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今度は渋~いお茶よりも…。

 かなりマシにはなったものの、妻のCathyと風邪の移しあいをしている今日この頃。これではいかん!風邪を完全に退治しなければ仕事にもならん!ということで、jpmagicさんから頂いた、温かいコメントを実行することにしてみました。

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じゃーん。

 静岡茶です。近所のお茶屋さんで量り売りをしてもらいました(ビバ、下町!)。これからの時期、温かい日本茶は本当に美味しいですよね。ここ1週間は静岡茶で生活していますが、カテキンとビタミンCのパワーってやつでしょうか、なんか体調が良いのです。身体を冷やしていないのも良いのかも。これがjpmagicさんの健康の秘訣とみました。

 でも、お茶ばかりでも、ね。こう、何となく寂しいじゃないですか。やはり、日本茶と言えばこれでしょう。

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 この地方の銘菓「きよめ餅」です(うわ、ウェブサイトで見れるCM、凄く懐かしい…)。義母のCindyさんがこの地の大きな神社へ出向いたときに、ついでに買ってきてくださいました。
 「The羽二重餅」と言うべき、お手本のような羽二重餅です。あまりにこのお餅が好きすぎて、私たちの結婚式の引き出物にしてしまった程です。うーん、お餅と小倉あんのバランスが絶妙なんですよね。甘すぎないのが最高です。ちょっと硬くなったら、オーブンで少し炙っても美味しいのですよ…。お茶もきよめ餅も進みます。ああ、たまらない。冬ならではだよなぁ。

 ほら、風邪予防にはもっと沢山お茶を飲まないとダメじゃないですか。でもやっぱり、味に変化も欲しいですよね。そこで病院の帰り道、ここへも立ち寄ってみました。

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 両口屋是清名駅地下店です(写真の許可、ありがとうございました!)。
(両口屋是清の名前を聞いて、まじかる☆タルるートくんを思い出したあなたは、相当なマニアです。本当にこのお店の名前からとっているのです)

 このお店はこの地では老舗の和菓子屋さんで、表参道ヒルズにある「R style」は、このお店が経営しています(ここの「江戸前おはぎ」とあんみつは美味しい!)。

 このお店の和菓子に、この地方では有名な「千なり」というどら焼きがあります。
 私はどら焼きが昔から大好きです。独断と偏見で上野の「うさぎや」さんのものが日本一だと思うのですが、贔屓目抜きで「千なり」も負けてはいません。大納言小豆を使った小倉あんの上品さと、ふわふわと柔らかい皮のバランスが絶妙なのです。
 店頭で職人さんが手焼きをする、焼きたての「千なり」である「あゆち千なり」を唯一買えるお店がここ。ちなみに「あゆち」っていうのは、古語で「幸せを運ぶ海風」の意味、転じてこの地方を指す言葉になります。通常販売されている「千なり」も十分に美味しいのですが、「あゆち千なり」は私的全国どら焼きランキングでもトップ3に入る美味しさです。

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 これは季節限定の柿あん。お、さっぱりとしたあんで、フルーティーな感じも残ってる。これはいけますね。柿の甘さって、日本独特の甘さの基準だよなぁ。満足できる甘さなんだけれど、くどくない。うーん、お茶にも合うなぁ。 あゆち千なりは、通常版の千なりよりも一回り小さいのですが、十分満足できます。

そして、ここのお店のスペシャリテ。

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小倉マーガリンです(わざと半分に割ってあります)。

 もちろん、普通の小倉あんでも十分に美味しいのです。しかし!これはさらにその上をいきます。もうね、焼き立てホヤホヤなんで、マーガリンが熱でとろりととろけて小倉あんに絡んでいるんですよ。そして、そのとろけて甘さのついたマーガリンが、ふわっふわの皮に染み込む訳ですよ。不味かろう訳がないのです!!
 漫画家の花輪和一さんが描かれた名作実録マンガ『刑務所の中』青林工藝社刊、2000年)の中で、ロールパンにのせた小倉あんの上にマーガリンを塗って食べる名シーン中に「脳みそがとろけるほど美味しい」という表現がありまして、これはこの地方の方々なら諸手を上げて納得できると思います(え?上げない?…それは失礼しました)。温かいお茶が口の中をサッパリとさせてくれます。この国に生まれて良かった、と心から思う瞬間です。
 
 うーん、渋いお茶に和菓子は合うなぁ…。幸せです。これも静岡茶を飲んで、風邪の予防をするためなんです。「あゆち千なり」は、あくまでも風邪予防のついでに食べています。

風邪の予防のためには、心を鬼にしてもっとお茶を飲まないと! 実は、さらにお茶にあう和菓子があります。
この美濃忠さんの…うん、Cathy、なに? 「今年の秋から、お前はどんだけ食べてるんだ!」って? え、ちょ、ちょっと…痛たたた…

自粛中 : しばらくお待ちください)

…やっぱり、妻のCathyが一番怖い。



・きよめ餅総本家 名古屋市熱田区神宮3-7-21 Tel : 052-681-6161 年中無休

・両口屋是清 名駅地下店 名古屋市中村区名駅3-14-15(メイチカ内) 
Tel:052-551-4510 年中無休(元旦は除く:あゆち千なりは11:00a.m.から販売開始)
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memorandum #4

今日のSnap! 

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もう年末も目前なんですね…orz



 アメリカじゃ、Thanksgiving Day真っ盛り。JamyとRichardは七面鳥を焼いたそう。我が家も七面鳥を焼いてみたいけど、時間がまったく無し。以前、折角美味しいレシピを教えてもらったのになぁ…。



 昨日は「メンバーズ・エルム」へ。マスター、山内利夫さんの誕生日パーティーにお呼ばれさせていただきました。

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 お店にはマスターの誕生日を祝う人々が溢れ、スタッフの皆さんもニコニコ。お店のボス、おたかさんも「もう、準備が大変なのよ!」と言いつつも「でも、マスターは幸せ者だね」とニコニコ。エルム全体が幸せな空気で包まれていました。こういう幸せな空間、大好きです。
 山内さんが70才になられたなんて、まったくもって信じられません。私が今から22年前に初めてお逢いしたときから、全然お代わりがないですから(本当ですよ!マジック界の仙人、TON・おのさかさんも同じことをおっしゃっています!)。
 山内さん、本当にお誕生日おめでとうございました。いつまでも、お元気で僕らをビックリさせ続けてくださいね。

 山内さんの誕生日パーティーで思いがけず、プリマベーラSさんの演技を初めて間近で観ることができました。KAORIさん、AKANEさん、MAIさんの3名がいらっしゃっていました。
 演技のセンスの良さ、彼女たちの可愛らしさ、元気さが相まった、大変素敵な演技でした。彼女たち自身も、魅力的なんですよね。“So sweet”という表現がピッタリです。
 同席させていただいていた桂川新平さんとも一緒に感激。山内さんも彼女たちの「観客を喜ばせたい姿勢」にニコニコでした。
 もし現象の「見立て」の仕方を彼女たち自身が考えていらっしゃるのなら、もの凄くセンスが良いでしょうし、もしどなたかがプロデュースをされていらっしゃるのなら、大変賢い方だと思いました。
現象1つ1つを流さずに、明確に見せようとする意志が感じられたのも好感が持てます(彼女たちのウェブサイトを読むとAKB48などに通じる物語性も感じたりして)。
 
 12月にこの地でライヴショウがあるそう。お時間がある方は、観に行かれると吉だと思われます。当日私は仕事が入ってしまっていることが分かり、血の涙が流れました。
是非、この地方都市に良いマジックのサポーターを増やしていっていただきたいです。
 週末まで彼女たちはこの地でプロモーション活動をされるようなので、この地方の方はテレビ番組などをチェックされるのも吉だと思います。
明日(11月28日)の朝は、メーテレの「WAYAYAあはっ!」にご出演されるようですよ。
 
 …ちなみに、最初彼女たちがエルムに入っていらっしゃったとき、セガの名ゲーム『スペースチャンネル5』の“うらら”が入ってきた!とビックリしたのは内緒!(そうそう、マイケル・ジャクソンも参加した豪華なゲームだったよな…)



 ゲームと言えば、FF13の予告編、カコイイ。今年は良いゲーム多くね? 
 今はXBOX360「Prototype」「BEYONETTA」「NAMCO MUSEUM VIRTUAL ARCADE」(これはJamyもオススメ)に興味津々。
 でも、折角入手していただいたゲームソフト「Left 4 Dead 2」ですら、やる暇なし。一日30分もプレイできず。一向にうまくなれないので、若い友人たちには呆れられる。それでも「ゲームは一日一時間」を昔から忠実に守っているので、高橋名人には褒められる自信あり。



 ゲーム機と言えば、Nintendo DS-i LLだと「マジック大全」「ちょっとマジック大全」が演じやすくなるんじゃね?と言ってみるテスト。あと、この機体でダウンロード専用の「Game & Watch」も激しくやっていきたい。



 このエントリーで触れました、デザイナーの片山正通さんが登場した「NHK プロフェッショナル:仕事の流儀」が放送されましたね。なかなか興味深い内容でした。再放送が来週の月曜日(11月30日)深夜にあるよう。デザインに興味のある方は必見かと。



 NHKといえば、「リーマン予想」に関するこのスペシャルが物凄く面白かったです。「素数」の謎を解き明かしていくのですが、本当にスリリング。前に放送された「ポアンカレ予想」の特集も最高に面白かったです。「リーマン予想」の特集は今夜(11月27日)、「ポアンカレ予想」の特集は来週の月曜日(11月30日)に再放送があるみたい。自然科学に興味のある方は是非。


 
 テレビといえば、この椎名林檎女史、ぱねぇ。破壊力抜群。これは惚れる。



 このiphoneの読心術が出来るアプリ、面白い。やっぱり、iphone買おうかなぁ。来年1月末までがチャンスか…。



 俳優の田辺誠一さんが繰り出すTweets(一言コメント)の面白さは異常なのですが、この一言にジーンときた。うは、同い年とは思えない…。

『世の中にあるプライドの99%は狭い自分を守るための言い訳な気がする。大切なのは誇り。それは誰から押されても揺るがない。だから主張する必要がない。戦って守らなくても大丈夫。とても強いもの、だから時にバカになれる。身軽に羽ばたける。』



 このエントリーで触れました、狂言師の野村萬斎さんによる「マクベス」が来春興行 。何が無くとも、観に行きたい。来年の2月から4月にかけて、良いお芝居の公演がめじろ押し。さて、どうするか。



 気になるデック2組。1組はこれ。もう1組はこれ。なにこれ、両方とも可愛すぎ。



 なにこれ、不思議。Crazy Diamond


 
 錯視といえば。先日海外在住のnon-magicianの友人からこんな写真が。一瞬ビックリしましたが、よく出来てると感心。え、お分かりではありませんか? 全然エッチじゃないですよ、この写真。

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 話題のこのブログを読んで、不覚にも泣いてしまった。酒井若菜さん、女優として好きです。ドラマの「木更津キャッツアイ」(2002年、TBS)や「私立探偵 濱マイク」(2002年、日本テレビ)、そして映画「恋の門」(松尾スズキ監督、2004年)とか良かったよなぁ。
 テリー伊藤さんは破天荒な人だけれども、ブログのような話があっても納得。天才演出家としてのテリー伊藤を知るなら「天才・たけしの元気が出るテレビ」を観て、人間、テリー伊藤としてのカッコ良さを知るなら「テリーとたい平 のってけラジオ」を聴けばいいんじゃないかな。

 実は酒井若菜さんの小説、結構面白い。なさそうなんだけれどリアルで、そこが心を掴む。処女作としては、十分すぎるかと。



 あと、Penn & Tellerのテラーさんが、当時15才だったマジシャン志望の男の子に送ったこの手紙にも感動して泣く。これは凄いや。この手紙がきっかけで、彼はプロマジシャンになったんだもんなぁ。



 なんか最近本当に涙もろくなって困ります。これは歳のせいなのかな?と思っていたら、尊敬する大先輩から「歳のせいではありません(笑)」と教えていただき、凄く嬉しかったです。
オイラ、まだナウなヤングなんだぜ!
 こないだなど、書店で立ち読みをしている最中にぶわっ!(´;ω;`)と泣けてきて、カズ・カタヤマさんと同じじゃん!と思ってしまいました。



 久々に、デヴィッド・カッパーフィールド氏がメディアのインタビューに答えていました。英文ですがどうぞ。



 ストリート・マジック(今流行りのではなく、大道芸としてのストリート・マジック)の王様であり、名人トニー・スライディーニ氏の弟子でもあった、Jim Cellini氏が一昨日亡くなる。去年の晩冬に心臓発作で倒れられて、長い闘病生活の末のことだった。氏の著書『The Royal Touch - A Guide to the Art of Street magic』(E.M.マクファルス著、Magical Classics刊、1997年)は、マジック的にも読み物としても名著。先月、旧友Paulからこんな話を聞いたばかりだった。

 ロンドンのパブに仲間のマジシャンたちと繰り出したときのこと。みんながビールを注文しようとしたときに、セリーニさんが「ちょっと待った、すぐ帰ってくる」と言って店を出た。しばらく待ったが彼は帰ってこない。どうしたのか不思議に思ってみんなで店の外に出ると、なにやら道には大きな人だかりが出来ていて、その中心でセリーニさんがストリートマジックを演じていた。即席の道具しか持ちあわせていないのに面白い演技をするものだから、人だかりは拍手喝采。そして、彼が道端に置いておいた帽子の中には、巨額の投げ銭が。
 ショウが終わって、店の外に出てきて彼のマジックを楽しんでいた仲間をセリーニさんは見つけるや否や、投げ銭を取り上げて「よし、これが今日の飲み代だ。遠慮なく呑んでくれ」と言われたそうだ。

 いつも豪快で、仲間を励ます名人で、Paulも何度も励まされたそう。一度、生で氏のストリート・マジックを拝見して楽しみたかった。ご冥福を心よりお祈りします。でも、今年はこれ以上誰のご冥福も祈りたくありません。



 今年は訃報が多過ぎます。明石家さんま師匠の座右の銘「生きてるだけで丸もうけ」という言葉が、すべてを言い表していると思います。皆さまがずっと健康で過ごせますように。

映画『THIS IS IT』と『アンヴィル!- 夢を諦めきれない男たち - 』

 もうどうしても辛抱できなくなり、この地方での上映最終日に『アンヴィル! - 夢を諦めきれない男たち - 』(サーシャ・ガバシ監督、2008年)を観てきました。
 数週間前に観たマイケル・ジャクソン最後の映画『THIS IS IT』(ケニー・オルテガ監督、2009年)も、同じくミュージシャンの生き方を捉えたドキュメンタリーであり、この2本の映画は結局は(緩いながらも)同じことを言っている映画だったため、1つのエントリーとして書いてしまいます。

 両方の映画とも、観賞後映画館で久しぶりに泣いてしまいました。号泣と言っても良いでしょう。この映画に登場する人たちはみな、50歳前後の近い世代なんですよね。映画を見終わって、彼らと同世代だった故マーカ・テンド-さんのことを思い出したりもしました。
(『アンヴィル!』を観た後は、家路につく途中で行きつけのCDショップに立ち寄り、思わずAnvilのアルバム『This is Thirteen』を買いました。名盤『Metal on Metal』以来ですから、実に20年以上ぶりに購入したことになります)

 この2組ともに、MTVの台頭とともに1980年代の洋楽シーンを彩ったアーティストですが、贔屓目や想い出という名のバイアス抜きにして、まったく古さは感じません。それに音楽の素養とかも関係ありません。むしろ、それぞれの音楽性(一方はポップス、もう一方はヘヴィーメタル)も、それを強調したり押し付けたりしていないため、まったく気にせずに観ることができます。なので、音楽映画には珍しく、観客を選ばない映画になっています。

 両方の映画とも、様々なメディアで批評尽くされている感があります。ここで私がとやかく言う必要性をあまり感じません。
 私自身、それこそ蓮實重彦さん(氏の公式サイト、面白い!)から始まって、様々な映画批評を今まで見聞してきましたが、最近では町山智浩さん(この番組、面白い!)と同じくらい大好きになった映画批評があります。
 大切な友人に最近教えていただいたのですが、老舗のHiphopグループ「RHYMESTER」のラッパー/ミュージシャンである宇多丸さんが行う映画批評です。毎週土曜日の夜にTBSラジオで放送されている『ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル』というラジオ番組の中で「ザ・シネマハスラー」という1コーナーとして放送されています。これが凄い。
 流行り廃りや、たとえTBSが製作している映画だろうが一切関係なし。鋭い考察と観察力、それを過不足なく論理的に伝える表現力とシニカルな笑いのセンス、そして、その考察を支える映画に関する膨大な知識量には、いつも舌を巻いています。ただ漫然と映画を観ているのではなく、本当に映画を好きで観ていらっしゃるのだな、と分かります。 情報誌などに掲載される提灯記事やつまらない宣伝番組にはない、骨太の評論を楽しむことができます。この番組を教えてもらったことは、今年私にとって嬉しい出来事の1つでした(奇術専門誌『The Magic』の最終号に掲載された私のコラムにも登場したS.S.さん、本当にありがとうございました!)。
 このリンクからそれぞれの批評を聞かれた方が絶対良いと思います。『THIS IS IT』はここ、『アンヴィル!』はここをクリックしてください(インターネットの凄さに感動します。こんな地方都市でも東京のラジオ番組を聴けるのですから)。

 話は変わりますが、宇多丸さんのサブカルチャーに対する造詣の深さは素晴らしく、有名な所では、掟ポルシェ氏と共にPerfumeがブレイクするきっかけを作りました。宇多丸さんのようにサブカルチャーを論理的に語ることが出来る人物を、私はあまり知りません。鋭い言説がもっと知りたかったため、宇多丸さんのこんな本まで買ってしまいました。この本はサブカル好きな方にはタマラナイでしょうし、私は名著認定できます。



 まずは『THIS IS IT』。これはマイケル・ジャクソンの最後のライヴになるはずだった『THIS IS IT』のリハーサル風景を映し出した作品です。彼のライヴ映像というのは、1992年の「Dangerous Tour」を収録した『ライヴ・イン・ブカレスト』しかありません。このDVDで、マイケルの完璧なパフォーマンスを観ることが出来ます。登場シーンから魂を鷲掴みにされてしまいます。しかし、ある意味完璧すぎて、アンドロイドとか異世界人を観ているような感じを受けるのです。

 しかし、この映画を観ると、マイケル・ジャクソンがこの最後のライヴでしたかったことが明快に分かります。とにかく破格のエンターテイナーであり、1人の「人間」だったことが良く分かるのです。
 ダンスと歌の上手さは、超絶というしかありません。あのダンサー、世界中から集められた超一流の人ばかりなのに、その中でもずば抜けて上手い人がいると思うと、それが必ずマイケルなんです。しかも、それが全力じゃないのが凄いのです。ベーシストに口でベースを歌って指示するシーンなんかは鳥肌が立ちました。パフォーマーとして、物凄い魅力的なんです。たぶん、未完成のライブリハーサルの映像だからこそ、彼のパーソナリティが伝わったのだと思います。
 マイケルジャクソンの評価については、MJ評論の第一人者、西寺郷太さんのこの本を、是非お読みください。この映画を観る前にお読みになられることをお勧めします。

 そして『アンヴィル!』です。あまりにも良くでき過ぎているドキュメンタリーなので、「モキュメンタリー」と呼ばれても仕方ないかもしれません。

 アンヴィルのボーカル、リップスさんのパーソナリティが本当に魅力的なんです。80年代に頭角を現し、良いブレインに恵まれずに売れず、今は学校給食の配送をしながら音楽を続けています。そのバンド結成30年を盛り上げようと、彼らは復活を夢見て頑張ります。その過程の壮絶なこと。ともすればウエットになりそうな題材を、リップスさんの底抜けな楽天さが救っています。
映画自体も“Full Circle”になっているため、観賞後スッキリできるのです。80分くらいの短い、しかし大変ドラマチック映画です。号泣しているうちに、あっという間に終わってしまいました(ただ本職として、日本語字幕にちょっと違和感を覚える部分がありました。このことだけは、付記しておきます)。
  この映画を観る前に、ロブ・ライナー監督のコメディ映画『スパイナル・タップ』(1984年)をご覧になられることをオススメします。この映画のパロディだと思われるシーンも『アンヴィル!』の中に多く登場します。

 『THIS IS IT』も『アンヴィル!』も、何がここまで私を号泣させたのか思い返すと、結局は人間の魅力なんですね。マイケル・ジャクソンはトップスター、アンヴィルは過去のスターと立場も境遇もまったく違っても、「観客やファンを楽しませる」という一点だけで生き、そしてその観客やファンは彼らの魅力に引かれて集まっているのです。境遇は違っても、この2組ともなんて幸せなのでしょう。
 
 映画の帰り道、アメリカの名人で哲学者でもあるユージン・バーガー氏が、私が折に触れ読み返す名著『The Performance of Close-up Magic』(Kaufman & Greenberg刊、1987年)で語った「マジックの演技というものは、自己発見の終わらない旅である」という言葉が、私の心にさらに深く突き刺さりました。

 最近、日本のコメディマジックの雄、ナポレオンズボナ植木さんが、ご自身の日記でこの辺りについて興味深い考察と忠告をされています(2009年11月16日、11月20日分)。この文章は心あるマジシャンならば、必読だと思います。第一線で活躍されているプロの方々の言葉を見聞するときはいつも背筋がピンと伸びるのですが、この回の日記を拝読したときは自前の腰痛が治るかと思うほど、背筋が伸びすぎてしまいました。
 
 実はこうしたことは、昔から言われ続けているのですよね。1936年に発表された阿部徳蔵氏の名著『奇術随筆』(人文書院刊)に、こういう一節があるのです…

 丁度その頃のことである。市内の寄席で大いにならした奇術師に地天齋貞一といふ者があつた。彼のもつとも得意としたのは、『瞞着帽子(※)』といふ奇術で、黒のソフト・ハットから、様々な物品をとりだし、最後に鳩を現し飛ばせるという奇術だった。
 彼、なかなかこの奇術が手に入つたもので、單なる奇術の興味の外に、三味線に合せて實に愉快な身振りをして、客を喜ばせてゐた。私は、興味と感服の兩方から、よく観にゆき行きした。
 その頃から見れば、實に現代の奇術は進歩したものである。が、見て、どつちが面白いかといふことになると、どうも理窟なしに『瞞着帽子』に手をあげたい。つまり、奇術そのものの興味といふよりは、彼の身振りが面白いのである。貞一といふ人、その人が面白かつたのである。
(中略)
 そこで、現代の奇術なるものを見渡すと、むろんそれには藝術としての香氣もなければ、叉『瞞着帽子』ほどの面白味もない。實際妙な姿になつたもので、いはばただ舞台の上を大小の奇術道具がめまぐるはしく動いてゐる、といふだけのことである。これではまるで、ばね仕掛の西洋玩具の廻轉を見てゐるのに變らない。
 それもまあいいとして、かう行き詰まつてしまつた奇術道を、一体どうしようといふのであらう。いづれ早晩、なにとか奇術の上に新しい道が開かれねばならぬ。が、同じく開かれる道であるのなら、もつとすがすがしい藝術的のそれであつてほしいと思ふ。


(※:まんちゃくぼうし。「イカサマ帽子」という意味。いわゆる“メリケンハット”のこと。現在ではプリンス東洋氏(劇団四季の俳優、振付師として活躍中の加藤敬二さんのお父様ですね)や、お馴染のマギー司郎さん、そして故マギー信沢氏の名演技で有名になりました)


過去70余年間で、奇術道はどれくらい変化したのでしょうか? 私には難しすぎて、よく分かりません。



 とにかく良い、素敵なドキュメンタリー映画でした。すべての映画好き、何かの道に打ち込んでいる方に是非にとオススメします。アラフォー世代(恥ずい!)には、堪えられない映画でしょう。良い意味で「何かをしなくちゃ」という気にさせてくれます…おっと、その前に「お前は早く仕事をしろ!」という声が聞こえてきました。



追記1:
ボナ植木さんのこのコラムにも、通じる話だと思います。
追記2:
音楽に絡むのですが、最近このまとめブログにも泣けました。良い話です。あまり好きではないのですが、こういう良い話があるのでまとめブログを読むのが止められない。

鉄と銀のあいだ

 一つ前のエントリーで、ブラボー中谷さんが発売された商品「ブラボーカラテ」についてのレヴューをまとめている途中、こうしたペンなどをお札に突き刺して、復活させる現象について前々から考えていたことがあり、別エントリーとしてアップさせて頂くことにしました。



 関西の名手、プロマジシャンのジョニー廣瀬氏が考案した傑作「インビジブルホール」が、奇術専門誌『クロースアップ'84』(小野坂東編集、マジックランド刊)や『Apocalypse』誌(ハリー・ロレイン編集、1985年3月号)などに掲載され、鉛筆やナイフなどをお札に突き刺した後、その穴を復活させる現象が広まりました(氏が出演するこのレクチャーDVDの中で、詳細にこのマジックが解説されています)。

 1990年頃になって、ティモシー・ウエンク氏が考案した「Misled」というマジックを、超一流のイリュージョニスト、デヴィッド・カパーフィールド氏が自身のテレビショウで演じたことで、この現象とプロットが一躍注目を浴び、この作品は世界中で爆発的な大ヒット商品となりました。そして、その後様々な改案が商品としても登場することになりました。
 関西在住の天才クリエーターである益田克也さんの「ザ・ブレイド」はその中でも特筆すべき商品です。もし、これらのマジックの実演をご覧になったことがなければ、絶対ビックリされると思います。上記のウェブサイトで実演の動画を是非ご覧ください。

 そして、その後アメリカの素晴らしいクリエーター、ジョン・コーネリアス氏が「Pen Through Anything」という商品を1993年に発表し、この商品も世界中で爆発的にヒットしました。 当時、数えきれないほどの海賊版が出回り、今でもこのマジックを世界中のマジシャンが演じています(このウェブサイトで、本物と海賊版の比較写真を見ることができます)。

penthru.jpg

 そしてその後、コーネリアス氏自身がこのマジックの改良(?)版「パーフェクトペン」を1996年に発表しました。この商品に関する批評は、関西在住のベテランの愛好家、マジェイアさんが大変素晴らしい考察をされていらっしゃいます。

 マジェイアさんもおっしゃるように、道具であるクロス社製風のペンが、ちょっと貧弱に見えます(実際のクロス社の“クラシックセンチュリー”は、もっと豪奢なペンです)。「ペン・スルー・エニシング」も最近発売されているバージョンでは、これまた最初のモンブラン社製風のペン(上記の写真に写っているペンです)から似たようなタイプのクロス社製風のペンになり、ちょっと貧弱に見えるようになってしまったのが大変残念です。

 このマジックの改案としては、ニューヨークのダグ・エドワード氏が発表した作品が、株式会社テンヨーから「サイキックペン」として発売されています(リンク先のテンヨー社のウェブサイトに書かれている話は大変興味深いです)。このペンは普通に販売されているプラスチック製のボールペンそっくりなので、カジュアルに演じることが可能です。

 この商品に関して言えば、カリフォルニア在住のマジシャンだったジム・クレンツ氏が1993年に発表された小冊子『Pen Throught Everything』は必読だと思います。
 今では有名になった「破れ目の端が見える」サトルティーは、考案者のクレンツ氏によって、初めてこの小冊子の中で紹介されました。
 その後、この小冊子の内容と追加事項がレクチャービデオ『Jim Krenz's Pen Through Anything Video 』(リンク先では、画面を下の方へスクロールしてください)として1996年にA-1 MultiMedia社から発売され、2004年にはDVD化されました。この内容でこの値段は安すぎます(ただ、マジェイアさんもおっしゃるように、ペンを口や鼻などに突き刺す現象は、場合によっては大変下品に見えてしまうので要注意でしょう)。



 このペンを使った「お札の貫通」現象を多くの方が演じていらっしゃいますが、実は演じることが結構難しいマジックだと私は思います。技術的にも演技的にも、です。

 まず、最初に思うのは、この現象においてギミック(秘密の道具や仕掛け)を使った方法か即席の方法か、どちらが良いのか?という問題です。

 即席に「お札の串刺し」現象を演じる方法は、たくさん発表されてきました。中でも、海外ならデヴィッド・ハーキー、ジェイ・サンキー。エリック・アンダーソンの各氏による共作「East meets West - meets South」やダン・ハーラン氏の「Now U Z it」、カナダのデビッド・アッカー氏の「IntangiBill」、日本ならヒロサカイ氏の「インビジブルスリット」や「カラテ・ビリュージョン」、黒木憲一氏の「Cocktail Bill Penetration」(ゆうきとも氏の改案も含みます)、真田豊実氏の「指貫通紙幣」などの作品は特筆に値します。
 しかし、即席で出来る方法、シンプルな方法だからといって、簡単に演じられるとは限りません。タイミング、角度などに気を使わなければならない手順も多いです。さらに、即席で行う手順の多くは、本当にペンなどがお札に貫通している様に見えない作品や、大変怪しげな操作を行わなければならない手順も結構散見されます。こうなってしまいますと、折角即席で演じられるメリットは関係なくなってしまいます。

 では、ギミックを使ったマジックが良いのか?と言えば、そうとは限りません。ギミックを使うことにより「串刺し」現象に大変な説得力を生み出します(1つ前のエントリーや上記のこのリンクにある動画、ご覧になられましたか?)。そして、即席の方法では為しえない不思議さを生み出すことが出来ます。
 しかし、こうした説得力を得る見返りに、代償も払わなくてはなりません。ダイレクトな方法論を採用することが多くなるため、観客にギミックの存在を悟られる可能性も多くなってしまうのです。
 そこで、観客の意識からギミックを遠ざけるためには、次の3つの事を考慮されていなければならないと思うのです。 
 
 まず1つは「ギミックの使い方」の問題です。どう、そのギミックを取り出し、処理をするか?という問題です。私の先生Jamyから教えてもらったのですが、アメリカの亡き名人、マイケル・スキナー氏が言っていらっしゃったことがありました。
 氏はスライハンドの名手として知られていましたが、同時にギミックをとても効果的に用い、本当に不思議なマジックを演じていらっしゃいました。スキナー氏がギミックを使った演技を組み立てるときにはいつも「どうそのギミックを取りだして、どう処理をするか?」と考えていらっしゃったそうです。そして、そのどちらか一方でもうまく行かない場合は、どんなに現象が良くても、氏のレパートリーにはならなかったそうです。 
 道具に集まりやすい観客の注目ををどう逸らすか?、そして観客に気づかれないようにどう処理をするか?、もし不幸なことに使っている道具に注目が集まってしまったときは、観客が納得するようにどう自然に切り返すか?…これらのことが考えられていなければなりません。

 そしてもう1つ。これはもっと深刻な問題です。「ギミックを使っていることが分からないかどうか?」です。ギミックそのものの出来もそうですが、ギミックを用いるとき、自然なハンドリングになっているか?なども精査しなくてはなりません。
 いくら現象が凄くても、それを扱っている操作が不自然になってしまっていては、観客にギミックを使っていると見抜かれてしまいます。ギミックの臭いを観客が感じてしまったら、そこでゲームオーバーです。これは、どんな優れた即席で行う方法でも、何かをしていると分かってしまったらまったく同じことです。

 こうしたことを考えた後には、もっともっと大切な問題が控えています。「観客が本当に“ペンをお札に突き刺した”と信じてくれるか?」という問題です。
 実際、私はこんな体験をしたことがありました。この「ペン・スルー・エニシング」が好きで、頻繁に演じていたころの話です。あるとき、マジシャンではない方にこのマジックを演じる機会がありました。その方は、この演技を見てすぐにこう言われたのです「面白いけれど、そりゃウソだね。絶対にお札は破れていないでしょう」
 いきなりそんな事を言われてしまった私は、ビックリしました。それまで、そんな事は一度も言われたことはありませんでした。不思議に思い、どうしてそう思われたのか伺ってみました。
 すると、その方は製紙関連のお仕事をされている方でした。お札に使われる紙は大変丈夫なので、そんな力でペンをお札に突き立てた位で、お札に穴を開けられる訳がないとその方は看破されたのです。

 つまり、いくらペンなどがお札に突き刺さっている“証明”を観客に対して行ったとしても、観客が「本当にペンをお札に突き刺した」と信じてくださらなければ、これもそこでゲームオーバーです(ありがたいことに、その後その方からアドバイスを頂いて、演技がちょっとリアルに見えるようにできました)。
 これは演者の演技力やショウマンシップだけでなく、普段の行動様式まで関わってくる問題です。つまり、演者ならしそうな行動や観客が納得できる行動でないと、動作に説得力が生まれないのです。極端な話、どうして私たちはペンをお札に突き刺さなければならないのでしょう?

 この3つの問題を解決するには、結構真剣に考えないと難しいように私は思ってしまいます。これはある種のダイレクトな「復活」現象などにも当てはまることではないでしょうか。

 “プロフェッサー”ダイ・ヴァーノン氏が語ったように、マジックは「現象がすべて」という面もあります。だからといって、何でもすれば良い訳ではありません。本当に不思議なマジックの作品というものは、賢いギミックと良い技法をバランス良く、最もシンプルに使用しています。その現象を最高にまで高める方法を使い、その方法を賢く上手に、しかも合理的な理由付けの下で実行する事が大切になるでしょう。
 それを決めるのは、演者であるあなたのバランス感覚に頼るしかありません。日本画壇の最高峰である平山郁夫画伯がおっしゃったように、このバランスを求める行為こそが生きるということであり、美を追及することであると思うのです。
 あなたがこのマジックを行なうとするならば、どう演じられますか?

『最も安定した元素は、周期律の真ん中、ほぼ鉄と銀のあいだに現れるのだ、クラリス。
銀と鉄のあいだ。まさしくきみに相応しいではないか。 ハンニバル・レクター』
ー 『ハンニバル』トマス・ハリス著、高見浩訳、新潮文庫、2000年

ブラボーカラテ!

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 今年手にしたマジックの道具でも、結構お気に入りの作品です。
 秋田のプロマジシャン、ブラボー中谷氏の作品です。従来からある現象とギミックを、大胆にアレンジされました。現象は「指を突き刺して穴を開けたお札が元通り復活する」というものです。「お札の貫通」現象の中でも、これはかなりインパクトの強い作品だと思います。まずは、この実演をご覧ください。



 こうしたお札の貫通現象ではペンやナイフなどを突き刺すことが多いのですが、お札に突き刺す物体が人差し指であり、ペンなどよりも太いために大変インパクトがある見映えになります。加えて、この現象自体が大変馬鹿馬鹿しいので、現象そのものに自然なユーモアが醸し出されます。そして、突き刺す物体が太いために、指を引き抜いてお札を復活させる現象がより不思議に見えるようです。

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う~や~た~!(注:実際にお札を傷つけてはおりません。念のため)

 現象のインパクトが大きい分、観客が一瞬唖然としますので、その間に十分ギミックを処理できるという特典まで付いてきます。

 また「空手の秘義を見せる」という演出の馬鹿馬鹿しさ(失礼!)が貫通現象と結びつきにくいため、ギミックから観客の意識を遠ざけています(実はこの演出、人によっては大変説得力があります。少なくとも、ブラボーさんにはピッタリな演出だと思います)。
 ジーン・ヒューガード氏が考案して、デヴィッド・ロス氏によって有名になった「カラテ(指で物体を突き刺す)」というプロットが、ここまでピッタリはまるマジックも珍しいと思います。ロス氏の名作「空手コイン」は、『世界のコインマジック2』(リチャード・カウフマン著、TON・おのさか和訳、東京堂出版刊、2009年)に解説されています。
 私見ですが、カナダの素晴らしいプロマジシャン/コメディアンのデヴィッド・アッカー氏が考案した「Mad Cap」という瓶の王冠を使った作品以来のヒットかもしれません。
 この作品は、氏の作品集『Natural Selection 2』Camirand Academy of Magic刊、1999年)に解説されています。興味のある方は、比較されると良いでしょう。これも即席に演じたように見せれば、大変素晴らしい作品です。

 もちろん、この演出が合わない方もいらっしゃるでしょう。それでも違う演出を考えることは可能です。例えば、「お札の復活」現象でお馴染の「偽札と本物のお札の見分け方」という演出も1つでしょう。お札は丈夫な和紙の原材料であるこうぞを使っているために本当に破れにくく、多少手荒なことをしても…という感じで演じても面白いと思います( ただ、どんな演出を使うにしろ、貫通現象と関連させない方が良いと思います)。

 正直に言いましょう。最初、商品を手にするまでは、この値段はちょっと高いように感じました。しかし、実際にこのギミックを見て、その出来栄えに驚きました。大変シンプルなギミックながら、本当に良く出来ています。なんでも、このギミックは手作業で1つ1つ作られているとのこと。それでこの値段なら、十分に納得がいきます。
 そして、写真も豊富な解説書と実演・解説の入ったDVD、さらに演技のコツが書かれたA4サイズの解説書が付いてきます。この別紙の解説書には、演技をするうちに必ず生じる疑問がほぼ網羅されています。ここまで詳細に解説がされていたなら、至れり尽くせりだと思います。後は練習と実地訓練あるのみです。

 解説で私が1番好きだったのは、ブラボーさんが秋田各地で一般の通行人相手に実演をされている部分です。これが本当に面白い(方言を話すお嬢さん方が大変可愛い、という部分もあります)。秋田の人々が本気で驚いています。

 ただ、細かい部分でいくつか気になった点もありました。褒めてばかりだとフェアではないので、心を鬼にして書いてみます。
 まず、クレジットがあまりされていません。少なくとも、お札を突き破った端が見えるジム・クレンツ氏のサトルティー(アイデア)は、クレジットされた方が良かったと思います(ただ、残念なことにジム・クレンツ氏はもうマジックの世界から去られてしまったそうで、氏に連絡をとろうともかなり難しいだろう事は容易に想像がつきますが…)。
 そして、もちろんしっかり解説がされているのですが、少し流して解説をされている感じを受けました。特に、実演で使っていらっしゃる実際のギミックの処理方法がきちんとDVDでも解説書でも解説されていないのが残念でした(しかし、何度か実演をご覧になって練習されてみれば、比較的楽に理解できると思います)。
 最後に、撮影されている方の声が、私にとっては少々煩わしさを感じました(これによってライヴ感が出て良いのかもしれませんが、私にはちょっと判断がつきません)。

 とはいえ、これら3点は本当に小さな部分です。この作品は、賢いギミックと良いハンドリングがバランスよく使われている、素敵なマジックの1つだと思います。ちょっと練習が必要になりますが、マスターしたらこのギミックを持ち歩きたくなること請け合いです。私の場合は、飲み会などで大変重宝しております。
 ただ、このマジックは、かなりダイレクトな現象をダイレクトな方法で行なっているので、演じるときのTPOは良く考えられた方が良いと思います。
 素敵な貫通現象をお探しの方にはオススメします。酒席が増えるこれからのシーズンには、ピッタリでしょう(お、ここのお店だと、消費税がつかない分ちょっとお得かも?)。

・ブラボーカラテ! 定価5250円(税込 送料別) 
発売元 ブラボー笑店 Tel : 0187-85-2917 Fax : 0187-85-2916
 

追記1:この手の「貫通」「復活」現象には思うところがあり、この「お札の貫通現象」をベースにして文章をまとめてみました。後でエントリーをアップしてみますので、少々お待ちください。

追記2:奇術専門誌『The Magic』のパロディー誌『The Magicca Vol.81』をお持ちの方は、この雑誌に解説されている、東京の若手マジシャンGo!氏の作品と比較してみてください。解説を読んだだけでは、この作品が持つインパクトは絶対に分かりません。
 ちなみに、この作品はカズ・カタヤマさんのこのレクチャーDVDでも実演、解説を見ることができます。

世界で1番不思議なカードマジック(Part 1)

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 今回ご紹介する本は、アメリカの素晴らしいメンタリストであり、経営学者でもあったバリー・リチャードソン氏の名著『Theater of the Mind』Hermetic Press Inc.刊、1999年)です。

 1999年前後というのは、メンタリズムにとって一大転換期になった年と言って過言ではないと思います。この頃、素晴らしいクロースアップ・マジシャンたちがこぞってメンタリストへと転向していきました。カナダの名人ギャリー・カーツさん(氏のジャンボコインの扱いは、ふじいあきら氏をはじめとする日本のマジシャンたちに大きな影響を与えました。今ではメンタリストとしてマジックから離れた世界で大活躍されており、残念ですが、氏が普通のマジックの世界には戻られることはもうないでしょう)、コインの名手ティム・コノバーさん(氏が演じる「シリンダー&コインズ」は絶品でした)、天才クリエーターのマイケル・ウェーバー氏、アメリカの才気溢れる(当時)若手だったジョン・リッグス(現ジョン・ジャーメイン)氏(氏の著書『Riggs - Magic of John Riggs :The Man with $1.98 hands』は、1990年代前半に台頭してきたクロースアップ・マジックのニューウェーブの一端を担っていました)、アライン・ニュー(アライン・ニューエン)氏といった方々のお名前がすぐに頭に浮かびます。
 20年以上の親友、スティーヴ・コーエンさんもクロースアップ畑からメンタリズムへと移行し、今では凄いショウ「Chamber Magic」を毎週末にニューヨークで演じています(しかも、チケットは来年の春までソールドアウトになっています!)。

 こうした方々がメンタリストに転向された理由は定かではありませんが、素晴らしい人材がこの分野に増えていき、彼ら自身も新たな職域と年収を増やしていかれたことは事実です。

 それ以前に凄かったプロのメンタリストとして思い浮かぶのは、日本でもお馴染のマックス名人バナチェック(スティーブ・ショウ)氏、リチャード・オスタリンド氏、故テッド・レスリー氏、ラリー・ベッカー氏、リー・アール氏、故T・A・ウォーターズ氏など、あまり多くないでしょう(そう思うと、日本でのMr.マリック氏の活躍の凄さが改めて際立ちますね)。

 それまでのメンタリズムの演技は、退屈なものが多かったように思います。アメリカのコメディ・マジックの雄、Penn & Tellerのテラーさんは、どうしてメンタリズムが退屈なのか?という質問に対して「だって、固有名詞を正しく示していくだけのショウだから」と答えています。
確かに日付や図形、カードの名前や人名、数字といった簡単な言葉を告げたり示すためだけに、大変複雑な過程を経ているだけという演技もそれまでは多かったと思います(私の先生Jamyなどは「退屈なヤツが演じてるから、退屈なんだ!」と過激なことを言い出す始末です)。

 そして、素晴らしい若手のメンタリストたちも台頭してきました。特にイギリスからは多くの優れた人材が出現しました。コールド・リーディングの研究で知られるイアン・ローランド氏、俳優でもあるアンディー・ニーマン氏やデレン・ブラウン氏といった今をときめく特筆すべきメンタリストたちは、この頃から台頭してきました。もちろん、彼らも最初はクロースアップ・マジシャンであり、技術的にも大変素晴らしい方々です。
 デレン氏による初めての著書である、名著『Pure Effect - Direct Mind-Reading and Magical Artistry』(初版、第2版は自費出版、それ以降はH&R Magic Books刊。現在絶版)も1999年に発表されています(この本については、また別エントリーでお話したいと思います)。
 そして、彼らはその後登場するマーク・スピルマン氏、マーク・ポール氏、レクター・チャドウィック氏といった今の若手メンタリストたちに影響を与えていきました。

 こうしたクロースアップ畑から転向された優れたマジシャンたちが吹き込んだ新たな息吹によって、昨今のメンタリズムの爆発的な流行が生まれたのです。
 
 イギリスでこうした優れたメンタリストたちが登場する礎になったのは、もともとイギリスには“International Man of Mystery”と呼ばれるベテランのメンタリスト、デヴィッド・バグラス氏がいらっしゃるのですが、バリーさんの作品による影響も強かったと思います。
 奇術専門誌『Pabular』誌(フレッド・ロビンソン編集)にバリーさんの優れたメンタルマジックが多く掲載され、その後イギリスのレプロ・マジック社の宣伝誌『Club71』にもメンタリズムに関するコラムニストとして登場しました(バリーさんの作品が発表される場がイギリス中心なので、多くのマジシャンはバリーさんはイギリス人だと信じることになります。私も最初はそうでした)。

 私がバリーさんのマジックに初めて触れたのは、ティーンの頃にマジックランドの片隅にひっそりと置かれていた『The Boon for All Season』(エリック・メイソン氏との共著、自費出版、1982年)という本でした。確か、当時マジックランドでアルバイトをされていた、天才クリエーターの黒木憲一さんに勧められて購入したと思います。
 その本の中には素晴らしいメンタルマジックがぎっちりと詰まっており、特に目を引いたのは「...678」という作品でした。1974年に発表されたということは、非常に古い作品です。
 観客が持っていたお札の連番の下3ケタが財布の中に予言されているというマジックなのですが、そのシンプルすぎる方法論と賢いサトルティーには舌を巻きました。気に入って一時期演じまくり、それ以来バリーさんの作品を追い続けることになりました。

 本作は、バリーさんが様々な専門誌などに発表し続けてきた作品を集めた作品集です。この作品集には53作品が解説されています。もちろん上記の「...678」も解説されています。

 バリーさんが考案されたメンタルマジックの特徴は、賢い道具や原理を取り上げたり創りだすだけでなく、それを扱うために用いる巧妙な観客の目に触れないテクニックをうまく融合され、観客が「(タネや仕掛けを)追えない」状態にさせてしまう部分にあります。
 大阪在住の素晴らしいクリエーターである佐藤総さんが名著『Card Magic Designs』(2008年)の中で語った、「スライトレス」という表現がぴったり当てはまります。つまり、観客がどれだけ注意していようとも何かをしていると感じる技法がまったく見えず、その秘密は観客からまったく見えないところに注意深く隠されているために、何が起こっているか分からないのです。

 しかし残念なことに、メンタリズムはこうした見立てのために、単に「技法を使わない」で演じられる、だから「簡単に演じられる」と勘違いされやすくなってしまいました(実際、私が東京在住だったころ、本当に「メンタルマジックは、テクニックを使わないから好きなんですよ」と私に言い放った「メンタリスト」にお逢いしたこともありました)。
 日本でも過去数年にわたり「メンタリスト」が急増しました。残念なことに、秘密の仕掛けに依存しただけの方も少なくなかったように感じます。
 素晴らしいメンタリストは、観客から絶対に目に見えないし気がつかない部分で大変な秘密の仕事をただ行っているのです。 人の心をぞっとさせる、悪魔のようなメンタリズムというものは、実は超絶技巧を駆使したマジックと同じくらい、いや場合によってはそれ以上に実演が難しいのではないかと私は信じています。バリーさんの大変巧妙な作品を精読すると、その事実を痛感します。

 メンタル風味のマジック、例えば素手で行うグラスの取り出し、本当に不思議な「レモンの中に飛行するお札」と言ったものから、サロンで行うための「Out of this World」、カードや雑誌を使った不可能な読心術など本格的なメンタリズムまで、現象は多岐に渡ります。中でも、ちょっとした加工を施した腕時計を使った作品が3作品掲載されていますが、これは本当に素晴らしい。仕掛けのシンプルさと巧妙な方法が、ありえない時間の予言を可能にしています。

 日本で一躍有名になったのは、バリーさんの「エニーカード・アット・エニーナンバー(ACAAN)」だったでしょう(これは日本のあるマジックショップが「サービス原稿」と称される冊子に翻訳して掲載されたのがきっかけになったと思います)。観客が自由にカードと数字を選び、デックのその枚数目から自由に選ばれたそのカードが出現するというプロットです。イギリスのデヴィッド・バグラス氏が演じられるので、この現象を「バグラス・イフェクト」と呼ぶときもあります。
 大変不思議なこのプロットが世界中で注目を集めたきっかけになったのは、紛れもなくバリーさんの影響だったと言えます。

Part2に続く)

世界で1番不思議なカードマジック(Part2)

Part1からの続きです)

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 2000年の話になります。私がニューヨークで過ごしていた時のこと。当時下宿させてくださっていた先生Jamyが「明日のランチ、時間は空いているかい? 実はある人に逢いに行くんだけれど、yukiも誘って良いと言われたんだよ。どう、行くかい?」と言われました。そう言われるときは、いつも良いことが起こります。何も言わずに「もちろん!」と答えました。
 そして、翌日。ミッドタウンにあるイタリアンレストランの前に集合したとき、そこにいらっしゃったのは紛れもないバリー・リチャードソンさんと、奥さまのジェニーさんでした。
 丁度、学会がニューヨークで開催されており、この地にいらっしゃっていたのです。『Genii』誌にJamyが素敵な書評を掲載(1999年11月号)したことへの感謝を込めて、私たちをランチに誘ってくださいました。

 いろいろなお話を伺いました。バリーさんがマジックを本格的に演じ始めたきっかけというのが、変わっています。それは、3人のお子様のためだったのです。日本でも海外でも、若い研究者というのは薄給です。3人の子供を育てるために、少しでも何か出来ないか?ということで、研究や講義の合間を縫って、車で行ける範囲ならどこででも、請われたならばメンタリズムのショウを行っていらっしゃったのです。東京から大阪くらいの距離なら、全然余裕だったそうです。ジェニーさんは「本当に彼はいつも家にいないのよ!」とおっしゃっていました。ショウを始めた頃は、酷いときにはRV車の屋根の上でショウを行ったこともあったそうです。
 でも、バリーさんのマジックショウのお陰で、子供さんたちはスクスクと成長されました。長男の方は、今大学で教鞭をとっていらっしゃるそうです。

 ただ、あるときからメンタリズムに対してバリーさんは疑問を持つようになられました。それはデトロイトでのショウが終わった後のこと。宿泊したホテルの部屋をそこの従業員の男の人が2人訪ねてきました。そして真剣な眼差しで「次の宝くじの番号を教えて欲しい」と懇願してきたのです。
 その人たちは、そのホテルのコックさんでした。バリーさんのショウを仕事をしながら会場の後ろで観ていて、それを本物の超能力だと信じたのです。
 訥々と「私の娘は末期の癌と闘病しています。メキシコにいる有名な医者に診療してもらうにはお金が必要なのです。お願いします、後生ですから助けてください」と涙ながらに訴えられたそうです。そして、彼らには正直に「私には超能力などありません。エンターテインメントとしてそのような力を持っているように見せているだけなのです」と断腸の思いで伝えました。それを聞いた彼らは、落胆して帰っていったそうです。バリーさんは一睡も出来ずに、その夜を過ごしたのでした。
 「それからは“超能力の様に見えますが、私は技術を使ってそう見えているだけです”と必ず言うようにしたんだ。メンタリズムというマジックは、本当に両刃の剣だと思うよ…」
 この話は、メンタリズムをされる方は是非とも覚えていて頂きたいと思います。私もこのコックさんと似たような思いをしたことがあり(宝くじを教えて欲しい!と言ったわけではありませんよ!)、あの悔しい思いをいつか文章にまとめたいと思います。
 
 バリーさんは上記の事件があった後、演技のスタイルを変えました。今では一般的になりましたが「Notivation Speaker」の先駆けとなられたのです。
 バリーさんは元々経営学の教授です。様々な会社に依頼されて、経営について講演をされることも結構多かったそうです。そこに隠喩としてマジックの現象を加えてみようと考えられました。仕事で大切な「チームワーク」や「報告、連絡などの大切さ」、「顧客満足」といった考え方を素敵な詩にまとめ、その詩を朗読しながらそのトピックスに関連するマジックを演じられるようになったのです。この作戦は当たり、その方面の依頼がバリーさんに殺到するようになりました。

 その演技の1つ「人と人の協調性」を基にした詩と共に、本書にも収録されている「グラスの宙釣り」をこの場で見せていただきました(ちょうどJamyが自分用に製作したグラスを持参して、バリーさんにグラスの出来を見てもらったのでした。バリーさん曰く「初めてこの道具を作った人を見たよ!」と大喜びでした)。
 現象の不思議さ、朗読される詩の素晴らしさ(またバリーさんの声が素敵なんです)が相まった素晴らしい演技でした。難しい話も、こうしてかみ砕いて、分かりやすい例を交えながら伺うと、誰もが納得できます。日本でよくありがちな経営講演会とは、まったく別物と言ってよいでしょうね(ちなみに、Jamyがプロデューサーとして参加、活躍した番組『バーチャル・マジシャン』の中で、
主演のマルコ・テンペスト氏がこのときのグラスをそのまま使ってこのマジックを演じています)。

 そして、同席していたJamyの元カノさんとジェニーさんが「5th Avenueへショッピングに行きたい!」とおっしゃって席を外され、そこからセッションが始まりました。

 一通り皆が演じ終わって手が止まったとき、私がバリーさんに「今まで見た中で、1番不思議だったメンタルマジックって何でしたか?」と質問をしました。すると、彼は「もちろん“エニー・カード・アット・エニー・ナンバー”だね。世界一不思議と言っても良いと思うよ」と答え、バリーさんの親友であるバグラス氏にその演技を見せられたときの話をされました。

 バグラス氏のオフィスで好きな数字とカードを言って欲しいと言われ、ずっとテーブルの上にあったデックを取り上げ、その枚数目まで配ったらそのカードが出てきたそうです。ある年には、バグラス氏の車に同乗していたら、急に「…そういえば、好きなカードって何だったっけ?」と話を振られ、その時はピン!と感づいたのでカードと数字を言ったら、手袋しか入っていないダッシュボードにあるデックを取り出すように言われ、その枚数目まで配ったら、またもやそのカードが出てきたそうです。
 結局この体験がきっかけとなって、このプロットについて深く考えられるようになったそうなのです。「今もまったくデヴィッドの方法に関して手がかりがないんだよ…」とバリーさんは遠い目をしながら話しました。
 すると、バリーさんは突然真面目な顔になって、私たちにこう言いました「…そうそう、Jamy、何か好きなカードはあるかい?」

 私たちは顔を見合わせました。バリーさんの目の前には、1組のデックが置いてあります。それに気づいたとき、背筋がゾクっとしました。どうやら、Jamyもそれに気づいたようでした。
 私とJamyは、二人でコソコソ話をしました。
「これって、もしや…」「yuki、お前がカード決めるか?」「選ばれやすいカードとかは避けたいなぁ…」「でも、関係ない気もするよな」「ハートの10は避けない?」「そうだね、一緒の番号だし…」。そして私が「クラブの5」と決めました。
 バリーさんはそれを聞くと「本当は数字の方をyukiに決めて欲しかったんだけど。いいよ、じゃあyukiが数字も決めてくれたまえ」と続けます。
 また二人でコソコソ話します。
 「僕の経験からすると30は避けたほうが良いと思うんだ…」「俺の体験だと3も避けたほうが良いかな」「どうしよう」「迷うなぁ…」。そして私が「23」と決めました。

 それを聞いてにっこり微笑んだバリーさんは、何も言わずに目を卓上にあるデックに向けました。恐る恐る私が手を伸ばし、そのデックを取り上げました。デックを取り上げるとき、これ以上に緊張したことは後にも先にもありません。そして、デックの上から1枚ずつゆっくりとカードを配っていきました。
 22枚を配り終えたとき「もし、次のカードがクラブの5だったら、奇跡だと思わないかい?」とバリーさん。「これ以上の奇跡ってありますか?」と私は答えながら、23枚目のカードをめくりました…そこにはクラブの5がありました。横にいるJamyは、目を見開きキョトンとしています。一瞬レストランに流れていた時間が止まりました。
 私たちが茫然としていると、デックを片付けながら「Jamy、yuki、楽しいランチをありがとう」と言い、バリーさんは席をたちました。

 帰り道、タクシーの中でJamyと私は無言でした。Jamyの元カノさんも「どうしたの?二人とも黙りこくっちゃってさ!」とプリプリしてしまう位でした。唯一二人で交わした会話はこれだけだったのです。
 「Jamy、僕を担ごうとしてないよね?」「yuki、それは俺も同じことだ。トイレに席を立ったとき、何かお願いされたりしていないか?」「そんなことあるわけないじゃん!」「そうだよなぁ…」「バリーさんが発表している作品のどれにも当てはまらないよね…」「これがバグラス・イフェクトなのかぁ…」

 このときから、私にとっても、この「エニーカード・アット・エニーナンバー」というマジックは、世界で1番不思議なカードマジックとなりました(ただ、一般の方に演じるときは「カード」か「数字」のどちらかを固定した方が親切ではないかなぁ?とは思います。これは以前、奇術専門誌『モダクラ』の中にも書いたことがあります。興味のある方は、拙文もご参照ください)。
 先生Jamyもそうですし、私もそうですが、今までかなりいろいろなマジックを見て、調べて、演じてきました。どんなマジックの演技を見ても、何らかのヒントが必ず見つかります。バリーさんのこの演技には、ヒントの断片さえありませんでした。これほど嬉しいことはありません。深遠な謎を純粋に体験できたのですから!

 しかし、大変残念なこともありました。バリーさんにこの現象を見せていただいてから、自分でどんな方法論を考えても、他の方の作品に触れても、他の「エニーカード・アット・エニーナンバー」という作品がまったく不思議に見えなくなってしまったのです(その中でも、アル・ベーカー氏やホワン・タマリッツ氏、佐藤総さんの作品やケン・クレンツェル氏の作品などは本当に素晴らしいと思います)。多分、バリーさんがご覧になったデヴィッド・バグラス氏の演技もこんな感じだったのでしょうね。

 本書を読み返すたびに、この不思議さを思い出し、不思議って一体何なのだろうと考えます。

 良いメンタリズムがお好きな方、良いメンタリズムとは何か知りたい方には是非本書をお勧めします。バリーさんの2冊目の作品集『Act Two』Hermetic Press Inc.刊、2005年)も必読です。

“The Impossible I do immediately ; Miracle take a little longer”
- David Berglas's motto




 この話を今までに5人の方だけにお話ししたことがありました。皆さんがご存知の著名な研究家だったり、優れたプロマジシャンの方々です。そして、5人が5人とも口を揃えて「これ以外はありえない」とほぼ同じ、大変シンプルな解決法を私に語りました。
 さあ、ここでこのブログの読者の皆さまに問いかけさせてください。これがコメント欄を開いた理由の1つでもあります。
 5人の方が語った同じ解決法とは、一体何だと思いますか? そして、あなたはバリーさんがどんな方法を用いたと思いますか? 
 天地に誓って言いますが、私にはバリーさんの方法は今でもまったく分かりません。そして、その5人の方が語った方法論も、私にはとても信じがたい方法なのです。

 コメント欄からあなたの考えを是非お聞かせください。よろしくお願い致します。

追記:本当の「バグラス・イフェクト」について朗報です。来年の夏に、デヴィッド・バグラス氏のカードマジックの本が発表される予定です。今親友のRichardが本を書いています。この他にも、氏の「Think a Card」など一級品の作品がラインナップされているようです。「Think a Card」もバグラス氏の素晴らしい作品集『The Mind and Magic of David Berglas』(デビッド・ブリットランド著、Hahne刊、2000年)に発表された方法とは違います。
 メンタルのカードマジックがお好きな方は、wktkしながらお待ちになられると、きっと至福の時が訪れることでしょう。

11月20日追記:コメント欄がうまく機能していないようです。何人かの方からメールフォームなどで教えていただいたりしました。ご迷惑をおかけしました。メールフォームはうまく機能しているようです。そちらからお送りくださってもOKです。あとで「皆さまからの解答編」をまとめさせていただきます(名前を出されたくない方は、その旨を一言書いておいてください)。よろしくお願いいたします。

memorandum #3

 ついに風邪でダウン。38度越えの発熱がありました。しかし、流行のインフルエンザではなかったのが、不幸中の幸いですね。子供のころから気管支が弱く、どれだけ気をつけていても1シーズンに1回は風邪を引いてしまいます。今年はうがい、手洗いをいつもより入念に行っているためか、あまり酷くならずに済みました。呼吸器系が弱い人の辛さ、普通の人にはなかなか分かってもらえません。
 そんな我が家の冬は、これで乗りきります。

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 ジンジャーシロップです
(この会社のものは、コストパフォーマンスが良くて美味しい!)。

 生姜のエキスがたっぷり入ったシロップをホットミルクに入れて寝る前に頂くと、身体がポカポカしてすぐに眠れます。これを試すようになって、風邪を引く回数が激減しました。生姜パワー、恐るべし。生姜がお嫌いでなければ、おすすめの風邪予防です…え、風邪引きに言われたくないですって? 



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 病床で『午前零時のサンドリヨン』(相沢沙呼著、東京創元社刊、2009年)を読了。
学校生活の中で起こった不思議な出来事を、凄腕マジシャンの女子高生と、主人公のちょっとヘタレな男子がその謎を解き明かしていきます。“Boy meets Girl”の要素も交えたミステリーです。
 ライトノベルに似たタッチなので、すいすい読み進めることが出来ました。もしかすると、ライトノベル風味の文体と、主人公の男子のヘタレ具合のために、感情移入出来にくい方がいらっしゃるかもしれませんね。しかし、その部分に誤魔化されてはなりません。その文章は大変巧みです。
 マジシャンにはお馴染のマジックがいくつか本文中に登場しますが、その描写は的確。この通りに演じることが出来たら、名人だと思います。また、女子高生マジシャンの感情に、愛好家の方はうんうんと納得できることでしょう。大変楽しく読むことができました。
 気軽に読めるミステリーがお好きな方にはオススメします。第2弾が大変楽しみです。

…ただ、こうしたマジックを扱った小説などを読むとき、物凄く気恥ずかしくなるのは私だけ?



 先週の水曜日、マジックの歴史家、著述家であり、ドキュメンタリー映画の監督でもあったJohn Booth氏が97歳でお亡くなりになられました。氏の著書が大好きで『John Booth Classics』(1975年)や『Creative World of Conjuring』(1990年)などは何度読み返したことか。IBMの機関誌『Linking Ring』に長年掲載されていたコラムからは、マジックにおける歴史の深みを学ばせていただきました。
 John Booth氏で忘れられないのは、今上天皇であらせられる明仁さまがご幼少の頃、氏が明仁さまに「消える鳥カゴ」(これは亡きトミー・ワンダー氏の方法。実際、この当時の方法は、消え方が少しもっさりしています)を演じていらっしゃる写真でしょうか?



 名優、森繁久弥さんもお亡くなりになられました。映画の『夫婦善哉』や「社長シリーズ」、ドラマの『だいこんの花』のシリーズ(私はこのドラマで、向田邦子さんの名前を覚えました。嫌な小学生です)、『三男三女婿一匹』、アニメの『風が吹くとき』(1987年)などなど、数えきれないほどの作品を楽しませていただきました。
 亡き父が経営していた料理屋に、この地で舞台の公演がある毎によくいらっしゃっていました。子供の私にとって、大変ダンディーな、優しいおじちゃんという印象でした。
 そして、何と言っても舞台『屋根の上のヴァイオリン弾き』(1967年~)ですよ。このお芝居は私が幼少期に観た劇の中で、初めて圧倒された作品でした。今も「サンライズ・サンセット」は涙なしには聴けません。
 本当にありがとうございました。お二人のご冥福を心からお祈りいたします。



 先週の日曜日、京都で行われたYuji村上さんのレクチャーは大変好評だった様子。会場が満員御礼だったそうです。来年に向けていろんな企画も練り始められたとのことなので、今後の活躍が大変期待できます(やっぱり“Japan Tour”ですか??)。
 今週の月曜日から、ここここのマジックショップで、彼の素敵な作品集『Starting Members』が発売になりました。売り切れる前に、是非どうぞ。この2000円の投資、絶対に損しませんよ。



 昨日はマジックバー「メンバーズエルム」で、桂川新平さんと久々にお逢いしました。彼は名古屋出身の若手クロースアップマジシャンの中ではトップランナーです。
 以前、TV番組「99+(ナイナイプラス)」に「これから期待される若手マジシャン」の1人として登場されたり、ジャパンカップに出演されたり、若手マジシャンの育成にと八面六臂の活躍をされています。
 桂川さんはエルムのマスター、山内利夫さんの下で10年もじっくりマジックを学ばれ、実戦の場で修練を重ねただけあり、その技の巧みさと明るいキャラクターがマッチして、素敵なマジックを披露されます。 
 1998年頃に初めて桂川さんにお逢いしたのですが、その頃から大変研究熱心で、彼の才能の片鱗を感じていました。その当時を思えば、今の活躍は当然のことに思います。彼の紳士的な人柄が、昔からまったく変わらないのが大変嬉しいのです。

 桂川さんのマジックを奇術専門誌『Genii』に寄稿することになり、その取材を兼ねて6時間近く語り合うことができました。ここまでじっくり彼と話し込んだことは今までなかったので、大変濃密な時間を過ごすことができました。内容については「それはまた、別の話…」ということで。Genii誌に桂川さんの作品が掲載されたときは、是非お試しください。プロットと演出、方法論がマッチした、大変素敵な作品です。

 桂川さんは、ご自身の若い生徒さんをお連れになっていらっしゃいました。彼はまだ幼い表情が残る高校1年生。桂川さんのタッチを受け継いだ、大変柔らかいタッチでカードを操ります。山内さんや桂川さんから直接いろいろマジックを教わっている彼の様子は、さながらマジックの英才教育です。後生畏るべし、という言葉を実感しました。

 みんなで話していると「おぉ今日は運がええよ~。うまいフグを食べさせたるわ!」と、山内さんにトラフグのお刺身を出していただきました。
 ちょっと厚めにスライスされたフグの身はコリコリとして、噛みしめるほどにフグ独特の艶のあるうま味口一杯にが広がります。臭みはまったくありません。このフグ刺しの厚みが絶妙なのです。これ以上厚かったら歯ごたえが強すぎて美味しくないし、薄くても物足りなくなるのだと思います。
 
 桂川さんと私が「美味しい!」と連呼しながら頂いていたら、生徒の彼は「ぼく、ちょっと魚が苦手なんです…」と言うではありませんか。なんて、もったいない!
 なので「まったく魚臭くないよ。一度試してご覧よ、美味しいから!」と私が言うと、彼は恐る恐るフグに手を伸ばしました。意を決して1口…「あ、これ美味しい!」と声が漏れます。そして、顔をほころばせながら、彼も素晴らしいフグ刺しを食べ始めました。
 
 ふと、桂川さんが山内さんに「トラフグって猛毒がありますよね?…マスターはどんな魚も捌けるから、もしかしてマスターがこのフグの処理もされたんですか?」と質問をされました。
 すると山内さん、「おー、オレがやったよ。ちょっと手足が痺れてきたらごめんな、そうなってまうと手遅れなんだわ!」と真顔でおっしゃるではありませんか! その言葉を聞いた瞬間、フグ刺しを食べていた生徒の彼の手がビクッと止まり、一瞬にして顔色がサッと真っ青になってしました。
 もちろん、山内さん一流のジョークなのですが、フグ初体験の彼には、ちょっと刺激が強すぎたようです(フグの調理には、調理免許が必要です。山内さんは免許を持った魚河岸さんに捌いてもらったそうです…ただ、東北地方にはフグ調理免許の制度がない県がある不思議…)。
 目を白黒させながら驚いている彼の様子に「あんた、マジシャンなのに騙されとってはいかんよ!」とみんなが大笑い。いつの世も「フグは喰いたし、命は惜しし…」という事でしょうか?



書きかけのエントリーがいくつかありますので、今週はちょいちょい更新させていただきますね。朝夕が本当に寒くなりました。皆さまもご自愛くださいませ。



追記:コメント欄を開いてみるテスト。スパムが多かったら、再び閉じるかもしれません。

memorandum #2

 今日のSnap!

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( ゚д゚ )こっちみんな byあずあず



 写真と言えば、このブログ。Bad Magic Photos
いろいろなマジシャンの宣材用の写真を集めたブログなんですが、コメントが凄い辛口。
ある意味、「笑ったら死亡」系のまとめサイトに似た趣があります。
(追記:リンク、修正しました。教えていただきありがとうございました!)



 フランスの文化人類学者、レヴィ=ストロースがお亡くなりになられました。
 ティーンの時分に名著『悲しき熱帯』(1955年)を読んだときの衝撃と知的興奮は今も忘れられません(「熱い社会」に生まれたことと「冷たい社会」に生まれたこと、果たしてどちらが悲しいのだろう?)。氏こそ、まさに知の巨人だったと思います。今年は、ティーンの頃に憧れていた人たちが次々と亡くなるので非常に悲しいです。
 100歳なら大往生だろう…というか、まだご存命だったことの方にもっとビックリ。ちょうど、カードマジックの基本技法の名前にもなっているAlex Elmsley氏が晩年になってマジックの世界に復活された時、「まだご存命だったんだ!」と驚いたときと似た感じですね。
 そういえば、友人からメールで教えてもらったTwitterでの発言に不謹慎ながら笑ってしまいました。
「なにいってるんだ。Levi-Strauss が死ぬわけないじゃないか。」



最近、auの「ガンガンメール」(feat.土屋アンナ)のCMと、TOYOTAの「ハニカミ店長」vs「こども店長」のCMに癒されます。きっと疲れているんだ、自分…。
 こども店長といえば、このまとめブログ、面白すぎです。



 妻のCathyが観ているアニメーション『とある科学の超電磁砲(レールガン)』のオープニング曲「only my railgun」のPVにビックリ。なぜ驚いたかと言えば、このメイキングですべてが分かります…。
 本編はちらりとしか観ていないけれど、結構面白いアニメーションかも。
 Cathyと知りあってから、惰性でライトノベルを読むようになってしまいました…。内容も軽いしパッパと読めて良いのですが、なんだか大変悔しいです。それでも、たまに本当に面白い作品もあったりして、バカに出来ないんですよね…。
(11月11日追記:友人から次の関連リンクを教えてもらいました「とある審司の販促映像」



 巷で話題のミステリー『午前零時のサンドリヨン』(相沢沙呼著、東京創元社刊、2009年)も買ってはあるけれど、まだ読めず。映画は『THIS IS IT』だけ、ようやく観れました(ビバ、レイトショウ!)。
 どうして、やらないといけないことが溜まっているときに、こうも気になるイベントが多かったり、余計なことばかりしたくなるんだろう?? 余計な野暮用も多くなるし…。うーん、フラストレーションも同時に溜まっていく…。
 今週末、東京で行われる私が敬愛する映画監督と女優さんである黒沢清監督のトークショウと洞口依子さんのトークショウ、本当に行きたい…(お近くの方は必見かと思われます)。



 そんな中で、今依頼されている仕事に関連して『言葉の魔法:マジシャンズチョイスの世界』(Kenji著、K-Magic刊、2009年)を読了。

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 “マジシャンズチョイス”を日本語でしっかりと解説した小冊子です(私はエキヴォックと言う方が好き。1785年に初めてHenri Decrempの本に解説されたとき、フランス人のマジシャンが行っていたということで、敬意を表して。個人的には「曖昧誘導」と訳したいです)。
 下手をしたら本当に怪我をしかねないという事で、1ヶ所だけ気になった部分はありましたが、何はともあれ、こうした見逃されやすい部分を日本語という言葉にして残すという仕事自体が素晴らしいと思います。哲学者カントも「内容なき思惟は空虚であり、概念なき直感は文盲である」と言っています。頭で思っているだけでは、それはただの妄想にすぎません。最近のインターネットは、この種の「妄想」ばかりが培養されて、それが無限に増殖しているだけのように感じるのは私だけなんでしょうか?? この内容で1500円なら、マストバイな小冊子です。

 この小冊子を拝読しながら、それぞれ大人気ドラマだった刑事コロンボのエピソード「魔術師の幻想」(コロンボが次々と封筒を取り出していくマジックが大変ユーモラスだったなぁ)や、古畑任三郎のエピソード「魔術師の選択」(うわ、このエピソードでマジシャン役だった山城新伍さんも亡くなられましたね…)をふと思い出しました。



 あと、この本も読了。

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『Foolproof Card Tricks - for the Amateur Magican』(Karl Fulves著、Dover Publishing刊、2009年)。
 この本の発売を知ったとき「うわ、Karl Fulvesの新刊だ!」と、喜び勇んでamazon.comで購入したのですが、なんてことはない、以前出版された、もう私の書架にある2冊の『Self-working card tricks』シリーズの合本でした。でも、ベテランの愛好家でもコロリと騙されるような巧妙な作品が、多く解説されています。『New Self-working Card Tricks』と『More Self-working Card Tricks』をお持ちでなければ、お奨めします。久しぶりに読み返したら、面白かった作品をいくつか思い出すことができましたし、依頼事にも使える手順も見つけることができたので、結果オーライです。



 早く連絡しないと、と焦っていた取材の申し込みも今日出来たし、とにかく目の前にある壁を1つずつなぎ倒していこう…つか、その前に早く風邪を治さなきゃ。

『Macbeth : The DVD Edition』(Folger Shakespeare Library)

“All the world's a stage, and all the men and women merely players: they have their exits and their entrances; and one man in his time plays many parts, his acts being seven ages. ”
- William Shakespeare


 私の趣味の一つは、映画や演劇を観に行くことです。亡き父に連れられて、幼稚園の頃から寄席や劇場に通っていました(当時は、その後で外食する方が楽しみでしたが!)。
 そんなお陰で、いくら時間がなくても観劇だけはかかせません。このカテゴリーでは、私が観た映画や演劇、マジックショウなどについてお話をしようと思います。



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 英文学の最高峰、ウィリアム・シェイクスピアの舞台は結構好きで、いろいろ観に出掛けています。最近では、演出家の蜷川幸雄氏の演出による、歌舞伎版の「NINAGAWA十二夜」は大変面白かったです。今年の8月の終わりに、NHKの教育テレビでもロンドン公演の舞台中継が放送されたので、ご覧になられた方も少なからずいらっしゃると思います。2005年の初演も観に出掛けたのですが、本当に良く出来たコメディです。
 舞台「子供のためのシェークスピア」シリーズも好きで、これは大人が観ても本当に楽しめる舞台です。

 シェイクスピアの作品というものは結構難解なようで、実はそうでもありません。人の営みや人情の機微というものは時代を経ても変わらず、良い意味でも悪い意味でも哲学者G.W.F.ヘーゲルの「歴史は阿呆の回廊である」という言葉を思い出してしまいます。

 今回ご紹介するシェイクスピアの作品は、四大悲劇の1つとしても名高い「マクベス」です。四大悲劇の中でも、短かめの作品になります。ダンカン王の信頼も厚い勇敢な将軍マクベスが、3人の魔女に出会いその予言を聞いてしまったことで、心の中に黒い野心が生まれます。冷酷で野心家の妻にそそのかされ、ついに王を殺してしまうのですが…。

 この作品は、今まで様々な映像化もされてきました。
 名優オーソン・ウェルズ氏が監督、主演した『マクベス』(1948年)は、雰囲気すべてが大変怖い映画でした(DVD化希望!)。白黒映画なので、余計に怖さが倍増していましたね。一方、名監督ロマン・ポランスキー氏の『マクベス』(1971年)は、大変豪奢な世界観で大量の血で溢れたオゾマシイ作品でした(これもDVD化希望!)。
 世界のクロサワ、黒沢明監督の『蜘蛛巣城』(1967年)は、舞台を日本の戦国時代に置き換えた作品で、三船敏郎さんや山田五十鈴さんの名演は素晴らしいです。クライマックスのシーンには、本当に恐怖を感じました。

 この作品を映画や舞台で観るに連れ「この作品、悲劇というよりも、実はホラーなんじゃないのかなぁ…」とずっと思っていました。幽霊や魔女がわさわさ登場しますし、魔女集会のシーンにいたっては、いたいけな子供にとってトラウマ一歩手前になるほどの恐ろしさを味合わせました。

 唯一の例外は、三谷幸喜さん演出の舞台、東京サンシャインボーイズの『ショウ・マスト・ゴー・オン - 幕を降ろすな - 』ですね。これはマクベスを上演する劇団の裏側を描いた大変素晴らしいコメディでした。あまりに面白かったので、91年の初演の後に94年の再演も観に行きました。
 この舞台のドラマ版(これも傑作)がようやくDVD化されたのですが、もうメーカー在庫切れってどういうこと??

 さあ、ここまで来ますと「マジックの周辺の話を書くブログで、どうしてシェイクスピアなんだ?」と思われることと思います。はい、ここからが本編になります。
 昨年の1月、アメリカのコメディ・マジックの雄である、Penn & TellerのTellerさん(小さい、まったく喋らない方の人です)が、シェイクスピアの舞台演出で有名なAaron Posner氏と共同で「マクベス」の演出をした舞台が制作されて、アメリカのニュージャージーとワシントンDCの劇場で公開されました(上の写真で、DVDの右側にあるのがそのパンフレットで、左側にあるのがプレスリリースです)。
 観に行ったJamyやRichard、Steveは、本当に楽しかったと言っていて、チャンスを逃した私は大変ガッカリしていました。

 そうしたら、今年の9月に『Macbeth : The DVD Edition』という本が、シェイクスピア研究で有名なFolger Shakespeare Libraryから出版されました(上の写真で、DVDの真下にある本です)。DVDが付録でついてくるのですが、この中にTellerさんが演出したマクベスの舞台の完全版が収録されているのです!

 Tellerさんが「15歳のホラー映画好きの少年が観て、楽しめる舞台」と語り、パンフレットの上に「Horror Show」と書かれているように、血みどろの超自然ホラー作品に仕上がっています。言葉もわかりやすく、英語字幕もついていますので、テキスト(もちろん1623年のファーストフォリオを使用しています)と見比べるとどこをどういじったのか、良く分かります。
 そして、マジックが効果的にそこここに使用されています。これが大変不気味なのです。
良く考えれば、マジックというショウは大変残酷ですよね。人体を切断、くし刺し、火あぶり、拘束した上に狭い箱の中に監禁する…。ここだけ読むと、ただの残酷ショウ以外の何ものでもありません。
こうしたマジックが持つ暗黒面が、このホラーショウに組み込まれることで、ショウ全体に深みが加わっているのです。Tellerさんに加えジョニー・トンプソン氏などが協力しているだけあって、非常に素晴らしい。これ以上は、内容に触れますので言いません。是非、皆さんの目で確かめてください。

 一言だけ言えば、必見です。まず、オープニングからビックリします。あれだけ格好良く怖い「魔女集会」のシーンを観たことがありません。このマクベスの妻は、凄く怖いです。妻のCathyがこんな人物でなかったことに、心から感謝しました。しかも、ただ怖いだけでなく、ブラックなユーモアにも溢れている、かなりの異色作です。
 ホラー作品でなければ言いたいことがもっとあるのですが、ネタバレになってしまう怖れがあるので、あまり詳しく言えないのが残念です。

 ぐいぐい引き込まれ、舞台が終わるまでテレビの前から離れることが出来ませんでした。
 
 英語が苦手ですか? それではお手元に「マクベス」の訳本を御用意ください。
 ただ、どの訳本を読めば良いかと言いますと、このチョイスは非常に難しいのです。シェイクスピアの面白さは独特の“言葉遊び”にもあって、それを残しつつ翻訳するというのはそれぞれの訳者の力量によります。 
 やはり、日本に初めてシェイクスピアを“沙翁”として紹介した坪内逍遥氏の名訳(有名な「魔女集会」の場面は、まったくもって素晴らしい描写です)は外せません。活字では中々読める機会がありませんが、今はインターネット上で読めるんですよね。これは便利。その後の訳は、結局は逍遥訳がベースになった感じがします。翻訳をする者から見て、この訳を越えることは非常に難しいと思います。
 次にお奨めしたいのが、最近では衝撃的だった『新訳 マクベス(角川文庫)』(河合祥一郎訳、角川書店刊、2009年)です。狂言師として著名な野村萬斎さんの舞台用に訳し下ろされた作で、萬斎さんと一緒にセリフを練り込まれただけあって、萬斎さんにピッタリのマクベスに仕上がっています。この訳での言葉遊びは、確かに狂言に繋がりますね。読みやすくて、大変面白いです。逍遥訳と読み比べると、さらに興味深いでしょう。

 本当に素晴らしいホラーショウでした。2時間たっぷり、これが1300円位で楽しめるとすればマスト・バイです。特典映像のインタビューも興味深いですよ。もちろん、日本製のDVDプレイヤーでも再生可能です。日本のamazonで購入可能ですから、注文に手間もかかりません。秋の夜長、魔法のような怖い話を存分にお楽しみあれ。
 
 なお、Tellerさんによるこのショウの裏話などがここで読むことができます。大変興味深い内容です。また、奇術専門誌『Genii』2008年2月号でも、マイケル・クローズ氏が書いたこのショウに関する記事を読むことができます(残念ながら品切れになっています)。
 これらの記事は、是非DVDを観終えた後にお読みになられることをお奨めします。

Broken Wand

どの項目にも入れることができないので、初めての未分類のエントリーになります。

 アメリカのコメディ・マジシャン、カール・バランタインさんが92歳で死去されました。素晴らしいコメディをありがとうございました。カールさんのショウ、大好きだったんですよね…。
 “The One and Only Carl Ballantaine”

 今年も、多くのマジシャンの方々が鬼籍に入られました。日本では泡坂妻夫先生、同郷のよしみで大変良くしていただいたマーカ・テンド-さん(今でも信じられません)、海外ではイギリスのコメディ・マジシャンだったボビー・バクスター氏、素晴らしいギャンブラーズ・デモンストレーションで知られたマーチン・ナッシュ氏(亡き親友、上田勇さんと一緒に京都でお好み焼きを食べに行った想い出は一生忘れません)、ご夫婦で素晴らしい電球を使ったステージショウを演じていらっしゃったマーヴィン&ロイのキャロル・ロイさん(本当にチャーミングな女性でした)、御自分の名前がついたシャッフルで有名だった、故ハーブ・ザローさんの奥さまマルラさん(おしどり夫婦としても有名でした)や、カナダの素晴らしいマジシャン、シド・ロレインさんの奥さまレネ・ジョンストンさんなど、天国のマジック・キャッスルは大盛況でしょうし、年下の者が年上の方々を見送るのが自然の摂理だと言っても、それでも寂しいです。
(11月5日追記:御指摘をいただきました。そうですよ、イギリスのコメディ・マジックの雄、Ali Bongoさんもお亡くなりになられたのですよ。リンク先のパルト小石さんのエッセイ、素敵です。クリエイターとしても素晴らしく、マジックランド社から発売されている、鏡を貫通するダイスのマジック「スルー・ザ・ミラー」や「予言の書」は傑作だと思います。
小学生の時にテレビで観た抱腹絶倒のコメディマジックが忘れられず、通訳をさせていただいときは感動しました。そういえば、少し前に違うAli Bongoさんが大統領になられたそうですね。このニュースを知ったときビックリしました)


 マジック以外の分野でも、マイケル・ジャクソン(映画『THIS IS IT』、最高でした)、そのセクシーさにドキドキしながら見ていたTVドラマ“チャーリーズ・エンジェル”で有名な女優のファラ・フォーセットさん(個人的には映画『シャレード'79』の印象も強いです)、小学校時代から好きだったミュージシャンの忌野清志郎さんや、本当に格好良かったプロレスラーの三沢光晴さん(デビュー当時から亡き母と共にファンとなり、1990年のジャンボ鶴田戦は今でも鮮明に記憶に残っています)、笑点でお馴染だった「星の王子さま」五代目三遊亭圓楽師匠と、ティーンの頃から憧れの存在だった方々が次々と鬼籍に入られるのは、ちょっと心に堪えます。

 ただただ、皆さまの御冥福を祈るばかりです。

何と一緒に食べようか?

“Who never ate his bread in sorrow, Who never spent the darksome hours Weeping, and watching for the morrow,-- He knows ye not, ye gloomy Powers. ”
- Goethe


 今日は義母のCindyさんに誘われて、妻のCathyと共に大好きなパン屋さんでブランチ。

 実はあまり人には教えたくないパン屋さん。このレトロな雰囲気、まさに私好み!

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 お店の奥がイートイン出来るようになっていて、クリエイター系のお嬢さんたちがノートパソコンを持ち込んで、珈琲を飲みながらここで仕事をしたくなる気持ちも分かります。

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この椅子が気持ち良い…。

 このお店のパン、味とコストパフォーマンスがとんでもなくバランス良く、とても美味しいのです。
 この地方、喫茶店の多さだけが目立っていますが、実はパン屋さんも大変多いのです。この地方発のパン屋さんも結構あります(このお店はその中でも有名ですね)。
 この地方では、ドイツパン、イギリスパン、フランスパンなどと、それぞれの地域のパンも楽しめて、それぞれが独自の美味しさを競っているのですが、やはり日本人には昔ながらの日本のパンが一番口にあうように思えます。飽きがこない、といった方が良いかもしれませんね。
 …話を戻しまして。私が大好きなここのお店は、関東地方の美味しいパン屋さんと比較してもまったく負けていません。
 
 おすすめその1、ツナマヨパン。

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ツナとオニオンとマヨネーズが絶妙のバランス。なんと、妻のCathyのリクエストで復活したメニュー。値段に注目!

 次におすすめその2、焼き立てのごぼうサラダのパン。

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ごぼうのシャキシャキ感が最高。これも美味しい。

 あれこれ考えて、今日のセレクション。

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 左からCathyのオニオンチーズ、奥がCindyさんのレンコンサラダ、手前が私のシャウエッセンとパックに入っているのがおすすめその3、絶品の味噌カツサンド。
 甘辛な味噌だれ、キャベツ、豚カツが素晴らしいアンサンブルを作りだし、それを受け止めるパンの力強さ。これはヤバいです。いくつでも食べられます。
 全国には有名な美味しいカツサンドがいろいろありますが、私はこの味噌カツサンドは、カツサンドのベスト3に入る味だと思います。

 忘れてはならない、ここの珈琲。

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 淹れ方が絶妙です。濃すぎず、薄すぎず、芳純な香りもとんでいません。基本的に紅茶派なのですが、ここの珈琲は私が飲める数少ない珈琲の1杯です。あ、私の話が長すぎて、Cindyさんが味噌カツサンドに手を伸ばしています。どうぞ、召し上がれ。

 そして、このお店のスペシャリテ。

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レーズンパンです。

 レーズンパン、私は昔から嫌いで「ここのお店のは美味しいから!騙されたと思って食べてよ!」と何度も言われ、何度も騙されてきました。しかし、ここのお店のレーズンパンを頂いて、私のレーズンパンに対する見方がガラリと変わりました。こんなに美味しい食べ物だったとは!
 写真はレーズンメロンパンなのですが、ここのレーズン食パンも絶品です。あまりの美味しさに一時期はまって、酷いときにはレーズンパンを1斤買って、それを千切っては食べしながら自宅で仕事をし続けていました。
 お話を伺っても、レーズンも小麦粉も特別なものではないそうなので、これは偏にマスターの腕かと。

 ここのお店のマスターは、いつも飄々とジョークを飛ばしてばかり。なので、私はひそかにピーチピットのナットさんとあだ名をつけています(うわ、このエピソードを読むと、イメージと被る所が多い…)。
 あと、お店には看板娘がお二人いらっしゃって、いつもてきぱき、スマイルが素敵です。このお店の居心地の良さは、マスターと看板娘さんたちによる部分も非常に高いのです。

 このお店の本棚(これはほんの一部)。

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 マスターが読了した本が置いてあって、常連さんたちに無料で貸し出ししています。本のセレクションが私に似ているので、いつもビックリ。

 たまにはこういうブランチも良いものです。哀しみと共に食べるパンも乙なものだと思うのですが、やはりみんなの笑顔と一緒に食べるパンが一番。午後への活力を補充して、お店を後にしました。

Trick or Treat?

"Dedicated to Tom.... Without whom, I could do very well."
- 『Life with Tom(邦訳名:トム氏の生活と意見)』Jerry Mouse著、1953年


 このカテゴリーの名前は、私が大好きなアニメーション『トムとジェリー』の短編「Life with Tom(邦題:トム氏の優雅な生活)」の中に登場する、ネズミのジェリーが著した本の題名から取りました(この作品は著作権が切れているようなので、リンクしておきます)。
 敬愛するトム氏のような七転八倒、試行錯誤の日常の中で、マジックについてちょっと考えていることをこのカテゴリーで綴っていきます。



 先週の土曜日はハロウィーンでした。皆さんは如何お過ごしでしたか? ここ数年、ハロウィーンも日本で認知されてきて、いろいろなレストランやバー、クラブなどでは仮装パーティーが開催されるようになっていますね。

 残念ながら今年は所用のために自宅を離れていて、M嬢からのせっかくのお誘いを断らないといけなかったり、自宅の近所に住むアメリカ人の子供たちにお菓子をあげられなかったのが大変心残りでした。

 我が家でハロウィーンの定番といえば、これ。

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 まずは“Peeps”というお菓子。甘いマシュマロの砂糖がけです。アメリカのパーティーにはかかせないお菓子ですね。その時期にあった可愛いマシュマロが登場するのですが、ハロウィーンの時期は、オバケやパンプキン、ドクロなど、いろいろな種類が出回ります。これからの時期はクリスマスや雪だるまといった種類に代わっていきます。

 そして左側にある袋は“Monster Munch”。これは最近、日本でも輸入食品を扱うお店で購入できますね。可愛いオバケの形をしたポテトチップスです。今はケチャップ味のものもありますが、ノーマルな塩味の方が私は好きです。イギリスで売ってる“Mega Monster Munch”のオニオン味も好きなのですが、なかなか入手ができません(どなたか売っているお店を知っている方がいらっしゃいましたら、是非メールフォームからお教えください。よろしくお願い致します)。

 右側に置いてある箱は、仕掛け絵本なんです。これをパタパタ開いていくと、いろいろなモンスターやオバケが出てきます。こんな感じです。

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Boo!

良く考えられていて、私の好きな仕掛け絵本の1冊(1箱?)であります。

 株式会社テンヨ-から、ハロウィーンにちなんだマジックがここ数年出回るようになりました。このシリーズが大好きで、この季節は頻繁に使っています。

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 去年、我が家を訪れたアメリカ人の子供たちにハロウィーン版の「魔法のキャンディー」を見せたら、口をあんぐり開けてビックリ。きゃっきゃ言いながら、出現したキャンディーを持って帰っていきました。
 いわゆる“お化けハンカチ”は昔から大好きで、いろいろ重宝しています。「ゴーストハウス」のハロウィーン版は、子供っぽいのですが好きなんですよね。
 ここの写真にはついていませんが、「ゴーストペット」も不気味です。
 この時期は、フレッド・カップスが有名にした、ドイツのブルーノ・ヘニングが考案した「指輪ケースに通うカード」とこのマジックを組み合わせて演じています。この「指輪ケースに通うカード」については、拙訳の『ジェイミー・イアン・スイスのクロースアップ・マジック』の中で詳細に分析されています。「不可能な場所へ移動するカード」の現象がお好きな方は必読だと思います。
(関係ありませんが、こうして見ますと、考案者の下村知行さんはオバケ好きなんですね!流石、演出面やストーリーからマジックを考えられる方だと思います)

 そして、今一番のお気に入りはこれ!。

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 大人気のディズニー映画『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』(1993年)がデザインされた「マジックトランプ」です。裏模様は主人公、ジャック・スケルトンがあしらわれています。
 このデック、天地があるのですが、広げすぎなければそんなに気になりませんし、昔テンヨーのディーラーだった亡き名人の谷川徹夫さんに教えていただいた方法を使っても良いでしょう。
 デックに選ばれたカードを戻しますが、このとき完全にデックを立てて、カードの表面が観客に向くように広げてます。そして、観客のカードを戻すときも表面を相手に見せながら戻してしまうのです。手順によっては顔を横にそむけながら行えますし、そうすることで大変フェアな印象を与えます。
 それでも、一般の観客はデックの天地なんて、まったく気にしないでしょうけれども!

 4枚のエースには、それぞれジャック、その恋人のサリー、サンディー・クローズ、そして可愛い幽霊犬のゼロが、ジョーカーには3人組の子鬼と無法者のブギーが描かれています。
 何と言っても、このセットには主人公ジャックの手を模した小さな魔法の棒が付いているのです。これを使って行う「ライジングカード」や、ゴムひもの上にのせた魔法の棒がひとりでに動き出して観客のカードを当てるマジックなども解説されています。
 こんな感じです。

animatedjack.jpg
(ジャックの手が自然に左から右へズルズルと動いていきます。大変不気味な光景です)

 お馴染のマジックも、ちょっと工夫でこのうまさ(By神田川料理道場)ですね。
 この“ジャックの手”を「お化けハンカチ」と組み合わせたJ・C・ワーグナー氏のカード当てや、ユージン・バーガー氏の「ビジュアルに引っ繰り返るカード」に使っても、凄く気持ち悪いカード当てになりますね! ジャックの手を使った「自動書記」も気持ち悪いでしょう。

 「こんなオモチャ、使ってらんない」という方は、今年の1月に発売された、このDVD-Boxセットを捜されてみては?
 初回限定版の特典として、ターミネーターの腕のレプリカが付いているのです。これが、このジャックの手と同じくらいの大きさなのです。これも雰囲気が出ます。
 捜すのは難しいかもなのですが、大きな家電量販店のDVDコーナーでは今も見かけますので、本気で欲しい方はお早めに(11月に発売される通常のボックスセットが出た時点で、下手をすると回収されてしまう可能性があります)。ちなみに、Season1は非常に面白い! 今、毎週土曜日に放送中です。

 テンヨー製のマジック、私は大好きです。演じるたびに思うことがあります。
 この「マジックトランプ」「ミスターラビット」「チャイナリング(小)」、そして「ダイナミックコイン」など、もう何十年というスパンにわたって脈々と販売され続けており、今でもデパートの実演では大人気です。
 こうしたロングセラーのマジックは、すべてシンプルでインパクトの強い現象なんですよね。私見ですが、「ダイナミックコイン」はコインマジックの最高傑作だと思います。「世界最高のコインマジック」というキャッチコピーが、これほどすべてを言い表している商品も少ないでしょう。こんな不思議なマジックは、そうそうお目にかかれません。
 まったく怪しげなテクニックなしに、出現、消失、移動、交換、変化、貫通といった、マジックの現象の多くがこの道具一つで見せることが可能なのです。しかも、道具は事前、演技中、事後といつでも改めが可能なんて、ありえません。もし、私がこのマジックを考案したのなら、絶対に誰にも教えないマジックにするでしょう。

 テンヨー社製のマジック特有の、おもちゃのような道具立てがお嫌いな方もいらっしゃいます。でも、こうした見た目に誤魔化されてはなりません。
 最近カナダで面白い動きがありました。「Tenyo Elite」です。テンヨー社のウェブサイトでも紹介がありますね。

 テンヨーの製品が好きなカナダの愛好家が、プラスチック製ではなくもっと質の高い素材を使い、プロも使いたくなるような仕様でテンヨーの製品をリメイクしたのです。きちんと株式会社テンヨ-に話を通して監修してもらい、製造販売の許可を得て今回の発売にこぎ着けたようです。
 鈴木徹さんが考案されたメンタリズムの傑作「フォーチューンスティック」と、下村知行さんが考案された素晴らしい「ファジィコイン」(タイトルに時代を感じますね!)の2作品がちょうど発売開始になりました。
 現象としては一級品の作品が、しっかりしたアルミ合金で美麗に作られていたのなら演じてみたくなりませんか? すべての作品をこうすべきだとはまったく思いませんが、これも「ちょっと工夫で、このうまさ」的な考え方の1つだと思います。日本での11月末の発売を待つと吉でしょう。

 テンヨー社製のマジックが、いろいろな一般の方が購入できるようなデパートや量販店で販売され続けられていても、また多くの一般の方が購入されていても、それでも観客に強いインパクトを与えます。
 これらの道具を購入して持っている(または持っていた)一般の観客に演じても「私が前に買ったのと違う!」と言われたり。

 こうしたロングセラーのマジックというものは、古典でありながら常に最新作なのだと思うのです。
 珍奇な道具立てや現象も面白いですが、一般の観客は、そうしたことよりも、マジックというメディアを通した“幻想”を楽しんでいるのではないでしょうか? マジックの道具や作品は、あくまでも、その“幻想”を紡ぎだすためのツールであって、その新旧とかはあまり関係ないように思います。

 ただ、確かに道具立てとか演じるTPOに合わせた見た目とかには気を使わなければなりません。演じる場所によっては、プラスチック製の道具は貧相に見えてしまうことも多々あります。
 でも、道具の持ちだし方や現象そのもの、そして演出如何によっては、プラスチック製の道具が絶対に使えない訳ではありません。
 例えば、「魔法のミニカー」は、私も大好きなカード当ての道具です。アメリカの科学者でアマチュア・マジシャンであるブルース・ベネット氏は、子供のころの想い出話とおもちゃのミニカーを演出に使った素敵なカード当ての手順「Joey's Hero」という素敵な手順を、ペート・マッケイブ氏の名著である『Scripting Magic』(2008年)の中で発表しています(この本、マジックにおける演出を学ぶ方は必読です)。 
 ここまで凝らなくても、「魔法のミニカ-」ならば「おもちゃのミニカーです」とそのまま言って使えば、それだけで観客に魔法や楽しさを感じさせることは十分に可能だと思います。

 実際にはこうしたツールの使い方にこそ、“幻想”を紡ぎだす秘密が隠されているのではないでしょうか。

 なんか、最近こうした原点が見えなくなってしまっているような気がしてなりません 。古典的な作品の持つインパクト、もうそろそろ見直されても良いような時期なのではないかなぁ、と思ったりする今日この頃です。

 株式会社テンヨー社製の「マジックトランプ」自体私は傑作だと思うのですが、この「ジャックの手」を使った演出はさらに素晴らしいでしょう。ハロウィーン関係なしに、しばらく使っていようかな?と決めています…おっと「マジックトランプ」自体はハロウィーン専用ではありませんので、オールシーズン楽しんで使っていただけますよ!
(もし「マジックトランプ」がお好きな方は、最近USプレイングカード社から発売されている、これまた質の良い「デランドの100ドルデック」もお試しあれ)
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Author:yuki_the_bookworm (a.k.a "べたねば")
何げない日常の中の、本と料理とマジック。

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