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世界で1番不思議なカードマジック(Part2)

Part1からの続きです)

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 2000年の話になります。私がニューヨークで過ごしていた時のこと。当時下宿させてくださっていた先生Jamyが「明日のランチ、時間は空いているかい? 実はある人に逢いに行くんだけれど、yukiも誘って良いと言われたんだよ。どう、行くかい?」と言われました。そう言われるときは、いつも良いことが起こります。何も言わずに「もちろん!」と答えました。
 そして、翌日。ミッドタウンにあるイタリアンレストランの前に集合したとき、そこにいらっしゃったのは紛れもないバリー・リチャードソンさんと、奥さまのジェニーさんでした。
 丁度、学会がニューヨークで開催されており、この地にいらっしゃっていたのです。『Genii』誌にJamyが素敵な書評を掲載(1999年11月号)したことへの感謝を込めて、私たちをランチに誘ってくださいました。

 いろいろなお話を伺いました。バリーさんがマジックを本格的に演じ始めたきっかけというのが、変わっています。それは、3人のお子様のためだったのです。日本でも海外でも、若い研究者というのは薄給です。3人の子供を育てるために、少しでも何か出来ないか?ということで、研究や講義の合間を縫って、車で行ける範囲ならどこででも、請われたならばメンタリズムのショウを行っていらっしゃったのです。東京から大阪くらいの距離なら、全然余裕だったそうです。ジェニーさんは「本当に彼はいつも家にいないのよ!」とおっしゃっていました。ショウを始めた頃は、酷いときにはRV車の屋根の上でショウを行ったこともあったそうです。
 でも、バリーさんのマジックショウのお陰で、子供さんたちはスクスクと成長されました。長男の方は、今大学で教鞭をとっていらっしゃるそうです。

 ただ、あるときからメンタリズムに対してバリーさんは疑問を持つようになられました。それはデトロイトでのショウが終わった後のこと。宿泊したホテルの部屋をそこの従業員の男の人が2人訪ねてきました。そして真剣な眼差しで「次の宝くじの番号を教えて欲しい」と懇願してきたのです。
 その人たちは、そのホテルのコックさんでした。バリーさんのショウを仕事をしながら会場の後ろで観ていて、それを本物の超能力だと信じたのです。
 訥々と「私の娘は末期の癌と闘病しています。メキシコにいる有名な医者に診療してもらうにはお金が必要なのです。お願いします、後生ですから助けてください」と涙ながらに訴えられたそうです。そして、彼らには正直に「私には超能力などありません。エンターテインメントとしてそのような力を持っているように見せているだけなのです」と断腸の思いで伝えました。それを聞いた彼らは、落胆して帰っていったそうです。バリーさんは一睡も出来ずに、その夜を過ごしたのでした。
 「それからは“超能力の様に見えますが、私は技術を使ってそう見えているだけです”と必ず言うようにしたんだ。メンタリズムというマジックは、本当に両刃の剣だと思うよ…」
 この話は、メンタリズムをされる方は是非とも覚えていて頂きたいと思います。私もこのコックさんと似たような思いをしたことがあり(宝くじを教えて欲しい!と言ったわけではありませんよ!)、あの悔しい思いをいつか文章にまとめたいと思います。
 
 バリーさんは上記の事件があった後、演技のスタイルを変えました。今では一般的になりましたが「Notivation Speaker」の先駆けとなられたのです。
 バリーさんは元々経営学の教授です。様々な会社に依頼されて、経営について講演をされることも結構多かったそうです。そこに隠喩としてマジックの現象を加えてみようと考えられました。仕事で大切な「チームワーク」や「報告、連絡などの大切さ」、「顧客満足」といった考え方を素敵な詩にまとめ、その詩を朗読しながらそのトピックスに関連するマジックを演じられるようになったのです。この作戦は当たり、その方面の依頼がバリーさんに殺到するようになりました。

 その演技の1つ「人と人の協調性」を基にした詩と共に、本書にも収録されている「グラスの宙釣り」をこの場で見せていただきました(ちょうどJamyが自分用に製作したグラスを持参して、バリーさんにグラスの出来を見てもらったのでした。バリーさん曰く「初めてこの道具を作った人を見たよ!」と大喜びでした)。
 現象の不思議さ、朗読される詩の素晴らしさ(またバリーさんの声が素敵なんです)が相まった素晴らしい演技でした。難しい話も、こうしてかみ砕いて、分かりやすい例を交えながら伺うと、誰もが納得できます。日本でよくありがちな経営講演会とは、まったく別物と言ってよいでしょうね(ちなみに、Jamyがプロデューサーとして参加、活躍した番組『バーチャル・マジシャン』の中で、
主演のマルコ・テンペスト氏がこのときのグラスをそのまま使ってこのマジックを演じています)。

 そして、同席していたJamyの元カノさんとジェニーさんが「5th Avenueへショッピングに行きたい!」とおっしゃって席を外され、そこからセッションが始まりました。

 一通り皆が演じ終わって手が止まったとき、私がバリーさんに「今まで見た中で、1番不思議だったメンタルマジックって何でしたか?」と質問をしました。すると、彼は「もちろん“エニー・カード・アット・エニー・ナンバー”だね。世界一不思議と言っても良いと思うよ」と答え、バリーさんの親友であるバグラス氏にその演技を見せられたときの話をされました。

 バグラス氏のオフィスで好きな数字とカードを言って欲しいと言われ、ずっとテーブルの上にあったデックを取り上げ、その枚数目まで配ったらそのカードが出てきたそうです。ある年には、バグラス氏の車に同乗していたら、急に「…そういえば、好きなカードって何だったっけ?」と話を振られ、その時はピン!と感づいたのでカードと数字を言ったら、手袋しか入っていないダッシュボードにあるデックを取り出すように言われ、その枚数目まで配ったら、またもやそのカードが出てきたそうです。
 結局この体験がきっかけとなって、このプロットについて深く考えられるようになったそうなのです。「今もまったくデヴィッドの方法に関して手がかりがないんだよ…」とバリーさんは遠い目をしながら話しました。
 すると、バリーさんは突然真面目な顔になって、私たちにこう言いました「…そうそう、Jamy、何か好きなカードはあるかい?」

 私たちは顔を見合わせました。バリーさんの目の前には、1組のデックが置いてあります。それに気づいたとき、背筋がゾクっとしました。どうやら、Jamyもそれに気づいたようでした。
 私とJamyは、二人でコソコソ話をしました。
「これって、もしや…」「yuki、お前がカード決めるか?」「選ばれやすいカードとかは避けたいなぁ…」「でも、関係ない気もするよな」「ハートの10は避けない?」「そうだね、一緒の番号だし…」。そして私が「クラブの5」と決めました。
 バリーさんはそれを聞くと「本当は数字の方をyukiに決めて欲しかったんだけど。いいよ、じゃあyukiが数字も決めてくれたまえ」と続けます。
 また二人でコソコソ話します。
 「僕の経験からすると30は避けたほうが良いと思うんだ…」「俺の体験だと3も避けたほうが良いかな」「どうしよう」「迷うなぁ…」。そして私が「23」と決めました。

 それを聞いてにっこり微笑んだバリーさんは、何も言わずに目を卓上にあるデックに向けました。恐る恐る私が手を伸ばし、そのデックを取り上げました。デックを取り上げるとき、これ以上に緊張したことは後にも先にもありません。そして、デックの上から1枚ずつゆっくりとカードを配っていきました。
 22枚を配り終えたとき「もし、次のカードがクラブの5だったら、奇跡だと思わないかい?」とバリーさん。「これ以上の奇跡ってありますか?」と私は答えながら、23枚目のカードをめくりました…そこにはクラブの5がありました。横にいるJamyは、目を見開きキョトンとしています。一瞬レストランに流れていた時間が止まりました。
 私たちが茫然としていると、デックを片付けながら「Jamy、yuki、楽しいランチをありがとう」と言い、バリーさんは席をたちました。

 帰り道、タクシーの中でJamyと私は無言でした。Jamyの元カノさんも「どうしたの?二人とも黙りこくっちゃってさ!」とプリプリしてしまう位でした。唯一二人で交わした会話はこれだけだったのです。
 「Jamy、僕を担ごうとしてないよね?」「yuki、それは俺も同じことだ。トイレに席を立ったとき、何かお願いされたりしていないか?」「そんなことあるわけないじゃん!」「そうだよなぁ…」「バリーさんが発表している作品のどれにも当てはまらないよね…」「これがバグラス・イフェクトなのかぁ…」

 このときから、私にとっても、この「エニーカード・アット・エニーナンバー」というマジックは、世界で1番不思議なカードマジックとなりました(ただ、一般の方に演じるときは「カード」か「数字」のどちらかを固定した方が親切ではないかなぁ?とは思います。これは以前、奇術専門誌『モダクラ』の中にも書いたことがあります。興味のある方は、拙文もご参照ください)。
 先生Jamyもそうですし、私もそうですが、今までかなりいろいろなマジックを見て、調べて、演じてきました。どんなマジックの演技を見ても、何らかのヒントが必ず見つかります。バリーさんのこの演技には、ヒントの断片さえありませんでした。これほど嬉しいことはありません。深遠な謎を純粋に体験できたのですから!

 しかし、大変残念なこともありました。バリーさんにこの現象を見せていただいてから、自分でどんな方法論を考えても、他の方の作品に触れても、他の「エニーカード・アット・エニーナンバー」という作品がまったく不思議に見えなくなってしまったのです(その中でも、アル・ベーカー氏やホワン・タマリッツ氏、佐藤総さんの作品やケン・クレンツェル氏の作品などは本当に素晴らしいと思います)。多分、バリーさんがご覧になったデヴィッド・バグラス氏の演技もこんな感じだったのでしょうね。

 本書を読み返すたびに、この不思議さを思い出し、不思議って一体何なのだろうと考えます。

 良いメンタリズムがお好きな方、良いメンタリズムとは何か知りたい方には是非本書をお勧めします。バリーさんの2冊目の作品集『Act Two』Hermetic Press Inc.刊、2005年)も必読です。

“The Impossible I do immediately ; Miracle take a little longer”
- David Berglas's motto




 この話を今までに5人の方だけにお話ししたことがありました。皆さんがご存知の著名な研究家だったり、優れたプロマジシャンの方々です。そして、5人が5人とも口を揃えて「これ以外はありえない」とほぼ同じ、大変シンプルな解決法を私に語りました。
 さあ、ここでこのブログの読者の皆さまに問いかけさせてください。これがコメント欄を開いた理由の1つでもあります。
 5人の方が語った同じ解決法とは、一体何だと思いますか? そして、あなたはバリーさんがどんな方法を用いたと思いますか? 
 天地に誓って言いますが、私にはバリーさんの方法は今でもまったく分かりません。そして、その5人の方が語った方法論も、私にはとても信じがたい方法なのです。

 コメント欄からあなたの考えを是非お聞かせください。よろしくお願い致します。

追記:本当の「バグラス・イフェクト」について朗報です。来年の夏に、デヴィッド・バグラス氏のカードマジックの本が発表される予定です。今親友のRichardが本を書いています。この他にも、氏の「Think a Card」など一級品の作品がラインナップされているようです。「Think a Card」もバグラス氏の素晴らしい作品集『The Mind and Magic of David Berglas』(デビッド・ブリットランド著、Hahne刊、2000年)に発表された方法とは違います。
 メンタルのカードマジックがお好きな方は、wktkしながらお待ちになられると、きっと至福の時が訪れることでしょう。

11月20日追記:コメント欄がうまく機能していないようです。何人かの方からメールフォームなどで教えていただいたりしました。ご迷惑をおかけしました。メールフォームはうまく機能しているようです。そちらからお送りくださってもOKです。あとで「皆さまからの解答編」をまとめさせていただきます(名前を出されたくない方は、その旨を一言書いておいてください)。よろしくお願いいたします。

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Author:yuki_the_bookworm (a.k.a "べたねば")
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