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ライジング・カードとわたくし(Part 1)

 暑い日々が続いていますが、皆さまはいかがお過ごしでしょうか? お盆も終わり、それでも厳しい残暑が続いていますね。水分補給を忘れずに、暑さを乗り越えていきましょう!
 
 さて、先日ある方から「なんかクラシックなプロットの話でエントリー書いてみたら?」とお話しを頂きまして、それならばとお話ししてみましょう。カードマジックでも本当にクラシックなプロット、ライジング・カードを取り上げてみることにしましょう。



 このマジックの実演を一番最初に見たのは、中学生の頃だったと思います。それはテレビ番組で、思い返すとその番組は、今はなき伝説の深夜番組「11PM」でした(当時の中学生たちは親が寝静まるのを待って、イヤホンを装着して血眼になりながらHなコーナーを観ていたものです。品行方正な私は例外でしたけどねっ!)。 

risingcard.jpg

 何となく眠れずにテレビをつけたら、マジックを演じていました。そこの登場していたのは、名古屋のマジック・バーエルムの山内利夫さんだったことも覚えています(確か、名古屋の歓楽街特集みたいなコーナーでした)。
 観客が自由に選んだカードをざっと改めた1組のデックの中に戻し、そのデックをグラスに立て掛けてオマジナイをかけると、選ばれたカードが魔法のようにひとりでにデックの中からせり上がってきました。凄く不思議なマジックで、一発で眠気が醒めてしまいました。

 それまでテレビでジャンボカードを使ったライジング・カードの手順を何度も観たことがあるのですが、この演技の方が怪しげなホルダーとかを使わないし、デックに手を触れていない分、非常に不思議に感じたのでした。
(ただし、ジャンボカードを使っても不思議なライジング・カードはいろいろ存在します。例えば、今も私が好きで使っているNemo Jumbo Rising Cardsは、本当に素晴らしいと思います。添付されているコメディの演出は人を選びますが、現象そのものはパーフェクトで、方法もローテクなため失敗が少ない。なんと、演技後にはデックとホルダーはすべて改め可能なのですから!)



 アメリカのジョン・ヒリヤード氏も名著『Greater Magic』(1938年)の中で「ライジング・カード…過去の名人達から現在に伝えられたすべての現象の中でも、本物の魔法のようなマジック」と語っています。
 本当に古いマジックで、フランスが産んだ近代奇術の父、ロベール・ウーダン氏によれば18世紀後半には誕生しており、現在まで星の数ほど様々な方法が考案されてきました。
 カードを動かす方法も、人力から物凄いハイテクを使った精巧なメカニックまで様々です。ユニークな方法ならセロハンテープとかもありますね!(実際にこのセロハンテープを使った方法を考えた方に演技を見せていただく機会があったのですが、凄く不思議でした。解説を読んだだけでは、絶対に試す気にならないのですが!!) 
 この『Greater Magic』には、ライジング・カードの解説だけで58頁も使われています。それだけではなく、ライジング・カードだけが解説された解説書も数冊出版されているくらいです。



 近代カードマジックの祖である、オーストリアのJ.N.ホフジンサー氏だって独自のライジング・カードを考案しています。

hofzinserrise.jpg

 氏の作品は、普通のピケデック(当時のデックは32枚一組でした)を綺麗に塗装された木製の箱(大きさはだいたいティッシュペーパーの箱を一回り大きくしたくらい)の中に入れます。そして、観客が自由に指定したカードがその箱からせり上がってくるのです! 仕掛けはこんな感じ

 こんなにごっつく、精巧な機械仕掛けが箱の中に仕込まれていたのです。言われたカードの名前に対応したレバーを押すことで、そのカードが自動的にせり上がる仕掛けです。
 今となってはデックに対してその箱の大きさに違和感を覚えますが、こうしたメカニックは当時としては高度な技術ですから、19世紀の観客はきっと度肝を抜かれたことと思います。

 今ではこの道具、ワシントンDCにあるアメリカ議会図書館のホフジンサー・コレクションに所蔵されています(実はここには、マジックの古典的名著が多く収蔵されています…なんと、機会があれば観るチャンスもあります!)



 精巧な機械仕掛けを究極まで突き詰めたのが、幻のマジックと言われてきたドクター・サミュエル・フーカー氏考案の『Impossibilities』でしょう。

hooker.jpg

 医学博士のサミュエル・フーカー氏が考案し、ニューヨークにある自分の邸宅で招待客だけを集めてショウを上演していました。本当に不可能な状況で行われるライジング・カードで幻のマジックと言われていました(写真の挿絵を見て下さい。本当にこういう現象が起こるのです)。
 ジム・ステインメイヤー氏がその方法を発見し、数年前にこのショウの再現を行いました。残念ながらチケットが取れずに悔しい思いをしたのですが、観に行った友人たちは皆「凄かった!」を連発していました。少し前に奇術専門誌『Genii』でも特集がされましたね。でもこのショウ、1回演技を終えたら調整と準備に数時間かかるなど、確かに不思議ですが、いろいろ苦労が絶えないマジックだそうです。



 私も今までに様々なライジング・カードを購入したり、使ってきました。その中から私が好きな製品あれこれを。



 まずは「デバノのライジングデック」。

donalan.jpg

 イギリスのハリー・デバノ(本名:ハリー・ウェルディ・ミッチェル)氏が1948年に考案した作品です。今では、株式会社テンヨーからも販売されているベストセラーです。
 私も一番最初に買いました。購入したとき、デックそのものに仕込まれた仕掛けを見て、「え?こんな風になってたの??」と非常に驚いたものです。様々な名手も演じており、イギリスの名人であり、メンタリストとしても有名なデヴィッド・バグラス氏もお気に入りの作品だと語ったことがありました。

 1番感銘を受けた手順は、亡き名人、シカゴのドン・アラン氏の手順です。3段に渡る、全部で3分ほどの手順ですが、手順構成の妙により段々強烈な現象になっていきます。もしご覧になったことがなければ、氏の演技は必見です。このDVDに演技が収録されています。
 詳細な解説は、マジック博士として名高いジョン・ラッカーバウマー氏の著書『In a Class By Himself - The Legacy of Don Alan』(L&L Publishing刊、1996ー2000年)に発表されています(この本の出版には大変な紆余曲折があったのですが、これもまた別の話)。

 この道具を使った演技で忘れられないのが、大阪の名手、ジョニー廣瀬さんの演技。20年程前に島田紳助さんが司会をされていたトーク番組「CLUB紳助」に登場された時のこと。
 ジョニーさんは、この「デバノのライジング・カード」を演じられました。カードがデックの中からせり上がってきたのですが、選ばれたカードの前にあったカードも偶然一緒にくっついて上がってきてしまったのです。紳助さんは「ちゃいますよ~、失敗ですやん」と言うのですが、カードが一番上までせり上がった瞬間、そのショックで一緒にくっついていたカードがストン!とデックの中に落ちて戻り、選ばれたカードが急に現れたように見えたのです! その時の紳助さんの「気持ち悪っ!」という叫びと表情は、今でも忘れられません。そこから完全にジョニーさんのペースで番組は進んでいきました。こういうこともあるんだなぁ。
(そう言えば、ジョニーさん、体調もかなり戻られてきたと伺いました。また、あの華麗な演技を是非拝見したいです)



 次に「クンダリーニ・ライジング」

mcbride.jpg
 
 アメリカの素晴らしいステージ・マジシャン、ジェフ・マックブライド氏の名作です。アメリカのマイケル・ウェーバー氏が奇術専門誌『Genii』誌1986年5月号に初めて発表した原理と素材を使い、それを大変不思議なマジックに昇華させたのでした。
 幸運にも氏から直々に教えていただいて、それ以来好きで事あるごとに演じています。借りたデックを使って、観客にデックを持たせても選ばれたカードがデックからせり上がってきます。それだけではなく、ホーンテッド・デック(このマジックに関しては、Part2をお読みください)まで演じることが出来るのがイイ!
 この写真に写っている封筒にも氏との想い出があるのですが、それはまた別の話。



 仕掛けを見て驚いたのは、イギリスのクリエイター、アンジェロ・カルボーン氏が考案した“Notion of Motion”。

notion.jpg

 カルボーン氏は世界有数のテンヨーマニアとしても知られており、株式会社テンヨーからも氏の作品がいくつか発売されています。氏は『Genii』誌2010年3月号の巻頭特集にも登場されました。

 写真では普通のライジング・カードのようにしか見えませんが、観客が言ったカードを何でもせり上げることが出来ます。お見せできないのが非常に残念なのですが、その仕掛けを見たら「何じゃこりゃー!?」と突っ込みたくなること請け合いです。それ程凄い仕掛けを使っています。
 これ程精巧に出来たギミックデックは類がなく(しかも、物凄いローテクです)、1デック300ドルすると言われても何の驚きもありません(しかも、カルボーン氏によるすべて手作り!)。以前、この作品をかなり劣化させた商品がありましたが、出来は月とスッポンです。
 また、昔、アメリカの高級マジックショップ、コレクターズ・ワークショップ社から“マラケッシュ・ミラクル”という名前の「観客が指名したカードがせり上がる」作品が販売されていましたが、この方法のさらに斜め上をいきます(これも仕掛けを知った方がビックリする作品でした。製作に手間がかかりすぎるようで、今では廃盤になっています。アメリカのヴァイキング社と合併するかなり前の話です。ここの商品は、製作コストが高いのか、すぐに絶版になる商品が多すぎるのが難点!)。

 先日までこの作品を販売するウェブサイトがあったのですが、今は閉じられていて、ご本人に確認中です。多分、今でも購入可能なはずです(但し、受注してから製作を開始されるので、完成までに数ヶ月待たなければなりませんよ!)。



 そして、イギリスのアイデアマン、スティーブン・タッカー氏が1991年に発表した“HALLUCINATION”。

tucker.jpg

 観客が心に思ったカードがデックの中からスルスルとせり上がってきます。もともとは、ピアトニック社製のデックが付いていたのですが、扱いづらいし、すぐに傷んでしまったため、私の愛するTally-Hoのファンバックで自分のために作り直したものです。
 古いライジング・カードのギミックデックに、これまた古いある原理を加えて、大変不思議なライジング・カードに仕上がっています。でも良く考えたら、このライジングカードのギミックデックを使わなくても良いんじゃね?と思って、それからはこのギミックデックを使わずに同じ現象を演じるようになりました。
 今は発売されていないようなのですが、一時期、日本で海賊版がかなり大量に出回っていたようですので、入手出来ないことはないと思います。



 で、1番のお気に入りはこれ。「Upton/Smith Rising Cards」です。

uptonsmith.jpg

 実はこの作品を知ったのは本当に昔、確実に20年は経っています。海外の友人の1人から「凄いライジングカードがある。原案は1920年代に作られた“Upton Rising Card”というものだ。金属製のホルダーとガラス製のパネル、金属製のギミックが付いているのだが、このハリー・スミス氏の作品は、それをさらに越える改案だ」と聞きました。当時、確かレート換算すると30,000円くらいして、学生の身分としては、とても手の届く作品ではありませんでした(それに1つの作品にそれだけお金を払うなら、洋書を何十冊も買ったほうが良い!と思っていました)。長年探し求めて、数年前に入手しました(ビバ、円高!…あまり、大きく喜べないですが…)。

 現象はこんな感じです。

 観客にデックを自由に切り混ぜてもらいます。なんなら、デックを観客から借りても良いでしょう。そうしたら、デックを入れるための木製のホルダーも調べてもらいます。マホガニーの木片が接着剤で組まれており、何の仕掛けも見当たりません(実際にホルダーには一切仕掛けがありません)。そして、小さなガラス板2枚も調べてもらいます(このガラス板にも仕掛けはありません)。
 3人の観客に1枚ずつカードを選んでもらい、デックに戻してもらいます。このデックをホルダーの中に入れます。そして、デックのトップとボトムにそれぞれ小さなガラス板を差し込み、演者が物理的にデックに触れることが出来ないようにします。
 このホルダーを開いた右手の掌の上に乗せ、デックの上で左手を使いオマジナイをかけます。すると、1枚ずつカードがデックの中からせり上がってきます。演者はカードの動きを一旦止めて、それからさらにカードをせり上がらせることも出来ます。このとき、ホルダーの前後を観客にしっかり示すことができます。
 2枚目のカードがせり上がってきたとき、ガラス板ごとデックをホルダーから外し(デックは2枚のガラス板の間に挟まれた状態になっています)、そのカードが本当にデックの中央付近からせり上がっていることを観客に示すことも出来ます。
 3枚目のカードもせり上がらせたら、そのまますべての道具を観客に手渡して演技を終えます。



 …結構、不思議ではないでしょうか? モーターなどの機械仕掛け、糸、ゴム、バネ、磁石、ワイヤー、余分なカード、重りなどは一切使っていません。よく見かけるインチキ臭い宣伝のようですが、本当です。仕掛けそのものは大変ローテクで、しかも物凄く簡単に演じられます。私は3枚目のカードに関して、観客に1枚のカードを自由に心の中に思ってもらい、そのカードをせり上がらせるようにしています。

 少し前に15台だけ限定で販売されたようなのですが、一瞬にして販売終了してしまいました。


 
 何故このマジックが凄く不思議に思えるのかと考えると、実際に起こるかもしれないと信じられる現象だからではないかな?と思うのです。例えば、物体が宙へ浮いたり、物体が消えると言っても、現実では起こりえません。
 でも、命のない物体が何もしていないのに動くという現象は、現実に起こりえる現象なのです。例えば、熱いおみそ汁が入ったお椀が勝手に動いたり、命のないかつお節が熱いうどんの上で踊っていたり、という身近な現象から、砂漠の中央にある巨大な岩が勝手に移動を続ける自然現象や、学生ならば一度は試したことがある、お馴染「コックリさん」、はたまたホラー映画の傑作、ジョージ・A・ロメロ監督の『ゾンビ』(1978年)のように死体が動くといった映像作品まで、無機質な物体が動く現象をフィクション、ノンフィクション関係なく目にする機会が結構多く存在します。この辺りが、人間の心理に大きく作用しているのではないか?と私は考えてます。

 そう言えば、昔、大変不思議なライジングカードを見せられたことがありました。
(→Part 2に続く) 
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yuki_the_bookworm  (a.k.a "べたねば")

Author:yuki_the_bookworm (a.k.a "べたねば")
何げない日常の中の、本と料理とマジック。

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