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日常の謎 - 『マツリカ・マジョルカ』 相沢沙呼著 (Part 1)

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 マジックをこよなく愛する若き推理小説家、相沢沙呼さんの新刊『マツリカ・マジョルカ』を読了しました。前作から3カ月という短いスパンでの発売でしたので、大変楽しみにしていました。

 相沢さんは女子高生マジシャン、酉乃初とヘタレな男子高校生、須川くんが大活躍する学園ミステリー『午前零時のサンドリヨン』 『ロートケプシェン、こっちにおいで』(共に東京創元社刊)の作者としてご存知の方も多いと思います。

 もうとっくの昔に青春時代なんて甘酸っぱい時代を通り過ぎてしまって、汚れちまったアラフォー世代としては、相沢さんの作品から青春の輝きを吸収させて頂いているのであります。あと、太もも成分も!

(以前『午前零時のサンドリヨン』については、このエントリーでちょっぴり書かせて頂きました)



 読了直後にTwitterでこんなことを呟きました。

そうそう。さこもこ先生の新刊「マツリカ・マジョルカ」昨日読了。凄く面白かった!最後にコロリと騙され、泣けた。青春の光と影に痺れます。オススメです。


 冴えない高校一年生、柴山祐希は、ある日廃墟に住む謎の女子高生マツリカさんと出会う事で生活が一変してしまいます。女王様のように命令を繰り返すマツリカさん、方や僕(しもべ)のように扱われる柴山くん。理不尽なモヤモヤとマツリカさんの魅力的な身体についつい惹かれてしまうモヤモヤを胸に抱えながら、学園で起こる「日常の中に突如現れた不思議な出来事」を解決していきます。

 推理小説なので、どこまで書いて良いのか迷うのですが、確実に言える事は読了感が半端無く良かったです。前作の『ロートケプシェン、こっちにおいで』の読了感も良かったのですが、もしかしたら本書の方がグッときたかもしれません。そして、最後のオチにはすっかりやられてしまいました。思わず涙が出ました。

 そのオチも面白いのですが、私は柴山くんの心理描写が凄く素敵だと思ったのです。彼はマツリカさんに出会う事でちょっとずつ成長していくのですね。その過程、そしてそこから見える青春の光と翳が非常に鮮烈かつ素敵です。相沢さん一流の繊細な心理描写、本当に大好きです。もしかしたら、Twitterでたまにお見せになられる相沢さんの感受性の高さが関係しているのかもしれません。

 文章もライトタッチですいすい読み進める事が出来ますし、ちょっとクスリと笑わせる部分も多く、推理小説独特の堅苦しさもありません。あと、相沢さんの推理小説で好きな部分の一つは「誰も死なない」所でもあります。安心して読めるんですよね。

 酉乃初と須川くんのシリーズはマジック好きとして次回作が気になりますが、この『マツリカ・マジョルカ』も次回作が非常に気になります。ファンとして楽しみに待っていようと思います。
 


『マツリカ・マジョルカ』(相沢沙呼著、角川書店刊、2012年)定価1500円+税
全国の書店、インターネット書店などで発売中。
 



 日常の謎と言えば…日常の謎という話がTwitterのタイムラインに乗っていた時に、私が以前伺った「日常の謎」の話があったなぁ、とちょっとさわりだけを呟いたら思いがけず反応があったので、このエントリーに書いてみようと思います。

 これは、著名なニューヨーク在住のコイン・マジックの名手、デビッド・ロスさんから伺った話です。



 とある夜、ロスさんは友人たちとライブハウスに出掛けました。舞台の近くの席に案内されたロスさんが席から舞台を見上げると、丁度モダンジャズのカルテットが演奏をしていてました。
 屈強なピアニストにふと目が止まり、彼のパワフルな指の動きを見てたらある事に気が付きました。

 何と言う事でしょう、そのピアニストさん、手の中に1ドル硬貨を隠し持ったまま演奏していたのです!
当時の1ドル硬貨は今のサカガウィア・ダラーのように小さいものではなく、直径が約4センチの大きな銀貨です。

 ご存知のように、コイン・マジックが上達するための練習の1つとして、コインを手の中に密かに隠し持ちながら日常生活を送るというものがあります。普通コインを手の中に隠し持ちますと、手の形や動きが大変ぎこちなくなります。そこで、コインを隠し持ったまま日常生活を送ることで、手の形や動きを滑らかにしていくのです。

 デビッド・ロスさんもコイン・マジックを練習し始めた頃は一日中コインを手に隠し持って生活をして、教会で神様に「プロマジシャンにならせてください」とお祈りした時も両手にコインを隠し持っていたそうです。

 この練習、実はそんなに簡単な事ではありません。しかも、その上、屈強なピアノマンは素晴らしい演奏をしているではありませんか! ロスさんはそのピアニストに非常に興味を持ちました。

 演奏が終わってこのジャズカルテットが楽屋へ引き上げたのを見計らって、ロスさんはこの屈強なピアノマンのそばへ近寄りました。
 こんな場所でいきなり「あなたもマジシャンですか?」とは訊ける訳ありません。ちょっと考えながら、ピアニストに声をかけました。

「こんばんは、素敵な演奏でしたね!」
「やあ、ありがとう!」
「あなた、非常に良い趣味をしていますね!」
「ピアノのことかい?」
「えっと、そうじゃなくて。つまり…非常に良い趣味をしていらっしゃいますよね??」
「え?何の事かい??」
「だから、良い趣味をされていますよね??」
「何の事かまったく分からないよ…」
「うーん、何て言えば良いんだろう…」

 どうやら、この屈強なピアノマン、マジシャンでは無いようです。では、どうしてこのピアノマンは手の中に1ドル銀貨を隠し持ってピアノを弾いていたのでしょうね…???

(→Part 2に続く) 
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ディスカッション of h3m

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 先日、Facebookのメッセージから「ディスカッションをしませんか?」とお誘いを受けました。

 お1人は、日本を代表するクロースアップ・マジシャンの前田知洋さん、もうお1人は、広島で治療院を運営されている素敵な奇術愛好家の鍛治中政男さん。鍛治中さんの本質を見抜く鋭いツイートが大好きで、Twitterではいろいろ遊んで頂いております。

 3人の住む場所も職業もバラバラですが、マジックが大好きという部分は一緒。これは楽しいお話しが出来そうだと参加させて頂きました。Facebookの中にナイショのクローズドなグループを作り、その場に三々五々集まってディスカッションを始めました。

 今回のテーマは「マジックの仕掛けに注目してしまう」心理について。古今東西の話からパーソナルな話まで、いろいろな話を織り交ぜて会話が進んでいきました。

 このブログの「はじめに」でも少し書きましたが、私個人としてはインターネットと言うもの自体にかなり懐疑的で諸刃の剣だと思っています(もちろん、かなりの恩恵を受けていることは分かっています)。

 特にここ数年でいろいろなSNSのサービスができて、その中での人間関係は大変難しいと感じる事が何度かありました。SNS(ソーシャル)疲れなんて言葉も報道で見かけます。
 私個人は今でも顔を合わせて初めてお付き合いが始まる事の方が多いです。そうじゃない付き合いは、ちょっと怖いですね。

 しかし、今回のこのディスカッションに参加させて頂いて大変楽しかったのです! いろんな問題をはらむSNSでも、こんなに素敵なディスカッションが出来るんだ!と驚きました。
 個人間のコミュニケーションが難しくなっている時代に、対立ではなくフラットな立場でありながら気持ち良い距離感と節度を保ち、楽しく問題解決の方法を探究していく。このディスカッションのモットーを大変ユニークに感じました。本来探究するという行為は、知的な愉楽のはずですから。

 最初は私たちだけで楽しんでいたのですが、内容が面白いので発表したら皆さんにとって何かヒントになる部分があるのでは?ということで、前田さんが編集長を務められているウェブジン『h3m.jp』に掲載される事になりました。

 80年代にNHKで放送されていた『YOU』という討論番組のキャッチコピー「結論がないのが、結論」ではないのですが、何が正しいか?という結論はありません。しかし、マジックがお好きな皆さんが少しでも何かを考えるヒントになれば、大変嬉しいです。私たちの楽しい雰囲気が伝わりますように。

 お時間があれば、こちらからディスカッションをお読みください→ディスカッション of h3m



アラフォーの皆さんへ:大友克洋さんのイラストでおなじみのオープニングをどうぞ! 私たち、21世紀に生きてるんですね…。

『Heavy Rotation』 by Yuji村上(Part 1)

 京都のプロマジシャンであり、奇術専門誌『掌PALM』の編集長であり、友人のYuji村上さんが2冊目の作品集を発表されることになりました。

 題して『Heavy Rotation』。村上さんがプロとして実際に演じている、一般の観客向けの作品を集めた作品集です。ありがたいことに、以前収録予定の作品をいくつか拝見させて頂いた事があり、その効果の高さと村上さんらしい一ひねりの利かせ方に思わず嬉しくなってしまいました。

 収録作品は全10作品(60頁)、さらに4本のエッセイが入っています。挿絵はプロマジシャンのカズ・カタヤマさんと大変豪華になっています。しかも、村上さんの実演DVDがついて3000円ならば、バーゲンプライスでしょうね。
 収録作品は以下の通りです。

1.Shooting Aces

2.Maeterlinck Card Trick

「カード・アンダー・ザ・グラス」のお話

3.One Two Through

4.Rubbers Again

「クレイジーマンズ・ハンドカフ」のお話

5.Uninstalled ~Card version~

6.Uninstalled ~Mental version~

7.Add-Balloon

「バルーン・アート」のお話

8.Eye-Mazing Climax

9.Mental Photogenic

10.I Wish

「お誕生日用お祝いマジック」のお話


 あー、作品の名前を読んでいるだけでもワクワクしてきました!

 もし、あなたが仕事として一般の観客向けに実戦でマジックを演じられているなら、是非にとおススメさせていただきます。愛好家の方も「どうやってマジックを一般向けに受ける作品に変えていくか?」というプロセスとその施策を学ぶことができますよ!(もちろん、確実に受ける一般向けの作品を学ぶこともできます)

 1冊目の素敵な作品集『Starting Members』(今では本当に入手困難になっています)がアッ!と言う間に売り切れてしまったので、今回の作品集も早めに入手された方が良いかもです。一般発売は4月9日(月)からになっているそうです。

 まだ実物を手にしていないのですが、入手次第レヴューしたいと思います。お待ちくださいね!

 そして、この作品集の完成を記念して、下記の要領で村上さんが京都と大阪でレクチャーを開催されます。お近くにお住まいの方は出向かれてみると吉だと思います!

Yuji村上 第2弾作品集「Heavy Rotation」出版記念 出版先行レクチャーのお知らせ

 私Yuji村上は、2012年初夏に、第2弾作品集「Heavy Rotation」を発表する運びとなりました。それに伴い、出版に先立ちまして記念レクチャーを開催させていただだきますので、ご案内致します。
 今回は「実戦」をテーマに、私が実際にマジックバーやテーブルホップのお仕事で使っている手順や、ノンマジシャン向きのショーで演じていたもの、プライベートで気楽に演じていたものを10作品集めてみました。
 そして初の試みとして、実演映像を収録したDVDもセットにしての販売をということになりました。当日に先行販売させていただくべく、ただ今鋭意製作中です。
装丁・挿絵は、前作「Starting Members」同様、カズカタヤマさんにお願いしましたので、綺麗で読み易い作品集になることは間違いありません。
 当日はこの作品集に掲載したマジックを、全作品パフォームし、レクチャーさせていただきます。自ら使い続けているお気に入りばかりをまとめましたので、ぜひ皆様にライブでご覧いただきたく思っております。
皆様お誘いあわせの上、ご来場賜りますようお願い申し上げます。

京都レクチャー、終了しました!



Yuji村上 第2弾作品集「Heavy Rotation」出版記念レクチャー in大阪 のお知らせ

 Yuji村上、第2弾作品集「Heavy Rotation」が発刊の運びとなりました。それに伴い、大阪レクチャーを開催させていただだきますので、ご案内申し上げます。
 今回の作品集は「実戦」をテーマに、私が実際にマジックバーやテーブルホップのお仕事で使っている手順や、ノンマジシャン向きのショーで演じていたもの、プライベートで気楽に演じていたものを10作品集めてみました。
 そして初の試みとして、実演映像を収録したDVDもセットにしての販売をということになりました。装丁・挿絵は、前作「Starting Members」同様、カズカタヤマさんにお願いしましたので、綺麗で読み易い作品集になることは間違いありません。
 当日はこの作品集に掲載したマジックをレクチャーさせていただきます。自ら使い続けているお気に入りばかりをまとめましたので、ぜひ皆様にライブでご覧いただきたく思っております。
皆様お誘いあわせの上、ご来場賜りますようお願い申し上げます。

日時:2012年4月22日(日) PM2:00 開場、   PM 2:30 開演、PM 4:30 終了予定

場所:大阪市立北区民センター 第5・6会議室
    大阪市北区扇町2‐1‐27  (06)6315‐1500

参加費:お1人様2500円(作品集は別売り)

● ご予約は不要です。直接会場へお越しください。





『Heavy Rotation』 Yuji村上著、片山工房刊、2012年 定価3000円
全国主要マジックショップで発売。



追伸:右のリンク欄にも加えましたが、Yuji村上さんが新しいブログを始めていらっしゃいます。料理の写真が多いので、読むだけでかなりお腹が減る仕様になっております(笑)。マジックの話もチラホラあって楽しめます。お時間がある方は是非どうぞ! ↓をクリック!!
「マジシャンYuji村上のブログ」

(→Part 2へ続く)


 

Genii 2012年4月号


(画像をクリックすると拡大されます。目次も読めます)

"No, she doesn't just smile - SHE BEAMS." - Max Maven



 権威ある奇術専門誌『Genii』誌2012年4月号に、素敵な女流マジシャン、中嶋ゆみさんが巻頭特集として登場されます。

 この雑誌の巻頭特集になることは大変な名誉であり、日本では前田知洋さん、ヒロサカイさん、下田結花さん、ナポレオンズさん、高木重朗先生(マックス名人と一緒にカバーを飾っていらっしゃいましたね!)、株式会社テンヨー開発部のみなさん、そしてTonおのさかさんなどなど、数えるくらいしかありません(※)。



 多くの皆さまはご存知でしょう。2000年に開催された国際的なマジックの大会FISMリスボン大会では、ジェネラルマジック部門2位受賞を果たしました。簡単に言えば、世界で2位になられました。
「森に棲む、不思議な力を持った女性」が不思議な力を発揮していく、その情緒豊かで芸術性の高い演技は世界中で絶賛されています。そして、多忙な本業のかたわら、世界中を駆け回る素敵なマジシャンであります。

 昨年はニューヨークで過ごされ、彼女に出会った海外の友人たちは口々に「ゆみさんは凄い!」「素敵な女性だ!」と仰っていました。心の中で「あったりまえだろ!」と思っていたのはナイショ!



 今回の記事は日本でもおなじみのメンタリスト、マックス名人が担当され、ロングインタビューなどを通して「どうやって“ゆみ”さんが出来ていったか?」を詳細に書かれています。「幽玄」という言葉を上手く使って、ゆみさんの世界観を表現されているんですね。それにゆみさんの様々な写真が紹介されていまして、これまた素敵です(今も昔もキュートな方なんだなぁ! 個人的には72頁右上の写真も外せない!!)。

 この記事をさらに素敵にしているのが、ゆみさんの演技を何がこれほど素敵にしているのか?というその裏側に迫っている部分なんですね。今流行っている演技とは対極にある演技、実はこれこそが本質なんじゃないか?と思いました。特に、記事の最後に書かれているゆみさんの言葉はマジシャン必読でしょうね。

 Genii誌を購読されている方は、是非iGenii(Genii誌が提供する電子書籍サービス)をご覧ください。そこでゆみさんのフルアクトの動画を観る事ができます。YouTubeに無許可で転がっている動画を観るよりも画質は良いですし、演技を堪能できる事でしょう。



 ゆみさんの素敵な記事の他にも、有名な霊媒師チームだったダベンポート兄弟に関する素敵な記事や奇術解説のMagicana(2つのコインカットは素敵!!)、レヴューなども充実しています。



 もちろん、『Genii』誌に直接申し込んでも良いでしょうし、日本ならマジックランド社にお願いしてみても良いかと思います。

 素敵なマジックがお好きな方ならば、この号は必携だと思います。



追伸:ゆみさん、今年の10月に開催されるGenii誌75周年記念コンベンション「Genii 75th Birthday Bash」にも登場されますね。沢浩さんも登場されたりと、この大会はちょっと目が離せません。

※他の奇術専門誌ですと、深井洋正さんや藤山新太郎さんが『MUM』誌に、二川滋夫先生が『The Linking Ring』誌に、株式会社テンヨーのみなさんが今は無き『Magic Manuscript』誌などに登場されています。
 

大原のこころみ 「Birth -誕生-」

oohoranote
 
 どうも皆さま、お久しぶりのyuki_the_Bookworm(a.k.a.べたねば)です。

 元気にバタバタな日常を送っております。更新が少なくて申し訳ありません。
 何もしていない訳ではなく、こんなことをしたりしていました。

happypeople
大阪にて。右奥からモハメッド福岡先生、私、滝沢敦さん、左奥からムッシュ・ピエールさん、花田圭介さん、トリットさん。

 呑み会ですか!というツッコミは無しの方向でお願いします!!(個人的に読書会を始めたりしてるですが、それはまた、別の話。)



 さて、あの未曾有の災害、東日本大震災から1年が経過しました。まだまだ、震災前の日常が戻ったなんて言える状況ではありません。先日放送されたNHKスペシャルは涙なしに観ることが出来ませんでした。
 そんな中、東京の若き才能、大原正樹さんが本当に素敵なチャリティーレクチャーノートを発売されました。それがこの『大原のこころみ「Birth -誕生-」』です。



 勿論、大原さんの素晴らしさは既刊2冊のレクチャーノート、そして昨年発売された素晴らしいDVDでご存知の方が多いと思います。 

 その分かりやすくユーモラスなプロット、緻密な構成、斬新な技術、ちょっとしたサトルティを上手く配して、それをすべて手順の中に溶け込ませマジックの効果を最大限に高めていかれます。それを支える、大原さんの演技のクオリティの高さも素晴らしいのです。実戦を重視される大原さんらしく、すべてが観客本位に作られた作品なのです。
 
 その大原さんの最新作と聞いたら黙っている訳にはいきません。



とにかく、まずはこの動画をご覧ください。



 私は「おや、いつの間に」系の現象が大好きなんですが、これ程ビジュアルな現象はそうそうないでしょう。カード当ての最中に突然カードケースが出現して、その中から選ばれたカードが出てきます。

 まず、この現象そのものが素晴らしい。ご覧になれば一目瞭然ですよね? この意外性はちょっとあり得ません。方法論も理にかなっていて、一切無理がありません。そして、「最小限の練習で」実演が可能です。
 Tommy WonderさんとMichael Closeさんが考案された素敵な作品のエッセンスを、最大限に引き出してお使いになっていらっしゃいます。解説も明快でクレジットも申し分ありません。

 方法論に関して、奇術専門誌『Genii』2012年1月号に掲載されたルイス・オテロさんの「カードケースに飛行するカード」もお読みになると興味深いかもしれませんね。



 そして作品と同じくらい、この短い手順に対する考察が素晴らしいのです。もともと大原さんの知的で深い考察と洞察力には定評がありますが、このノートでも存分に味わう事が出来ます。 

 マジックが持つ怖さの一つに「(仕掛けが分かると)何となくわかった気になってしまう」点があると思います。上記で「最小限の練習」と強調して書いたのはここに理由があります。大原さんは、解説を細分化することで読者の理解を深める方策を取っていらっしゃいます。これは本当に素晴らしい。まさに「困難は分割せよ」の教え通りです。ここまで丁寧に教えられたら、何となくわかった気になって、本番で大失敗することはないでしょう。

 そして、ここでなされている「おや、いつの間に」系の現象についての考察も大変分かりやすい。以前、このブログにも書きましたが、あるコンセプトを言語化する作業と言うのは大変重要であり、それを実践されている大原さんは凄いと思います。コンセプトを理解して言語にする大切さを大原さんはご存知だから出来るのでしょう。

 本当に1つの作品を知ろうとすれば、どうしてもそのサブテキストを自分で地道に読みとらなくてはなりません。しかし、大原さんの作品はそれも同時に提供していただけるので、これほどユーザーフレンドリーなことはありません。(ちょっと上げ膳据え膳すぎるんじゃ!?と思うほど!!)



 このノートの販売方法も注目しています。今話題のgumroadというサイトを使っていらっしゃいます。
 このシステムの詳しい説明はこちらのサイトに任せるとして、要はアーティストが誰でも簡単に自分の作品やコンテンツを発売できるシステムです。

 まだ出来たばかりのシステムですから二次制作の作品の扱い方、剽窃問題、いろいろな課題があります。誰もが比較的簡単に情報発信できる利点もありますし、逆に敷居が低くなってしまったために、どうしようもない作品が広まって薄まってしまう危険性もあります。

 しかし、大原さんのノートはこれからのマジックにおけるgumroadの使い方の標準になるのではないか?と思いました。これからgumroadを使おうと思っていらっしゃる方は、このノートを基準にお考えになることをお勧めします。これくらい高水準の作品が発表されるようになったら、本当に豊かなコンテンツをこのシステムから私たちは享受できることになるでしょうね。



 正直言いますと、私は電子書籍が苦手です。目が疲れて仕方ないので、ディスプレイ上で文字を追う行為は出来れば仕事だけにしたいという気持ち(なので、電子書籍はほぼすべてプリントアウトして書籍にしています)、電子書籍を読むためのアプリケーションとストレージの問題(もう15年ほど前の電子書籍は読めなくなり始めていっています。そう思うと心配になりますよね)、電子書籍で薦めたくなるコンテンツが少ない、などなど、いろいろな原因があります。

 そうしたいろいろを差し引いても、この大原さんの電子書籍は素晴らしいです。装丁、レイアウトもセンスが良いですね。なにより、読みやすいのが素敵です。



 このノートの値段800円というのもバーゲンプライスですが、そのうち400円が東日本大震災への寄付金になります。寄付もできて、なおかつこんな素敵な作品が楽しめるなら買って損はないでしょう。

 私のようにWeb上でクレジットカードを使うのがお嫌いな方のために、大原さんは振り込みによる受付もされています。ここまで考えられているのは素敵です。大原さんですから、寄付金のその後もきっちり知らせて頂けると信じております。

 作品そのもの、考察も素晴らしいですが、私はあとがきの素敵さもお伝えしたいです。是非、最後までお読みになってください。



 久々に素敵な作品を楽しむことが出来ました。大原さんの粋な行動に感謝!!



・大原のこころみ 「Birth -誕生-」(大原正樹著、私家版、2012年)
定価 800円 こちらのページから購入可能。gumroadはこちらから。


プロフィール

yuki_the_bookworm  (a.k.a "べたねば")

Author:yuki_the_bookworm (a.k.a "べたねば")
何げない日常の中の、本と料理とマジック。

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