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Yuji村上 ショウ&レクチャー

 今を遡ること半年前。京都のプロマジシャンであり、奇術専門誌『掌PALM』の編集長であり、友人のYuji村上さんがわが家の旧宅へ遊びに来た時のことです。久々に呑みながら、いろいろと話していたときに「なんか、イベントやれると面白いよね」と何げなくお互いが発した言葉が今回のショウ&レクチャー(7月25日開催)を企画するきっかけでした。



 村上さんの作品は様々な奇術専門誌に発表されていますので(特にここ数年は沢山露出されていますね)、目に触れる機会が多いとはいえ、実際に村上さんの演技を見る機会というのは大変レアなことです。ここ数年は東京でも様々なマジックの会で演技されていますが、それでもレアなケースと言えるでしょう。
 特に、私が住む地域では、村上さんの演技を見る機会というのは皆無に等しいですし、ましてや彼の初期の作品を見る機会というのはまずありえません(また、初期の作品に面白いものがかなり埋もれています)。じゃあ、それを見る機会を作ってみようか?と単純に思ってみたのでした。

 そして、今まで多くのレクチャーに参加してきましたが、「レクチャー」という“制度”のあり方についてもいろいろ考えるところがあって、自分の考え方を試してみたいと思った部分も大きかったのです。
 また、折角レクチャーをやっていただくならば、その方の演技や作品で自分がもう一度見たい、または皆さんにその作品の良さを知ってもらいたい作品をリクエストしてみたいという願望がありました。
 今回は前半を素敵な作品集『Starting Members』(今ではもう、ほぼ入手不可能になっています)を中心に、後半を私がリクエストした作品を中心にレクチャーをしていただくことになりました。本当は、途中である1つの作品を中心にティーチインをしたいとも思ったのですが、流石にそこまでは時間がありませんので、次の機会に持ち越すことに。

 でも、実際問題、そうそう大掛かりに出来るわけもなく(特に質疑応答などが入ればなおさらです)、10名くらいでこじんまりとやってみよう。偶然安い会議室を知っていたので、そこを借りれば村上さんが以前行ったレクチャー(これも驚愕の値段設定でした)と同じ価格でやれるんじゃないか…と思ったのでした。



 そして日程などを調整して、レクチャーの案内を置かせていただくべく、名古屋の老舗マジックバー「エルム」のマスター、山内利夫さんの下へ出向きました。山内さんに事情をお話しして、レクチャーの案内を置かせて頂きたいとお話しをしたところ、突然山内さんがこうおっしゃいました。
 「日曜日だろ? うち使やぁ良いがね。日曜日、わしん所は定休日だし、遊んどるもんで。みんなでワイワイ出来れば良いがね。ランチでも付けてやれば、来る人みんな喜ぶに!」

 大変ありがたいお話しです…が、とは言うものの、ランチ付きでレクチャーとなると、参加費が上がってしまいます。いくらそうおっしゃっても、山内さんの利益になるかも大変微妙です。うーん…と考え込んでいますと「何を考えとるの! こういうことするのは最初だろぉ? 最初が何でも肝心なんだわ。だもんで、今回はオレが何とかしたるで!」とおっしゃって戴けました。ここまでおっしゃって戴けたなら、山内さんの胸を借りてエルムでレクチャーをさせていただこうと決心しました。

 最初はこじんまり、と思っていたのが、急に大掛かりな話しになってしまいました。

 会費3500円でランチとドリンク付きという狂気の沙汰としか思えない価格設定が可能になったのは、偏に山内さんの親心のおかげでした(しかも、今回、私に関しては利益は一切ありません。これも狂気の沙汰だとある方から言われました!)。



 しかし、日程設定で1つミスをしてしまいました。7月25日というのは、皆さまご存知、大相撲名古屋場所の千秋楽であり、英語のTOEICの試験日とも重なってしまい、この2つのイベントのためにご予約頂いたのに、そちらに出掛けられる方、テストを受けないといけない方が結構いらっしゃいまして。日程の設定は注意しないと、と心に誓ったのでありました。それでも、最終的に30名以上の方々にご来場戴けたのは、感謝という他はありません。



 さあ、24日の夕方。村上さんがわが家の新居にいらっしゃいました。

rawdough.jpg
戴いたお土産の1つ、生ドーナッツ!

 レクチャーの2日前に、会場の都合で開始時間が1時間早まることになり、それをどうしようか、とか、レクチャーの流れの確認などをしました。
 開始時間が1時間早まる部分は、レクチャーの最初にご挨拶とちょっとしたデモンストレーションを行うことで、レクチャー内容に入るのを20分押すことで解決しました。また、食事の関係でレクチャーそのものも30分押しで始まったので、結局は結果オーライになったのでした。この部分、ちょっと怖かったのですが、無事に乗り越えることができて、ホッとしました。

 そして酒宴。村上さんの酒豪ぶりは知っていたので、わが家の妻Cathyと話しが良く合うこと! 私は途中で撃沈して深夜2時には就寝しました。
 
 25日。私はいつも通り7時には起床して、レクチャー会場で必要な物資の準備などをしていました。が、村上さんが起きる気配がない…。会場入りが10時50分予定で、名古屋名物モーニングを食べるとなると、10時前にはわが家を出発しないといけないのです。どれだけ声をかけても起きないので、これは困ったなぁ…と思っていたら、Cathyが大声で「むっらかっみさ~ん!あっさでっすよ~!」と激しく彼を起こし、事無きを得ました! 後で聞いたら、二人で朝の5時過ぎまで呑んで話していたらしい…。

bonbayfirstday.jpg
5分の4が消失!



 そして会場入り。もう数名の方が店内にいらっしゃって、私たちが到着したときにはすでに外でお待ちになられていた方も。炎天下なのですぐに店内へ入っていただき、寛いでいただきました。

 このブログを開設して良かったことの1つに、本当にお久しぶりな方からご連絡をいただくことがちょいちょいあることです。今回はこの方々と久しぶりにお逢いできました。

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 東海地方在住のベテラン研究家、勝さんと小椋さんです。勝さんは技巧派で知られ、もしかすると勝さんのコインボックス「Katsu Box」をご存知の方がいらっしゃるかもしれません。小椋さんも凄腕の研究家で、サトルティの効いたオイル&ウォーターが1番知られている作品でしょう。なんと20年ぶりにお逢いしました! 

 三々五々お客様がご来場になり、ランチを食べたり、ご一緒の方と話されたり。私はブログの読者の方とチラリとお話しをしたり。
 そうこうしていましたら、突然山内さんが「おぉ、人が集まってきたで、ショウでもやろまい!」とおっしゃい、なんと予定に無かったショウが始まりました!!

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 最初は山内さん。山内さん一流のカードマジックが炸裂します。そのスピード感と即興の凄さは、実際に体験してみないと分かっていただけないかもしれません。

ishimaru.jpg
 そして、若手の石丸さん。綺麗なポケットリングと流行りのフォーク曲げ。非常に鮮やかです。

…えーと、あの、このショウだけでも物凄くお得なんですが…。



 そうこうしている内に、私が村上さんを迎え入れ、レクチャー開始となりました。レクチャーの前半は、彼の素敵な作品集『Starting Members』を中心とした作品を解説していきました。

1)Jumping Attack Rubber Band
 リン・シールズの考案した「飛び移る輪ゴム」のマジックに強い一捻り。このエントリーでご紹介しましたが、この話、今では村上さんのレクチャーで必ず爆笑が起こる、鉄板のオープニングトークになっています。

2)デモンストレーション3種
 村上さんの商品「GIONデック」「KYOTOデック」「MEOTO予言ーお色直しバージョン」を実演。やっぱり強力な現象ですし、実際に目の前で見るとビックリします。特に「KYOTOデック」で演じる「カード・アット・エニーナンバー」(良く切り混ぜられたデックの、観客が自由に指定した枚数目にあるカードが、予言と一致する現象)は物凄く不思議に見えます。いかにこれらの現象が強烈だったかというと…それは、後で分かります。

3)Sound Trap -Monaural Version-
 流行りの不可能設定下で行われるカード当てです。これまた流行りの原理を使うのですが、サトルティが効いているので演者が何もやっていない感が出て、大変不思議に見えます。カードが当たったとき、会場がどよめきました。

4)Color Coodinater
 パケットで行う「アウト・オブ・ディス・ワールド」(良く混ぜたカードを観客が自由により分けるが、それが赤いカードと黒いカードに見事に分かれている現象)なのですが、余分なカードは使わず、すべてサトルティで解決していきます。特に最後のサトルティは、実際に見てみるとこんなに幻覚を生むのか!と好きで演じている本人が驚くほどでした。

5)利き音 - Sound Reading -
 大変実戦的なカード当て。私も最近好きで良く演じるのですが、一般のお客様に大変受けが良いマジックです。丁度助手として選ばれた女性のお客様がマジックをご存知ない方のようで、手に持ったカードが変化した時の表情がすべてを物語っていたと思います。
 また、詳しい彼なりの考え方を織り交ぜて解説していくので、多くの皆さんの参考になったと思います。



 そして、ここで一旦休憩を入れました。
 さあ、休憩になったとたん、参加者の皆さんが村上さんの下に集まって、先ほどデモンストレーションした3つのデックを争うように買っていかれました。その勢いは、横にいる私が驚くくらいでした。結局、村上さんは休憩にならなかった…。そして、荷物の入っていた鞄は、ほぼ空の状態になったのでした!



 ここから第二部。私が無理やり村上さんにリクエストした内容です。私が昔見て好きだったコインマジックと、実際に出演されているお店でのレパートリーを初めて実演解説していきます。

6)カード・アンダー・ザ・グラス
 ある有名なカード当てと、このマジック(選ばれたカードが、いつの間にか観客のグラスの下に移動しているマジック)をうまいこと組みあわせて、本当に実戦的な手順になっていました。特に、彼の行う「クロースアップ・マット」を使った観客の注目をシフトさせる原理は大変面白く、使えるTPOは限定されますが、そのTPOにバッチリ合う場所で演技をされる機会があれば、絶対に役立つ考え方です。参加された方は、大変ラッキーだったと思います。未発表にしておくのは、もったいないです。
 実演の時に、実は村上さん、ある理由からカードをグラスの下に滑り込ませる部分がもたついてしまいました。しかし、手順に組み込まれたミスディレクションがとても強烈なため、ほとんどの皆さんがその事実に気づいていらっしゃいませんでした。なので、参加された皆さまは、自信をもって演じられると思います。

7)New Ninja Coin 4
 以前「掌PALM」誌に発表された手順を改良した作品です。4枚のコインが鮮やかに消えていき、再び1枚ずつ出現していきます。アメリカのコインの名手、デヴィッド・ロス氏の「4(実際はギリシャ数字)」という作品(日本では、この本に解説されています)を、大変実用的に、かつ、鮮やかにした作品です。思わず練習を始めてしまいました。1枚ずつコインが消えて行くたびに、お客様から「わー!」っと歓声が上がりました。

8)President & Queen

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このマジックを熱演中の図

 3枚の銀貨と3枚の銅貨を使った、大変不思議な「オイル&ウォーター」の手順。コインをヘアムースのキャップの中に入れていくので、マジシャンが怪しいことをするのは不可能な状況で現象が起こります。この手順も「掌PALM」誌に発表されていますが、あまり知られていない名作なのです。
 この作品も、交互に混ぜたコインが見事に分離する毎に、お客様から「なんで?」と声が上がり、クライマックスでは皆が「えーっ!」と声を上げて驚いていました。

9)Knock Knock Kings
 村上さんの必殺技の1つ。超絶技巧を使った「引っ繰り返るキング」の手順です。しかし、観客からは何かしたようには見えません。解説を見た瞬間、参加者の皆さんが「えー??」っと叫び、多くのお客様がカードを取りだして、その場で練習を始めていました。

10)Try-Out
 このレクチャーでのハイライトの1つでした。村上さんの必殺技の1つです。このマジックを観るためだけに参加された方のいらっしゃった程でした。デックを混ぜても混ざらない、その不思議なシャッフルを見た瞬間、参加者の皆さんが「ウォー!!!」と叫んで、盛り上がりが最高潮に達しました。



 これでレクチャーが恙なく終了。終わった後も、皆さんが村上さんを囲んであれこれ直に教わっていらっしゃいました。きっと、名古屋中のマジックバーで「Knock Knock Kings」と「Try-Out」が流行ると思います!

insession2.jpg
村上さん、個人指導の図



 今回、村上さんのコンディションがバッチリだったのも、本当に良かったです。凄くリラックスされていて、ギャグも1つ1つきちっとハマり、ノーミスで、私が今まで見た彼の演技の中でもベストのものでした。



 今回は参加されたマジシャンの中に、この地方在住の若手プロマジシャンの方も多くいらっしゃいました。マジックバー「手品師」ご一行さまや、桂川新平さん、丸山真一さんなどがいらっしゃいました。

2youngmagicians.jpg
mixiで有名なこの方も!



 とにかく、会場の盛り上がりは凄まじいものがありまして、内容もさることながら、皆さん満足してお帰り戴けたようでホッとしました。やっぱり、レクチャーをリラックスできる空間で受けるというのは良いと思いました。これからは、レクチャーにも何かしらの付加価値が必要だと思うのですよね。

audience.jpg
盛り上がる客席の図

 このブログの読者の方に、帰り際「yukiさんがブログでどうしてここまで熱く語っていられたか、この会に参加して良く分かりました!」と言っていただいたのが嬉しかったです。はい、ウソや大げさなことを言いますと、JAROが煩いですからね!

afterlecture.jpg
お疲れ様でしたの図。
後ろ:左から、私の親友Sさん、わたし。前:左から村上さん、山内さん、愛好家の方。



 夜、わが家にて二人で呑んだお酒の美味しかったこと。レクチャー開催までには、いろいろ苦労(加えて、私がしばらく倒れてしまったりとか)もありましたが、とにかく企画してみて良かったと思いました。呑みながら彼とは久しぶりにいろんな話しもできて、大変楽しい夜になりました。この夜に届いたり、その後戴いた感想のメール、村上さんとキチンと拝読いたしました。 

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二日目で中身が完全消失!



 そんなこんなで、Yuji村上さんのレクチャーは無事に終了しました。また、こういうイベントを開催したいと思います。その時は是非ご参加ください。きっと損はしないと思いますよ。

 最後に、無茶な話を聞いていただいたYuji村上さん、このレクチャーを成功に導いていただいた山内利夫さん、そして、参加されたすべての皆さまに感謝します。今回は、誠にありがとうございました。またお逢いできる機会を楽しみにしています!



追伸:村上さんからいろいろマジックを個別に見せていただく機会がありまして。その中でも「バーズディカード」を使ったマジックが、素晴らしく実戦的で良いマジックでした。このマジック、近い将来にこのマジックショップから発売される予定だそうです。「Yuji村上」の名前と「バースディカード」というキーワード、絶対に忘れないようにしてください!

8月1日追記
 村上さんの東京でのショウとレクチャーが決定したようですよ! 9月、関東在住の方はアンテナを張っておいた方が良いかと思います。一言、必見です!
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yuki_the_bookworm  (a.k.a "べたねば")

Author:yuki_the_bookworm (a.k.a "べたねば")
何げない日常の中の、本と料理とマジック。

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