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東京日和(Part 2)

前のエントリーからの続きです)

 IBM東京リングのパーティに参加した翌日は、Cathyと別行動。Cathyは義姉のBrendaさんと自由ケ丘散策。私はちょっとまだ言えない取材の手伝いでした。この取材の成果が出るのは、早くて来年の頭ですが、絶対に皆さんがお待ちになって損はないと思います!
 この日のディナーは、いろんな方とご相伴することに急遽決定。楽しい焼肉ディナーとなりました。



 そして、滞在最終日。今日はいろいろ打ち合わせの日。ええ、マジックだけでなく、ちゃんと仕事もしています! ここではマジック関連の話だけにしておきましょう。



 まずは、東京堂出版さんへ。編集のNさんとお逢いしたのは良いのですが…なにやら足を引きずっていらっしゃいまして。「いやぁ、昨日松葉杖が取れたんだよね! 階段をフンフン♪と気持ち良く降りてたら、筋を切っちゃってさ!」と明るく不穏な発言。お逢いするたびに、身体のどこかしこが故障中のNさんなのですが…だ、大丈夫なのか!?

 私が手がける翻訳『Uncanny Scot : Ron Wilson』の話はほとんど出ず(だって、翻訳も途中なんで、取り立てて話すこともなかったり)、今日はほとんどある方からのメッセージを伝えに出向いた感じでした。そうしたら、逆にある方にメッセージを伝える事になって、久々のパシリ気分を味わいました(笑)。

 あ、ゴールデンウィークが終わったころに『ラリー・ジェニングス カードマジック』が発売になります!カード好きにはタマラナイ、濃い内容の本ですよ。秋口には『The Magic』誌で連載されて好評だった松山光伸さんの著書が出版されます。ゲラをちょっと拝読したのですが、これまた面白い本になっていました。普通の読み物としても十分に面白いので、完成が非常に楽しみです!
 歴史好きな歴男、歴女の貴方は是非。



 東京堂出版へのエレベーターの中で気になるイベントのポスターを発見。BS-TBSの人気番組、酒場放浪記のファンなら必見の対談かと!(話しは変わりますが、番組ホームページでデスクトップ・アプリの配付をやっています。凄い素敵すぐる!) 



 そして、夜は銀座小劇場へ。ボナ植木さんが主催する「ボナ・ペティ!★ライブ」を観覧に出向きました。

 銀座へ到着した瞬間、最近つぶやき始めたTwitter「銀座なう」とつぶやいてみました。これがしたいがためにTwitterを始めたとはとても他の人に言えません…(そして、年齢も分かってしまう…orz)。
 銀座に来るたびに出向く博品館の1階で、好きな年月日の新聞のプリントを取りだせる機械を発見。自分の誕生日で試してみました。番組の名前を見ていたら、歳をとったなぁ、と思わず泣けてきました。  

 銀座小劇場は結構お気に入りの劇場で、以前からお笑いライブなどでよく出向いていました。結構ギリギリの時間だったのですが、15分前には入口でママおのさかさんにいじられながらも無事入場。

 結論としては、最高に楽しいショウでした。ボナ植木さんご本人も「本当に良い回に来たね!」とおっしゃっていました。

 オープニングは、ボナさんによる今流行りの「立体映像」のギャグマジックから。この時点で、もう大満足でした。ボナさんが「このネタ、受けが良いから売ろうかな?」というと、ヒロサカイさんが客席から「オレ、買う!」と混ぜっ返し、さらに受けていました(笑)。
 また、繋がる金輪(リンキングリング)の手順が美しく、金輪同士が当たって鳴る“カチャン!”という音が大層爽やか。

 続いて、赤坂にあるアミューズメント・レストラン「NINJA AKASAKA」から、琉球上級忍者のシーサーさんが登場。背も高く、カッコイイお兄さんです。3つのボールを使った曲芸と、ナイフを使った派手なカード当て。ボナさんとの掛け合いが最高に面白かったです!
 ちょうど、アメリカのマジックバーテンダーの演技を拝見しているような感じです。今はほとんどアメリカでバーマジックを観る機会は無くなってしまっていますが、昔は1人で演じるのではなく2人くらいで組んで演じ、より多くのお客様を相手にマジックを見せていたのです(大勢のお客様にマジックを観て貰えれば、それだけ店の売り上げがあがる、というのが理由だそうです)。 

 そして、次にボナさんが演じられた新作「ミラージョン」が本当に素晴らしい! 題名から薄々お気づきになられるかとは思いますが、鏡をモチーフに使った凄いコメディであり、なおかつオチが不思議という素晴らしい演目でした。実はIBMパーティでもオープニングで短縮バージョンを演じられたのですが、完全版の方が絶対にイイ!
 ボナさんのオリジナルの演目は(物理的にも)他と違う視点からマジックを観ているようで、正に思考のアクロバットを楽しませていただけます。これは是非とも皆さんにご覧頂きたいです(なので、内容も未見の方の幸せのために秘密にしましょう)。多分、この夏、UGMの大会で演じられるんじゃないでしょうか?
   
 女優の三咲順子さんの朗読は、大変素敵なお話しでした。仕事に失敗したサラリーマンが彼女に連れられてシブシブ観に行ったマジックショウ。そこの登場したのは、とんでもない非常識なマジシャンだった…非常識なショウを観ている内にしょぼくれたサラリーマンが知る真実とは…?
 三咲さんの素敵な声とお話しに、グイグイと引き込まれていきました。最近ちょっと考えていた事と話しがうまくリンクして、涙が出そうになったのは内緒。

 加藤陽さんは、IBMパーティでも演技をされたのですが、こうした劇場で演技を拝見すると本当に引き立ちます。華麗、という一言です。魔法の棒そのものをマジックの道具にし、目の前で変幻自在にあやつっていきます。演技の疾走感もタマリマセン。加藤さんがお使いのStudio Apartmentの曲とそのBPMが好みなので、その点でも良いなぁ、と。
 また、ネクタイを外す所から始まり、最後は再びシャツにネクタイが出現して終わるので、演技全体がFull Circleになっていて、大変爽快感がありました。

 トリ前がモロ師岡さんの1人コント! 実は私的にハイライトの1つでした。私は昔からモロさんのファンで、20年近く前に東海テレビで放送されていた10分間のコント番組はもちろんのこと、芝居や映画(北野武監督作品の常連でもあります)を欠かさずチェック。一時は「中学生日記」までチェックしていました(モロさんが脚本を書かれた人情噺の回は名作!)。なので、このパワフルな演技に感激しない訳にはいきません。ずっと笑いっぱなしでした。

 大トリは、ポルトガルのデビッド・ソーサさん。ラブソングにのせて繰り広げられる、本当に粋なマニピュレーションの演技。Cathyは溜め息をつきながら観ていました。封筒からカードを取りだし、そこから演技が広がっていきます。ソーサさんも、演技が無から始まり無で終わるというFull Circleになっているので、観ていて大変気持ちが良いのです。加藤陽さんが動の演技とすると、ソーサさんは静の演技。大変良い組み合わせだと思いました。



 あっという間の1時間半でした。ショウ全体がボナさんの趣味や好みが反映されいて、本当に洒落ているんですよね。以前、立川談志師匠がご自分が好きな落語や漫談、漫才のサワリだけを集めたCD-BOXを発売されましたが、まさにそんな感じ。ボナさんが、今お客様に見せたい旬な演技を、一番その演技が光り輝く状態で「召し上がれ!」とうまくサーブされていきます(あ、天才構成作家である高田文夫さんが主催する「高田笑学校」のライブにも似ていますね)。

 さらに、ショウの作、構成、演出すべてをボナさんが行なっているとは、信じられません。ナポレオンズの時のボナさんも素敵なのですが、ピンで活躍されるボナさんも洒落ていて本当に素敵で、ナポレオンズのボナさんしかご存知ない方には、是非観ていただきたいショウです。この気合いの入った舞台を拝見すれば、ボナさんが「これは、ライフワークです!」とおっしゃるのが良く分かります。

 もし未見の方は、一度マジシャン以外の友人や異性を連れて劇場に出向かれると絶対良いでしょう。妻のCathyも「マジックのショウがこれほど面白いとは知らなかった!」と言っていました。皆さんが入場料以上に楽しんで帰ることができると思います。
 次のショウは7月あたりだそう。ボナさんのウェブサイトをチェックしていると吉です。 



 そんなこんなで東京出張もおしまい。酷い風邪というお土産を持って帰路につきました。
 他の雑感としては、アメリカの奇術専門誌『MAGIC』誌の2月号に、カズカタヤマさんたちと行なった悪巧み『The Magicca vol.81』が取り上げられました。かなり好意的な記事で、私の考えたリチャードとライオネル・リッチーのギャグがかなり好評だったことを知りました…つい最近!(筆者のギャブ・ファジリさんに聞かなかったら知りませんでした!) IBMパーティで、海外の方とその話が出来たのは嬉しかったですね。

 さあ、次のエントリーでは、溜まっている美味しかったものフォルダが久々に火を吹きます。

(追記)リンクを追加しました。MISDIRECTIONさんです。マジックだけでなくパズルや不可能物体など、不思議に関する情報を網羅されています。面白いFlashパズルを多数紹介されていて、気がつくと仕事の手が止まっているという事態にいつも陥ってしまいます。
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東京日和(Part 1)

 気がつけば桜の季節も去ってしまい、そのくせ寒暖の差が激しすぎる日々、皆さまはいかがお過ごしでしょうか? この酷い季節の変わり目のため、私は風邪がまったく治りません。

 私は引越の荷ほどきもまだ終わらない、相も変わらずドタバタな毎日を過ごしていますが、先日2泊3日の強行軍で東京へ行ってきました。



 夫婦で大好きな東京ディズニーリゾートに行かない場合、東京で定宿としているのは大抵中目黒にあるホテルです。そのホテルを利用する理由はいくつかありまして。
 まず交通の便が良い。夫婦で好きな六本木、自由ケ丘、銀座、渋谷、マジックランドのある茅場町など、電車1本で行くことができます。次に駐車場が無料。駐車料金は大抵1泊2000円くらいはしますから、これだけでランチ1回分になりますよね。3つ目がちょっとした大浴場があること。疲れてホテルに戻ってから、ゆっくり大きな湯船に浸かると全身の疲れがかなり和らぎます。4つ目は昔から行きつけのご飯屋さんや呑屋さんがいくつかあって、帰りが遅くなっても美味しい食事に困らない。そして最後は、朝食が美味しい!しかも、サービスになっています。今回は中華風の朝食が抜群でした。これで1泊7000円なら申し分ありません。閑静な住宅街の中にあるので、大変静かでゆったり過ごすことができるのもポイントが高いです。
 あまり人に教えたくない穴場のホテルなのですが、気になる方はここにアクセス



 ホテルに荷物と車を置いて、パーティーに備えて着替えを済ませてから、14時すぎに無事錦糸町へ。IBM東京リング主催のマジックパーティーに参加するためです。今回初めて妻のCathyをマジックの会に連れていきました。基本的に、面白い会にしかCathyを連れていかないことにしています。

 錦糸町の駅前が物凄く整備されていて、その綺麗さにビックリ(ごめんなさい、呑屋が多い地域としか意識がありませんでした!)。ロッテシティホテル錦糸町が出来たこともあってか、人でごった返していました。
 本当に久しぶりにアルカキットへ。お茶を飲もうと思っていたらレストラン街は満席のため、早々に退散。しかし、セレクトショップのmiomioで面白いキーホルダーを見つけて夫婦で一目ぼれ。こいつを連れて帰りました。

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今も、新居のドアをよじ登っています。



 適当にお茶を飲んでから、会場の東武ホテルレバント東京へ。入口の所でミッキーマウスのついた上着を着た怪しげなガイジンを発見…

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 親友のリチャードです。Cathyが「ムームーさん(リチャードのあだ名です)、着飾って来場してくださいって招待状に書いてあったでしょ! ミッキーの上着だといつもと一緒だよ!」と突っ込むと、ムームーさん曰く「上着はミッキーだけど、中のシャツはストライプの普通のシャツだよ!ちゃんとしてるよ!(キリッ!)」と答え、夫婦でこの発言のどこから突っ込もうか、しばし考え込んでしまいました。

 そして、その側に引率の先生のようにTonおのさかさん、マックス名人がいらっしゃいました。

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 マックスさんとは、本当に久しぶりにお逢いしました。数年前に心臓のバイパス手術をされましたが、今は元気でお過ごしです。皆さんにご挨拶をして、いざ会場へ。



 会場に入ると凄い人数。全部で130名くらいのお客様でした。スタッフも含めると170名くらいでしょうか?初めての会でここまで集客があれば、大成功だと思います。

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 会場の豪華さはさることながら、客席の組み方が大変凄い。この組み方ならどこからでもステージが観やすかったと思います。でも、本当なら安全対策として柵の設置とか煩いはずなので、ホテルのスタッフの方もかなり頑張ったのではないか、と推察します(写真の中に、松旭斎すみえ先生が!)。

 今回は本当にお久しぶりの方に多くお逢いでき、ご挨拶できたことが大変嬉しかったです。その中でも印象深かったお二人を。

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 まずは、漫画界の大御所、高井研一郎先生。
 もちろん、お馴染『総務部総務課山口六平太』やマジック好きな方ならご存知、マジック好きな刑事が難事件に挑む『マジデカ』などのマンガだけでなく、いわゆる赤塚門下四天王のお一人として「チビ太」や「イヤミ」などの赤塚不二雄先生のマンガに登場するキャラクターをデザインされたことでも知られています。十数年前に初めてお逢いする前から、先生の人情噺が大好きだったのでした。
 いつもモダンでおしゃれな先生で、私のような若輩者にでも大変気さくにお話ししていただけます。マジックが大変お好きで、腕前もハンパありません。

 先月発売された、私が好きな漫画家の1人である西原理恵子先生による『人生画力対決』(小学館刊)という血で血を洗うような画力対決のマンガにも先生は登場されました。武闘派サイバラ先生と高井先生の対決では、とてもここでは書くことが出来ないほどの惨劇が繰り広げられています。なんと『あしたのジョー』で有名なちばてつや先生が、高井先生を無理やり会場に連れていって、強制的に画力対決に参加させてしまったのです! 
 でも、このマンガを拝読しながら、サイバラ先生がちょっと大袈裟に書いているんじゃないの?と心の隅で思っていました。

 高井先生にお逢いした瞬間「『人生画力対決』拝読しました! あの話、本当なんですか?」とお話しすると、高井先生が「あのね、ちばくんは本当に酷いよ。だまし討ちなんだもんねぇ…」と深い溜め息と共におっしゃったのを伺って、「あ、あの対決はガチだったんだ…」と知ることになりました…。
 この抱腹絶倒の対決の様子は、是非『人生画力対決』でお読みください。もちろん、その際は高井先生の著作と是非是非一緒にお読みください!(←ここ、一番重要です!!)

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 そして、大阪の谷英樹さん。言わずと知れた大阪の天才クリエイターのお一人です。10年以上ぶりの再会となりました。昔とまったくお変わりなく、お元気そうで何よりでした。最近の大阪のお話をいろいろ伺いました。



 さて、パーティに話しを戻しましょう。まず凄かったのは、素晴らしいステージマジシャンであり、IBMリング東京の会長でもある中嶋ゆみさんのパーフェクトなホステス役です。

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麗しいチャイナドレス!Cathyはゆみさんの麗しい姿に萌え萌えしていました。

 会場の隅々にまで気を配り、ショウでは完璧な司会進行をボナ植木さん、カズ・カタヤマさんと共にされました。長年多くのマジックの会に参加され、その蓄積がこのパーティを成功に導いたのだと思います。なので、よくある「マジックの会」とはちょっと趣が違って、ハイソで豪華なパーティになったのでしょう。



 出演者の皆さんが素晴らしかったのですが、パーティーの中で特に印象的だったことを箇条書きで。

・Saiqawa(斎川豊久)さんのトークショウ:20年前、ダイスとカードを使った大変洒落たクロースアップ・マジックとタンバリンを使った素敵なステージマジックで一世風靡した、斎川豊久さんが20年ぶりにマジックの大会に登場(有名なカードマジック『サイズサプライズ』の考案者でもあります。マジックランドで絶賛発売中。日本中の職業クロースアップマジシャンが演じていると言っても過言ではない、傑作マジックです)。
 まったく昔と変わらない、オシャレでカッコイイマジシャンでした。今は豪華客船「飛鳥2」専属のマジシャンとして大活躍中です。惜しむらくは、もっとお話しを伺いたかった! なお、斎川さんのマジックを楽しむには、最低1泊7万円からだそうです…。でも一度豪華客船の中で斎川さんのショウをゆったり楽しんでみたいですね。

・宮中桂煥さんの「カード・アップ・ザ・スリーブ」:大阪の名人、宮中さんの名人芸を久々に拝見。手に持ったカードが1枚ずつ見事に見えない飛行をしていきます。クラシックなマジックの威力に酔い痴れました。その素晴らしい演技に、舌鋒鋭いマックス名人も「凄く良かったですね!」と絶賛。

沢浩さんのロープマジック:岐阜が産んだ世界的クリエイター「Dr.沢」のロープマジックは、非常に味があります。演技から醸し出される、沢さん一流の不思議な世界観にはいつも魅了されます。

・同じくロープマジックを演じられた山本勇次さん:言わずと知れた大手奇術材料店UGMの代表、山本さんの演技を久々に拝見しました。瞳ナナさんを後見に、リンキングロープを中心にした手順を。大変綺麗な手順でした。ステージでの山本さんの強い目力、好きなんですよね。私が本当に幼い頃に中電ホールで観た、赤い燕尾服の演技を是非もう一度拝見したい!

・カズカタヤマさん:演技もレクチャーも面白い! 3枚ずつの色違いのシルクを使って行なう「6枚シルク」の手順は、知らなければ確実に騙されます。

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ステージの後だったのでカタヤマさん、ちょっとお疲れ気味です。

ヒロ・サカイさんとDr.Leon:演技もレクチャーも面白かったです。Dr.Leonでのショウで演じられた一致するカードは、非常に不思議でした。

ショーン・ファーカーさんの「ニューZ」:ゲストマジシャンのお一人、昨年行われたマジックの世界大会FISMの優勝者であるショーンさんの演技はどれも素晴らしかったのですが(コンテストでの演目だった、カップと玉などの演技もされました)、この「ニューZ(引っ繰り返るボトル)」の演技が特に素晴らしかったです。
 観客と演者が筒の中に同じようにビンを入れ、何度か同じように引っ繰り返すのですが、最終的にはお互いが持っているビンの上下が知らない内に入れ替わってしまうマジックです。この演技、実は大変難しい。一つ間違えると大変嫌みな演技になったり、冗長な演技になったり、すぐに面白くないマジックになってしまいます。当て物系のマジック全般に言えることだと思います。
 しかし、ショーンさんの演技は、非常にスピーディに短く纏められており、演技に微塵も嫌みがなく、誰もが楽しめる演技になっていました(助手となった、マジックの翻訳でも知られる柳川幸重先生の奥さまが素晴らしくチャーミングだったことも素晴らしい演技になった勝因の1つだったと思います)。
 また、普通このマジックにはクライマックスが無いのですが、うまいことクライマックスを作っていらっしゃったのも非常に印象的でした。

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陰の首謀者、TONおのさかさんと共に。

・ボナ植木さん、加藤陽さん、そしてデビッド・ソーサさんの演技は次のエントリーに回します。皆さん本当に素晴らしい演技でした。
 デビッド・ソーサさんのレクチャーも秀逸でした。この作品、後日奇術専門誌のGeniiにインタビューと共に発表予定!刮目して待たれると吉です。久々に誰にも教えたくないマジックの1つです。

・ちなみに、妻のCathyは素敵な女流マジシャンのひかりさんとデビッド・ソーサさんの演技がお気に入りでした。

・食事は美味しかったそうです。何故伝聞形かというと、ビュッフェに人が殺到していたので少し待つためにリチャードとウチャウチャ話し込んでいたら、知らない間にビュッフェから食事が綺麗さっぱり消えていたのでした。これぞマジック!(笑)リチャードは焼きそばをちょっと食べられただけでした。
 この歳になりますと、いろんなパーティに出席する機会も増えるのですが、ビュッフェに人が群がるバーゲンセールの会場のような光景にはいつまで経っても慣れません。



 妻のCathyも凄く楽しんでいたようで(実際にはTONおのさかさんの奥さま、ママおのさかさんにいじられていた、と言ったほうが近いかも)、参加した甲斐は十分にありました。一日でマジックの世界大会のタイトルホルダー3名の演技を楽しめたのは嬉しかったです。この参加費(夫婦で23000円だったかな?)でこの豪華さは異常です(良い意味で!)。一体、皆さんがどれだけ持ち出ししたの!?と問い詰めたくなるほどでした。
 次のイベントも是非モノで参加したいと思いました。スタッフの皆さま、本当にお疲れ様でした!

(→Part 2に続く) 

ゆで卵の謎ー『世界のトランプ手品』(Part 1)

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 今回ご紹介する本は、奇術博士として高名だった、亡き高木重朗先生の翻訳本『世界のトランプ手品』(ジョン・スカーニ著、金沢文庫刊、1973年)です。原著名は『Scarne on Card Tricks』(Crown Publishers Inc.刊、1950年)になります。カードマジックの初心者向けの著作の中でも、名作の1冊に数えられる本です。



 ジョン・スカーニ氏(1903年~1985年:本名オーランド・カメロ・スカニッツィア)は、イタリアから移民してきた両親の下に育ち、ハイティーンの頃にいかさまギャンブルのテクニックに出会い、その方面に傾倒していきます。しかし、敬虔なカトリック信者だった母親に大反対され、いかさまギャンブルを練習する代わりに、マジックを練習するように懇願されてしまいます。しかし、持ち前の練習好きが功を奏して、その卓越した才能はすぐに開花していきました。
 1938年には「(当時のアメリカにおいて)カードの使い手ベスト10」に選ばれ、1940年にはニューヨークの“インナーサークル(ダイ・ヴァーノン氏やホロウィッツ氏、ドク・エリオット氏など、ニューヨーク在住の超一流マジシャンや研究家だけが入会できたプライヴェートなマジシャンの集まり)”へ迎え入れられます。

 そして、ニューヨークを中心に活動し、マスメディアに「超一流のギャンブルテクニックの持ち主」として登場し、いかさまギャンブルの実演、テレビや映画のコーディネーターなどをして有名になりました(これに続くのが、フランク・ガルシア氏であり、先日来日したダーウィン・オーティス氏であり、現在ではポール・ウィルソン氏をイメージするとピッタリでしょう)。ご本人自身も、結構渋いイケメンですから、タレントとしても受けが良かったのかもしれません。

 以前、古いテレビ番組を収録した8ミリフィルムを拝見する機会があり、そのフィルムからでも、凄いテクニックの持ち主だったことが分かりました。もともとマジシャンだけあって、マジック的な賢いサトルティーを随所に盛り込み、実際にはテクニックを使わないので、愛好家の方でもコロリと騙されるような演技をされるのです。それ以外にも憎い演出を随所に取り入れていました。その一部をこの映像で観ることができますね。
 ところが、1956年に自身のゲーム会社を立ち上げてからは、一番好きだったゲーム製作に没頭して、マジックの世界から遠ざかってしまいました(丁度この年に同じ出版社から、自叙伝『The Amazing World of John Scarne』を出版しています)。氏の自信作だったTeekoというゲームが一番世に知られたゲームなのですが、残念ながら今では忘れ去られたゲームになってしまいました。しかも、一日にしてゲームの在庫が水没してしまう不運にもあってしまい、結局はこのゲームから利益を得ることはなかったと言います。

 この『世界のトランプ手品』には、技法はほとんど使わない作品しか掲載されていません。そして、あくまでも一般向けの著作として出版されています。
 1950年といえば、氏がマスメディアに積極的に登場して世間でかなり有名だった時代です。パブリシティーとしても、こうした著作は氏のプロモーションの一環となったのでしょう。
 この著作以外にも、その後『Scarne's Magic Tricks』(Crown Publishers Inc.刊、1951年)や『100 More of Scarne's Magic Tricks』(Cornerstone Library刊、1963年。これは上記“Magic Tricks”の後半部分をペーパーバック版として出版した本)という一般向けのマジックの本も出版されていきます。



 本書に関しますと、まずその作品群の素晴らしさにまず驚きます。当時、脂の乗っていたマジシャン(ダイ・ヴァーノン氏を筆頭に、アネマン、ル・ブラン、ソゥル・ストーン、ダニンジャー、カーライルなどの各氏)が考案した、ほぼ技法を使わない作品を許可をとって掲載しています。そして、その作品の選球眼の良さにも驚かされます。
 ただ、こうした技法を使わないマジックを取り上げるとなりますと、どうしても「スペリング・トリック(単語を綴りだしながら、カードを配る操作をして行なうカード当て)」や数理的なトリックが多くなります。なので、ちょっと退屈に感じるマジックが混じっていることは否めないでしょう。しかし、それを除いても素敵な作品がゾロゾロ登場します。その内のいくつかの作品は、私が今も頻繁に演じる作品となっています。

 また、原書と邦訳版のイラストが素敵です。原書の方はスカーニ氏と思しき渋いマジシャンがカッコ良く描かれています。それに比べると、邦訳版のイラストはホンワカしたイラストなのですが、現象が何なのかが良く分かるのです。

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ちょうど、こんな感じです。
 
 残念なことに、紙面の関係上邦訳版には最初の75作品しか収録されていません。残りの75作品にも素敵な作品が多く収録されています。サイステビンス・システムから、フランク・ガルシア氏の名作「ミラクル・デック」(本当に氏の考案かどうかは、ちょっと疑問が残ります。あまり知られていませんが、クリス・ケナー氏はこのデックの使用法にかけては世界随一だと思います)、ハリー・ロレイン氏の“読心術”など、列挙に暇がありません(これらの作品に関しては、一部が名著『カードマジック事典』に解説されています)。出来ることなら、この後半部分も高木先生の訳で是非拝読してみたかったです。

 さらに、この邦訳版が素晴らしいのは、高木先生が作品のコツをちょいちょい加筆されていることもさることながら、作品の冒頭でその現象を一行で表現している点です。つまり「観客からこのマジックがどう見えるのか?」が一瞬にして理解できる訳です。
 マジックとは、今の自分の行動を客観的にコントロールしながら、虚構の現実を観客に示すことだと私は思っています。これが実は非常に難しい。自分から見たら当たり前の操作をしているだけなのですが、観客からは非論理的な現実が見えている訳です。これは自分が今何をしているのか、そして今何が起こっているのか、自分自身の行動を客観視できなければ、観客側から見えていることは中々理解できません。
 でも、最初に短文で観客が観ているはずの「虚構の現実」を知ることが出来たなら、これは演じ手にとってはかなり有益です。

 ダイ・ヴァーノン氏に影響を与えた人物の1人であり、カードマジックの名手と言われたドクター・ジェイムス・W・エリオット(1874~1920年)氏が語ったように、すべての良い現象というものは、短い言葉で言い表すことができます。
 19世紀から20世紀の古典を読んでいますと、その当時行われていたマジックは、現象的には大変シンプルですし、使っている技法も結構大雑把だったりします。しかし、最近のマジックにはない大らかさやダイナミックな不思議さがあるように感じます。 

 最近のマジックを観ていますと、どうも複雑すぎて「授業についていけない」時があります。最近のヴィデオ・ゲームと状況がかなり似ているのです。ゲーム画面の映像やゲーム機の機能や性能ばかりが高度になって、ゲーム本来の面白さが非常に薄くなってしまったように思うのです。
(私の好きなテレビ番組に『ゲームセンターCX』という番組があります。これはお笑いコンビ“よゐこ”有野晋哉さんが、ファミリーコンピューターなどの昔懐かしいゲームを攻略していくのがメインのバラエティ番組です。もちろん登場するゲームは。ファミコンやスーパーファミコンのモノが多いので、ゲームの画面や音源も凄くプリミティヴです。今のゲームの基本性能からすると、天と地ほどの差があります。しかし、ゲームそのものがシンプルだからこそ、手に汗握る興奮がガツンと画面から伝わってきます)

 この本を読み返す度に、シンプルな現象の力強さを改めて感じさせてもらえます。そう、奇しくもダイ・バーノン氏も「シンプルなアイデアこそが、人々を本当に驚かすのだ」と語ったように。

 …最近の流れについていけないのは、ただ単に、私が歳をとってしまっただけなのかもしれませんね(泣)

(→Part 2につづきます) 

追記:話は代わりますが、ドクター・エリオット氏にも生卵を使った不思議なカード当ての手順が1つあります。これも面白い話なのですが、別の機会にということで。

ゆで卵の謎ー『世界のトランプ手品』(Part 2)

Part 1からの続きです)

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 私が小学生の時の話。亡き父が買って放置されていた、古い奇術解説書を持っていました。残念なことに今となっては、その書名も著者名も思い出せません。そこに「卵の読心術」といった感じの題名で、一風変わったマジックが解説されていました。
 1組のトランプから1枚のカードを観客に選んでもらいます。そうしたら、マジシャンはおもむろにゆで卵を取りだし、観客に手渡します。ゆで卵にオマジナイをかけてから、観客に殻をむいてもらうと、なんとゆで卵のつるりとした表面に、観客が選んだカードの名前が現れるのです! 不思議なマジックだと思いませんか? もちろん、ゆで卵は事前に観客に調べてもらうことができ、その表面には傷1つ付いていません。



 このマジックの解説は、国内外の文献を読むとほぼ一致しています。1558年に出版された『Natural Magick book 2』(Giambattista della Porta著)にも解説されているので、相当昔から知られたマジックのようです。450年もたったマジックですし、この後に分かる理由のために、ここで種明かしすることをお許しください。

 まずミョウバンをお酢で溶かします(本当に古い解説書だと、オークなどの木からとったタンニンなどの色素を、さらにこの溶液に加えて混ぜろと書いてありますね)。卵の殻の上から、この溶液を使って筆で観客に選ばせたいカードの名前を書き、乾かします。それから卵を普通に茹でで出来上がり(卵の茹で時間も、10分というものから、この著作のように16分が好ましいというものまでマチマチです)。後は卵に残った溶液を拭き取れば完成。
 卵の殻には何の痕跡もありませんが、卵の殻をむくとアラ不思議、ゆで卵の表面にそのカードの名前が浮き出ているという寸法です…うまくいけば、の話ですが(あ、観客にカードを選ばせる方法については、高木先生の名著『カードマジック事典』などをお読みください)。
 亡き父が持っていた本の中で、戦時中スパイがこの方法を使って暗号を密かに送っていたなんていう荒唐無稽な話も読んだ覚えがあり、「何、このカッコイイ方法。やってみたい!」とこのアホな小学生は妄想を膨らませました。

(ちなみに亡き父の趣味の1つが読書でした。父が亡くなり遺品の整理をしていたら、4トントラック2台分の蔵書が出てきて、まあビックリ。確かに本に囲まれた家でしたが、そんなにあるとは家族は皆知りませんでした。結局は懇意にしていた古書店へ売却したのですが、そんなに値段がしなかったことにもビックリしました。この趣味の部分は、確実に息子に受け継がれてしまいました)

 いざ、このマジックを試してみようとすると、無駄に卵を使うので、親に言えば怒られるに決まっています(特に我が家では、食べ物を粗末にすることは死を意味するくらいの重罪でした。料理屋さんでしたから)。
 ある日、親が所用で2日間家を空けることになり、これはしめた!と早速実験に取りかかりました。これくらい簡単に出来るだろうという頭があったからです。それには2つの出来事が絡んでいます。




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 当時、小学館から発売されていた『手品・奇術入門(小学館入門百科シリーズ12)』(引田天功監修、岡田康彦著、小学館刊、1971年)という初心者向けの奇術解説書の中に、「からビンのたまご」という作品が解説されていました。これはマジックというより“不可能物体”の作り方といった方が良いでしょうね。口の細いジュースの瓶の中に、にわとりの卵が入っているのです。もちろん、ビンには一切仕掛けがありません。

 少し前に流行った『酢たまご健康法』 というものがありました(注:大変眉唾ものの民間療法ですので、絶対に試さないでください!)。これと作り方はほぼ変わりません。
 卵をお酢に1週間ほど漬け込みますと、この殻が酢酸の作用によって溶けて、ブヨブヨした卵になるのです。これを慎重に手で細く伸ばし、水の入ったジュースの瓶の口から中に入れ、その後瓶の中から水を出すと、卵は自然に元に近い卵形に戻るのです(実際には奇妙な形の卵なんですが…)。最初は「本当なのか?」と思っていたのですが、実際にやってみたら結構うまく出来たのでビックリしました(当時、お酢の代わりに酢酸を使いました)。うまく出来たので、このビン入りの奇妙な卵を学校の先生に見てもらった覚えがあります。その時先生から「卵の殻には小さな穴が開いていて、多孔質っていうんだ」と教えてもらったことは今も忘れません。
(もう二度とこんなことはしないだろう、と思っていたら、何て事はない、数年前に再びこの実験に直面することになります。それはまた、別の物語)

 同じ頃良く読んでいた本の中に、イギリスのTVプロデューサーで、日本でもNHKで放映された『ポール・ダニエルズ・マジックショー』といった素敵なマジック番組を数々手がけられただけでなく、『Body Magic』や『John Fisher's Book of Magic』、『Never Give a Sucker an even break』など様々なマジックの名著も著した、ジョン・フィッシャー氏による料理本『アリスの国の不思議な料理(原題“Alice's Cook Book”)』(開高道子訳。文化出版社版は1978年、写真の新潮文庫版は1983年。2004年に文化出版社版がベストセラーズ社より復刻されています)がありました。
 この本は、ルイス・キャロル氏の名著『不思議の国のアリス』や『鏡の国のアリス』でお馴染のアリスが、物語の中で出会う奇妙な料理を実際に作ってみようという本です。翻訳も味があって、素敵な本です。レシピ集というよりも、アリスの世界観を楽しむための副読本といった要素が強い本ですね。
(他にも、フィッシャー氏には、ルイス・キャロル氏に関する素敵な著作『キャロル大魔法館(原著:The Magic of Lewis Carrol)』(高山宏訳、河出書房新社刊、1978年)があります。キャロル氏が好んだパズルやマジックなどを絡めた、一風変わった人物伝なのです。マジックやパズルがお好きな方には、お薦めできる本です。今は絶版ですが、多くの図書館などに収蔵されています)

 本当に美味しい料理レシピや、作るとなるとかなり大変な料理レシピ(材料が揃わない!)なども入っていますが、その中に“おしゃれゆで卵”という料理が紹介されていました。
 殻を剥いたゆで卵なのですが、つるりとしたゆで卵の表面に、塀から落ちたハンプティ・ダンプティの様にヒビが入っているように見えるのです。
 作り方は簡単。最初は普通に硬ゆで卵を作って、殻に細かくヒビを入れておきます。次に濃く煮だした紅茶とスパイスの中にこのゆで卵を入れ、1時間くらい弱火でコトコト煮ます。その後、ゆで卵を取りだし殻を剥くと、殻に入ったヒビから紅茶の色素が入り込み、このヒビと同じ模様がつるんとした硬ゆで卵の表面に染み込むのです。これも結構うまく出来るんですよ。着色に食紅なんかを使っても、結構面白かったりして。

 これらの料理とマジックが実際に楽々と成功したことによって、この頭のゆるい小学生は高を括ってしまったのでしょう。「たぶん、お酢が卵の殻を柔らかくすることで液体が透過しやすくするだろうし、ゆで卵の表面に色素が染み込みやすいのは分かった。うん、これは楽勝じゃね?」と思って、意気揚々と実験を開始しました。
 …しかし、これが悪夢の始まりでした。まあ、何度試してもうまくいかない。じゃあ、溶液にインクを加えたら?とか、茹で時間を変えたりとか、卵の殻を紙やすりで削ってみたりとか、いろいろ試したわけです。
 結局、一日で2パックくらいの卵と宿題をするべきだった時間を無駄に費やしてしまうことになりました。翌日、親が帰宅してから当然のごとく「食べ物を粗末にして! なに、しかも宿題もやってないだと!!!」とメチャメチャ怒られてしまいました。



 この悪夢のような実験から数年後。この『世界のトランプ手品』を読んだらば、同じマジックが掲載されているではありませんか! しかし、そこには高木先生の註が書いてありました。

「この調合で何回となく実験を行なったが、うまくいかなかった。これは筆者スカーニの記述ミスか、薬品の邦文名の違いによるものであろうと思われる。そこで原文を紹介しておきます。薬品の調合上でお気づきの点がありましたら訳者までご一報ください」…え?

 今この文章を読み返してみますと、あの大きなお身体でゆで卵を何度も作っていらっしゃる高木先生のお姿を想像して、ちょっとユーモラスに感じます。でも、当時の私は「解説されている方でも出来ないんじゃ、誰にも出来ないんじゃん!」と大変ショックを受けました。



 それから時は流れ、2000年になりました。このころ、同じようにこのマジックに取り憑かれた人々が現れて、このマジックに関する雑誌記事が散見されるようになりました。
 16世紀において「ミョウバン(alum)」という言葉は、現在で言うミョウバンの成分である硫化アルミニウムではなく、本当は硫安(スキー場で使うスノーセメント)を意味している事が分かったり、にわとりに与える餌にカルシウムが多く含まれるようになって、現在と16世紀では卵の殻の厚みが違うなど、新事実が多く明らかになったのです。
 つまり、高木先生の訳が間違っていたのでは決してなく、先ほどの解説した昔ながらの溶液を使っても、今現在入手可能な卵を使えば、確実にうまく行かないのです。

 このマジックに取り憑かれた人々の中には、先日お亡くなりになった作家であり、優れた奇術研究家でもあったシド・フレッシュマン氏がいらっしゃいました(子供向けの著作が多く、特に『The Abracadabra Kid』は名著。ご自身の半生記なのですが、何故マジシャンになりたいのか?という根源を思い返させてくれる本です。最初に読んだときは号泣しました)。そして、奇術専門誌『MAGIC』2000年12月号に面白い記事を寄稿しています。
 氏もすべての現存する方法を試し、揚げ句の果てには科学者に分析まで頼み、結局不可能な現象なんだと結論づけます。そして、氏が考案した実用的な方法を解説しています(これは未読の方のために秘密にしておきましょう)。その方法を読むと、確かにこれが一番現実的な方法だと思います。

 こんなそんなで、今もゆで卵を見るにつけ、この本とゆで卵を使った不思議なカード当て、そして親にこっぴどく叱られた苦い想い出が頭をめぐります。今でも可能ならば、このゆで卵のマジックを現実に演じないまでも、一度でも見てみたいなぁ…と思うのです。
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yuki_the_bookworm  (a.k.a "べたねば")

Author:yuki_the_bookworm (a.k.a "べたねば")
何げない日常の中の、本と料理とマジック。

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