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ロン・ウィルソン プロフェショナルマジック

  私ごとで恐縮です。今週、拙訳「ロン・ウィルソン プロフェショナルマジック」東京堂出版さんから発売されました。

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 これは友人Richardが1987年に出版した「The Uncanny Scot : Ron Wilson」を完訳したものです。
 ロン・ウィルソンさんはイギリス出身のマジシャンで、マジックのメッカであるマジックキャッスルのレギュラーとして長年活躍され、マジックキャッスルが一番良かった時代を彩った方のお1人です。ステージからクロースアップまで幅広くこなす、稀代のオールラウンドプレイヤーでした。
 20年前に引退されてからは、ロサンゼルスでタレントエージェントとして活躍し、多くのマジシャンを世界中の豪華客船へと派遣されていました。



 私がこの本に出会ったのは、今から20年以上前のこと。東京は神田神保町にあったタトル商会(現在はすでに閉店)がまだマジックの洋書を取引していたころ、ふらりと立ち寄ったときに購入したのでした。私はまだ高校生でした。

 読み始めて、まあその内容の凄い事。すぐに練習を始めました。その中のいくつかの作品は今も演じ続けています。
 この作品集を素敵にしているのが、ウィルソンさんの想い出話なのです。有名な俳優、女優がぞろぞろ登場し、それがまた面白い。奇術専門書でこうした面白さを楽しんだのは初めてだったと思います。
 こうして、ウィルソンさんは私がティーンだった頃のヒーローになりました。




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 ちなみに昨年の夏、ウィルソンさんは「Tales from The Uncanny Scot」という本を出版されました。
 ウィルソンさんの想い出話の集大成で、本当に面白い読み物です。さらに、氏の演技を収録したDVDもついていて、これだけでも45ドル(送料別)の価値があります。



 翻訳をすることが決まり、ウィルソンさんに連絡を取ることになりました。自己紹介をするメールを送ったのですが、中々返事がきません。たぶんウィルソンさんからしたら「誰、この日本人?」という感じだったと思います。

 返事を半ば諦めていた頃、突然「やあ、今忙しいから返事はちょっと待ってくれ。もうすぐ返事を出すから」と返信がありました。それからウィルソンさんとの会話が始まりました。大変フレンドリーに話して頂いて恐縮していたときに、私の先生Jamyからメールが来ました。

 ウィルソンさんとメールしてると話してなかったのに、「なあ、yuki。ロンは親切かい?」と書かれていてビックリ!「どうして知ってるの?」と聞いたら「いや、最近マジックキャッスルに行ってロンと話した時、お前さんの名前が出てきたんだ。Jamyの生徒なのか?と聞かれたから、『あいつ、最悪。絶対に返事しない方が良いぜ!』って言っておいたから!」と言われ、すべてが氷解。それからいろいろな話をさせていただくことができました。



 まあ、とにかく84歳とは思えない賢さと優しさとユーモアを持った方で、まずその事実に感動。さらに、50年の経験に裏打ちされた確かな知識に圧倒されました。冷静に考えて、30分のショウを1日5回、すべて演目を替えて演じるって、尋常ではありません。それを完璧にこなしていた、と伺うだけで、氏の凄い技量と知識量を感じる事ができます。

 最近感じるのですが、情報と知識を混同されている方が増えていませんかね? 熟成させる時間と経験、そして深い思考が伴わない「情報」は、単なる「思いつき」なのではないか?と思ったりしています。Old Schoolの話に重みがあるのは、この熟成期間の長さと経験の深さがその理由の1つなのではないか?と思います。



ちなみに、目次はこんな感じです。

前書き(ジョニー・トンプソン)  
スコットの人生(ジョン・ブース) 
イントロダクション(ロン・ウィルソンとの対話) 

ハイランド・ホップ  
この世の果てへの道
代償の払い方 
メンフィスの奇跡 
リフルアップ・リフト

シルクの色変わり
奇跡のミクロ・マクロ
囁くクイーン
ウィルソンの「財布の中に通うカード」 
・5パーセントの確率で起こる繰り返し演じる方法
ただカードを見てください
消失するデック 
奇妙なチョップ・カップ 

千里眼
ホイの遺産 
バンドリーダーは超能力者
覚えるための手助け
ありえない!

「アル・コーランの飛行する指輪」に関する考察
色鮮やかな飛行する指輪 
繋がる指輪
不死鳥の飛翔

2回元通りになるロープ 
T.A.R.C.P.(破っても元通りになるシガレットペーパー)
ゆっくり行う「破っても元通りになる新聞紙」

 すべてが「名作」と言ってよい作品群です。すべての作品が一生のレパートリーにできるほど完成された作品ばかりです。しかも、プロなら自分の演目に入れたくなるような手順がいくつも見つかるでしょう。

今まで海賊版の翻訳が出回ったことがありましたが、そこに訳し損ねている部分まで翻訳してありますから、バッチリ学ぶことができるかと思います。

 そして、若き日のRichardとウィルソンさんの対話は大変面白いです。特にプロになりたい方は参考になるのでは? テーブルのアプローチについては、もう知られすぎた方法になってしまいました。しかし、使う道具を最近発売されたアメリカの凄腕マジシャン、チャド・ロング氏のこの作品にすると今でも使う事ができる方法です。



 一番最後に解説されている「ゆっくり行う『破っても元通りになる新聞紙』」は傑作です。目の前で破れ目がじわりじわりと癒えていくようにみえるのです。ここ数年、確かにいろいろな素晴らしい新聞紙の復活が発売されていますが(これなんか一番有名でしょう。このver.2はちょっと改良されていて、私好みになりました)、でも私は、このウィルソンさんの手(実際にはアレックス・エルムズレイ氏の方法の改案)が大好きです。

 このビデオを是非ご覧ください! きっと納得していただけることと思います…え、出来なかった? それはごめんなさい!



 そして、本書が順調に出版へと向かっていた昨年末、ウィルソンさんは突然お亡くなりになりました。あまりに突然の出来事に、私もRichardも絶句してしまいました。ウィルソンさん、日本での出版を大変楽しみにされていて、私が最後にメールを受け取ったのは、ウィルソンさんが亡くなる数日前でした。ウィルソンさん自身もきっと信じられなかったと思います。

 本書を制作する過程で、ウィルソンさんに様々な質問を投げかけました。そして、本書に収録された作品に関する、本書に書かれていないコツなどを伺う事ができました。これをそのままにしておくのはもったいないと思いました。そこで、その追加記事を私のブログにアップしたいと思います。一部、まだ追加しないといけない部分がありますが、それ以外の部分に関してはすぐにエントリーをアップします。ただ、申し訳ありませんが、本書をお買い上げの方にだけシェアさせて頂きたいと思います。



 基本的に(大変わがままな話ですが)、私は自分が好きな、後世に残すべき本しか翻訳したくありません。本書はその1冊です。確かに最近のフラリッシュのような流行りのマジックは収録されていません。しかし、これこそが本物のマジックであり、正統派の考え方です。本当に良いマジックをお探しの方、本当のプロの秘密を知りたい方には是非にとおススメしたい本です。



「ロン・ウィルソン プロフェショナルマジック」 リチャード・カウフマン著、角矢幸繁訳、東京堂出版刊、2011年 定価 3200円+税

 一般書店、インターネットショップなどで好評発売中。
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yuki_the_bookworm  (a.k.a "べたねば")

Author:yuki_the_bookworm (a.k.a "べたねば")
何げない日常の中の、本と料理とマジック。

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