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"No Rabbit in a Hat,but Steve Cohen Has Magic Up His Sleeve"

3月20日追記:実際のNew York Times紙の記事が掲載された紙面の写真を1枚加えました



steve_shot.jpg
(撮影:Clay Patrick McBride氏※注)

 先日のエントリーでチラリと触れた「マジックを“High Culture”としてとらえる」試みに関連する話の続きです。

 先週の“New York Times”紙日曜版(3月7日)に、私の畏友スティーブ・コーエンさんが登場しました。

steve_nytimes.jpg

 まずはこちらから記事をお読みください。一応、yahoo!翻訳した記事もここに貼っておきます。

 先日、ボナ植木さんのブログでも紹介されましたが、スティーブさんは、毎週金曜日と土曜日の夜にニューヨーク市の最高級ホテルの1つ"Waldof Towers"において、「チェンバー・マジック」という名のショウを上演しています。このホテルは、アメリカの歴代大統領の定宿としても有名です。なんと、1泊400ドル (約36300円)から!

chamber_magic.jpg(これは最新のパンフレットの表紙)

 大変好評なショウで、チケットは1人75ドル(約6800円)ですが、毎月ショウはソールドアウトになるそうです(ちなみに今月分はすでにほぼ完売)。上の写真に写っている優雅な部屋で、ゆったりとマジックを堪能できます(なので、ドレスコードがありますので要注意)。
 19世紀のヨーロッパのサロンにおいて、富裕層の観客に向けて行われていたマジックショウを再現しています。丁度、過去の名人だったJ・N・ホフジンサー氏やロベール・ウーダン氏などが行っていたショウとほぼ同じ様式です。

 そして、去年からは「Miracles at Midnight」と言う、毎月1回だけ深夜12時から開催されるホラーの要素が入ったショウも始まりました。こちらは、チケットが1人250ドル(約22700円)にもかかわらず、数ヶ月先まで予約が入っているようです。ニューヨークへ出掛けられるときは、時間があれば2つとも必見のショウですよ。彼が行う「ライジング・カード」という、ワイングラスに入れた1組のトランプの中から、観客が心に思ったカードがせり上がってくるマジックを観るだけでも、チケット分の価値があると思います。この種のマジックの中でも、最高ランクに入る不思議さです。

midnight_poster.jpg(これは「Miracles at Midnight」のポスター)

 記事は大変大きな扱いで、使われている写真も素敵で、内容も興味深いです(マジシャンとして、そして、父親としての彼の日常が良く書けています)。記事にはアメリカの有名なマジシャンも多く登場しますので、愛好家の方にも楽しめる記事になっています。
 今から約9年前、このショウの前身となる「Mystery Salon」というショウを始めた頃からちょっとしたお手伝いをさせていただいていたので、今の盛況は本当に嬉しく思います。

 世界中で知られているアメリカの一流紙にここまで大きく取り上げられ、しかもマジックを“High Culture”として捉えていることが分かる記事なので、ある一定の知識階級の方にもさらに強くアピールしたことと思います。これほど強力な「マジック」そのものへの宣伝は、アメリカでも数少ないでしょうね(最近では、有名な文芸誌『The New Yorker』に昨年掲載された、私の先生、Jamyの記事くらいでしょうか?)。

 去年、藤山新太郎師が「呑馬術(文字通り、本物の馬を飲み込んでしまう和妻の1つ)」のショウを公演されたとき新聞各紙が報道しましたが、日本においては近年ではこれくらい。日本でも、もっとこうした素敵な記事を読んでみたいと切に願ってしまいます。

(話は変わりますが、今年も5月のゴールデンウィークに博物館明治村において、新太郎師による和妻のショウが開催されるようです。呉服座という趣のある芝居小屋での和妻は、大変見ごたえがありますよ。お近くの方は是非。)



※注:クレイ・マックブライド氏ー有名なジェフ・マックブライドさんの弟で、プロの写真家。多くの一流ミュージシャンやスポーツ選手の写真を撮影されています。大変キレのある写真を撮ることで有名です。



追記:スティーブさんと日本の関係を、彼による素敵なコインマジックの解説の翻訳と共に、奇術専門誌『The Magic 79号』『The Magic 78号』の中でご紹介しました。未読の方は是非。このコインマジック、誰にも教えたくなかった位、本当に凄くて素敵な手順です。
(3月17日追記:『The Magic』の号数が間違っていました。正しくは78号です。Nさん、申し訳ない!)
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“Magic ! - The Science of Wonder”

 私が新居に引っ越してすぐ連絡を頂いた方の1人に、歴史家でありプロマジシャンのリチャード・ハッチさんがいらっしゃいました。

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(私とハッチさん@馴染みのカフェ)

 ハッチさんの凄さは、これだけではありません。奇術専門書に関する世界一の書店である“H&R Magic Books”(少し前に右側のリンクにもこっそり加えました)の経営者であり、カードマジックの祖、J・N・ホフジンサー氏や、本名不祥の伝説のギャンブラー、S・W・アードネス氏の研究家(2008年に発売されたこの11巻セットのDVDにもハッチさんは登場して、『プロが明かすカードマジックテクニック(原書名“The Expart at the Card Table”)』の歴史などについて語っています)、『ロベルト・ジョビーのカード・カレッジ』シリーズなどの翻訳家(ドイツ語から英語)、もちろんご自身も凄腕のパフォーマーでもある完璧超人です。
 2007年にはSAMの機関誌『MUM』で特集記事も組まれています(お、ここでその記事を読むことができますね。※pdfファイルなので注意!)

 最近発売された『Friends of Roger Klause vol.1 & 2』というDVDにも出演され、そこで解説されているハッチさんの「ヒンズーヤーン(復活する糸)」は絶品です(ちなみに、このDVD、あまり広まって欲しくないくらい、かなりオススメです。亡くなった名人、ロジャー・クラウズ氏の追悼として作られたのですが、出演者も内容も両方とも素晴らしい)。
 ハッチさんとお話しするときは、マジックに関する歴史的な話や日本文化の話などでいつも盛り上がりますし、古書のことで質問があると、いつも親身になって答えてくださいます。

 そのハッチさんが協力した、マジックの歴史やその蘊奥に触れることができる特別展示“Magic! - The Science of Wonder”が、テキサス州ヒューストンにあるヒューストン自然科学博物館(Houston Museum of Natural Science)で先月26日から9月6日まで開催されます。この映像が、博覧会の予告編になります。
 そのプレオープンとパーティーに参加されたそうで、「凄かったよ! 本当に良い博覧会になるよ!」と興奮気味に教えていただきました。

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(これはそのポスター。欲しいなぁ、これ)

 この特別展のために、ゲスト学芸員としてスコット・サーヴィン氏が招かれました。氏の名前は、古くからの愛好家の方ならきっとご存知だと思います。
 1980年代に登場し、さまざまなマジックの大会で賞をかっさらっていったイケメンマジシャンです。1986年に開催された“ニューヨーク・マジック・シンポジューム東京大会”にも出演し、その素敵な演技で観客を魅了しました。素敵な2本のリングの手順、ケーンと四つ玉、そして「雨に歌えば」にのせてタップダンスを披露した後行う人体浮揚で〆る、気品漂うクールな演技は今でも脳裏から離れません。
 その後、サーヴィン氏は有名なコメディーチームに参加し、徐々に映画や脚本制作に力を入れるようになり、映画制作のプロダクションを設立して、マジックの世界から離れていきました。
 2004年にここの博物館の館長からマジックに関する特別展の話しを受け、今回の特別展が開催される運びとなったそうです。この映像では、サーヴィン氏本人が“マジックの原理”を紹介しています。

 今回の特別展を開催するにあたり、サーヴィン氏は歴史家として名高いトッド・カー氏やマイク・ケイヴニー氏などの協力を得て展示内容を決めていったそうです。そしてJ・N・ホフジンサーやアードネス、そしてマジックの文献に関する歴史はハッチさんに、国内外の奇術道具に関するコレクターにも協力を求めていきました。
 その展示内容の豪華なこと。ここにその一部が掲載されていますが、他にも“近代奇術の父”ロベール・ウーダン氏の名作“Light and Heavy Chest”のオリジナル、ホフジンサー氏が実際に使用していた用具(レプリカですが、ブックテストの傑作“The Word”に使用する本、全8冊もあります)、“King of Koins”と呼ばれたT・ネルソン・ダウンズ氏の旅行セット、実際にジプシーの老女が演じている「ジプシー・スレッド(復活する糸)」の演技の映像(「ジプシースレッド」は、元々ジプシーが占いの客寄せのために行っていた芸当の1つで、それがマジックの世界に流入したのです)など、非常に興味深い品々が多種多様に展示されています。

 しかも、この展示会ではマジシャンが実際に演技もします。そう、マジシャンも展示の一部になっているのです! そして、その顔触れの豪華さときたら。
 ハッチさんをはじめ、ジョン・カーニー氏、ビル・パーマー氏、スコット・ウェルズ氏、そして、サーヴィン氏の親友であり、ヒット映画『アダムスファミリー』(1991年)の“手”の演技でも知られるクリストファー・ハート氏などの名手たちが続々と登場するのです(この映像ではカーニー氏のコインの演技を、別の映像ではカップと玉の演技楽しむことができます)。

 地元メディアもこの特別展を取り上げ、これこの 映像を見れば、取り上げられ方も良く分かります。

 さらに、ここだけではありません。今年の10月末からはニューヨーク市のアッパー・イースト・サイドにあるユダヤ博物館(The Jewish Museum)で、脱出王として名高いハリー・フーディニー氏(このサイトで、氏の肉声を聞くことができます)の特別展“Houdini : Art and Magic”が開催されます。フーディニーが芸術に及ぼした影響、なんて凄く興味深いではありませんか! 

 ヒューストン自然科学博物館の特別展の内容や、このフーディニーの展覧会の要旨をざっと見てみると、マジックを“High Culture”としてとらえているんですよね。マジックの地位向上を考えると、一般の方に対する大変素晴らしい啓蒙になると思います。また、期間も長いですから、より多くの方にご覧頂くチャンスにもなります。
 マジックを1つの文化としてとらえることが出来る人が研究者にいて、それをアピールできる環境があることに感心し、非常に羨ましく思うのです。
 日本でも河合勝先生の素晴らしいコレクション展示などが近年ではありましたが、こうした展覧会をもっと日本で観てみたい!と切に願ってしまいます。日本においてマジックを1つの“High Culture”として一般の方々にとらえてもらうには、一体どうすれば良いんでしょうかね…? うーん、また悩みの種が1つ生まれてしまいました。

 この2つの展覧会、もう少し先になるけれど実際に観に行こう、と心に誓った今日この頃です。

 ちなみに、ヒューストンの展覧会については、奇術専門誌『MAGIC』にハッチさんが寄稿していますので、近いうちに掲載されます。マジックの歴史がお好きな方は、必読の記事ですよ!

Day of Dumpling(餃子の日)

 立ちはだかる仕事の壁をえいや!となぎ倒していたら、ある日の予定がぽかっと空きました。これは今しかない!と思い立ち、ある行動に出ました。そう、現実逃避げふんげふん、これしかありません!

 大陸風の本格派餃子作りです。

 毎年冬になると、これからのシーズン用に餃子をいっぱい作り置きをします。焼いても良し、茹でても良し、蒸しても良し、鍋に入れても良いと、我が家では冬の食材として重宝しています。半日もあれば、200個くらいは楽勝で作ることができます。

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これは中身の餡。

 餡を作っている最中はバイオレンスな香りが漂い、とてもお目にかけることができない惨状になりますので、完成したものだけを(これでも結構グロいなぁ…)。

 大学時代からの親友、台湾出身のYouさん(今はなんと、某国立大学の准教授!)に昔教えてもらったレシピをベースに、いろいろ試して良かったアイデアを加えたオリジナルレシピです。
 ニンニクは入れません…というか、本場の餃子にはニンニクは入れません。その代わり、私の家ではニラと万能ネギを入れますが、これらの香味野菜はアクセントとして本当に小量に入れるだけです(それでも香味野菜を入れ過ぎると、味のバランスが急激に悪くなります)。

 フードプロセッサーのおかげで、野菜をみじん切りにするのも楽になりました。葉物野菜が美味しい季節になりましたね。私は白菜とキャベツをある割合でミックスしています。みじん切りにした葉物野菜に塩をかけ、水分を出しながら同時に野菜自体に軽く塩けを付けます。塩をして10分もすれば、驚く量の水が出てきます。
 みじん切りにした野菜の水気を完全に絞りきるのがポイントで、それに使うタオルやさらしは、毎回ビリビリに破れてしまう程です。

 お肉は豚のバラ肉の塊を買ってきて、自分でたたいてひき肉にします。これだけで、普通に買ってきた豚ひき肉で普通に餡を作るより数段美味しくなります。どんなお肉でもフードプロセッサーを使わないほうが、時間はかかりますが絶対に美味しいと思います。食べたときにお肉を感じるのが、美味しさの秘訣だそうです。
 この野菜と豚ひき肉に調味料各種を加えて、色が変わるまでしっかり練り込みます。練り込むのが、美味しい肉汁を得るための秘訣です。この時点で、もの凄く良い香りがしてきます。

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そして餃子の皮。
 
 皮も自作です。この生地は、強力粉を鳥がらのスープと合わせ、紹興酒でちょっと香りを付けて、豚のラードを練り込んであります。そうすると、皮自体が大変美味しくなるのです。ラードを入れるのは、焼いたときに皮がカリカリモチモチになるから。

 生地が出来たら、丸めて千切って伸ばして皮を作り、包んでいきます。この過程を楽しむために、餃子作りをしているようなものです。ビバ、単純作業! 小学校時代の図画工作の時間を思い出します。

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出来た!

 わ、なんて手作り感満載…。丁寧に作っている時間が足りないので、これで我慢。Youさん曰く「大雑把で良いのよ!味が美味しくって、お腹に入れば同じよ!」とのことなので、先生に習って大雑把です(端が外れて肉汁が流失しなければ良いらしい)。
 不格好でも、以前親しいシェフと大陸出身の方に食べていただいたとき太鼓判をいただけたので、これで良しとします。今回妻のCathyは初めて作ったのですが、私の数十倍も成形がうまいので、なんだか非常に悔しいです。

さあ、味見をしてみましょう!

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まずは、シンプルに茹でて水餃子に。

 茹でたこの餃子をお箸でつまむと、小籠包のようにタプンタプンしています。
 中の餡は大変ジューシーで、餃子を噛むと肉汁が滴り落ちるほど溢れてきます。そして、外の皮はつるりと咽を通っていきます。1口で食べないと、中の美味しい肉汁がすべて落ちてしまいます。 
 お肉のうま味、野菜の甘み、アクセントとなる香味野菜の香り、モチモチとした皮…あぁ、苦労が報われる瞬間です。火傷しないように注意しながらハフハフ言いながら食べているうち、あっという間に胃袋の中に消えていってしまいました。

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続きまして、焼き餃子。

 香ばしい皮の部分とふっくらもちもちした皮の調和が絶妙です。流行の羽根つき餃子も良いのですが、私は普通に焼いたほうが好きかなぁ(なので我が家に来た客人には、どちらを好むか聞いてから焼き始めます)。餡のジューシーさはこれも凄い。うーん、ビールが欲しいなぁ…。私もCathyも大満足でした。

 久しぶりに餃子を作りながら、ふと思い出したことがありました。

 数年前、私が好きなブログの1つ「タケルンバ卿日記」(画面を下にスクロールすると記事が出てきます)に書かれていて、「まさにその通り!」と膝を打ったエントリーがありました。そこには「料理が出来ない人には共通して行うことがある」と分析をし、「複雑化」「味見をしない」「アドリブを加える」という3つの項目を挙げていました。
 「素材」の味をさらに高めるためにシンプルな味付けや調理法を選べば良いのに、余計なことをして素材の味をダメにしてしまう。味を確かめもせずに、機械的に素材の中に調味料をぶち込んでしまい全体として料理をダメにしてしまう。自分勝手に解釈をして、基本通りに料理をせず、料理をダメにしてしまう…これって、何かの芸能に大変似ていませんか? 

 以前、何で読んだか忘れてしまいましたが「マジックは料理と似ていて、コース料理と同じで、前菜、スープ、魚料理があってメインディッシュがあってと、コース全体を考えて観客に提供しなければならない」といった主旨の文章がありました。言わんとする事は分かりますし、そうできれば素晴らしいでしょう。しかし、私はこの文章の主旨は「半分当たりで、半分ハズレ」だと思います。
 マジックと料理は似ている部分があります。ここまでは当たりです。しかし、その後半部分は、あまりにも言葉が足りなさすぎると思うのです。

 料理を提供するには、まず大前提として「素材」そのものの味を知らないといけません。旬の時期と季節外れの時期では、同じ野菜でも味がまったく違います(冬キャベツと春キャベツでは、同じキャベツですが、それぞれに向く料理、向かない料理があります)。その差が分からないと、料理の出来としては善し悪しが出てきてしまいます。これを知ることが「味」を知る第一歩なのだと思うのです。
 マジックなら、1つ1つの作品が「なぜ不思議なのか?」とか「なぜ効果的なのか?」「どういう条件下で演じたら、効果的に見えるのか」ということが分からなければ、まずそのマジックを作者の意図通りに演じることは難しいでしょう。
 
 そして、次に基本的な「味付け」を知らなくてはなりません。「あまい、からい、にがい、しょっぱい、酸っぱい」といった味付けを知らなければ、素材の「うまみ」を引きだすためにベストな調味料を選んだり、使用したりすることは出来ません。
 本当にその素材の味を引きだしたいのなら、必要以上の味付けは一切不要です。上記のブログにもありますが、最高品質であるA5ランクの本当に良いお肉なら、良い岩塩を少し振って、肉の脂を溶かすくらいに軽く炙るだけで、味付けは他に何も要りませんよね? これと同じです。“教授”ダイ・ヴァーノン氏が語った「Less is More(少ないほうが、より豊かである)」という言葉にも通じます。
 マジックの世界では、さまざまな古典的な著作の中にその「味付け」方を知るヒントが隠されている、と思います。この考案者は、ある作品でどうしてこの技法を使っているのか、なぜこの技法はこの文脈で使わなければ効果的に見えないのか、といったことは、過去の名作と言われる作品を詳細に分析すれば、そのパターンがある程度見えてきます。
 それが見極められるようになって、初めてある作品をアレンジできる(または、アレンジの必要がないと気がつく)のだと思うのです。しかし、このパターン化もただ機械的に行ってしまうと「味見をしない」料理に成り下がってしまいます。
 
 さらに、自分の「味覚」が確かであること。
 上でも述べましたが、作品によってはもう完成されていて、自分の好みにハンドリングを多少変えるにせよ、いじる余地がまったく無い作品もあります(以前、アメリカのカーディシャンであり理論家のダーウィン・オティス氏は、ある掲示板に自分がそう思う作品のリストを発表しています)。こうしたことを理解するには、いろいろマジックを見聞きし、上記の様に自分なりに分析をして、初めて分かることなんだと思います。
 料理だったら、いろいろ食べ歩きをしたり、自分でいろんなレシピを試して、分析して、初めて「これ、おいしい!」と分かるのです。
 ジャンクフードばかり食べていたら、ジャンクで大味な味しか分かりません。逆に、高ければ美味しい料理であるとも限りません。その味はあなたにとっては好物かもしれませんが、他の方には絶対受け入れられない味かもしれません(「蓼食う虫も好き好き」ってやつですね)。それに、流行の味だからといってそれが絶対に美味しい訳でもありません。
 一見古く感じるかもしれない老舗の味には、長年培われた顧客から愛された味の秘密が隠されています。新しい味でも研究熱心な主人が送りだす味には、骨太さを感じます。
 「味覚」を獲得するには、経験という手間暇をかけなければならないでしょう。ここにショートカットは存在しません。この経験を得るという、すべての事象を柔軟に謙虚な態度で受け止め、実地で試行錯誤し、自分なりの分析をし、そこから得た何かを自分の中に蓄積していく作業を絶えず行うには、探求心と向上心が確実に必要になります。こうした心がけが、その人の味に対するセンスを作り上げるのだと思います。センスなんて最初からないのは当たり前、問題は自分のセンスを作り上げ、継続してそれに磨きをかけていく心がけなのだと思います。

 この3つが、まずは料理の基本なのだと思います。優れたレシピやマジックの基本書とは、こうした基本を忠実に守ったお手本なのです。それを守れば必ず美味しい料理ができるのです。
 レシピを守って、それでもそれが美味しくない料理だったのなら、原因は3つに絞られます。1つにはレシピそのものが良くない(解説の仕方が良くないかもしれませんし、そのレシピを作った人がいけないのかもしれません)、2つ目にあなたの味覚に合っていない、そして最後に、作り手にそのレシピを理解したり作るだけの能力がない、ということでしょう。特に、そのレシピを作るとき、勝手に自己流のアレンジをしてしまっていることが無いか注意が必要です(これによって元のレシピが破壊されることもままあります)。ただ、レシピそのものが悪いと決めるのは、一番最後にしてください。
 好きなレシピを繰り返し作っているうちに、その考案者の考え方が徐々に分かってきて、作り手は大切な基本を身に付けることができるのです。
 
 やっとここで「その料理を作って、他の誰かに食べてもらえる」という実行能力が問われます。
 上の3つの基本を学んだうえで、実際に料理を作って火加減、匙加減、料理を出すタイミング(熱いものは冷めないうちに、冷たいものは冷たいうちに)などを初めて知ることができるのだと思います。料理の上手さは、ほとんど段取りの善し悪しにかかっていますから。本当に料理の上手い人は、調理しながら後片づけも一緒にしちゃいますからね。

 そして、完成したその料理を誰かに食べてもらい一言「美味しい」と言ってもらって、初めて料理は完成します。そして、その「美味しい」という一言が、次に作る一皿への活力になるのです。しっかりとした料理を1皿作るのも、実は大変な手間暇がかかるのです。

 頭の中でどれだけ凄いコース料理を考えても、3つの基本のうちの何かが欠けてしまって、きちんとした一皿が提供できなかったならば、どんなに技術的には素晴らしい才能を持ったシェフでも、多分そのコースは失敗です。
 編集が下手な映画監督が作った、冗長で退屈な映画を観ることと同じでしょう。帰り際に観客から「入場料と時間を返せ!」と言われるならまだしも、ほとんどの観客は黙って帰り、黙って二度とその監督の映画には出向かなくなるでしょう。レストランならば、もうそのお客さんは余程のことが無い限り帰ってきてくれません。そして、折角あなたが丹精込めて作った料理も食べてもらえる人がいなければ、何の意味もなくなってしまいます。

 マジックでも料理でも、まずは人様に楽しんで食べていただける「まともな一皿」を作ることが最初の一歩なのではないでしょうか。私は当分「一皿入魂」で行きたいと思います。

 ただただ、私の舌が「馬鹿舌」でないことを祈ります。皆さん、どうぞ召し上がれ。

『ちょっとだけでも魔法が使えないなら、料理に余計な口を出すには及びませんよ』
ーシドニー=ガブリエル・コレット

 
(追記:上記のリンクについてですが、マヨネーズもキチンと使えば、本当に素晴らしいソースですよ。特に自家製のものは本当に美味しい。何事も「Less is more」ですね)

鉄と銀のあいだ

 一つ前のエントリーで、ブラボー中谷さんが発売された商品「ブラボーカラテ」についてのレヴューをまとめている途中、こうしたペンなどをお札に突き刺して、復活させる現象について前々から考えていたことがあり、別エントリーとしてアップさせて頂くことにしました。



 関西の名手、プロマジシャンのジョニー廣瀬氏が考案した傑作「インビジブルホール」が、奇術専門誌『クロースアップ'84』(小野坂東編集、マジックランド刊)や『Apocalypse』誌(ハリー・ロレイン編集、1985年3月号)などに掲載され、鉛筆やナイフなどをお札に突き刺した後、その穴を復活させる現象が広まりました(氏が出演するこのレクチャーDVDの中で、詳細にこのマジックが解説されています)。

 1990年頃になって、ティモシー・ウエンク氏が考案した「Misled」というマジックを、超一流のイリュージョニスト、デヴィッド・カパーフィールド氏が自身のテレビショウで演じたことで、この現象とプロットが一躍注目を浴び、この作品は世界中で爆発的な大ヒット商品となりました。そして、その後様々な改案が商品としても登場することになりました。
 関西在住の天才クリエーターである益田克也さんの「ザ・ブレイド」はその中でも特筆すべき商品です。もし、これらのマジックの実演をご覧になったことがなければ、絶対ビックリされると思います。上記のウェブサイトで実演の動画を是非ご覧ください。

 そして、その後アメリカの素晴らしいクリエーター、ジョン・コーネリアス氏が「Pen Through Anything」という商品を1993年に発表し、この商品も世界中で爆発的にヒットしました。 当時、数えきれないほどの海賊版が出回り、今でもこのマジックを世界中のマジシャンが演じています(このウェブサイトで、本物と海賊版の比較写真を見ることができます)。

penthru.jpg

 そしてその後、コーネリアス氏自身がこのマジックの改良(?)版「パーフェクトペン」を1996年に発表しました。この商品に関する批評は、関西在住のベテランの愛好家、マジェイアさんが大変素晴らしい考察をされていらっしゃいます。

 マジェイアさんもおっしゃるように、道具であるクロス社製風のペンが、ちょっと貧弱に見えます(実際のクロス社の“クラシックセンチュリー”は、もっと豪奢なペンです)。「ペン・スルー・エニシング」も最近発売されているバージョンでは、これまた最初のモンブラン社製風のペン(上記の写真に写っているペンです)から似たようなタイプのクロス社製風のペンになり、ちょっと貧弱に見えるようになってしまったのが大変残念です。

 このマジックの改案としては、ニューヨークのダグ・エドワード氏が発表した作品が、株式会社テンヨーから「サイキックペン」として発売されています(リンク先のテンヨー社のウェブサイトに書かれている話は大変興味深いです)。このペンは普通に販売されているプラスチック製のボールペンそっくりなので、カジュアルに演じることが可能です。

 この商品に関して言えば、カリフォルニア在住のマジシャンだったジム・クレンツ氏が1993年に発表された小冊子『Pen Throught Everything』は必読だと思います。
 今では有名になった「破れ目の端が見える」サトルティーは、考案者のクレンツ氏によって、初めてこの小冊子の中で紹介されました。
 その後、この小冊子の内容と追加事項がレクチャービデオ『Jim Krenz's Pen Through Anything Video 』(リンク先では、画面を下の方へスクロールしてください)として1996年にA-1 MultiMedia社から発売され、2004年にはDVD化されました。この内容でこの値段は安すぎます(ただ、マジェイアさんもおっしゃるように、ペンを口や鼻などに突き刺す現象は、場合によっては大変下品に見えてしまうので要注意でしょう)。



 このペンを使った「お札の貫通」現象を多くの方が演じていらっしゃいますが、実は演じることが結構難しいマジックだと私は思います。技術的にも演技的にも、です。

 まず、最初に思うのは、この現象においてギミック(秘密の道具や仕掛け)を使った方法か即席の方法か、どちらが良いのか?という問題です。

 即席に「お札の串刺し」現象を演じる方法は、たくさん発表されてきました。中でも、海外ならデヴィッド・ハーキー、ジェイ・サンキー。エリック・アンダーソンの各氏による共作「East meets West - meets South」やダン・ハーラン氏の「Now U Z it」、カナダのデビッド・アッカー氏の「IntangiBill」、日本ならヒロサカイ氏の「インビジブルスリット」や「カラテ・ビリュージョン」、黒木憲一氏の「Cocktail Bill Penetration」(ゆうきとも氏の改案も含みます)、真田豊実氏の「指貫通紙幣」などの作品は特筆に値します。
 しかし、即席で出来る方法、シンプルな方法だからといって、簡単に演じられるとは限りません。タイミング、角度などに気を使わなければならない手順も多いです。さらに、即席で行う手順の多くは、本当にペンなどがお札に貫通している様に見えない作品や、大変怪しげな操作を行わなければならない手順も結構散見されます。こうなってしまいますと、折角即席で演じられるメリットは関係なくなってしまいます。

 では、ギミックを使ったマジックが良いのか?と言えば、そうとは限りません。ギミックを使うことにより「串刺し」現象に大変な説得力を生み出します(1つ前のエントリーや上記のこのリンクにある動画、ご覧になられましたか?)。そして、即席の方法では為しえない不思議さを生み出すことが出来ます。
 しかし、こうした説得力を得る見返りに、代償も払わなくてはなりません。ダイレクトな方法論を採用することが多くなるため、観客にギミックの存在を悟られる可能性も多くなってしまうのです。
 そこで、観客の意識からギミックを遠ざけるためには、次の3つの事を考慮されていなければならないと思うのです。 
 
 まず1つは「ギミックの使い方」の問題です。どう、そのギミックを取り出し、処理をするか?という問題です。私の先生Jamyから教えてもらったのですが、アメリカの亡き名人、マイケル・スキナー氏が言っていらっしゃったことがありました。
 氏はスライハンドの名手として知られていましたが、同時にギミックをとても効果的に用い、本当に不思議なマジックを演じていらっしゃいました。スキナー氏がギミックを使った演技を組み立てるときにはいつも「どうそのギミックを取りだして、どう処理をするか?」と考えていらっしゃったそうです。そして、そのどちらか一方でもうまく行かない場合は、どんなに現象が良くても、氏のレパートリーにはならなかったそうです。 
 道具に集まりやすい観客の注目ををどう逸らすか?、そして観客に気づかれないようにどう処理をするか?、もし不幸なことに使っている道具に注目が集まってしまったときは、観客が納得するようにどう自然に切り返すか?…これらのことが考えられていなければなりません。

 そしてもう1つ。これはもっと深刻な問題です。「ギミックを使っていることが分からないかどうか?」です。ギミックそのものの出来もそうですが、ギミックを用いるとき、自然なハンドリングになっているか?なども精査しなくてはなりません。
 いくら現象が凄くても、それを扱っている操作が不自然になってしまっていては、観客にギミックを使っていると見抜かれてしまいます。ギミックの臭いを観客が感じてしまったら、そこでゲームオーバーです。これは、どんな優れた即席で行う方法でも、何かをしていると分かってしまったらまったく同じことです。

 こうしたことを考えた後には、もっともっと大切な問題が控えています。「観客が本当に“ペンをお札に突き刺した”と信じてくれるか?」という問題です。
 実際、私はこんな体験をしたことがありました。この「ペン・スルー・エニシング」が好きで、頻繁に演じていたころの話です。あるとき、マジシャンではない方にこのマジックを演じる機会がありました。その方は、この演技を見てすぐにこう言われたのです「面白いけれど、そりゃウソだね。絶対にお札は破れていないでしょう」
 いきなりそんな事を言われてしまった私は、ビックリしました。それまで、そんな事は一度も言われたことはありませんでした。不思議に思い、どうしてそう思われたのか伺ってみました。
 すると、その方は製紙関連のお仕事をされている方でした。お札に使われる紙は大変丈夫なので、そんな力でペンをお札に突き立てた位で、お札に穴を開けられる訳がないとその方は看破されたのです。

 つまり、いくらペンなどがお札に突き刺さっている“証明”を観客に対して行ったとしても、観客が「本当にペンをお札に突き刺した」と信じてくださらなければ、これもそこでゲームオーバーです(ありがたいことに、その後その方からアドバイスを頂いて、演技がちょっとリアルに見えるようにできました)。
 これは演者の演技力やショウマンシップだけでなく、普段の行動様式まで関わってくる問題です。つまり、演者ならしそうな行動や観客が納得できる行動でないと、動作に説得力が生まれないのです。極端な話、どうして私たちはペンをお札に突き刺さなければならないのでしょう?

 この3つの問題を解決するには、結構真剣に考えないと難しいように私は思ってしまいます。これはある種のダイレクトな「復活」現象などにも当てはまることではないでしょうか。

 “プロフェッサー”ダイ・ヴァーノン氏が語ったように、マジックは「現象がすべて」という面もあります。だからといって、何でもすれば良い訳ではありません。本当に不思議なマジックの作品というものは、賢いギミックと良い技法をバランス良く、最もシンプルに使用しています。その現象を最高にまで高める方法を使い、その方法を賢く上手に、しかも合理的な理由付けの下で実行する事が大切になるでしょう。
 それを決めるのは、演者であるあなたのバランス感覚に頼るしかありません。日本画壇の最高峰である平山郁夫画伯がおっしゃったように、このバランスを求める行為こそが生きるということであり、美を追及することであると思うのです。
 あなたがこのマジックを行なうとするならば、どう演じられますか?

『最も安定した元素は、周期律の真ん中、ほぼ鉄と銀のあいだに現れるのだ、クラリス。
銀と鉄のあいだ。まさしくきみに相応しいではないか。 ハンニバル・レクター』
ー 『ハンニバル』トマス・ハリス著、高見浩訳、新潮文庫、2000年

Trick or Treat?

"Dedicated to Tom.... Without whom, I could do very well."
- 『Life with Tom(邦訳名:トム氏の生活と意見)』Jerry Mouse著、1953年


 このカテゴリーの名前は、私が大好きなアニメーション『トムとジェリー』の短編「Life with Tom(邦題:トム氏の優雅な生活)」の中に登場する、ネズミのジェリーが著した本の題名から取りました(この作品は著作権が切れているようなので、リンクしておきます)。
 敬愛するトム氏のような七転八倒、試行錯誤の日常の中で、マジックについてちょっと考えていることをこのカテゴリーで綴っていきます。



 先週の土曜日はハロウィーンでした。皆さんは如何お過ごしでしたか? ここ数年、ハロウィーンも日本で認知されてきて、いろいろなレストランやバー、クラブなどでは仮装パーティーが開催されるようになっていますね。

 残念ながら今年は所用のために自宅を離れていて、M嬢からのせっかくのお誘いを断らないといけなかったり、自宅の近所に住むアメリカ人の子供たちにお菓子をあげられなかったのが大変心残りでした。

 我が家でハロウィーンの定番といえば、これ。

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 まずは“Peeps”というお菓子。甘いマシュマロの砂糖がけです。アメリカのパーティーにはかかせないお菓子ですね。その時期にあった可愛いマシュマロが登場するのですが、ハロウィーンの時期は、オバケやパンプキン、ドクロなど、いろいろな種類が出回ります。これからの時期はクリスマスや雪だるまといった種類に代わっていきます。

 そして左側にある袋は“Monster Munch”。これは最近、日本でも輸入食品を扱うお店で購入できますね。可愛いオバケの形をしたポテトチップスです。今はケチャップ味のものもありますが、ノーマルな塩味の方が私は好きです。イギリスで売ってる“Mega Monster Munch”のオニオン味も好きなのですが、なかなか入手ができません(どなたか売っているお店を知っている方がいらっしゃいましたら、是非メールフォームからお教えください。よろしくお願い致します)。

 右側に置いてある箱は、仕掛け絵本なんです。これをパタパタ開いていくと、いろいろなモンスターやオバケが出てきます。こんな感じです。

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Boo!

良く考えられていて、私の好きな仕掛け絵本の1冊(1箱?)であります。

 株式会社テンヨ-から、ハロウィーンにちなんだマジックがここ数年出回るようになりました。このシリーズが大好きで、この季節は頻繁に使っています。

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 去年、我が家を訪れたアメリカ人の子供たちにハロウィーン版の「魔法のキャンディー」を見せたら、口をあんぐり開けてビックリ。きゃっきゃ言いながら、出現したキャンディーを持って帰っていきました。
 いわゆる“お化けハンカチ”は昔から大好きで、いろいろ重宝しています。「ゴーストハウス」のハロウィーン版は、子供っぽいのですが好きなんですよね。
 ここの写真にはついていませんが、「ゴーストペット」も不気味です。
 この時期は、フレッド・カップスが有名にした、ドイツのブルーノ・ヘニングが考案した「指輪ケースに通うカード」とこのマジックを組み合わせて演じています。この「指輪ケースに通うカード」については、拙訳の『ジェイミー・イアン・スイスのクロースアップ・マジック』の中で詳細に分析されています。「不可能な場所へ移動するカード」の現象がお好きな方は必読だと思います。
(関係ありませんが、こうして見ますと、考案者の下村知行さんはオバケ好きなんですね!流石、演出面やストーリーからマジックを考えられる方だと思います)

 そして、今一番のお気に入りはこれ!。

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 大人気のディズニー映画『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』(1993年)がデザインされた「マジックトランプ」です。裏模様は主人公、ジャック・スケルトンがあしらわれています。
 このデック、天地があるのですが、広げすぎなければそんなに気になりませんし、昔テンヨーのディーラーだった亡き名人の谷川徹夫さんに教えていただいた方法を使っても良いでしょう。
 デックに選ばれたカードを戻しますが、このとき完全にデックを立てて、カードの表面が観客に向くように広げてます。そして、観客のカードを戻すときも表面を相手に見せながら戻してしまうのです。手順によっては顔を横にそむけながら行えますし、そうすることで大変フェアな印象を与えます。
 それでも、一般の観客はデックの天地なんて、まったく気にしないでしょうけれども!

 4枚のエースには、それぞれジャック、その恋人のサリー、サンディー・クローズ、そして可愛い幽霊犬のゼロが、ジョーカーには3人組の子鬼と無法者のブギーが描かれています。
 何と言っても、このセットには主人公ジャックの手を模した小さな魔法の棒が付いているのです。これを使って行う「ライジングカード」や、ゴムひもの上にのせた魔法の棒がひとりでに動き出して観客のカードを当てるマジックなども解説されています。
 こんな感じです。

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(ジャックの手が自然に左から右へズルズルと動いていきます。大変不気味な光景です)

 お馴染のマジックも、ちょっと工夫でこのうまさ(By神田川料理道場)ですね。
 この“ジャックの手”を「お化けハンカチ」と組み合わせたJ・C・ワーグナー氏のカード当てや、ユージン・バーガー氏の「ビジュアルに引っ繰り返るカード」に使っても、凄く気持ち悪いカード当てになりますね! ジャックの手を使った「自動書記」も気持ち悪いでしょう。

 「こんなオモチャ、使ってらんない」という方は、今年の1月に発売された、このDVD-Boxセットを捜されてみては?
 初回限定版の特典として、ターミネーターの腕のレプリカが付いているのです。これが、このジャックの手と同じくらいの大きさなのです。これも雰囲気が出ます。
 捜すのは難しいかもなのですが、大きな家電量販店のDVDコーナーでは今も見かけますので、本気で欲しい方はお早めに(11月に発売される通常のボックスセットが出た時点で、下手をすると回収されてしまう可能性があります)。ちなみに、Season1は非常に面白い! 今、毎週土曜日に放送中です。

 テンヨー製のマジック、私は大好きです。演じるたびに思うことがあります。
 この「マジックトランプ」「ミスターラビット」「チャイナリング(小)」、そして「ダイナミックコイン」など、もう何十年というスパンにわたって脈々と販売され続けており、今でもデパートの実演では大人気です。
 こうしたロングセラーのマジックは、すべてシンプルでインパクトの強い現象なんですよね。私見ですが、「ダイナミックコイン」はコインマジックの最高傑作だと思います。「世界最高のコインマジック」というキャッチコピーが、これほどすべてを言い表している商品も少ないでしょう。こんな不思議なマジックは、そうそうお目にかかれません。
 まったく怪しげなテクニックなしに、出現、消失、移動、交換、変化、貫通といった、マジックの現象の多くがこの道具一つで見せることが可能なのです。しかも、道具は事前、演技中、事後といつでも改めが可能なんて、ありえません。もし、私がこのマジックを考案したのなら、絶対に誰にも教えないマジックにするでしょう。

 テンヨー社製のマジック特有の、おもちゃのような道具立てがお嫌いな方もいらっしゃいます。でも、こうした見た目に誤魔化されてはなりません。
 最近カナダで面白い動きがありました。「Tenyo Elite」です。テンヨー社のウェブサイトでも紹介がありますね。

 テンヨーの製品が好きなカナダの愛好家が、プラスチック製ではなくもっと質の高い素材を使い、プロも使いたくなるような仕様でテンヨーの製品をリメイクしたのです。きちんと株式会社テンヨ-に話を通して監修してもらい、製造販売の許可を得て今回の発売にこぎ着けたようです。
 鈴木徹さんが考案されたメンタリズムの傑作「フォーチューンスティック」と、下村知行さんが考案された素晴らしい「ファジィコイン」(タイトルに時代を感じますね!)の2作品がちょうど発売開始になりました。
 現象としては一級品の作品が、しっかりしたアルミ合金で美麗に作られていたのなら演じてみたくなりませんか? すべての作品をこうすべきだとはまったく思いませんが、これも「ちょっと工夫で、このうまさ」的な考え方の1つだと思います。日本での11月末の発売を待つと吉でしょう。

 テンヨー社製のマジックが、いろいろな一般の方が購入できるようなデパートや量販店で販売され続けられていても、また多くの一般の方が購入されていても、それでも観客に強いインパクトを与えます。
 これらの道具を購入して持っている(または持っていた)一般の観客に演じても「私が前に買ったのと違う!」と言われたり。

 こうしたロングセラーのマジックというものは、古典でありながら常に最新作なのだと思うのです。
 珍奇な道具立てや現象も面白いですが、一般の観客は、そうしたことよりも、マジックというメディアを通した“幻想”を楽しんでいるのではないでしょうか? マジックの道具や作品は、あくまでも、その“幻想”を紡ぎだすためのツールであって、その新旧とかはあまり関係ないように思います。

 ただ、確かに道具立てとか演じるTPOに合わせた見た目とかには気を使わなければなりません。演じる場所によっては、プラスチック製の道具は貧相に見えてしまうことも多々あります。
 でも、道具の持ちだし方や現象そのもの、そして演出如何によっては、プラスチック製の道具が絶対に使えない訳ではありません。
 例えば、「魔法のミニカー」は、私も大好きなカード当ての道具です。アメリカの科学者でアマチュア・マジシャンであるブルース・ベネット氏は、子供のころの想い出話とおもちゃのミニカーを演出に使った素敵なカード当ての手順「Joey's Hero」という素敵な手順を、ペート・マッケイブ氏の名著である『Scripting Magic』(2008年)の中で発表しています(この本、マジックにおける演出を学ぶ方は必読です)。 
 ここまで凝らなくても、「魔法のミニカ-」ならば「おもちゃのミニカーです」とそのまま言って使えば、それだけで観客に魔法や楽しさを感じさせることは十分に可能だと思います。

 実際にはこうしたツールの使い方にこそ、“幻想”を紡ぎだす秘密が隠されているのではないでしょうか。

 なんか、最近こうした原点が見えなくなってしまっているような気がしてなりません 。古典的な作品の持つインパクト、もうそろそろ見直されても良いような時期なのではないかなぁ、と思ったりする今日この頃です。

 株式会社テンヨー社製の「マジックトランプ」自体私は傑作だと思うのですが、この「ジャックの手」を使った演出はさらに素晴らしいでしょう。ハロウィーン関係なしに、しばらく使っていようかな?と決めています…おっと「マジックトランプ」自体はハロウィーン専用ではありませんので、オールシーズン楽しんで使っていただけますよ!
(もし「マジックトランプ」がお好きな方は、最近USプレイングカード社から発売されている、これまた質の良い「デランドの100ドルデック」もお試しあれ)
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yuki_the_bookworm  (a.k.a "べたねば")

Author:yuki_the_bookworm (a.k.a "べたねば")
何げない日常の中の、本と料理とマジック。

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