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Seriously Silly Live! (日本語字幕版)

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 日本ではあまり一般的ではないマジックのジャンルに「キッズ・ショウ」があります。文字通り、子供向けのショウのことで、欧米のマジシャンが生まれて初めて行うショウの多くは「子供の誕生日パーティー」ですし、マジシャンとしてのキャリアの初期には必ず通る登竜門です。アメリカの電話帳を見ますと“Magician for Birthday”ですとか“Birthday Party Magician”としてカテゴリーがあって驚いたことがありました。

 この「キッズ・ショウ」、実は結構需要が多いのにも関わらず、ちゃんとしたノウハウをまとめた教材と言うのが国内外見ても大変少ないのが現状でしょう。

 幼稚園教諭免許を持っていて、以前幼稚園の先生をしていた妻のCathy曰く、幼稚園の先生がイベントなどでマジックなどを演じる機会がたまにあって、そういう先生向けのマジックの解説書や道具なども沢山あるそうなのですよね。(昔からあって有名なのはこの本でしょうか?Tonおのさかさんのイラスト入りでかなり豪華な内容ですね)

 ただ、幼稚園の先生は仕事として子ども達をどうコントロールするかの術をご存知ですが、私たちにはその術があまりありません。逆に、幼稚園の先生は子ども達のコントロールはできるけれども、私たちのように楽しませるマジックの演技をどう見せるか?という術がありません。なので、幼稚園の先生たちもいろいろ考えられているようなんです(予算の兼ね合いもあるので、ボランティアのマジシャンをイベントに依頼したりすることも多いそう)。ただ、ボランティアマジシャンの演技を観た時の子どもたちの反応がマチマチだったりで、自分たちが思っていた以上に盛り上がらないこともあるとか、ないとか。



 上記のように、アメリカには有名なキッズ・ショウ専門のプロという方々が何人かいらっしゃいます。その中で一番の稼ぎ頭が、今日ご紹介するDVDの主人公、“Silly Billy”というステージネームで知られるデヴィッド・ケイさんなのです。

 日本ではあまり知られていないマジシャンです。どれくらい有名か?というのは、ケイさんの仕事ぶりで分かります。
 ニューヨーク中のセレブが彼を子どもの誕生日パーティーにと指名します。ホワイトハウスでも演技をしました。実際ニューヨークにいた時、この“Silly Billy”という名前をマジシャン以外の方から聞いています。そして、彼はニューヨークの高級住宅街にご自宅を構えていらっしゃいます。
 この事実から、普段のケイさんがどれくらい凄い仕事をしているか?がお分かりになって頂けると思います。




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 去年、インターネット上で開かれたマジックの大会“Essential Magic Conference”にスピーカーとして登壇し、本当に素晴らしいプレゼンテーションをされました。今、このサイトにはインタヴューとプレゼンテーションの動画が3本アップされています。今見なおしても素晴らしいのです。

 2005年にこのDVDの基となった著作『Seriously Silly』が、友人RichardのKaufman and Company社から発売されました。ほとんど日本では話題にならなかったと思います。しかし、私の先生Jamyはすぐに「何も言わずに買っておけ。以上。」という非常に短いメールを送ってきました。
 それまで何冊かのキッズショウに特化した専門書があったのですが、内容が今の時代に合わなかったり、普遍的な内容ではなかったりと、正直参考になった本はほとんどなかったと言っても過言ではないでしょう。

 でも、この本は違いました。キッズショウに必要な生きた知恵が満載されていました。それだけでなく、キッズショウの歴史や深い心理的考察などが含まれた、キッズショウという分野を網羅する初めての専門書となったのです。「子どもを楽しませるって、そんなに簡単じゃないよ」という著者の心意気がビシビシ伝わってきました。

 先生Jamyは奇術専門誌『GENII』の書評に「今まで子どものためにマジックを演じることについて書かれた本の中でも、もっとも賢い本が出版されました。マジックと言う芸術を学ぶ誰もが必携の本です」と書いているほどです。出版当時、欧米のキッズショウ専門のマジシャンたちの間で衝撃が走ったと言います。

 そして、2007年にこのDVDが発売されました。ケイさんの演技はなかなか見る機会がありません(実際は彼を雇わないと難しいでしょう)。このDVDが登場したことで、本で伝えられないショウの興奮が読者に広く理解できるようになったのです。

 こんな素晴らしいDVDが日本語字幕付きで発売されたならば、買っておくしかないでしょう!!



 まず、このDVDがよくあるレクチャーDVDと一線を画している点は、ただ演目を教えている訳ではない点です。多くのキッズショウ向けの作品や文献は、ただ演目を教えているだけ、ということが多かったように思います。
 ケイさんはDVDの最初に、中国の思想家管子の有名なフレーズ

もし男に魚を与えてあげたら、一食は食べることができるだろう。
もし彼に魚釣りを教えてあげたら、一生食べていくことができるだろう。


を引用して、これは「理論(つまり、ノウハウ)を教えるDVDである」と宣言しています。つまり、押し入れに眠っているような道具を使っても、この理論さえ覚えて当てはめていけばキッズショウが出来るようにすることが目的だ、という訳です。

 理論と言っても、本当にシンプルな6つの理論にまとめられているのですぐに理解できます。重要なポイントはテロップでキチンと出ますので、見逃すことはありません。

 CathyにもこのDVDを見せて内容をどう思うか?と聞いてみましたら、先生の視点から見ても大変良い事を言っているとの事でした。



 そして法則を説明した後、それを如何に作品に練り込んでいるか、300名の子どもを前にした実演で見ることができます。その実演の凄いことと言ったら! 子どもたちが目をキラキラさせて、大興奮で楽しんでいるんですね。演目の素敵さもあるんですが、それ以上に“Silly Billy”というキャラクターが大変素敵なんです。
 子どもたちの興奮を観ていたら、私の好きなイギリスのロックバンドColdplayの歌詞が頭に浮かびました。

And all the kids they dance, all the kids all night
Until Monday morning feels another life
I turn the music up
I'm on a roll this time
And heaven is in sight
- “Every Teardrop Is A Waterfall”


 なんて幸せな光景なんでしょう!

 演技の部分を見たCathy曰く「あと、何故子ども達が騒がずにこの人に注目しているか?ということを考えてみると良いかもしれません」とのことでした(本当はツカミの部分をどうするか?という部分が収録されていたら完璧だったと思います。最初に子どもたちの心をがっちりつかめるかどうか?がショウの成功を左右しますから)。



 実演を見た後、本人による分析が入ります。何故このギャグを使ったのか、何故ここはこういう風にしたのか、すべての動作に無駄が無く、考え抜かれている事が分かるでしょう。また、実戦的なアドバイスも適宜入るので、一瞬たりとも気が抜けません(特に、ココで言われている一緒にショウを観ている親に対する対応は、非常に大切だと思います)。
 この分析の部分を見ていると「あぁ、伝説の番組『8時だョ!全員集合』は本当に良く考え抜かれた番組だったんだなぁ」と思われることでしょう。例えば、今でも有名な「志村、うしろ!うしろ!」現象などを的確に分析されているのです!!

 もちろん、ケイさんの演目にも注目して頂きたいのです。例えば、よくあるカラーリングブックというマジック(東京ディズニーランドでは定番の商品ですね)1冊だけで、なんと5分も子どもたちを熱狂させ続けます。これは本当に凄いことです。
 このDVDでは、Kayeさんの定番ネタを4種類解説しています。すべての手順が考え抜かれた作品です。中でも、定番商品のミルクピッチャーを使った「Milk Pitcher Plus」という作品を私も良く演じていますが、驚くほど受けますよ!

 ただ、解説はすでにその道具にある程度慣れている方に向けたものですので、道具の使い方の解説自体はあまり詳しくはありません。なので、必要な道具を用意して予め練習しておく必要があるでしょう。

 あと解説で1つ分かる事は、ケイさんは昔の良いメーカーの製品を使っていらっしゃるんですね(昔のメーカーの製品は大きさもあって丈夫、しかも遠くからでも見栄えが良いのです)。それを見ただけで「あぁ、この人は分かってる!」と思いました。しかし、使っている商品は今でも普通に流通している商品ばかりですので、演じる分には何の問題はありません。



 内容の素晴らしさもさることながら、中にふんだんに盛り込まれているジョークが最高に面白いんです。ストリート・マジックの雄、デビッド・ブレインさんのパロディには、アメリカの東海岸に住む有名マジシャン、例えば友人Richardにスティーヴ・コーエンさん、ギャンブリングのテクニシャンとしても有名なサイモン・ロヴェルさんまで登場して、本当に馬鹿なことを本気でやっています!(褒め言葉ですよ)
 そして、日本でも有名になったマスクド・マジシャンの番組(種明かし番組ですね)の衝撃的なパロディは必見です。



 肝心の日本語字幕は素晴らしいです。いつものスクリプト・マヌーヴァ社のクオリティですね。このDVDのすべてを完全に理解できるようになっています。

 ただし、このDVDはあくまでもダイジェスト版です。出来ればケイさんの名著『Seriously Silly』を読んで頂けると、さらに深い知識を得ることが出来るでしょう。作品ももっと紹介されています。

 版元のRichardに連絡をしたら、今は品切れで再版している所だそう。ケイさんのウェブサイトでは、この本とDVDの中で使われている道具も購入できるようになっています。



 海外の友人に、ちょっと変わった人がいます。彼はキッズショウと大人向けのショウを両方とも演じていたのですが、驚いたことにショウの演目は両方とも同じで、演出がちょっと違うだけだったのです。しかし、子どもからも大人からも素晴らしい反応を引き出していました。
 両者ともに同じ演目を演じる理由を彼に聞いたら、こんな答えが返ってきました。

 「だって、子どもに受けるマジックは、大人にも受けるんだよ。現象がシンプルで分かりやすいからね! もっと言えば、子どもにマジックを演じて受けるなら、誰にだってマジックを演じられると言っても良いだろう。みんなキッズショウというと馬鹿にするけど、キッズショウを舐めてたら痛い目にあうんだぜ!」

 このDVDは確実にキッズショウ向けではありますが、実は大人に向けて演じるショウを考える上でも大変参考になる内容なのです。大人の場合はこのDVDにある“1分間に起こる”「笑い」の部分を「驚き」や「感情の起伏」に変えてやればいいのです。

 子どもは素直に反応を返してきます。ツマラナイとすぐに騒ぎ始めて収集がつかなくなります。一方、大人はあくまでも大人な対応をします。そして、あなたの演技に興味を持たなくなるでしょう。これではお互いにとって不幸な出来事になってしまいます。

 マジシャンとして、または先生としてキッズショウを演じる機会がある方だけでなく、自分が演じて受けがイマイチ良くない演目がある方には、是非にとおススメします。きっと何かが大きく変わるきっかけになることでしょう。

もし、出来ないことが出来るようになる力への欲求を満たす術を私たちがショウの中に組み込んだなら、子どもたちの中で長い間記憶に残るような経験を生み出すことができます。この力への欲求と言うものは、子どもたちの中ではそれほど強力な動機づけとなるのです- デヴィッド・ケイ


このケイさんの言葉は、子どもについてだけ言っているとはとても思えません。



『シリアスリー・シリー・ライブ(日本語字幕版)』 デヴィッド・ケイ主演、スクリプト・マヌーヴァ社刊、2012年。
定価 5400円 全国有名マジックショップ、またはこちらのウェブサイトで購入可能。


 

 
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yuki_the_bookworm  (a.k.a "べたねば")

Author:yuki_the_bookworm (a.k.a "べたねば")
何げない日常の中の、本と料理とマジック。

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