませんでした。しかし、後にカール・ファルブス氏が小冊子『Impromptu Opener』(1979年)に「Stop Twice」という名前で発表し、さらにその後『More Self-working Card Tricks』(Dover刊、1984年)にこの名前で発表して有名になったようです。ロン・ウォールやエド・マルロー、アラン・アッカーマン、サイモン・アロンソン、ジャック・カーペンター、ジョン・バノンといった各氏も素晴らしい改案を発表されています。

 その中でも、スウェーデンの怪人レナート・グリーンさんの「Stolen Card」という作品があります。発表されたのは20年ほど前になりますが、最近単品で発売されたのでご存じの方も多いと思います。演技はレナート・グリーンさんの名作DVD『Lennart Green Master File』などで観る事ができます。
 グリーンさんの演出は、多分この種の作品で一番良いと思いました。しかし、村上さんのこの新作も勝るとも劣らない傑作です。



 そのクライマックスを書いてしまうと面白さが無くなってしまうため、ここでは書く事ができません。しかし、カップルやご夫婦に演じたら絶対に喜ばれます。村上さんのプロの仕事で使っていらっしゃるだけあって、素敵な演出になっています。ここぞという時に確実にその威力を発揮します。しかも、簡単ときています。ここまで素敵な予言のマジックもそうそうありません。 
 解説も分かりやすく、必要な予言のカードも綺麗に印刷されています。これで3500円ならマストバイでしょう。(もしかすると、封筒はご自分で探した方が良いかもしれません)

 営業をされている方にも、一般の方にも、是非にとおススメ出来る一品です。



「えにしのデック」 原案 西口武志 改案Yuji村上 3500円
今のところご本人が直接販売されています。イベントなどで購入可能。
問い合わせ:〒604-8081 京都市中京区天性寺前町523 Yuji村上




追記:あと、Yuji村上さんのイベント『Half&Half』が来週に迫りましたよ!参加費2000円でゲストが谷英樹さんと橋本昌也さんなら、絶対に損はないでしょう!関西在住の方は是非。この会で「えにしのデック」も購入できますよ!


Yuji村上マジックイベント in 大阪 第2弾 「Half & Half vol.1」開催のお知らせ

 今年1月に開催させていただきました「Vintage in 大阪」に続き、Yuji村上イベント第2弾を開催させていただく運びとなりましたので、ご案内申し上げます。
今回は「Half & Half」と題し、京都にて3月に開催させていただきました、新作・未発表作中心のイベント「Nouveau」と、6月に開催予定であります、ノンマジシャン向けマジック中心のイベント「Aperitif」の内容から、美味しいところを盛り込んでお送り致します。
もちろん今回も、ゲストの演技やトーク等、バラエティーショーをコンセプトに、楽しいイベントにしようと準備を進めております。
 多くの方々と楽しい時間を共に過ごせるイベントを目指していきます。ぜひ皆様お誘いあわせの上、ご来場賜りますようお願い申し上げます。


日 時 2011年7月3日(日)
PM 2:00開場
PM 2:30開演
PM4:30頃終了予定

場 所 クレオ大阪中央 研修室1
※場所はここ!

なんと、ゲストは凄腕クリエイターの谷英樹さんと注目の若手、橋本昌也さんです!!

参加費 お1人様 2000円

・ご予約は不要です。直接会場へお越しください


Incomplete Works

 皆様、大変ご無沙汰しております<(_ _)>

まず初めに。この度の震災で被害に遭われた地域の皆様には、心よりお見舞い申し上げます。皆様は大丈夫でしたか? 被害が少なかったことを祈ります。
 私の住む地域ではほとんど被害がありませんでしたが、それでも今なお余震を感じることがあります。早く「何でもない日常」が戻りますように。

 私は昨年秋から年始にかけて7月に発症した「原因不明のめまい」から体調を完全に崩してしまいました(特に年末年始は最悪でした)。今はかなり体調も戻り、元気にやっておりますが、溜まってしまった様々な案件を解消している毎日です。

 その間、このブログ宛に頂いたメールなどもチェックできず(最悪なのはメールのパスワードを失くしてしまい、やっと先日見つけ出した次第です)、メールを頂いた皆様には深くお詫び申し上げます。徐々に返信させていただきます。少々お時間を頂ければ幸いです。



 先日、こざわまさゆき(a.k.a. トヒデルアルデヒド)さんより、4月に発売予定の作品集『Incomplete Works』を送っていただきました。
 こざわさんは皆様ご存じのとひぶろぐ(続)の主催者であり、その深い知識とシニカルでクールな文章で定評があります。こざわさんのブログのファンでいらっしゃる方は、かなり多くいらっしゃることと思います。そんなこざわさんの作品集と聞いたら、期待しない訳にはいきません。

 読了直後の感想は、私のTwitterでも2回呟きました。

読了なう。しびれたなう。


【奇術愛好家の皆様へ】@t_aldehydeさんの4月に発売予定の作品集、これは買いです。なんだろう、この洗練された思考の方向性と奇妙でシニカルな後味は!実戦派も研究派も楽しめる、非常に歯ごたえのある絶妙な作品集です。これは近いうちに書評をブログにアップしてみたいと思っています。


 この2つのツイートで話は尽きます。



 作品集全体に言える事ですが、こざわさんは、アメリカならポール・ハリス氏や日本なら亡き厚川昌男(泡坂妻夫)先生のような新原理を提示するような創作家とはちょっと違います。

 こざわさんの手順構成力が、大変素晴らしいのです。1つの作品を取り上げて、それを自分好みに大変うまくチューンアップされていきます。そのセンスが抜群に良いのです。こざわさんがお持ちの膨大な知識をフル活用され、バランス良くサトルティなどを手順の中に配置されていくのです。その知的センスにまず痺れます。このセンスこそが、こざわさんがお持ちのGift(天賦の才)なんだと思います。

 そして、その現象が持つシニカルな後味が素晴らしい。なんとも言えないシニカルで惚けた感じの味があるのです。そう、正しくとざわさんが書かれたブログやツイートを読んだ時のような、あの後味をマジックから感じられます。実戦的な作品も多いので、研究家でも演技者でもともに楽しむ事ができるでしょう。



 コイン、カード、リングなど収録作品も21作品と大変豊富で、150頁たっぷり楽しめます。
作品すべて素晴らしいのですが、ハイライトをいくつかご紹介しましょう。

・150円トリック:こざわさんが発表された作品の中で、たぶん一番有名な作品かもしれません。たった150円でここまで楽しめる作品はないでしょう。実は好きで結構演じさせていただいています。

・C-A-S-T:3段にわたる銀貨と銅貨の交換現象。手順構成が素敵です。

・Billbound:8つ折りにしたお札を指先でなでるだけで複数枚のコインに変化します。大変綺麗に見えるはず。

・Coins aGrass:これも手順構成が素敵なコインの飛行。原案のシンプルな良さを踏襲しています。

・Left-handed Coin:これは素晴らしいコインマジックでのプロットだと思います(Left-handed Hank自体は、元々Left-handed monkey wrenchというジョーク商品が名前の由来だったと思います)。思わずじっくりと練習を始めました。立って演じたいので、ちょっと作戦を考えてみました。

・Coin-cidence:珍しいコインのメンタル!

・Octrix:最初、奇術専門誌『Toy Box』で手順を拝読したときは、「どこのマルローやねん!」と思わず突っ込みました。この手順は先に演技を拝見したかったです。そのトリッキーなコインの動きは、目を見張ります。

・Matrix Bad Way かなりズルイ方法のマトリックスです(褒め言葉です!)Effect is Everythingで、見た目と流れは凄く綺麗ですね。

・Elastica: 輪ゴムとデックを使った手順。Band Slamという作品をうまく応用しています。これは覚えて損がないでしょう。

・Tiltless Ambition: 凄く豪華な手順構成されたアンビシャスカード。観客に方法論をうまくCancel outさせていく構成は達者だと思います。

・Erdnase Not Required:大変良いギャンブルの実演。ミニマムな準備で気軽に演じられて、なおかつ効果大きいですね。

・EZACAAN:簡単な操作で決まるACAAN。自分の好きな方法が決まっていない方には気軽に出来る良い手順だと思います。

・The Loaded Dice Cup:すごく豪華なダイスカップの手順。ヴァ―ノンのダイスのクライマックスがお好きな方にはおススメです。

・The Quintet of the Rings : けれんみのある、大変豪華なリングの手順。これはこの手順だけでDVDを出しても良いくらい。デュラティーの5本リングの手順をベースにして、素敵にアレンジをされています。

 解説はしっかりされていますし、イラストは金沢にあるマジックバー「金沢Style」のマスターで気鋭の若手マジシャン、ヤマギシルイさんが担当。的確なイラストです。



 ただし!ここでちょっとした注意があります。

 まず、解説の文章量が半端ありません。しっかり道具を持って1つ1つの操作を考えて読み進めないと、作品を覚える事が出来ない様になっています。これは結構挑戦的な試みだと思いました。本を読むのがかったるい、映像でマジックを覚えるDVD派には「ちゃんと読めよ!」と、映像学習を嫌う文献派には「どうだ、映像の方が分かりやすいだろう!」と両者に挑戦しているように感じました。この挑発、読者のあなたなら、どう受けて立たれますか?

 そして、一部の作品では必要な用具を揃える必要がありますし、文献を少し漁らなければならない部分もあります。しかし、すべてのヒントをこざわさんは本文中に埋め込んであり、私のブログにお越し頂いている皆様ならば、Googleなどの検索エンジンを使えば、その答えにたどりつけると信じます。

 こざわさんからノートを頂いて、速読派の私でも道具を手に取りながら読了に2週間ほどかかりました。逆に言え
ば、そうすることでこざわさんの作品を精読する機会になりました。私には大変うれしい挑戦でありました。
 でも、マジックを覚えるという事は、こうした手仕事以外にあり得ないんですよね…。



 今も震災の影響がありますので、皆様に対して気軽に買ってみたら?とは言えません。しかし、この作品集はmust-buyの作品集だと思います。値段と内容のバランスが非常に良いですから。
 
 逆にこういう時期だからこそ、節電を兼ねてテレビを切って、じっくり文章に立ち向かうというのにも良い機会なのかもしれません。骨太の奇術愛好家の皆様におススメしたい1冊です。



『Incomplete Works』 こざわまさゆき著、Magic House刊、定価5380円

お問い合わせは、Magic House社さま、もしくはTwitter上で直接とひさんに呟いてみると良いでしょう。
*300部限定とのことなので、チャンスを逃さないようにご注意を。



3月23日追記:作品集の初めのクレジットに私の名前があるそうです。これは文献などについてほんの些細なお手伝いをさせて頂いたことによると思います(知らなかったです!)。しかし、それに伴う金銭などは一切頂いていませんので、レビューは公正にさせていただいています。念のため、この事実を書き記しておきます。

2011年11月4日:ご指摘があり、一部を訂正をしました。ご指摘、ありがとうございました。

「KYOTOデック」

 7月25日に開催された「Yuji村上 ショウ&レクチャー」は、おかげさまで大盛況の内に終了しました。次回のエントリーで詳しい内容(そして、裏話など)をご紹介しますが、正直言いまして、今までスタッフとしてだったり、観客としてだったり、通訳としてだったり、数えきれないくらい様々なレクチャーに参加してきました。そんな中でも、今回のYuji村上さんのレクチャーは私が今までに受けた中でもベストのレクチャーの1つと言っても良いくらい、充実した内容でした。

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Yuji村上さん、GIONデックを演じているの図



 以前のエントリーで彼の商品「GIONデック」についてレヴューさせていただきましたが、「KYOTOデック」は、この「GIONデック」と双璧なす良い現象だと思います。ちなみに、以前のエントリーでは、こうご紹介させていただいています。

 発売されていた村上さんの作品に「KYOTOデック」という作品がありました。この「GIONデック」は、「KYOTOデック」の改良版なんですね。観客にデックを手渡し、自由にシャッフルしてもらってから、そのトップ・カードを見てもらうと、ズバリ予言と一致しているという現象です。Mr.マリック師がテレビで演じたあの不可能現象をあなたの手で演じることができます。

 以前販売されていた解説と違い、今回の解説が凄いのは、このデックを使用する応用が15種類も解説されていて、その中の1つにいわゆる「エニエニ」っぽい現象があります! これが大変素晴らしい。 
 この作品(方法論)は非常に古く、ジーン・ヒューガードの名著『Encyclopedia of Card Tricks』(Max Holden刊、1937年)に解説されているJ.F.Orrin氏のマジックが原案のように思いますし、その後もイギリスのメンタリスト、マーク・ポール氏やアメリカの奇才サイモン・アロンソン氏、カナダの才人ロバート・ファーマー氏が似たような作品や方法論を発表していますが、観客がデックを自由にシャッフルできる作品は非常に少ないと思います。
 この作品も現在DVD化が進んでおり、完成が大変待ち遠しいですね。


 レクチャー前日に内容の吟味などを打ちあわせ、二人で進行を再確認をしていましたら、「そうそう、1つ朗報があるよ」と村上さんが話し、1本のDVDを頂きました。それは「KYOTOデック」のDVDでした。 

kyoto_deck.jpg
村上さんの写真とともに。

 私はレクチャーまでには完成はまず無理だろうと思っていたのですが、名古屋へ出発直前に村上さんの手元に届いたそうです。なので、名古屋レクチャーに参加された方々は、大変ラッキーだったのですよ!!



 まずは、 ここをクリックして、実演をご覧ください。

 言いたいことは「GIONデック」のレビューとまったく同じ。セットアップから方法まで、解説は完璧で分かりやすい。1時間にわたって解説されている23の方法は、すべて効果的。
 大阪のカードの名手Alsさんの撮影と映像編集は、センスがよくて大変クール。もう、非の打ち所がありません。
 
 確実に言えることは、世界最高ランクに入るフォーシング・デックということです。観客にデックを手渡し、それを自由にシャッフルしてもらってからデックのトップ・カードを見てもらうだけで、カードがフォースされている訳ですよ。これ程公明正大に見えるカードの選ばせ方は、そうそうありません。しかも、すべてがマジシャンが手を触れる必要がなく、操作も簡単で、100%確実なのです。観客がヒンズー・シャッフルさえ出来れば、何の問題もありません。

 ただ、この方法をフォースデックとしてだけで使うのは非常にもったいない。「カード・アット・エニーナンバー」(観客が自由に指定した枚数目にあるカードが予言と一致している現象)は、心からオススメできます。レクチャーでの実演では、観客から「うぉー!」という歓声が上がりました。これは解説書を読んだだけでは、確実に読み飛ばしてしまう方法です…というか、読み飛ばしたり、DVDも見逃していただきたい程の方法です。



 ちなみに言っておきますと、Yuji村上さんはかれこれ20年来の友人ですが、いくら友人が発表した作品でも、悪い作品だったらまず皆さまにオススメしません。基本は良いものは良いし、悪いものは悪い、ということだと思います。

 なので、ちょっとだけ残念なことも書いておきます。DVDの最初に演技例が3種収録されているのですが、どれがどの方法を使っているか分からないのです。DVDをすべて見れば分かる話なのですが、そこはちょっと不便かなぁ? あと、日本の顧客の皆さまにはあまり関係ありませんが、英語字幕でちょっとタイプミスが目立つかなぁ。でも、こんなことは、この素晴らしい作品からしたら本当に些細な点であり、重箱の隅をつつくようなものです。



 DVDにデックが付いて4000円なら、マストバイだと思います。村上さんのレクチャーでは、この実演を見た参加者の多くが、こぞって購入されていました。
 同じく、「WOW!」でお馴染の益田克也さんの“ATTO”社から今月末に発売開始予定。大阪、上本町のイケメンが、皆さまを優しくエスコートするこのお店とかを細かくチェックされていると良いかもしれません。ちなみに「GIONデック」は来月末の発売になるそうですよ!

 私は、この「KYOTOデック」、「GIONデック」の2作品だけでも、彼の名前はマジックの歴史に刻まれたと思います。

GIONデックとKYOTOデック

Yuji村上 ショウ&レクチャーin名古屋 無事終了!!



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 先日、プロマジシャンのカズカタヤマさんのショウがあった前日、京都のプロマジシャンで畏友でもあるYuji村上さんが名古屋にひと足先にやってきました。今月の末に行われるレクチャーの打ち合わせと、会場となる老舗マジックバー『メンバーズエルム』のマスター、山内利夫さんへのご挨拶をするためです。

 エルムでは、二人でまたまたご馳走になってしまい、逆に山内さんに申し訳ない位でした。そして、ご挨拶の後に名古屋レクチャーの打ち合わせ。
 私からのリクエストや、こんな感じのレクチャーになればといった話を真面目にしていました。ちょっと(…いや、かなり)無理めな私のお願いにも村上さんはにこやかに対応していただけて、名古屋レクチャーにいらっしゃる方は凄くお得な感じになるかと思います。逆に言えば、今まで3ヶ所のレクチャーを受けられた方でも内容がかなり変わるので、お楽しみいただけますよ!(特に村上さんが実際に仕事で使っていらっしゃる手順は賢いと思います!)

 カズカタヤマさんには「なに!? ランチがついてこの値段? エルムだから料理は美味しいはずだし、ムチャクチャお得やんか! 本当に損しないの? 大丈夫??」と逆に心配していただけました! こんな凄い内容になったのには深い理由があるのですが、これはまた別の物語…。



 レクチャーの打ち合わせをしている時に、村上さんから「あ、これ今度発売されることになったんだけど、1つyukiさんに!」とDVDを頂きました。それが、この「GIONデック」です。

 観客から観た現象はこうなります。

 二人の観客に手伝ってもらいます。最初に演者は1組のデックから予言のカードを2枚抜き出して、テーブル上に伏せて置きます。そして、別に用意した1組のデックを1人目の観客に手渡し、自由にシャッフルしてもらいます。この観客が納得がいくまでそれをシャッフルをしたら、デックのトップ・カードを見て覚えてもらいます。そうしたら、このデックを2人目の観客に手渡し、同じように納得がいくまで自由にそれをシャッフルをしてもらい、そのトップ・カードを見て覚えてもらいます。この間、演者はデックに手を触れていません。
 デックを返してもらい、ここで初めて二人の観客が覚えたカードの名前を言ってもらいます。その2枚のカードと予言のカードが見事に一致しています。


 …どうです、大変不思議に思えませんか? 繰り返しますが、演者はデックに手を触れませんし、何ら怪しい動作もありません。初心者の方でも、練習をすればすぐに演じることができるミラクルなのです。

 このDVD、非常に良く出来ています。まず、実演と解説が村上さん自身によってしっかりされています。私が確認した限り、解説の抜け、漏れなどはありません。使用するデックは大変賢いギミック・デック(ある有名なギミック・デックの応用です)なのですが、その作り方、セットの方法から、解説、応用やコツなどにも詳細に言及されています。このDVDをしっかり見ながら、このデックを手にしてみれば、すぐに方法を覚えることが出来るでしょう。
 特にMr.マリック師によるサトルティには注目してください。この素晴らしいサトルティを使うと、観客が必要以上にデックをシャッフルすることはありませんし、それでも観客はデックをきちんと混ぜた感じを受けます。
 このサトルティを使うならば、村上さんによる演出も注目して下さい。二人の観客を恋人同士とか夫婦にして、二人が結ばれた縁と名前の関連について話します。そして、観客の名前をそれぞれ聞いてからデックを見ていって「○○さんならこのカードでしょう」と言いながら予言を抜き出すのです。これは大変良い演出だと思いますし、師のサトルティを使う良いエクスキューズにもなっています。

 そして、撮影。大阪のカードの名手Alsさんによる撮影、編集なので、シンプルかつ大変センスの良い映像に仕上がっています(佐藤総さんの名著『Card Magic Designs』の付録として添付されている演技例のDVDの映像などを見れば、その映像センスの良さは一目瞭然です)。

 さらにこのDVDには特典映像が収録されています。作品集『Starting Members』に収録された作品のいくつかの実演を楽しむことができます。不可能な状況下でのカード当て「Sound Trap」がさらに不可能な状況下でのカード当てになった「Sound Trap “Stereo Version”」、村上さん一流の独自技法を使った「Knock Knock Kings」(有り得ない“引っ繰り返っていく4枚のキング”)と「Tri-out Type-R」(有り得ないトライアンフ)が収録されています。これらのマジックは、解説を読んだだけでは「出来るわけがないじゃん!」とか「はいはい、○○の原理を使ってるんだね」といった感じで、結構読み飛ばされてもおかしくない作品なのですが、この実演を見れば、その有効さとパワーを感じていただけると思います。

 そして凄いのは、このDVDには、オマケとして「GIONデック」を組むために必要なカードがすべて添付されています! なので、このデックを組むために手間をかける必要はまったくありません。


  
 何かこんな現象聞いたことがある、とお思いの方もいらっしゃるでしょう。はい、正解です! この現象には原案があります。発売されていた村上さんの作品に「KYOTOデック」という作品がありました。この「GIONデック」は、「KYOTOデック」の改良版なんですね。観客にデックを手渡し、自由にシャッフルしてもらってから、そのトップ・カードを見てもらうと、ズバリ予言と一致しているという現象です。Mr.マリック師がテレビで演じたあの不可能現象をあなたの手で演じることができます。
 以前販売されていた解説と違い、今回の新しい解説が凄いのは、このデックを使用する応用が15種類も解説されていて、その中の1つにいわゆる「エニエニ」っぽい現象があります! これが大変素晴らしい。 
 この作品(方法論)は非常に古く、ジーン・ヒューガードの名著『Encyclopedia of Card Tricks』(Max Holden刊、1937年)に解説されているJ.F.Orrin氏のマジックが原案のように思いますし、その後もイギリスのメンタリスト、マーク・ポール氏やアメリカの奇才サイモン・アロンソン氏、カナダの才人ロバート・ファーマー氏が似たような作品や方法論を発表していますが、観客がデックを自由にシャッフルできる作品は非常に少ないと思います。
 他にも新しい解説書には素敵なアイデアが一杯掲載されています。正直、この作品を購入した方はみんな読み飛ばして欲しいな、というアイデアが多いです! この作品も現在DVD化が進んでおり、完成が大変待ち遠しいですね。



 この不思議な現象で、しかも必要なカードがすべてついて4000円ならば、かなりお買い得なマジックだと思います。この「GIONデック」は、「WOW!」でお馴染の益田克也さんの“ATTO”社から近日発売予定で、最近Twitterを始めた(さあ、みんなで@kwsm_tmkさんをフォローしよう!)このお店とかを細かくチェックされていると良いかもしれません。



7月21日追記
 GIONデックとKYOTOデックのご本人による実演映像がアップされています。興味のある方はご覧になられると吉だと思います。
 GIONデック はここを、KYOTOデックは ここをクリック!

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