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世界で1番不思議なカードマジック(Part 1)

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 今回ご紹介する本は、アメリカの素晴らしいメンタリストであり、経営学者でもあったバリー・リチャードソン氏の名著『Theater of the Mind』Hermetic Press Inc.刊、1999年)です。

 1999年前後というのは、メンタリズムにとって一大転換期になった年と言って過言ではないと思います。この頃、素晴らしいクロースアップ・マジシャンたちがこぞってメンタリストへと転向していきました。カナダの名人ギャリー・カーツさん(氏のジャンボコインの扱いは、ふじいあきら氏をはじめとする日本のマジシャンたちに大きな影響を与えました。今ではメンタリストとしてマジックから離れた世界で大活躍されており、残念ですが、氏が普通のマジックの世界には戻られることはもうないでしょう)、コインの名手ティム・コノバーさん(氏が演じる「シリンダー&コインズ」は絶品でした)、天才クリエーターのマイケル・ウェーバー氏、アメリカの才気溢れる(当時)若手だったジョン・リッグス(現ジョン・ジャーメイン)氏(氏の著書『Riggs - Magic of John Riggs :The Man with $1.98 hands』は、1990年代前半に台頭してきたクロースアップ・マジックのニューウェーブの一端を担っていました)、アライン・ニュー(アライン・ニューエン)氏といった方々のお名前がすぐに頭に浮かびます。
 20年以上の親友、スティーヴ・コーエンさんもクロースアップ畑からメンタリズムへと移行し、今では凄いショウ「Chamber Magic」を毎週末にニューヨークで演じています(しかも、チケットは来年の春までソールドアウトになっています!)。

 こうした方々がメンタリストに転向された理由は定かではありませんが、素晴らしい人材がこの分野に増えていき、彼ら自身も新たな職域と年収を増やしていかれたことは事実です。

 それ以前に凄かったプロのメンタリストとして思い浮かぶのは、日本でもお馴染のマックス名人バナチェック(スティーブ・ショウ)氏、リチャード・オスタリンド氏、故テッド・レスリー氏、ラリー・ベッカー氏、リー・アール氏、故T・A・ウォーターズ氏など、あまり多くないでしょう(そう思うと、日本でのMr.マリック氏の活躍の凄さが改めて際立ちますね)。

 それまでのメンタリズムの演技は、退屈なものが多かったように思います。アメリカのコメディ・マジックの雄、Penn & Tellerのテラーさんは、どうしてメンタリズムが退屈なのか?という質問に対して「だって、固有名詞を正しく示していくだけのショウだから」と答えています。
確かに日付や図形、カードの名前や人名、数字といった簡単な言葉を告げたり示すためだけに、大変複雑な過程を経ているだけという演技もそれまでは多かったと思います(私の先生Jamyなどは「退屈なヤツが演じてるから、退屈なんだ!」と過激なことを言い出す始末です)。

 そして、素晴らしい若手のメンタリストたちも台頭してきました。特にイギリスからは多くの優れた人材が出現しました。コールド・リーディングの研究で知られるイアン・ローランド氏、俳優でもあるアンディー・ニーマン氏やデレン・ブラウン氏といった今をときめく特筆すべきメンタリストたちは、この頃から台頭してきました。もちろん、彼らも最初はクロースアップ・マジシャンであり、技術的にも大変素晴らしい方々です。
 デレン氏による初めての著書である、名著『Pure Effect - Direct Mind-Reading and Magical Artistry』(初版、第2版は自費出版、それ以降はH&R Magic Books刊。現在絶版)も1999年に発表されています(この本については、また別エントリーでお話したいと思います)。
 そして、彼らはその後登場するマーク・スピルマン氏、マーク・ポール氏、レクター・チャドウィック氏といった今の若手メンタリストたちに影響を与えていきました。

 こうしたクロースアップ畑から転向された優れたマジシャンたちが吹き込んだ新たな息吹によって、昨今のメンタリズムの爆発的な流行が生まれたのです。
 
 イギリスでこうした優れたメンタリストたちが登場する礎になったのは、もともとイギリスには“International Man of Mystery”と呼ばれるベテランのメンタリスト、デヴィッド・バグラス氏がいらっしゃるのですが、バリーさんの作品による影響も強かったと思います。
 奇術専門誌『Pabular』誌(フレッド・ロビンソン編集)にバリーさんの優れたメンタルマジックが多く掲載され、その後イギリスのレプロ・マジック社の宣伝誌『Club71』にもメンタリズムに関するコラムニストとして登場しました(バリーさんの作品が発表される場がイギリス中心なので、多くのマジシャンはバリーさんはイギリス人だと信じることになります。私も最初はそうでした)。

 私がバリーさんのマジックに初めて触れたのは、ティーンの頃にマジックランドの片隅にひっそりと置かれていた『The Boon for All Season』(エリック・メイソン氏との共著、自費出版、1982年)という本でした。確か、当時マジックランドでアルバイトをされていた、天才クリエーターの黒木憲一さんに勧められて購入したと思います。
 その本の中には素晴らしいメンタルマジックがぎっちりと詰まっており、特に目を引いたのは「...678」という作品でした。1974年に発表されたということは、非常に古い作品です。
 観客が持っていたお札の連番の下3ケタが財布の中に予言されているというマジックなのですが、そのシンプルすぎる方法論と賢いサトルティーには舌を巻きました。気に入って一時期演じまくり、それ以来バリーさんの作品を追い続けることになりました。

 本作は、バリーさんが様々な専門誌などに発表し続けてきた作品を集めた作品集です。この作品集には53作品が解説されています。もちろん上記の「...678」も解説されています。

 バリーさんが考案されたメンタルマジックの特徴は、賢い道具や原理を取り上げたり創りだすだけでなく、それを扱うために用いる巧妙な観客の目に触れないテクニックをうまく融合され、観客が「(タネや仕掛けを)追えない」状態にさせてしまう部分にあります。
 大阪在住の素晴らしいクリエーターである佐藤総さんが名著『Card Magic Designs』(2008年)の中で語った、「スライトレス」という表現がぴったり当てはまります。つまり、観客がどれだけ注意していようとも何かをしていると感じる技法がまったく見えず、その秘密は観客からまったく見えないところに注意深く隠されているために、何が起こっているか分からないのです。

 しかし残念なことに、メンタリズムはこうした見立てのために、単に「技法を使わない」で演じられる、だから「簡単に演じられる」と勘違いされやすくなってしまいました(実際、私が東京在住だったころ、本当に「メンタルマジックは、テクニックを使わないから好きなんですよ」と私に言い放った「メンタリスト」にお逢いしたこともありました)。
 日本でも過去数年にわたり「メンタリスト」が急増しました。残念なことに、秘密の仕掛けに依存しただけの方も少なくなかったように感じます。
 素晴らしいメンタリストは、観客から絶対に目に見えないし気がつかない部分で大変な秘密の仕事をただ行っているのです。 人の心をぞっとさせる、悪魔のようなメンタリズムというものは、実は超絶技巧を駆使したマジックと同じくらい、いや場合によってはそれ以上に実演が難しいのではないかと私は信じています。バリーさんの大変巧妙な作品を精読すると、その事実を痛感します。

 メンタル風味のマジック、例えば素手で行うグラスの取り出し、本当に不思議な「レモンの中に飛行するお札」と言ったものから、サロンで行うための「Out of this World」、カードや雑誌を使った不可能な読心術など本格的なメンタリズムまで、現象は多岐に渡ります。中でも、ちょっとした加工を施した腕時計を使った作品が3作品掲載されていますが、これは本当に素晴らしい。仕掛けのシンプルさと巧妙な方法が、ありえない時間の予言を可能にしています。

 日本で一躍有名になったのは、バリーさんの「エニーカード・アット・エニーナンバー(ACAAN)」だったでしょう(これは日本のあるマジックショップが「サービス原稿」と称される冊子に翻訳して掲載されたのがきっかけになったと思います)。観客が自由にカードと数字を選び、デックのその枚数目から自由に選ばれたそのカードが出現するというプロットです。イギリスのデヴィッド・バグラス氏が演じられるので、この現象を「バグラス・イフェクト」と呼ぶときもあります。
 大変不思議なこのプロットが世界中で注目を集めたきっかけになったのは、紛れもなくバリーさんの影響だったと言えます。

Part2に続く)
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Author:yuki_the_bookworm (a.k.a "べたねば")
何げない日常の中の、本と料理とマジック。

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